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乾山晩愁 葉室麟

著者のデビュー作で、著者の作品はこれで3作目。5人の江戸時代の有名な絵師の一生を飾りのない文章でつづった1冊。芸術に生きる人々の生涯も、世の中の政治情勢や周りの人々の打算等と無縁ではない、いわばそこにも修羅の世界があるという視点で描かれている。そうした芸術家の苦悩のようなものが彼らの作品として昇華していく様までもが見事にとらえられている。これまでの2冊と違って、本書は短編集である分構成は単純だが、著者独特の奥深さはこうした短い作品にもしっかり表れている気がする。(「乾山晩愁」  葉室麟、角川文庫)

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