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主要国中央銀行の協調体制の成果 2:その限界

2020年03月17日 11時02分46秒 | 国際経済
主要国中央銀行の協調体制の成果 2:その限界
 昨日、午前中に、アメリカの利下げと同時に、主要国中央銀行の協調による世界的金融緩和政策が打ち出されたことに触れて、その成果として為替レ-トの乱高下が避けられたのではないかと書きました。
 昨夜その補遺を書こうと思って始めましたが時間切れになってしまったので、今日になりました。
   
 現状では、何とか、為替の安定は確保されているように思われます。日本に関しては円高は多少進みましたが、リーマン・ショックの時とは比較にならないような小幅です(現在106.円台前半)。ドル/ユーロも極端な動きはない様です

 しかし、東京市場の株価の方は、昨日乱高下の後、結局、日経平均は終値で440円ほどの下げでしたが、今朝は寄り付きから)からさらに500円がらみの下げになり、その後少し持ち直して300円ほどの下げになって元気はありません。(午前10時前)

 一方、NYダウの方は大変深刻で、昨日は未曽有の2997ドルの下落で、マスコミは利下げの効果が全くないと驚きに見出しが躍ったようです。
 CFDでは現状500ドル程度戻しているようですが、戻りは鈍い状態です。

 トランプ大統領がパウエルFRB議長に、しつこく金利の大幅引き下げを言っていたのは、ダウ平均の下落を止める、更に反転上昇させるという意図があったことは容易に想像されるところですが、現実は、トランプさんの思惑とは全く反対の結果になっているのです。

 原因は、多分、今回の米国金利の引き下げが、米国の単独行動ではなく6つの主要中央銀行の協調のもとに行われたという点にあるように思います。

 日銀もECBすでにマイナス金利政策をとっていて、金利引き下げの余地はほぼないという事でしょう。(FRBはマイナス金利は、アメリカには馴染まないという、いわば正統派の説明をしていますが)

 それでもここで協調体制をとらなけれならなかったのは、実体経済へのテコ入れよりも、世界金融市場に無用な混乱を避けるためという意味合いが強いでしょう。

 例えば日銀の対応は、「必要あらば即時に大規模な流動性供給を行う」といったことになるわけで、これは(リーマン・ショック以来一般化していますように)、金融緩和は自国通貨の高騰(日本なら円の独歩高)を避ける手段となっていることと裏腹です。

 NYダウの大幅下落は、ドル安が限られてしまった事への失望と、新型コロナウィルスの脅威がどこまで広がるか解らないという恐怖感からの下げという事ではないでしょうか。

 金融政策で為替の安定が出来てしまうと、株価の方は実体経済の落ち込みの可能性により大きな比重をかけた動きにならざるを得ないという事ではないかと考えてしまうところです。

 勿論、現時点では未だ性急な判断などができるわけではないとも思いますが、多様な意味で先見性のあるといわれる株式市場が、アメリカの超金融緩和政策に反応しないという事は、新型コロナウィルスの脅威、その実体経済に対するマイナスの影響力に、相当大きな危機感を持っているという事のように見えて来ます。
 
 世界経済がどこまで落ち込むか、未だに見当がつけられないという事は、新型コロナウィルスとは一体どんなウィルスなのかという事が、未だほとんどわかっていないという事が原因であることは明らかでしょう。

 そう考えてみますと、当面する諸問題への根本的アプローチは、新型コロナウィルスの研究に、早急に、最大限の資源をつぎ込むことが、最優先の課題で、世界経済社会の安定のために、そのための国際協力・協調に、取り組むことが迂遠に見えても結局は近道ということになるのではないでしょうか。