今月の歌舞伎座でございます。台風でバタバタしましたが、一応、一部から三部まで全て見てまいりました。ちょろっと感想などを。
見た順番で二部からです。二部は白鸚さんの「松浦の太鼓」からです。白鸚さん、80歳にして初役です。「吉右衛門さんのために」というお気持ちで一世一代でお勤めになられました。「松浦の太鼓」は実は吉右衛門さんのは見ておりません。上演記録を見ると平成26年1月の歌舞伎座でかかっているのですが、その時は浅草メインで上京していて、歌舞伎座は幕見で「東慶寺花だより」だけ見てました。私が見たのは幸四郎さんと歌六さんでした。自分のブログを見ると、幸四郎さんを見た時に「吉右衛門さんで見たかった…」って書いてました。見られるときに見ておかないといけません。
お芝居自体は適材適所、安心して楽しく拝見しました。美少年染五郎クンがゴマ近でご出演でした。歌舞伎座で主役を張った人もこういうお役もなさるんですね。白鸚さんや幸四郎さんの“教育方針”なんでしょうか。美少年なんですが、いまいち成人の鬘が合わない?変におでこというか前頭部が広くてちょっとアンバランス感がありました。ゴマ近、面白いです。良いアクセントになっています。こういう人たち、好きです。
最後に白鸚さん、梅玉さん、歌六さんの「口上」がありました。泣けますね。特に白鸚さんはたった一人の弟さんで、悲しみを堪えられているご様子が涙を誘います。皆さん、お心のこもったお言葉でよろしゅうございました。
続いて「揚羽蝶繍姿」です。今回のための書き下ろしです。吉右衛門さんの代表的なお役が順番に登場します。「籠釣瓶」「鈴ヶ森」「熊谷陣屋」「播磨潟だんまり」「須磨の浦」です。「籠釣瓶」では福助さんの八ッ橋でした。花魁道中は、廻り舞台を使ってさも歩いているような演出になってました。福助さんの襲名披露は見ていて、吉右衛門さんの次郎左衛門で見ています。今回は幸四郎さんで、いずれ本役でもお勤めになるんでしょうね。最後は長谷川等伯の「松林図」を背景に使っていらっしゃいました。吉右衛門さんが「等伯のことをいつか歌舞伎に…」と願ってらしたからだそうです。この話、どこかで聞いたことがあって、等伯は小説を読んだことがあって、「ぜひ、それは見たい!」とワタシも思っておりました。
三部は孝夫さんの「七段目」です。戻りで1階3列目の花横をget、4月の「ぢいさんばあさん」以来の歌舞伎の孝夫さんでした。間近で御目文字叶い、うふっでございました。最初の酔っ払いはほわほわとお可愛らしく、力弥の手紙を受け取る時はキリっと凄みがあって、最後はビシッと決めるところは決めて、要するにどの由良さまもステキ!、それに尽きます。雀右衛門さんもダイエットされて、お顔も少しほっそりされて、美しいお軽でした。孝夫さんとじゃらじゃらするところもよろしゅうございました。とっても×10くらい、本当によかったのですが、平右衛門の人がねぇ~~~、奥さん。1階の3列目なので声はよく聞こえましたが、相変わらずのファルセットで抑揚も変だし、所作も何だか決まらなくて、筋書によれば「吉右衛門さんに習ったお役」ということなんですが、何を習われたのかしらと思ってしまいました。せっかくの孝夫さんの「七段目」だったのですが…。いまいち、印象がボケてしまいました。
その後は菊ちゃんの「藤戸」です。吉右衛門さんがお作りになったお芝居で、初演は厳島神社での奉納歌舞伎でした。お能から来ていると聞き、「ワタシ、絶対寝るわ」って思っていたんのですが、いやぁ、凄いお芝居で見入りました。菊ちゃん、渾身の主役藤波と藤戸の悪龍でした。鬼気迫るものがあり、3列目で圧倒されました。奮発席で良かったです。
間狂言で丑之助さんが登場しました。何かのインタビューで「じいたんが作った大事なお芝居なので、一生懸命勤めます」って答えてらして、それも涙です。本当にしっかりと踊られていて、吉右衛門さんもお空の上でさぞお喜びのことと思います。大人の踊りのようで、ポイントポイントで決まります。音羽屋と播磨屋の血を受け継いでいらっしゃるので、生まれ持ったものもあるんでしょうけれど、きっと菊ちゃんが厳しくお稽古されているんでしょうね。
