【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「あきない世傳金と銀」(12)高田郁

2022年02月27日 08時53分25秒 | 読書(歴史/時代)


「あきない世傳金と銀」(12)高田郁

シリーズ最新作、12巻目。
五鈴屋へ女中奉公に上がった時、ヒロインは9歳だった。
そして今、40歳になった。
『出帆篇』とあるとおり、将来への布石となる一歩を踏み出す。
過去、何度も節目となる変革の巻があったが、今回は江戸に出てくる巻に匹敵する内容か、と思う。

P83
「暖簾て、大事やけど厄介で、厄介やけど大事なもんだすな。この頃、とみに思うんだす」

日食
P242
「お日ぃさんをじかに見たら、目ぇを傷めてしまう。店の表に床几を出して、水を張った盥を置いて、水面に目ぃを映して、欠けていく姿を眺めたんだす。短い間なら、そうやって見ても構わへん、と教わりましたのや。予め日食があるんがわかっていたからこその、お祭り騒ぎだした」
(中略)
月の満ち欠けは毎夜のことだが、日が欠け、暫くして戻る、というのを目の当たりにするのは希だ。日食が起きるだろう日時を暦が示し、それが的中するからこそ、ひとは暦を信じ、さらには暦を作らせた幕府に信を置く。

P308
「船乗りは、その日の天候や風向き、満ち潮や引き潮など、充分に気を払い、船出を決める。それでも、出帆した船は、沖に出るまでの間に、予測も出来ぬ波に遭う。その波を作るのは風だそうです」
(中略)
「実はもっとも危ないのは、出帆して沖へ出るまでだと聞きました。五鈴屋と仲間の船は今、沖を目指して進んでいるところだ。如何なる風浪も越えて、大海へ出てください」

【ネット上の紹介】
浅草田原町に「五鈴屋江戸本店」を開いて十年。藍染め浴衣地でその名を江戸中に知られる五鈴屋ではあるが、再び呉服も扱えるようになりたい、というのが主従の願いであった。仲間の協力を得て道筋が見えてきたものの、決して容易くはない。因縁の相手、幕府、そして思いがけない現象。しかし、帆を上げて大海を目指す、という固い決心のもと、幸と奉公人、そして仲間たちは、知恵を絞って様々な困難を乗り越えて行く。源流から始まった商いの流れに乗り、いよいよ出帆の刻を迎えるシリーズ第十二弾!!


武奈ヶ岳

2022年02月26日 16時29分18秒 | 登山&アウトドア(関西)

先々週も行ったけど、また、坊村から武奈ヶ岳に登ってきた。雪のある間は、比良山系・・・かな。気軽に雪山気分が味わえるから。愛宕山も考えたけど、雪の量と景色の良さを考えると、武奈ヶ岳に軍配が上がる。 武奈ヶ岳の欠点は、人が多いこと。さすが人気の山、雪山入門コースだ。









「アメリカンビレッジの夜」アケミ・ジョンソン

2022年02月24日 08時27分58秒 | 読書(沖縄・八重山)


「アメリカンビレッジの夜」アケミ・ジョンソン/真田由美子/訳

沖縄に取材したノンフィクション。
11人の女性たちが登場する。
彼女たちの言葉から、複雑で矛盾に満ちた沖縄の歴史と現実が浮かび上がる』、とある。ジョン・ダワー氏も、『類いまれな語り手が、帝国の基地の町に生きるとはどういうことかを鮮やかに描き出す』、と褒めている。

P23
米兵が沖縄で女性をレイプするとき、沖縄は純真無垢な少女となる――悪漢アメリカによって連れ去られ、殴られ、組み敷かれ、犯される少女。日本政府はその悪漢を招き入れ、暴行を手助けしたポン引きだ。

P62
1970年、米兵が起こした交通事故が発端となったコザ暴動のさなか、数多くの沖縄人が米兵を殴り、車に火をつけたが、群衆は黒人を標的にしなかった。

P78
まもなく沖縄は在外米軍基地のなかでも選り抜きの赴任地となった。「その魅力と快適さから、兵士たちは競って沖縄勤務を希望する」と、ニューヨーク・タイムズ」紙は報じた。競って希望した結果がこれか・・・

P195
鈴代の考えでは、軍事訓練と性暴力は不可分の関係にある。「他者を差別し、自分の力を行使して意に沿わせる意識がなければ、兵士としてやっていけないからです」。

P232
米軍は公には買春禁止の立場をとるようになったかもしれないが、ときおり本音が露呈する。1995年の女子小学生強姦事件後、米太平洋司令官のリチャード・マッキー海軍大将は記者の前で事件について、「犯行に使用した車を借りる金があれば、女(売春婦)を買えたのに。三人はばかだ」と発言した。三人で売春婦をひとり雇えばすむことだからだ。

P251
ふたつの国と文化のなかで成長した作家パール・バックは、「アメラジン」という用語を作り、みずから混合人種の子供たちを重ね合わせ、その支援に情熱をそそいだ。

P278
普天間飛行場は「世界一危険な米軍施設」と言われてきた。(オスプレイは、その墜落事故の多さから「未亡人製造機(ウィドウメーカー)」の異名をとる)

