京都国立博物館で開催された「文化財修理の最先端」という展覧会です。
展覧会の概要です。
↑この概要が全てっちゃ全てなんですが、それではブログの記事になりませんので…。当初は昨年7月に開催予定でしたが、コロナの関係で会期が変更になりました。ご自分のところのものなので(寄託とかもありますが)、少々展示時期が変わっても開催できるんでしょうね。ワタシがずっと「行きたい」と熱望していた現美の「石岡瑛子展」は、本当はどこかへ巡回するはずだったようなんですが(どこかは不明)、コロナで会期変更したので、展示作品を借りている関係で巡回できなくなったそうです。
話がそれました。とても興味深い展覧会でした。「修理」と言っても、文化財なので完全にきれいにしてしまってはいけません。絵の具が剥落しているからそこを着色するとか、繊維が裂けているからそこに新しい繊維を当てるとか、紙が傷んでいるから新しい紙にするとか、そういうことではありません。「今見えている状態」のまま修理します。だから、修理の前に顕微鏡やエックス線で見て、どこを修理しなければいけないのかを特定し、その材料は何を使っているのか解明し、できるだけそれに近い材料を準備しないといけません。
展示されているのは修理が終わった作品で、キャプションの横に「どこをどう修理したのか」という説明がありました。ただ、修理前の写真が白黒で説明を読んだだけではいまいち理解できず、いつもは買わない図録を買ってしまいました。
解体修理をする過程で、いろいろな発見もあります。京都・立本寺の「金字法華経宝塔曼陀羅図」は裏紙を外すと、もともとは法隆寺東院北室の所蔵だったそうです。その後、江戸で修理されたこともわかったそうです。あるいは、表装されたものの軸木の中から文書が出てきたり、軸木の中に文字があったりと、"開けてびっくり!"みたいなこともあるようです。
思わず見入ったのは、「騎馬武者像」という絵、長らく「足利尊氏」と言われてきたのが、近年「高師直」という説がでてきたそうです。高師直って、「忠臣蔵」では白髪のじいさんというイメージなので、ちょっとびっくりしました。
紙系の修理(ざっくりでスミマセン)は、水にぬれて波打った紙は上下で幅が変わっているので、加湿の割合を上下で変えてプレス乾燥を施してフラットにするそうです。補修紙が既存のものでない場合は、修理される方自らが紙漉きを行い、作製・補修されたそうです。いろいろな技術が必要なんですね。
布ならコレ、紙ならコレ、糸ならコレ、…という決まった修理方法や材料があるわけではなく、それぞれに合わせて修理を行う、ベストな方法を探さなければなりません。年単位でのお仕事のようです。展示の間に修理の様子を伝えるパネルもありましたが、気が遠くなりそうな細かくて根気のいる作業です。
↑上のポスターの絵は伊藤若冲です。若冲を持ってくるって、ちょっとあざといかなと思わなくはないのですが、若冲の「石燈籠図屏風」という六曲一双の屏風です。襲木は修理設計当初は黒漆塗を新調する予定だったのを、修理過程で旧襲木が屋久杉材とみられることが判明し、屋久杉材で新調したそうです。
したいところですが、会期が今日まででした。
京博は3月27日から「鑑真和上と戒律のあゆみ」という展覧会があり、「鑑真和上像」が展示されます。日本史で習ってから一度実物を見たいと思いながら、まだ見ておりません。唐招提寺でも公開の期間が限られていたように思います。この機会にぜひ!と思っております。
展覧会の概要です。
京都国立博物館の敷地内に併設されている文化財保存修理所は、指定文化財を安全に修理することを目的とし、1980年7月に設置されました。公営修復施設としては日本で初めてのものであり、2020年に開所40周年を迎えました。これを記念し、近年修復された文化財の中でも特に注目される作品を厳選して展示いたします。
日本の文化財は大半が脆弱な有機物を素材としており、約100年に一度は定期的な修理を行わなければなりません。異なる素材を複合させながら発達した日本の修復技術は、古い作品を大切にして、後世へ伝えようとする人々の心と日本の自然が生み出した、人文遺産そのものです。