一部は「白鷺城異聞」からです。これも吉右衛門さんがお作りになったお芝居で、姫路城でたった2日間だけ上演されただけで、今回が二回目です。ご出演が小川家と波野家の方ばかりで、ましゅまろ米吉クンが「親戚の法事」とおっしゃっていました。「姫路城の天守閣に物の怪が…」というあらすじを読むと、つい玉ちゃんの「天守物語」を思い出してしまい、玉ちゃんの富姫なら…と全く違うことを考えていた失礼な客はワタシです。お芝居だけど、結構舞踊の要素もあって、なかなか面白い演目でした。これから上演の機会が増えればいいのに、って思いました。
最後は「寺子屋」です。音羽屋と高麗屋の松王の型の違いを見ることを楽しみにしていたので、高麗屋型を見られなかったのは返す返すも残念です。実は、この第一部、いろいろ訳あって、一階で見ました。6列目の中央で、花道を見渡せる席で、千代のお役の魁春さんが花道を歩かれるのを見てましたが、出のところから「千代」でした。何とも言えない“気”を纏っていらっしゃいました。さすがでございます。
松王が再登場してからの台詞、「桜丸が不憫」っていうところは何度聞いても泣けます。この「寺子屋」では歌昇さんのところのお子さんお二人が初舞台でした。長男の種太郎クンは何度か舞台に出てますが、次男の秀乃介クンはお目見得無しでいきなりの初舞台です。まだ3歳だそうで、おじいちゃまの又五郎さんが涎くりで同じ場面にご出演でしたが、最後は秀乃介クンの手を引いて引っ込まれました。涎くりなのにおじいちゃまの顔になってました。涎くりを迎えに来るのは彌十郎さんでした。時政パパで一躍「時の人」になられて、拍手も一段と大きくなってました。
一部から三部まで本当に豪華な出演者と充実のお舞台でございました。歌舞伎座ならでは!ですよね。コロナが少し右肩下がりとはいえ、他の劇場は休演があった中、歌舞伎座は一日も欠けることなく初日から千穐楽まで無事に開きました。本当に良かったです。吉右衛門さんが守ってくださったのでしょうか。「秀山祭」、来年以降もぜひ続きますようにと願います。幸四郎さんと菊ちゃんがいらっしゃれば大丈夫だと思います。
こういうポスターもありました。
《オマケ》
銀座シックスの蔦屋書店で「播磨屋の本棚」というコーナーができていました。ゆかりの本が並んでました。吉右衛門さんのお持ちの本の展示もありました。付箋が貼ってあったり、メモが書いてあったり、“臨場感”ありました。芥川もお好きだったようです。
見た順番で二部からです。二部は白鸚さんの「松浦の太鼓」からです。白鸚さん、80歳にして初役です。「吉右衛門さんのために」というお気持ちで一世一代でお勤めになられました。「松浦の太鼓」は実は吉右衛門さんのは見ておりません。上演記録を見ると平成26年1月の歌舞伎座でかかっているのですが、その時は浅草メインで上京していて、歌舞伎座は幕見で「東慶寺花だより」だけ見てました。私が見たのは幸四郎さんと歌六さんでした。自分のブログを見ると、幸四郎さんを見た時に「吉右衛門さんで見たかった…」って書いてました。見られるときに見ておかないといけません。
お芝居自体は適材適所、安心して楽しく拝見しました。美少年染五郎クンがゴマ近でご出演でした。歌舞伎座で主役を張った人もこういうお役もなさるんですね。白鸚さんや幸四郎さんの“教育方針”なんでしょうか。美少年なんですが、いまいち成人の鬘が合わない?変におでこというか前頭部が広くてちょっとアンバランス感がありました。ゴマ近、面白いです。良いアクセントになっています。こういう人たち、好きです。
最後に白鸚さん、梅玉さん、歌六さんの「口上」がありました。泣けますね。特に白鸚さんはたった一人の弟さんで、悲しみを堪えられているご様子が涙を誘います。皆さん、お心のこもったお言葉でよろしゅうございました。
続いて「揚羽蝶繍姿」です。今回のための書き下ろしです。吉右衛門さんの代表的なお役が順番に登場します。「籠釣瓶」「鈴ヶ森」「熊谷陣屋」「播磨潟だんまり」「須磨の浦」です。「籠釣瓶」では福助さんの八ッ橋でした。花魁道中は、廻り舞台を使ってさも歩いているような演出になってました。福助さんの襲名披露は見ていて、吉右衛門さんの次郎左衛門で見ています。今回は幸四郎さんで、いずれ本役でもお勤めになるんでしょうね。最後は長谷川等伯の「松林図」を背景に使っていらっしゃいました。吉右衛門さんが「等伯のことをいつか歌舞伎に…」と願ってらしたからだそうです。この話、どこかで聞いたことがあって、等伯は小説を読んだことがあって、「ぜひ、それは見たい!」とワタシも思っておりました。
