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眠りの森 東野圭吾

著者の本は全作品の3分の1程しか読んでいないのだが、著者の本はブレイクするずいぶん前、ユーモアミステリーの色彩の強かった頃から、気の向くままに読んでいたので、その大昔に読んだ本がどれだったのか、あるいはTVドラマなどであらすじを知ってしまっている本がどれだったのか、随分記憶が曖昧になってきてしまい、大変困っている。読んだことさえ忘れてしまったのであれば、もう一度読んでも良いような気もするが、読んでいる最中に読んだことを思い出すのが嫌なので、何となく、どれに手を伸ばしてよいのか判らないのだ。最近の本であれば覚えているが、最近の本はほぼ全部読んでいるので、そのあたりの記憶は実際の役に立たない。仕方なく、最初に刊行された年とか、カバーの後ろのあらすじを頼りに、読んでいないことを祈りつつ手に取るということになってしまっている。本書もそのようにして、「多分読んでないだろう」と当たりをつけて読んだ本である。本書は、「新参者」で人気の加賀恭一郎シリーズの初期の作品だ。並はずれた推理力を駆使するわけではないのだが、丹念に証拠や人物の心理を探ることで、他の捜査員にはなかなか見えない真実にたどり着いていくという独特のキャラクターが人気の秘密だ。本書では、彼自身、事件の捜査を通じて、ある登場人物に強い感情を抱いてしまう結果になる。それがその後の彼にどのような影響を与えたのかは、後の作品で明らかにされているのだろうが、そうした観点で読んでこなかったのでそのあたりは今一つはっきりしない。なかなか難しい話だが、それを明らかにするには既に読んだ別の作品も読み返すしかないだろう。もっと前に本書を読んでおけばよかったと少しだけ後悔してしまった。(「眠りの森」 東野圭吾、講談社文庫)

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