P336
よく言われるジョークに、首相(安倍晋三)はドナルド・トランプの「愛犬」というものがあった。主人の足元でよだれを垂らし、何でも従う、と。


【参考図書】

「敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人」(上)ジョン・ダワー
「敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人」(下)ジョン・ダワー


「沖縄アンダーグラウンド」藤井誠二


「裸足で逃げる」上間陽子

【ネット上の紹介】
「対話はいつもあまりに単純化され、人々は口をつぐみ黙りこむ。矛盾をもっと認識することで人々は話しやすくなる」1972年に日本へ復帰するまでの27年間、アメリカに占領・統治され、その後も基地が置かれた沖縄は、戦後70年以上、基地との共生を強いられてきた。米兵による犯罪や事故、自然破壊もあとをたたない。2016年に20歳の女性が米軍関係者により暴行を受けて殺害されると、抗議デモは過去20年を通じて最大規模となった。米軍基地をめぐって対立する日米両政府と沖縄県。普天間基地の移設問題も混迷をきわめている。だが、沖縄の基地をめぐる問題を「賛成か反対か」と二極化することでこぼれ落ちてしまう現実がある。そう感じた日系四世の著者は、沖縄に生きるあらゆる立場の女性――沖縄戦で学徒看護隊に動員された女性、基地で働く女性、米兵との恋愛結婚を夢見る女性、アイデンティティに悩む「アメラジアン」、基地反対運動の活動家ら――の話を聞き歩いた。彼女たちの言葉から、複雑で矛盾に満ちた沖縄の歴史と現実が浮かび上がる。------------------------類いまれな語り手が、帝国の基地の町に生きるとはどういうことかを鮮やかに描き出すジョン・ダワー(『敗北を抱きしめて』著者)推薦------------------------【著者】アケミ・ジョンソン(Akemi Johnson)ブラウン大学東アジア研究学部卒、アイオワ大学大学院創作科修了。フルブライト奨学金を得て日本に留学中、沖縄に滞在したほか、京都アメリカ大学コンソーシアムでも学んだ。現在は沖縄について各紙誌に寄稿するほか、ジョージ・ワシントン大学、ハワイ大学などで教鞭をとる。初の著書となる本書でウィリアム・サローヤン国際賞にノミネートされた。【訳者】真田由美子(さなだ・ゆみこ)翻訳家。ノンフィクションの主な訳書にカーギル『聖書の成り立ちを語る都市』(白水社)、リンジー『まっくらやみで見えたもの』、ウィルソン『キッチンの歴史』(以上、河出書房新社)、コーエン『あなたはあなたのままでいい』(イースト・プレス)ほか、小説ではピアースの短編集『小型哺乳類館』(早川書房)がある。

【目次】
リナ
イヴ
アシュリー
サチコ
アリサ
スズヨ
デイジー
ミヨ
エミ
チエ
アイ


「不浄を拭うひと」①②沖田×華

2022年02月22日 19時18分38秒 | 読書(マンガ/アニメ)


「不浄を拭うひと」①②沖田×華

孤独死すると、部屋は「クリーニング」が必要。
主人公は脱サラして、「特殊清掃」の仕事を始める。
人生が見えてくる、お仕事コミック。


ボクが請け負う仕事は遺品整理 ゴミ屋敷の清掃
そして亡くなった人の部屋を原状復帰させる「特殊清掃」だ
発見・通報後警察が検死のため遺体を回収したあと出向く形だ
亡くなる方で一番多いのは50代以上のひとり暮らし男性

人間ってのは亡くなって3日めから腐敗してくので だいたい1ヵ月たつ頃には・・・
髪の毛が頭皮ごとはがれていって髪の毛だけ残るんだよ

死んだ人のニオイってたとえると何?
そうだなー
たとえていうなら肉が腐ったというよりも
海産物が腐ったようなニオイに近く
女性より男性の方が圧倒的にくさい 病死の場合さらにニオイもひどくなる

だって孤独死する人は みんな 自分が孤独死するなんてこれっぽちも思ってないんだから

実はゴミ屋敷の主は男性より女性の方が多い
ボクの経験上トイレ周りが異常に汚いのは9割が女性である

【蛇足】
私は、大丈夫。
「白骨化」しない。
セコムと契約して、センサーを取り付けてもらってるから。
12時間反応が無いと、医療スタッフが駆けつけてくれることになっている。
その後、契約している「終活/遺言執行プラン」が発動する。
銀行口座閉鎖→公共料金閉鎖→クレジットカード閉鎖→親戚・友人への通知→デジタル遺品破壊→永代供養・・・これで一安心。(誰にも迷惑をかけずに成仏できる・・・と信じたい)

【ネット上の紹介】
山田正人、39歳。彼が脱サラしてはじめたのは、孤独死などの変死体があった屋内外などの原状回復をサポートする「特殊清掃」の仕事だった。彼は、さまざまな状態で死を迎えた人びとの「生活の跡」を消しながら、故人の生前のくらしに思いをはせる……。電子書店で大人気の話題作、待望のコミックス第1巻!


