稲村亭日乗

京都の渓流を中心にルアーでトラウトを釣り歩いています

『二十歳の原点』と『青年の樹』と

2017年02月21日 | 日々
 テレビで『二十歳の原点』がとりあげられていた。
 自殺した立命館大学生 高野悦子さんの日記だ。

 1971年に出版されて以来、今も版を重ねているようだ。
 出版関係者によると、この種の書籍でのロングセラーはとても珍しいそうだ。

     

 ぼくもあの当時読んだ記憶がある。

 生きるうえでの悩みなどを綴っていたと思う。

 ただ、ぼくには共感はできなかった。

 当時、学生運動にのめりこんでいたぼくにとって、それらはすでにふっきれたはずの
ものだったからだ。(もっとも、ぼくはこの運動を通じ、後には手痛い挫折感を味わう
ことにはなったが・・・)

 テレビでは、この書を繰り返し読む女子大生とともに別の女子大生も紹介された。

 その別の女子大生は
「高二のときに初めて読んで引き込まれました。けれども、その後、改めて読むとそれ
ほどの共感はありませんでした。自分が成長したのかな・・・」と述懐している。

 そうかもしれない。

 若い日の一時期、その時期だけ心を揺さぶられるものと出会ったということなのだろう。

 ぼくはふと、高校時代に『青年の樹』を読んだときの感動を思い出してしまった。
 元都知事の石原慎太郎氏の小説だ。

     

 青年らしいまっすぐな生き方を称賛した作品だった。

 当時共に読んだ親友 吉田君と何度もその感動を話し合ったことを思い出す。

 けれども、何年かのちに再読したとき
「これはただの青春小説ではないか!」と幻滅してしまった。

 人の感性というものは変わっていくもの。
 特に青年期のそれはめまぐるしい、と改めて感じる次第だ。

 その意味で、『二十歳の原点』は今後も若い人たちの一時期に強烈に語り続けるのか
もしれない。

 それにしても、思えばぼくもずいぶん歳を重ねてしまった。

 あの当時、よく語り合った吉田君。
 今ならどんな気持ちで『青年の樹』を思い返すだろう。
コメント
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