この特別企画では、世代を超えて受け継がれてきた文化財を、文化財修理という切り口からご紹介いたします。
日本の文化財は大半が脆弱な有機物を素材としており、約100年に一度は定期的な修理を行わなければなりません。異なる素材を複合させながら発達した日本の修復技術は、古い作品を大切にして、後世へ伝えようとする人々の心と日本の自然が生み出した、人文遺産そのものです。
この特別企画では、世代を超えて受け継がれてきた文化財を、文化財修理という切り口からご紹介いたします。
↑この概要が全てっちゃ全てなんですが、それではブログの記事になりませんので…。当初は昨年7月に開催予定でしたが、コロナの関係で会期が変更になりました。ご自分のところのものなので(寄託とかもありますが)、少々展示時期が変わっても開催できるんでしょうね。ワタシがずっと「行きたい」と熱望していた現美の「石岡瑛子展」は、本当はどこかへ巡回するはずだったようなんですが(どこかは不明)、コロナで会期変更したので、展示作品を借りている関係で巡回できなくなったそうです。
話がそれました。とても興味深い展覧会でした。「修理」と言っても、文化財なので完全にきれいにしてしまってはいけません。絵の具が剥落しているからそこを着色するとか、繊維が裂けているからそこに新しい繊維を当てるとか、紙が傷んでいるから新しい紙にするとか、そういうことではありません。「今見えている状態」のまま修理します。だから、修理の前に顕微鏡やエックス線で見て、どこを修理しなければいけないのかを特定し、その材料は何を使っているのか解明し、できるだけそれに近い材料を準備しないといけません。
展示されているのは修理が終わった作品で、キャプションの横に「どこをどう修理したのか」という説明がありました。ただ、修理前の写真が白黒で説明を読んだだけではいまいち理解できず、いつもは買わない図録を買ってしまいました。
解体修理をする過程で、いろいろな発見もあります。京都・立本寺の「金字法華経宝塔曼陀羅図」は裏紙を外すと、もともとは法隆寺東院北室の所蔵だったそうです。その後、江戸で修理されたこともわかったそうです。あるいは、表装されたものの軸木の中から文書が出てきたり、軸木の中に文字があったりと、"開けてびっくり!"みたいなこともあるようです。
思わず見入ったのは、「騎馬武者像」という絵、長らく「足利尊氏」と言われてきたのが、近年「高師直」という説がでてきたそうです。高師直って、「忠臣蔵」では白髪のじいさんというイメージなので、ちょっとびっくりしました。
紙系の修理(ざっくりでスミマセン)は、水にぬれて波打った紙は上下で幅が変わっているので、加湿の割合を上下で変えてプレス乾燥を施してフラットにするそうです。補修紙が既存のものでない場合は、修理される方自らが紙漉きを行い、作製・補修されたそうです。いろいろな技術が必要なんですね。
布ならコレ、紙ならコレ、糸ならコレ、…という決まった修理方法や材料があるわけではなく、それぞれに合わせて修理を行う、ベストな方法を探さなければなりません。年単位でのお仕事のようです。展示の間に修理の様子を伝えるパネルもありましたが、気が遠くなりそうな細かくて根気のいる作業です。
↑上のポスターの絵は伊藤若冲です。若冲を持ってくるって、ちょっとあざといかなと思わなくはないのですが、若冲の「石燈籠図屏風」という六曲一双の屏風です。襲木は修理設計当初は黒漆塗を新調する予定だったのを、修理過程で旧襲木が屋久杉材とみられることが判明し、屋久杉材で新調したそうです。
したいところですが、会期が今日まででした。
京博は3月27日から「鑑真和上と戒律のあゆみ」という展覧会があり、「鑑真和上像」が展示されます。日本史で習ってから一度実物を見たいと思いながら、まだ見ておりません。唐招提寺でも公開の期間が限られていたように思います。この機会にぜひ!と思っております。