権現山~ホッケ山

2022年02月20日 15時43分09秒 | 登山&アウトドア(関西)

権現山~ホッケ山に登ってきた。
車は、道の駅『妹子の郷』に駐めてピストン。



下山直前に琵琶湖が見えた。

せっかく背負ってきたので、下山路の林道で滑ってみた。
でも、ボブスレーのようにいかない。
でこぼこで止まるし、ザックを背負っているので不安定。
雪が橇に入ってきて、おしりが濡れるし。
うち太ももが攣るし・・・もう散々。
とりあえず、「経験を積んだ」、と言うことでOK。


「戦争とバスタオル」安田浩一/金井真紀

2022年02月18日 08時00分02秒 | 読書(戦争/引き揚げ/ 抑留)


「戦争とバスタオル」安田浩一/文 金井真紀/文と絵

市井の人の言葉を丁寧に拾いあつめた比類なき湯けむりエッセイ。風呂から覗いた近現代史』、とある。
各地の温泉や銭湯を訪ねながら、昭和史「負の遺産」を掘り起こしていく旅エッセイ。
裸同士だからこそ聞ける「ホンネ」の数々が収録されている。

P12
いまはタイ国鉄のナムトック支線と呼ばれる路線は、かつての「泰緬鉄道」である。第二次世界大戦中の話だ。印度侵攻作戦を計画する旧日本軍は、タイとビルマを結ぶ鉄道を建設した。総延長415キロメートルに及ぶこの路線こそが、泰緬鉄道だ。

P13
タイ国内はもとより英語圏でも、泰緬鉄道(Thai-Burma Railway)ではなく、死の鉄道(Death Railway)と呼ばれることが多い。

P92
沖縄は全国でいちばん出生率が高い。未婚率はトップクラスで、失業率ではもうずっと最下位。

P94
「いま何やってるんですか」
「んーと・・・・・・」
ほんの一瞬だけ口ごもって、
「ラブホの掃除」
と答えた。
ラブホテルは、夏場は冷房が入っている。もうそれだけで天国みたいに楽なのだと彼女は言った。

P103
近辺にはいくつもの特飲街(米兵相手のバーが連なるエリア)が存在したが、コザ十字路から北は白人街、南は黒人街と区分けされていた。これはトラブルを防ぐことを名目とした、当時のMP司令部による一種の人種隔離政策でもあった。

P204
かつて釜山に、キム・ピルゴンさんという織物業者がいた。このキムさんこそがイテリ生みの親である。(中略)
60年代、キムさんはイタリアから大量の布地を輸入した。ビスコールレイヨンと呼ばれるものだ。洋服をつくるには適していない。思案を重ね、たどり着いてのがタオルとして活かすことだった。これを軽石に巻きつけて体を擦ってみたらどうだろう。試しに沐浴湯で使ってみたら、垢がぽろぽろと落ちるではないか。

P231
パッピンスとは韓国のかき氷。(中略)小豆と練乳のパッピンスが売られていた。3000ウォン(約300円)でドカンと大盛りだ。


【ネット上の紹介】
タイ、沖縄、韓国、寒川(神奈川)、大久野島(広島)―あの戦争で「加害」と「被害」の交差点となった温泉や銭湯を各地に訪ねた二人旅。心を解きほぐしてくれる湯にとっぷり浸かりながら、市井の人の言葉を丁寧に拾いあつめた比類なき湯けむりエッセイ。風呂から覗いた近現代史。
第1章 ジャングル風呂と旧泰緬鉄道―タイ
第2章 日本最南端の「ユーフルヤー」―沖縄
第3章 沐浴場とアカスリ、ふたつの国を生きた人―韓国
第4章 引揚者たちの銭湯と秘密の工場―寒川
第5章 「うさぎの島」の毒ガス兵器―大久野島
付録対談・旅の途中で


確定申告&ラグマット

2022年02月17日 20時16分04秒 | 身辺雑記

覚書として、いくつか身辺雑記を書いておく。

①本日、確定申告提出。
これで一安心。
提出するだけなので、すぐに終了。
(質問したり、書き方を聞いたりするなら順番待ち)

②テーブルクロスとラグマットを買った。
テーブルクロスは、イオンの切り売り。
長さを指定すると、その場で切ってくれる。

③酒を追加購入。
主に飲むのはブランデーか、スコッチ。
ブランデーは大きく分けて4種類ある。
コニャック、アルマニャック、カルヴァドス、グラッパ。
グラッパは、以前イタリアで飲んだけど、それほど美味しいと感じなかった。
コニャックは既に持っているし(ポールジロー)、カルヴァドスは以前買った。
そこで今回、アルマニャックを買った。


「教養としての「中国史」の読み方」岡本隆司

2022年02月15日 08時14分50秒 | 読書(台湾/中国)


「教養としての「中国史」の読み方」岡本隆司

読んでいて気持ちの良い充実の読書だった。
今年ベストの1冊、と思う。
高校生や大学生は、教養として本書を読むべし、と思った。


P58
幕末の日本で、天皇を奉じて外国勢力を退けようとした志士たちが「尊皇攘夷」というスローガンを掲げましたが、これはもともと春秋時代の覇者が用いた言葉なのです。

