松嶋屋さんのお弟子さん千次郎さん、千壽さん、松十郎さんの三人で始められた「晴の会」、今年で六回目となりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、関西でも舞台は次々と中止になり、この「晴の会」もどうなるのかと思っていたら、近鉄アート館が感染予防の万全の対策を整え実施してくださいました。実施の発表があった後も、本当に初日までこぎつけられるのか?、初日が開いても千穐楽まで大丈夫か?と役者さんもスタッフさんもお客さんも半分こわごわとしておりましたが、昨日無事に千穐楽を迎えられました。本当におめでとうございます。関西での歌舞伎再開の第一号でした。
コロナ対策ということで、舞台上も客席も“密”にならないようにと、演目は第一回の出演者三人だけの「浮世咄一夜仇討」、上演時間は1時間で、1日3回公演で合計11回の上演となりました。客席も前後左右は開けてありました。ワタシは20日と22日の2回拝見しました。実は、22日は上京する予定で20日の1回だけの予定だったのですが、上京が取り止めになり、急遽もう1回見ることにしました。千穐楽はさすがに満席だったようですが、それ以外は結構空きがあったようで、ご出演の役者さんのツイッターだけでなく、タカタロさんや愛之助さんもご自身のブログで再三再四宣伝されていて「時間も出来たことやしもう1回行っとかな悪いかな」と思いまして…。
「晴の会」はもちろん第一回から見ておりますので、この「浮世咄一夜仇討」も見ましたが、「そういえば、こういう場面もあったよな」程度の記憶でした。6年前の演技は覚えていないけれど、「確実に格段に上手くなってる」のはよくわかりました。そりゃ、6年も経てば上手くなっているのは当然なんですが、その間の様々なお役を経て役者が大きくなったっていうんでしょうか。この「晴の会」以降、千次郎、千壽、松十郎のお三方は本公演でも結構良いお役をされるようになりました。松竹座、南座だけでなく、歌舞伎座でも目立つお役をされるようになりました。秀太郎さんがよくおっしゃる「役者は見てもらって成長する」、その言葉の通りです。今回、見ていてすごく安心して楽しむことができました。
長唄で勝之弥さんがご出演、高音の美しい声を聞くことができて、「歌舞伎に帰って来た感」がupしました。
松十郎さんが寝転んで扇で顔を隠すという場面があったのですが、孝夫さん
の「七段目」の由良さんを思い出しました。「上方歌舞伎会」でできるんちゃうん?と思いました。お軽は千壽さんで、って考えながら、女形ってこれしかないのでやっぱり上方歌舞伎会では無理でしょうか。だったら「六段目」はどう?と妄想が広がる、広がる…。
スミマセン、話がそれました。登場人物は3名だけなんですが、當吉郎さん、りき彌さん、當史弥さん、千太郎さん、翫政さん、佑次郎さんが黒子で参加されました。「黒子だけでは…」となったのか、幕開きで梅川、お染、おえん、久松、忠兵衛、八右衛門のお役で登場されました。りき彌さんと千太郎クンがお染久松だったのですが、千太郎クン、背が伸びて全然違和感なく“カップル”になっていて、おばちゃんビックリしました。たぶん、第一回あたりだと思うのですが、秀太郎さんの後を半ズボンにブレザー姿でくっついて歩いていたのに、子供が大きくなるのは早いですね。
黒子さんたち、コロナの影響かと思うのですが、透明のフェイスシールドをつけていて、お顔がそのままわかります。首から下が黒い衣装なのに、顔だけ白塗りになっていて、ここは違和感ありまくりでした。ま、これもご愛敬ってことで。
近鉄アート館もこの「晴の会」にはすごく肩入れしてくださっているので、おそらく来年も開催してくださることでしょう。亀屋東斎(千次郎さん)が近松物を翻案した台本を書きかけていたとお聞きしているので、来年はぜひそれが上演できるよう願っています。