最後に、金や出世を追求しないにもかかわらず現実に徹する人の中に少数ですが、さらに別のタイプとして分類するほうが分かりやすい人々がいます。人生に熱心とはいえないタイプです。
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最後に、金や出世を追求しないにもかかわらず現実に徹する人の中に少数ですが、さらに別のタイプとして分類するほうが分かりやすい人々がいます。人生に熱心とはいえないタイプです。
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こういう人たちの中には、ルーティンワークや家事はけっこうきちんとやる、という人が多いようです。家計など金銭管理はきちんとする、変人とみられないように義理付き合いはちゃんとする、というように、毎日淡々と実行していることは、熱心にしています。この点、この人たちも、攻撃的なエリートや悪人と同じように人生に熱心である、ともいえます。そうであれば、広い意味で、人生に熱心であるがゆえに現実に徹する人々、と分類することができます。
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そういう場合、金銭的利益の獲得や社会的出世はある程度あきらめているということがあります。何かの理由で、金や出世は手に入らないものだと思い込んでいるらしいところがあります。こういう人は、金や出世を追求しないにもかかわらず現実に徹する人、といえます。差別されている社会的弱者、病弱や身体障害などを抱えている人、あるいは身体的な劣等感が強い人、あるいは事故で家族を失った人、戦争に負けて生き残った人、あるいはいつの間にか自分は社会に受け入れられないと思い込んでしまっている人、などは人生に防衛的であるがゆえに現実以外のものを期待しないという人になる場合が多そうです。
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さてこの人たちに関して不思議なのは、エリートや悪人に見られたように熱心に人生の何かを追求していてその達成のための戦略を立てるために現実に徹するという必要がないのに、なぜ現実に徹するのか、という点です。この人たちが現実に徹するように見える理由は、積極的に現実を利用しているのではなくて、人の内面を信じないことから現実だけを認めていることが顕著に見えてしまう、ということでしょう。何かを目的として現実に徹するのではなくて、現実以外のものを期待しない、といういわば消極的な態度から来ていると推測できます。
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まあ、こういう人は生活費も最低限なので、収入も多くは必要としないでしょう。収入があっても交際や見栄や娯楽教養などに使わず、貯金にまわっていきます。 たとえば、母親が死んだ次の日にガールフレンドと海水浴に行ったりする(一九四二年 アルベール・カミユ『異邦人
』)。こういう些細な行動は、ふつうは人に見つかりませんが、犯人になったりした場合、冷血の証拠としてマスコミや法廷での非難告発に使われたりして人々の憎しみを買います。小説ではハードボイルドの殺し屋などにこういうキャラクターが登場するところをみると、憎まれ役として意外な人気がある、ともいえます。
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