P86
実際『論語』を読むと、二千五百年も前にできた内容であるにもかかわらず、現在のわれわれから見ても、驚くほど違和感がありません。
きちんと挨拶しなさいとか、親孝行をしなさいとか、人生訓のようなことが書いてあるだけです。つまり、儒教の本来の教えは、わたしたちの生活の中に、リアルなものとしてある人間関係、人間のありようを、そのままモラル化・教義化したものだといえます。
そうした中で、なぜ儒教はあれほど上下関係にうるさいのか、とよくいわれます。
でも日本人がこうした疑問を抱くのは、西洋思想の影響なのです。
西洋では、「神のもとの平等」といって、絶対的な神の前では、王も庶民もみな平等だと考えます。でも現実に即して考えると、これはおかしくはないでしょうか。
そもそも神がいるという前提が、まずおかしい。だれも見たこと、会ったことがないのに、なぜ神がいるといえるのでしょう。
王も庶民も平等というのも、おかしい。社会的には平等に扱われることはないからです。会社の中もそうでしょう。上司がいて部下がいます。年上がいて年下がいます。
また身体的にいっても、背の高い人もいれば低い人もいます。腕力の強い人もいれば頭の良い人もいます。
現実の社会には必上下関係があるものなのです。儒教はそうした現実を素直に認め、受け入れるところからスタートしているのです。
人間関係には、常に上下があり、平等などありえない。
そうした現実を認めたうえで、上の人であれば何をしてもいいのか、下の者はいじけていいのか、いや、そうではないだろう。

P88
常に「私」が優先し、しかるのちに「公」に尽くすというのが、儒教の教えの基礎にある考え方なのです。(中略)
たとえば、「礼」にもとづいた行為である「お辞儀」一つをとっても、頭を下げるという行為は、自分が高いからこそ「下げる」という行為が成立するのです。自分が高いことが前提なのです。
自分を優先・尊重するからこそ、謙譲の精神が出てくる。

P89
われわれは、めざすべき「理想」は未来にあると思っています。そして、「理想」に向かって日々進歩向上していくことが善だという意識をもっています。
しかし、こうした考え方が、実は「西洋的考え」だということは自覚していません。
(中略)
儒教的な考え方は、まったく違います。
理想を掲げるのではなく、いまある現実を受け入れて、その中で自分たちがより良く生きるためにはどうすればよいのか、と考えるのが儒教だからです。

P96
西洋では、人は神のもとでは平等である、という意識があるので、自他の間に平等意識が育まれ、結果的に社会全体の範囲が広くなります。18世紀できた経済学では、奇しくも「見えざる手/invisible hand」という表現をしていますが、個々人の行動の背景には、見えないけれど共通に影響する力のようなものが存在すると、西洋の人々は無意識のうちに感じているのです。(そう言えば、「女神の見えざる手」という映画があった)

「窮波斯」という言葉
P168
つまり、直訳すると「貧しいペルシャ人」という意味ですが、この言葉は「ありえないもの」、自家撞着の比喩として使われていた言葉なのです。

P171
唐はなぜ滅びたのかというと、唐という国の体制自体が寒冷化を前提にしたものだったので、地球が温暖化に転じたとき、体制のシステム変更が追いつかず破綻してしまった、ということでしょう。

P188
疫病がなかったとしても、モンゴル政権の寿命が永く続いたとは限りません。温暖化によって生まれた、温暖化に対応した政権であり、体制だったからです。(中略)
再び訪れた寒冷化に対応できず、モンゴル政権も滅ぶことになった、とみたほうが合理的です。

P226
つまり科挙とは、実際に政務を行う官僚にふさわしい人材を選抜・登用するための制度ではなかったということです。科挙とは、実際には「士と庶」という差別社会において、士の庶からの搾取を、より合理的に正当化するための制度だったのです。

P244
賄賂や横領が横行するのも、国際ルールを無視するのも、いきなり態度を豹変させるのも、中国共産党から始まったことではありません。もともと中国はそういう国なのです。

P252
そして、宋と明では、「時代」がまったく異なります。
最も大きな局面でいえば、宋は温暖化の時代ですが、明は寒冷化の時代です。
宋と明の共通点は、皇帝が漢人だというだけのことです。

P268
中国人が発明したのが、蚕の繭から生糸を、生糸から「絹」をつくりだす技法でした。虫を家畜化したのは、おそらく世界広しといえど中国人だけでしょう。

P282
かれらの自称「マンジュ」は、文殊菩薩の「文殊」に由来するものですが、その音に「満洲」という字を当てたのは「明」が火をイメージさせる文字であることから、マンジュの発音に合う文字の中から水のイメージをもつものを選んだと言われています。ですから、最近は「満州」と「さんずい」のつかない表記が多いのですが、本来は「満洲」が用いられるべきなのです。

P288
少数派の清が北京を占領してすぐに、一つだけ漢人に強要したことがあります。
服従の証として「辮髪」にすることでした。(中略)
しかも十日以内に実行するようにと、期限まで切っているのです。(中略)
高圧的に見えますが、裏を返せば、当時の清にはこれぐらいのとこしか漢人に命じられなかった、ということができます。
そしてもう一つ、辮髪を強要したのには、人工の1パーセントにも満たない自分たちの存在を目立たせなくするという目的もありました。
外見は辮髪にさせ、服装も満洲人のものに変えさせているのですが、その一方で、満洲人たちは懸命に朱子学や漢学を勉強しているのです。
つまり、人々の外見は満洲人になったのですが、その中身は漢人のままで、むしろ満洲人たちのほうが漢人に近づいていったといえるのです。

17世紀=1億人、18世紀半ば=3億人、19世紀初頭=4億人突破
P293
人口の急激な増加は、清の社会にさまざまな問題を引き起こしましたが、最たるものは食糧問題でした。

P294
国内に生きる場所を失った人々は、海を渡って東南アジアへ移住の範囲を広げていくことになります。これが「華僑」の始まりです。(アイルランドのポテト飢饉のようなものか?)

