おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

大阪文化芸術創出事業 歌舞伎特別公演(第3部)

2022-09-13 23:32:08 | 観たもの
 
 

 松竹座で開催された大阪府・大阪市主催の歌舞伎公演です。↑非常に良い演目、出演者、配役にもかかわらず公演期間はたったの4日間しかありません。大阪府と大阪市にお金が無かったのか、こんな古臭い芸能にお客さんは来ないと思ったのか、“文化果つる地”大阪だからなのか、よーわかりませんが、もうちょっと長く、せめて10日間はかけてほしかったですね。初日の第3部と土曜の第1部と第2部に行きましたが、三階席はほぼ満席でした。おそらく下の階も結構入っていたのではないかと思います。

 どの部も“ハズレ”はなく、充実した良いお舞台でした。主演はがんじろはん、亀ちゃん、愛之助さん、壱太郎さんなんですが(チラシの似顔絵)、名題さんや名題下さんが主要なお役でご出演でした(チラシにも名前が載ってる)。歌舞伎座のような“どこを見てもスター級の役者さん”っていうのもいいんですが、スターばかりでなくてもみんなが力を合わせればこれだけ出来るんや!っていうのもよろしゅうございます。

 見た順番で第3部から。愛之助さんの「夏祭」です。2013年に松竹座で通しで団七をお勤めになりました。その時の記事はコチラ。十三代目さんにご指導を受けられた我當さんからお習いになりました。本当によかったです。ニンに合ってるんでしょうね。今でいうヤンキーみたいなチンピラやくざっていうのが…(←褒めてます)。見た目も以前よりずいぶんとすっきりして、最後の泥場もかどかどで見得が決まり、恰好よかったです。

 今回も大いに期待して劇場へまいりました。前回は通し上演でしたが、今回は定番?の住吉鳥居前から長町裏まででした。期待を裏切ることなく、perfectな団七でした。大阪弁Nativeっていうのが強みですね。台詞はもちろんですが、相槌とか独り言とか捨て台詞とか、そういうのもすべてちゃんと大阪弁なんです。お江戸の方だと台詞はなんとか大阪弁イントネーションになっても、それ以外のところが怪しくなってしまいますから。さすがの吉右衛門さんの団七でも、きっと義太夫狂言としては正しい台詞だと思うのですが、大阪人が聞くと「え?あれ?」みたいに思ってしまったので。大阪の人ね、大阪弁のイントネーションに煩いんです。スミマセン。

 周りも上方のお弟子さんたちで固められました。磯之丞は千壽さん、琴浦はりき彌さんでした。りき彌さん、名題になったというのが自信になったんでしょうね。台詞もすごく安定して良くなってました。もちろん、千壽さんの二枚目の優柔不断なぼんぼんも、ちょっと秀太郎さんの面影を感じたりして、よろしゅうございました。上方歌舞伎会で活躍された光さんと愛治郎がこっぱの権となまこの八でしたが、チラチラ出てくるだけですごく雰囲気があって、これからも注目のお弟子さんです。

 琴浦に横恋慕する大島佐賀右衛門が當十郎さん、三婦女房おつぎが吉弥さんで、大阪弁Nativeがこれだけ揃うと、青虎さんが一寸徳兵衛、なかなか厳しかったです。澤瀉屋さんってあまり上方のお芝居ってないので、よけい無理なのかもしれませんが。がんじろはんや壱太郎さんでも、時々「ん?」って思ってしまうことがあったくらいなので。

 義平次の亀鶴さんですが、お芝居の上手い役者さんなので結構期待していましたが、案外、さらさらとしていて、義平次のねちっこい、嫌らしい、マムシみたいなものがあまり感じられなくて…。義平次が「これでもかっ」ってくらい畳みかけるように挑発して、それに乗ってしまった団七が舅を殺すことになるので、もうちょっと突っ込んでほしかったなぁって思いました。私が見たのは初日だったので、千穐楽までに変わってたかもしれないのですが…。通し上演の時は橘三郎さんでした。

 愛之助さんがお辰もなさったのですが、ま、お綺麗な女形さんでした。決して加役ではありませんでした。でも、ちょっと品があり過ぎたような…。やくざの女房で、自分の顔に鉄弓を当てるような人なので、もっと鉄火な感じで演じてほしかったですね。亀ちゃんが演れば似合いそうだなって思ってた失礼な客はワタシです。あるいは、吉弥さんとか? そうしたら、おつぎは扇之丞さん?って妄想が膨らみます。

 最後のお祭りのお囃子もだんじりで、大阪の夏って感じでした。ワッショイワッショイでは感じが出ませんから。

 ご覧になった方たちの評判も非常によろしいようで、「ぜひ歌舞伎座で!」というお声もあるようです。それは本当に見たいですし、お江戸の皆様に「これがほんまの『夏祭』や!」って言いたい! その時はワキも上方の役者さんで固めていただかないと、この大阪の雰囲気は出ないです。歌舞伎座だからって、お江戸の役者さんになると途端に魅力がなくなると思います。ただね、お江戸の人があまりご存じでない役者さんになると、集客的には難しくなるんでしょうかね。でも、11月以降は2部制に戻るようなので、こういうお芝居がひとつ入っててもいけそうな気がします。松竹株式会社さま、ヨロシクでございます。
コメント (2)
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