歌舞伎座の第3部でございます。もう1週間以上前のことで、さらに第2部を張り切って書いたせいか、玉ちゃん
の「道成寺」なんですが、完全に“忘却の彼方”になっております。がんばって記憶をたどりたいと思います。
第3部は「石切梶原」と「京鹿子娘二人道成寺」です。
一、梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)
鶴ヶ岡八幡社頭の場
梶原平三景時 吉右衛門
梢 芝 雀
俣野五郎景久 又五郎
奴萬平 錦之助
山口十郎 歌 昇
川島八平 種之助
岡崎将監 米 吉
森村兵衛 隼 人
剣菱呑助 彌十郎
六郎太夫 歌 六
大庭三郎景親 菊五郎
孝夫さん
と吉右衛門さんは歌舞伎界の「お芝居上手いツートップ」(と、個人的に私は常々思っている)で、結構演じるお役(得意と言われているお役)がかぶっています。ということは見た目(お化粧とか衣裳とか)もかぶっているはずなんですが、何となく孝夫さん
=白塗り、吉右衛門さん=肌色(赤色?)っていうイメージが強く、先月の公演もこの“色分け”?でした。2部も孝夫さん
は「吉田屋」の伊左衛門、吉右衛門さんは「先代萩」の荒獅子男之助でした。で、この梶原景時は生締め・白塗りで、最初見たときに思ったことは「吉右衛門さん、白い…」でした(スミマセン、吉右衛門さんファンの皆様)。吉右衛門さんの白塗りって初めてかもと思ったけれど、3年前の南座顔見世で忠臣蔵の「七段目」の大石内蔵助で見ています。
「白い」こともびっくりでしたが、さらにお芝居を見ていて「明るい」ことにもびっくりしました。「石切梶原」は昨年の南座顔見世で團十郎さんで見ており、お話は深刻な内容のようで、歌舞伎らしい「えーっ、そうきますか?」って感じのHappyendで、舞台全体が明るくて、團十郎さんの大らかな雰囲気とよく合ってるなぁと思いながら拝見したのを覚えています。吉右衛門さんってお芝居がお上手なだけに、クセがあるというか陰影があるというか、私の中では團十郎さんの雰囲気とは真逆のイメージがあって、どんな景時になるのかしらと思っていましたが、鷹揚で朗らかな景時で、ニコニコと花道を引っ込んでいかれ、やっぱり吉右衛門さんは「お芝居上手いツートップ」のお一人でした。
二、京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)
道行より鐘入りまで
白拍子花子 玉三郎
白拍子花子 菊之助
所化 團 蔵
同 権十郎
同 宗之助
同 萬太郎
同 巳之助
同 尾上右近
同 米 吉
同 廣 松
同 隼 人
同 虎之介
「京鹿子娘二人道成寺」は昨年シネマ歌舞伎で拝見しておりますが、実は爆睡してしまいましてほとんど記憶がなく、今回もせっかくの歌舞伎座杮葺落公演なのに、見逃したらどうしようとそればかり心配しておりました。しかも、この前の「石切梶原」はちゃんと見ることができ(もちろん2部もバッチリ見たので)、ひょっとしてそのツケ?がこちらに回ってきたら…と不安材料山積の中での観劇となりました。大丈夫でした。杞憂に終わりました。ホッとしました。いやぁ、ヨカッタ、ヨカッタ…。
そんなしょーもないことはどっちでもいいことです。かんじんの舞踊です。見る前からわかっていたことですが、玉ちゃん
も菊ちゃんもそれはそれはお美しゅうございました。登場は、菊ちゃんは花道からですが、玉ちゃん
はスッポンからです。以前の「二人道成寺」は両花道から登場するのが定番だったそうですが、鐘が舞台中央にあるのでやりにくいそうで、玉ちゃん
が平成16年の初演時にこの方法をお考えになったそうです。玉ちゃん
は亡霊、文字通り“この世のものではない”美しさでした。
お二人のイキはぴったり、同じ振りのときはもちろん一糸乱れず揃っていらっしゃいますし、それぞれが別れて踊っているときも、要所要所でピタッと決まります。姉妹のように恋人のように場面場面で見せる顔が変わります。衣裳の引き抜きも何回あったんでしょうか。玉ちゃん
の後見の玉雪さん、「吉田屋」でも後見をお務めでしたので、きっと玉ちゃん
の信頼厚い後見さんなんでしょうね。
舞台のお二人の「気」をビシバシ感じました。二人で切磋琢磨して最高のものを作りあげようとしている気迫なんでしょうか。見ているほうに休憩させる隙を与えませんでしたから。たった二人で2000人近いお客さんを圧倒していらっしゃいました。幕が閉まると、お客さんは皆さん息を詰めて見ていたからか、「ホーッ」とため息のような歓声のような声を上げていました。1時間を超えるの舞踊ですが、そんなに長く感じず、あっという間でした。
充実の五月公演でした。もう1回行けるものならぜひ行きたい!ですね。