P294
しかしいくら民間ががんばったところで、1億人のために作られたシステムが、4億人の社会にとても通用するものではありません。それでも清の政府は、既存のシステムを変えようとしなかったのです。変える力量がなかったというほうが、むしろ正確かもしれません。

P310
歴史を見るうえで大切なのは、他者と比べて優劣をつけ、毀誉褒貶に走ることではなく、それぞれの異同を知り、その由来を理解することです。

P311
念のためにいっておくと、こうした「法の支配」の有無は、その人々が暮らす自然環境と、それにもとづく歴史的結果であって、断じて本質的な優劣の問題ではありません。政治的なイデオロギーや主張ならともかく、学問的には現代世界のスタンダードから善悪を評価すべき問題ではないのです。

袁世凱の独裁について
P328
これはフランス革命後に議会がうまく機能せず、ナポレオンの独裁・即位を招いたのとよくにています。物事が進まないときは、トップダウンの独裁にするのが、最も手っ取り早い対処法だからです。
共和制の体裁を保ちながら、トップダウン方式をやろうとすれば、どうしてもレーニンが考えた「Party/党国家」、つまり一党独裁国家にせざるをえないのです。

P330
孫文は国共合作の翌年に亡くなりますが、中国国民党は折しも高まった反帝国主義運動に乗じて、広州に国民政府を設立し、翌1926年には、国民革命軍を北伐に派遣しています。このとき孫文の遺志を継いで国民革命軍総司令として北伐の指揮を執ったのが、蒋介石でした。

P344
「白い猫でも黒い猫でも、ネズミを捕まえてくれさえすればいい猫だ」という有名な言葉の実行です。白い猫は社会主義を、黒い猫は資本主義を、そしてネズミは経済発展を象徴しているとされるこの言葉どおり、鄧小平は、中国に資本主義をもち込みます。これが「改革開放」といわれる政策です。
(中略)
上下乖離、官民乖離、士と庶という中国がどうしても克服できない「二元構造」に応じた「分業」政策だったからこそ「改革開放」はめざましい成果を収めたのです。

P350
中国との交わり方は、「水の如し」がいいと思います。
深入りするのはよくありません。とくに相手のことがわからないのに深入りするのは、相手に対して失礼、自分にとって危険です。

P352
教養のない専門ではタダのオタク、専門のない教養ではタダの物知り。

【参考図書】

「近代中国史」岡本隆司


「台湾海峡一九四九」龍應台 


「中国「反日」の源流」岡本隆司

【ネット上の紹介】
保阪正康氏、推薦!「中国を知る最良の方法とは何か? それは中国特有の歴史構造を読み解くことだ。本書はまさにその最適な書である」最も近接し、否応なくつきあわねばならない大国――中国。中国を知ることは、日本人が現代の世界に生きていくうえで必須喫緊の課題であり、いま求められている教養です。なぜ中国は「一つの中国」に固執するのか。なぜ中国はあれほど強烈な「中華思想」をもつのか。なぜ中国は「共産党一党独裁」になったのか。なぜ中国はあれほど格差が大きいのか。なぜ中国は「産業革命」が起きなかったのか。「対の構造」をはじめとする中国の個性がわかれば、こうした疑問を解き明かす道筋が見えてくる!東洋史研究の第一人者が明快に語る隣国の本当の姿。
中国は「対の構造」で見る
1 「中国」のはじまり―古代から現代まで受け継がれるものとは(なぜ「一つの中国」をめざすのか
「皇帝」はどのようにして生まれたのか
儒教抜きには中国史は語れない)
2 交わる胡漢、変わる王朝、動く社会―遊牧民の台頭から皇帝独裁へ(中国史を大きく動かした遊牧民
唐宋変革による大転換
「士」と「庶」の二元構造)
3 現代中国はどのようにして生まれたのか―歴史を知れば、いまがわかる(現代中国をつくり上げた明と清
官民乖離の「西洋化」と「国民国家」
「共産主義国家」としての中国)


「詩歌川百景」(2)吉田秋生

2022年02月13日 14時06分47秒 | 読書(マンガ/アニメ)


「詩歌川百景」(2)吉田秋生

新シリーズ2作目、最新刊。
人物関係を忘れているので、①を読んでから、②に入った。
ネタバレありなので、未読の方ご注意!(当ブログを読まずに、ソッコー購入して!)
文句なしに、本年度ベスト読書の一冊。


「あいつはゲス野郎よ」
「わかっている 大目に見るつもりはないわ
でも あの人は多分この町以外行くところがない
自分のついたうそのせいで もう十分崖っぷちよ
突き落としたところでいいことなんて一つも無い
逆恨みなんて面倒をさけるためなら安い芝居ぐらいいくらでもするわ」

