夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「恋する魔法使い」-6-

2017-03-22 12:29:09 | 自作の小説
アクナシティの船団がレイダンドの国へ近付いている噂は ブロディルへも届く
案じたブロディル国のアンドルフ王はカズール・シャンデ将軍を呼んだ
大切な四人の王子がレイダンド国の城に滞在中だ

シャンデ将軍は若い頃 秘密の任務でレイダンドの国都へ行ったことがある
その任務絡みでシャンデ将軍は右目を喪い・・・将軍となった現在は隻眼将軍と呼ばれている
残った片方の目も凍り付いているーそんな心無い噂をする者もいる

「お前が右目を喪って以来 レイダンドに足を向けなかったことは知っておる」

カズール・シャンデが失ったのは・・・右目だけでは無かった
愛する娘とその子供・・・・・
彼は苦い思いを噛みしめる

眼の傷が治りー捜した娘は・・・「もう 死んだ」
そう教えられた

それゆえ もう二度と足を踏み入れまいと誓っていたがー
「このわたしがまいります この命に代えても 王子様方は守り抜きます」

部下を引き連れ 疾風迅雷ー将軍はレイダンド国へ向かった



一方 レイダンドの国が近付くとアクシナティ国の皇帝コキンタクは武大臣モウトウゲン・内大臣ボクグジン・リシュウライ将軍を集め
「自分の偉大なる決心」について話す
この戦いで大いなる殊勲のある者を自分の後継者としファナク皇女を与えると

ファナク皇女は16歳 皇后シュランサイの特別な美貌を受け継いでいる

父親の言葉にファナク皇女は青ざめた
父親コキンタクより幾らかは若いと言っても いずれもいい年をしたオッサンばかり
若い娘が夢見る花婿には3人とも程遠い・・・
正妻こそいないけれど妾(めかけ)はたんと・・・・持っている

まだ見ぬレイダンド国 父親が征服を夢見る土地
こうなったら 父の手が届かない場所へ逃げ出そう
恐れ知らずの若い皇女はそう思った


そしてレイダンドの城では ほぼ・・・・・和やかに食事が終わった場でディスタン王はアクシナティ国の船団が近付いてきている話をする
先代のランデール王の時にも海を越えての攻撃があったこと
呆れるほど女好きのコキンタクのこと

「城へ攻撃をかけられる前に食い止める準備はしているが 戦闘が始まっては何が起きるか分からぬ
アンドール王子 ロブレイン王子 リトアール王子 ダンスタン王子 あなた方に何かあればブロディルの国王夫妻に申し訳が立たぬ」


「まさか!」とロブレインが目を輝かせる「国へ帰れなどと仰いませんよね」

末のダンスタンも続く「僕達は敵を前にして逃げ出すような卑怯者ではありません」

「僕としては・・・・・これでも頼れるところがあると見せられたら・・・ちょっと嬉しいかも」
と 独特の言い回しのリトアール

まとめる形でアンドール「ここで逃げ帰ったとあっては父に叱られます
まずーアクシナティのことでわかっていることをお教え願えませんか」



ロズモンドは意外な成り行きに驚きながら胸騒ぎを覚えていた
部屋へ朝食を届けに行った時の別れ際のベルナーの言葉
「ロズモンド ロズモンド 僕の為に祈ってくれるかな」

何の為の祈りが必要だったのだろう
何故 あんな眼で自分を見たのだろう

まるで姿を焼き付けるような?!
あの表情に何の意味があったのか・・・・・



海に近い場所にベルナーはいた
ーできるだけ上陸してくる前にとどめなくては!
相手が海にいる間に船団を混乱させる

レイダンドの人々が被害を受けないようにー

アクシナティの船団を眺め 歌うたいのベルナーは魔法使いアスタリオンとしての力を 一世一代の秘術を使おうとしていた

広い海・・・青い海・・・・・

彼は思い出す 育ててくれたアスザールの言葉を

ランデール王の願いは人々を守ること
無駄な命は奪わないこと
それが敵であろうとも

アスザールはクリスタベルを苦しめたくはなかった できるならば!
ランデール王との友情 二人の間の子供を守りたいという思い

ー俺の弟が この領域を脱走した弟が全ての始まりだったー

そうアスザールは語ったのだった

長老達により外の世界を知るようにと領域を出ることを許可されたアスザールは レイダンドの国でランデールと友となった
力を使わずに普通の人間として生きること
それを学ぶのだと長老達はアスザールに教えた

アスザールの弟のログサールはそんな兄を羨み その領域の数多の縛りも嫌で脱走し・・・・・
密かにレイダンド国へ潜入し名高き美女クリスタベルに恋した
早くからランデール王を愛していたクリスタベルにその想いは届かずークリスタベルはランデール王の妃となった

横恋慕の勝手な深い恨み抱きしログサールは名を変えてアクシナティ国の女好き皇帝コキンタクに近づきレイダンド王妃クリスタベルの美しさと魅力とを吹き込む
男なら誰もが欲しがるー手に入れるべき美女なのだと

レイダンドに対し その持つ力でも攻撃を加えようとしたログサールだが・・・ランデール王の傍にはアスザールがおり対抗した
防御に成功したもののアスザールはログサールの悪意と妄執と野心を知った

全ての始まりは恋 間違った恋ゆえに・・・
「クリスタベル妃は素晴らしいお方だった 恋し夢見ずにはいられない」
アスザールの中にも秘めたる想いはあったがー
それにも増してランデール王という人間への尊敬と友情と・・・・・

アスザールは成長するアスタリオンの姿に その中にランデールとクリスタベルを見ていた
時に浮かび上がる二人の面影
ランデール王の片鱗 クリスタベルの美しさ
更にアスタリオンには領域の人間の「力」の並外れた素質まであった

血の繋がりなどないのに 同じ力もある
アスザールにはアスタリオンは自分の子のようにも思えた
だから魔法使いとしての名前「アスタリオン」を与えた

「わたしは 俺は幸せだった 
アスタリオン お前は真の名前を人に知られてはならない
お前を害そうと思う者に知られたら その力は半減する」

「力」には限界がある
限界を超えて術を使えば 力の消滅どころか自身の消滅もあり得る

ログサールの消息を追い調べていたアスザール
いつかカタをつける為に・・・アスザールは死んで・・・
それは{し遺した仕事}となった

ログサールとコキンタクがレイダンド国への野望を忘れておらず攻撃を加えてきたならば
それにケリをつけるのは自分の仕事だ
その為に自分は生まれてきたのかもしれない
もうこの世にいない両親の代わりに この国を守る為に・・・・・

ーこの僕がやるしかないのだー