明日につなぎたい

老いのときめき

映画「母」を観る

2017-05-03 12:31:35 | 日記

 昨日、夫婦で、映画「母」―小林多喜二の母の物語―を観た。登場人物は、多喜二を拷問、虐殺した「特高刑事」のほかはみんな優しい。はじめに出てくる、二人の子どもと会話する村の駐在さんの表情は慈愛に満ちていた。どんな暮らしであろうとも、人は優しいのだ。この映画のモチ―フだったのだろうか。家族思いの多喜二は、人一倍優しい若者だった。この我が子を信じるお母さん・セキは、苦界にあった多喜二の恋人を快く我が家に迎え入れた。何と心の広い女性だったことか。改めて感動する。

 

 多喜二が恋人の田口瀧子(映画ではタミちゃん)を励ました「闇があるから光がある」の名句も出てくる。心優しい多喜二は貧しい人たちのために小説を書き続ける。セキは息子を信じた。「多喜二のすることを信用しねで、誰を信用するって」。だが、多喜二は国家権力ー特高警察に捕らわれ、惨い拷問の末、命を奪われる。「多喜二!もう一度立って見せねか!」物言わぬ人となった息子に取りすがるセキが痛々しかった。私の胸は特高への憤怒と憎悪でかきむしられた。

 

 監督の山田火砂子さんは「戦争への危機を感じ”時代を逆戻りさせない”決意でこの作品を作った」という。セキを演じた女優は寺島しのぶ。「原作(三浦綾子)を読み、セキの海のように広い母性と心の強さを感じた。多喜二という人物を日本の人に知ってもらうため、全身全霊を込めて演じたい」と語っている。その通りの熱演だったと思う。セキは貧しい農家生まれの朴訥な女性というより、凛とした聡明な女性のような印象をうけたのは私だけだっただろうか。寺島しのぶさんという女優のキャラの故なのだろうか。