「子供は一生けんめいがんばる 深場や流れにはまっても 一人で何とかしようとする
そして力尽きると あっという間に沈んでしまう」

「親の盛る毒は巧妙でねえ・・・
解毒するのにエラいエネルギーが必要だもんで」

恋は突然やってくる
そして苦悩が始まる

【閑話休題】
フツーのホームドラマ、って創作するのは難しい。
その「生活」を描写するには、ディーテイルの積み重ねという細かい地道な作業が必要。
日本のマンガ界広しといえど、どれだけの作家が可能だろうか?
吉田秋生作品は、どのジャンルの作品も、日本マンガ界の最高到達点、と思うが、特に面白いのは、「普通の日常」を描いた作品群。
つまり、本作品や、「海街diary」「河よりも長くゆるやかに」「カリフォルニア物語」、だ。

【関連図書】

「詩歌川百景」(1)吉田秋生



【「詩歌川百景」②・・・ネット上の紹介】
山間の小さな温泉町の老舗旅館で湯守見習いとして働く青年・和樹(かずき)は、友人たちや大女将の孫娘・妙(たえ)とともに様々な大人たちと関わりながら過ごしている。ある日、東京の大学に進学しそのまま就職した「まーこ姉ちゃん」が帰ってきて・・・?第5話から第8話まで収録。


武奈ヶ岳

2022年02月12日 16時30分01秒 | 登山&アウトドア(関西)

明日日曜、天気が悪そうなので、今日(土曜)登ってきた。
雪は減っていた。故に、スノウシュー不要。(最初から最後までチェーンスパイク使用)

琵琶湖の向こうは、伊吹山と思われる。

風もなく穏やか



「風水ペット」①②③花輪和一

2022年02月10日 20時28分21秒 | 読書(マンガ/アニメ)


「風水ペット」①②③花輪和一

最新作を3冊読んだ。
どこを切り取っても高濃度!
そこが花輪和一作品のすごいところ。


腹を割って話す、とか、断腸の思い、とか、腸が煮えくりかえる、とか、
腹黒いやつ、とか、腹にも感情があるんだよ。腹こそ大事よ。
人間の欲は恐ろしいこともする

「大躍進政策」で大量の餓死者が出て失敗した毛沢東は、国家主席の座を劉少奇に譲ったんですが、また国家主席になりたかったんです。
1966年に始まった毛沢東大好き紅衛兵の文化大革命です。




この虫こそ道教に伝わる、「三戸九蟲」です!
三尸byWikipedia

2018年「全人代」で政府要人から「中国人のクズ」と言われた、
日本軍の精神に憧れる日本軍マニアの「精日」という若者たちが大勢いるらしい。

【参考図書】
ぜひ「ニッポン昔話」「天水」も読んでみて。
ワイドKC<br> 天水 〈2〉

【ネット上の紹介】
風水+ペット+経済展望=花輪流投資術!?可愛い動物たちには、秘められた能力が……!?中華の歴史脈打つ「風水」を利用し、ニッポン経済はもちろん世界市場を迎え撃つのは、とある田舎の一軒家。風水の力を最大限に利用出来るという「龍穴」を源に、世界経済を読み解き、来たるべき世界恐慌に「お金」で対抗する!?驚天動地の花輪和一ワールド、新機軸へ!!


「ヤクザ・チルドレン」石井光太

2022年02月08日 09時00分33秒 | 読書(風俗/社会/貧困)


「ヤクザ・チルドレン」石井光太

親がヤクザだと、どんな「家庭」になるのだろうか?
子どもはどう育つのだろうか?
いくつもの家庭、何人もの子どもたちが登場するか、おおむね悲惨な人生を送っている。
でも、泣ける話もあったので、紹介しておく。

たまたま面倒を見てくれた親分とスナックのママの話
P180~182
親分は店のママに亜夕美を紹介した。
「この女の子、家が貧乏なんだけど、なんとか高校へ行きたいって言ってるんだ。このご時世、高校くらい卒業しておかねえと何にもできねえだろ。できることなら夢を叶えてやりてえ。そこでママにお願いなんだが、この子を店で雇ってやってくれねえか。こんな若い子がいれば客は喜ぶし、週6日勤務ならそれなりの金になるだろ。ママはこの子が稼いだ金で学費を払ってくれればいい。人助けだと思って力になってくれ」
(中略)
こうして亜夕美は、女子高生とスナックのホステスの2足のわらじを履いて生きていくことになった。
(中略)
亜夕美は学業と仕事の両立がうまくいかなくなったことに加えて、プライベートの悩みも重なり、学校での勉強が嫌になった。彼女は(スナックの)ママに「もう高校は中退する。学費払わなくていいから」と言って行かなくなった。
数ヵ月が過ぎ、3月になった。ママが急に亜夕美を呼んで言った。
「そういえば、高校はそろそろ卒業式でしょ。一緒に行かない?」
亜夕美は意味がわからなかった。すでに高校は中退しているのだ。
「なんで中退した高校に行かなきゃいけないの?それに卒業式なんて終わってるでしょ」
「いいじゃん、時間があるから行ってみようよ」
ママは渋る亜夕美の手を引いて、通っていた高校へ行った。すると、驚いたことに、教員が出て来て、亜夕美の卒業証書を渡してくれたのだ。
後で聞いた話では、ママは亜夕美が学校へ行かなくなった後も、学費をしっかり納めていたそうだ。