三部は孝夫さんの「七段目」です。戻りで1階3列目の花横をget、4月の「ぢいさんばあさん」以来の歌舞伎の孝夫さんでした。間近で御目文字叶い、うふっでございました。最初の酔っ払いはほわほわとお可愛らしく、力弥の手紙を受け取る時はキリっと凄みがあって、最後はビシッと決めるところは決めて、要するにどの由良さまもステキ!、それに尽きます。雀右衛門さんもダイエットされて、お顔も少しほっそりされて、美しいお軽でした。孝夫さんとじゃらじゃらするところもよろしゅうございました。とっても×10くらい、本当によかったのですが、平右衛門の人がねぇ~~~、奥さん。1階の3列目なので声はよく聞こえましたが、相変わらずのファルセットで抑揚も変だし、所作も何だか決まらなくて、筋書によれば「吉右衛門さんに習ったお役」ということなんですが、何を習われたのかしらと思ってしまいました。せっかくの孝夫さんの「七段目」だったのですが…。いまいち、印象がボケてしまいました。
その後は菊ちゃんの「藤戸」です。吉右衛門さんがお作りになったお芝居で、初演は厳島神社での奉納歌舞伎でした。お能から来ていると聞き、「ワタシ、絶対寝るわ」って思っていたんのですが、いやぁ、凄いお芝居で見入りました。菊ちゃん、渾身の主役藤波と藤戸の悪龍でした。鬼気迫るものがあり、3列目で圧倒されました。奮発席で良かったです。
間狂言で丑之助さんが登場しました。何かのインタビューで「じいたんが作った大事なお芝居なので、一生懸命勤めます」って答えてらして、それも涙です。本当にしっかりと踊られていて、吉右衛門さんもお空の上でさぞお喜びのことと思います。大人の踊りのようで、ポイントポイントで決まります。音羽屋と播磨屋の血を受け継いでいらっしゃるので、生まれ持ったものもあるんでしょうけれど、きっと菊ちゃんが厳しくお稽古されているんでしょうね。
一部は「白鷺城異聞」からです。これも吉右衛門さんがお作りになったお芝居で、姫路城でたった2日間だけ上演されただけで、今回が二回目です。ご出演が小川家と波野家の方ばかりで、ましゅまろ米吉クンが「親戚の法事」とおっしゃっていました。「姫路城の天守閣に物の怪が…」というあらすじを読むと、つい玉ちゃんの「天守物語」を思い出してしまい、玉ちゃんの富姫なら…と全く違うことを考えていた失礼な客はワタシです。お芝居だけど、結構舞踊の要素もあって、なかなか面白い演目でした。これから上演の機会が増えればいいのに、って思いました。
最後は「寺子屋」です。音羽屋と高麗屋の松王の型の違いを見ることを楽しみにしていたので、高麗屋型を見られなかったのは返す返すも残念です。実は、この第一部、いろいろ訳あって、一階で見ました。6列目の中央で、花道を見渡せる席で、千代のお役の魁春さんが花道を歩かれるのを見てましたが、出のところから「千代」でした。何とも言えない“気”を纏っていらっしゃいました。さすがでございます。
松王が再登場してからの台詞、「桜丸が不憫」っていうところは何度聞いても泣けます。この「寺子屋」では歌昇さんのところのお子さんお二人が初舞台でした。長男の種太郎クンは何度か舞台に出てますが、次男の秀乃介クンはお目見得無しでいきなりの初舞台です。まだ3歳だそうで、おじいちゃまの又五郎さんが涎くりで同じ場面にご出演でしたが、最後は秀乃介クンの手を引いて引っ込まれました。涎くりなのにおじいちゃまの顔になってました。涎くりを迎えに来るのは彌十郎さんでした。時政パパで一躍「時の人」になられて、拍手も一段と大きくなってました。
一部から三部まで本当に豪華な出演者と充実のお舞台でございました。歌舞伎座ならでは!ですよね。コロナが少し右肩下がりとはいえ、他の劇場は休演があった中、歌舞伎座は一日も欠けることなく初日から千穐楽まで無事に開きました。本当に良かったです。吉右衛門さんが守ってくださったのでしょうか。「秀山祭」、来年以降もぜひ続きますようにと願います。幸四郎さんと菊ちゃんがいらっしゃれば大丈夫だと思います。
こういうポスターもありました。
《オマケ》
銀座シックスの蔦屋書店で「播磨屋の本棚」というコーナーができていました。ゆかりの本が並んでました。吉右衛門さんのお持ちの本の展示もありました。付箋が貼ってあったり、メモが書いてあったり、“臨場感”ありました。芥川もお好きだったようです。