P168
そもそも暴力団の構成員は、しつけに対する考えがゆがんでおり、他人ばかりでなく我が子にも暴力を振るうことが多い。母親についても同様で、殴る蹴るという行為によって子供を言いなりにしようとする傾向にある。

【参考図書】
過去に、少なからず石井光太作品を読んできた。
まず薦めるとしたら、次の2冊。

「レンタルチャイルド 神に弄ばれる貧しき子供たち」石井光太
「地を這う祈り」石井光太
「感染宣言」石井光太
「飢餓浄土」石井光太
「ルポ餓死現場で生きる」石井光太
「遺体 震災、津波の果てに」石井光太
「ニッポン異国紀行 在日外国人のカネ・性愛・死」石井光太
「アジアにこぼれた涙」石井光太
「戦場の都市伝説」石井光太
「ノンフィクション新世紀」石井光太/責任編集
「世界の産声に耳を澄ます」石井光太
「浮浪児1945- 戦争が生んだ子供たち」石井光太

【ネット上の紹介】
差別、貧困、虐待、離婚、ドラッグ―“暴力団の家庭”のなかには社会のあらゆる問題が詰まっている。生まれながらにして“罪の血”を背負った人間はどのように生きるのか。
第1章 密売人の家(父も母も夫も全員売人
学生ヤクザと呼ばれて ほか)
第2章 稼業を継ぐ(右翼は仕事じゃなく趣味
十九歳で二児の母、夢は古紙回収 ほか)
第3章 家から逃れる子供たち(刑務所から届いたパパの手紙
ヤクザとLGBT)
第4章 その愛は幻か(お父さんと一緒のお墓に入りたい
刺青と少年野球 ほか)
第5章 夢も希望もない(ヤクザにはなるな
生きるために故郷を捨てた)


「派遣社員あすみの家計簿」③青木祐子

2022年02月07日 08時20分12秒 | 読書(小説/日本)


「派遣社員あすみの家計簿」③青木祐子

シリーズ3作目が出たので、早速読んでみた。
それぞれの人物造形が良く出来ている。
「いるいる」、と思わせる登場人物たち。
その行動に対する地の文での登場人物の口を借りて著者解説が的確。

前作同様、男女のすれ違い、価値観の相違を分かりやすくエピソードで披露する技術は秀逸。そのあたりが、「これは経費で落ちません!」と違うところ。「これは経費で落ちません!」は、職場での人間模様、群像劇のようになっていて、「職場」「仕事」を中心に描いている。

本シリーズは、「友情」を描いているが、「男女関係」も大きな要素。どうして別れるのか、あるいは、くっつくのか、偶然とタイミング要素も含めて描いている。特に、男性キャラクターに対する解析は辛辣とも言えるほど容赦なし・・・そこが読んでいて気持ちいい。
さて、出版社の解説では『シリーズ3作目にして完結!』、とある。これで終わりなのか・・・残念。

新婚の夫に対する妻のコメント
P31
「仲よさそう。大事にしてるよね」
(中略)
「そりゃそうよ。大事な大事な高性能ATMだもん。壊れないようにしっかりメンテナンスして、30年間長持ちさせなくちゃ」

P129
あすみは昔から雑魚モテするたちだった。有能な美女にアタックする勇気と自信のない男が、あすみならいけるだろうと踏むのだ。

P136
そうだった。福田は説教臭い男なのだった。まずあすみにいろいろ喋らせ、次に自分が反対意見の正論を述べ、論破して勝ち誇るのが好きなのだ。福田は気持ちいいのだろうが、論破されるほうはたまったものではない。(こんな男っているよな・・・酒の席で説教臭いヤツって、サイテーと思う。自分が説教して気持ちよくなりたいオナ男・・・実は、これって自戒を込めて書いている。歳をとるとつい一言いたくなる時ってある。ぐっとこらえる事が必要。酒の席では「説教」より「笑い」、と思っている)

【関連図書】

「派遣社員あすみの家計簿」①②青木祐子

【閑話休題】
本シリーズも面白いけど、どちらかと言うと、「これは経費で落ちません!」シリーズの方が好み・・・3月18日に新刊が出るようで、楽しみ。

【ネット上の紹介】
渋谷にある人気IT企業に派遣され、SNSに記事を投稿することになったあすみ。三年勤めれば正社員に登用される可能性もあり、三十歳を目前にして将来を考え始める。そんな折、理空也から連絡が。「苦しいよ助けて」―見捨てられず、あすみは指定されたマンションを訪れる。一方、ケンカ別れした豊加とは友人の結婚パーティで再会する。無職だった豊加は小さな商社に就職したようだ。フリーランス仲間と事務所を作った仁子、専業主婦を目指す菜々花、愛人になりたいという優奈。アラサー女子がそれぞれの生き方を模索する中、あすみが選ぶ人生とは!?


愛宕山▲924m

2022年02月06日 15時40分08秒 | 登山&アウトドア(関西)

愛宕山に登ってきた。
清滝ー表参道ー水尾ー黒門ー愛宕神社ー月輪寺ー清滝
山頂は京都市、山体は亀岡にまたがる。
山頂に愛宕神社があり、火伏せの神様として有名。
比叡山と並ぶ、信仰登山の対象。

さて今回、2つ失敗。
①下山して1時間に1本のバスに乗ろうと坂を駆け上がったら、目の前でバスが行ってしまった。全力疾走して息が切れただけ。
②嵐山から桂に向かう電車で寝てしまい、気が付いたら嵐山に戻っていた。(朝4時過ぎに起きたので、つい居眠り・・「あれ!ここは?」、となった)

凍結している

最後の階段

愛宕神社

月輪寺


「パパ活女子」中村淳彦

2022年02月04日 08時34分04秒 | 読書(風俗/社会/貧困)


「パパ活女子」中村淳彦

「パパ活」する女性の動機、男性の本音、客観的な社会情勢がきちんと描かれている。
政治家、行政担当者は、この本を読むべし、と思った。
コロナにより、状況は悪化している。

P7
パパ活女子だらけのいまの状況は、伝統的に続く男性優位と高齢者優遇の社会のなかで、社会的強者である男性中高年の勝ち組に、弱者である若い女性がたかっている、と見えなくもない。

P8
パパ活とは「パパを探す活動」の略、または「パトロンを探す活動」という説もあり、あらゆる面で割を喰っている若い女性たちの能動的な行動から生まれた現象だ。

P20
援助交際第一世代(1993年~1995年)と呼ばれる彼女たちは、都内の私立進学校の女子高生たちが中心だった。わかりやすく年齢を挙げておくと、1994年に高校2年だったのは、昭和52年生まれ(2021年現在は44歳)の女性たちである。

パパ活をしている男性側の証言
P84
「パパ活はめちゃめちゃお金がかかります。単純なことだけど、女の子と会うじゃないですか。新しい女の子に会うたびに交際クラブに5万円を払う。5万円を払って初回デートするじゃないですか。それからご飯に2万円かかるとしましょう。さらにホテルに2万円、女の子への小遣い5万円。1度のデートで14万円ですよ。14万円かかることを、何回続けるかって話なんですよ。一般庶民ができるわけがない。それはパパ活をやってよくわかりました」(私にはとうてい無理、と分かった・・・いや、やるつもりもないけど)

パパ活をしている女性側の証言
P105
「男性が同じ年齢とかだったら、気持ち悪いとかはないけど、おじさんは気持ち悪い。おじさんでも若々しければいいけど、普通のおじさんだとちょっと拒否感はでます」(中略)パパ活をするなら、好感がもてる男性をちゃんと選ばないとダメだと、その瞬間に心から思った。

P135
女性性を売った経験がない一般女子ほど、無邪気に茶飯女子になる傾向がある。(中略)
「おじさんとお茶するだけでお金になる」という女子同士の口コミを真に受けて。天然の茶飯女子になりがちだ。多くは自分の若さを過大評価しているので、おじさんたちは同席するだけで本当に喜んでいると思っている。

P156
大学キャンパスは貧困の巣窟であり、入学難易度に関係なく、ガールズバーやキャバクラ勤務の夜職、風俗嬢、パパ活女子が激増している。

P190
学費の高騰によって学生が経済的に苦境に陥るのは、日本だけではない。
アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、また韓国などでも深刻な問題になっており、それらの国でもパパ活に類似したシュガーベイビーという現象が起こっている。

41歳の女性の証言(2歳年上の夫とは家庭内別居状態)
P199
「ゴムあり2、生中だしで3、そんな感じ。(中略)いまはお金がないから相手は選べない。見た目はクソデブとかハゲでも、やります。あとは会話が弾む人だったらいいかな。容姿より、会話ができない男が面倒くさい」

P214
パパ活は一過性の流行ではなく、今後も現状のピークが横ばいでずっと続いていくだろう。パパ活の発生源は学生の貧困と女性の低賃金、それと若い女性と恋愛がしたい中年男性の欲望である。(政府が貧困対策として「自助努力」と言い出したせいで、女性たちは「パパ活」で自助努力している)

【ネット上の紹介】
「パパ活」とは、女性がデートの見返りにお金を援助してくれる男性を探すこと。主な出会いの場は、会員男性へ女性を紹介する交際クラブか、男女が直接連絡をとりあうオンラインアプリ。利用者は、お金が目的の若い女性と、疑似恋愛を求める社会的地位の高い中年男性だ。ここにコロナ禍で困窮した女性たちが一気になだれ込んできた。パパ活は、セーフティネットからこぼれ落ちた女性たちの必死の自助の場なのだ。拡大する格差に劣化する性愛、日本のいびつな現実を異能のルポライターが活写する。
第1章 女子たちが没頭する「パパ活」とはなにか?(日常の延長としてのパパ活
(1)パパ活と援助交際の違い。パパ活は売春なのか? ほか)
第2章 パパ活の模範として機能する「交際クラブ」(「パパ活」という言葉をつくった交際クラブの目的
パパ活市場は女性同士の競争が激しい ほか)
第3章 パパ活男性をウンザリさせる「茶飯女子」(セックスを一切拒否するパパ活女子
方言で男性をかわす20歳のパパ活女子 ほか)
第4章 パパ活サイトの女性会員は31パーセントが「女子学生」(戦後の戦争未亡人のような女子大生
パパ活という「自助」 ほか)
第5章 日本社会からこぼれ落ちる「中年パパ活女子」(若い女性好きの男性の価値観がはびこるパパ活市場
中年パパ活女子たちの証言 ほか)