【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「なぜヒトだけが老いるのか」小林武彦

2023年12月08日 07時35分56秒 | 読書(科学)
「なぜヒトだけが老いるのか」小林武彦

P174
婚姻の高齢化が一因で自然妊娠が難しくなったり、原因はよくわかりませんが男性の精子の数が減ってきている現実があります。

P178
老化の主な原因はDNAの傷で、これらが加齢とともに少しずつ蓄積して細胞の働きを悪くします。

P218
なぜヒトだけが老いるのか。それは死を意識し公共を意識するためです。死は何のためにあるか。それは進化のためです。

P191
【男性】
平均寿命=81.41歳
健康寿命=72.68歳・・・この差、約9歳
【女性】
平均寿命=87.45歳
健康寿命=75.38歳・・・この差、約12歳

【感想】
日本の人口が減少している。
道路・鉄道・上下水道などのインフラ、物流、食糧供給を維持するには何人必要なの?(東京オリンピックの頃の道路、鉄道、ビル、トンネルが老朽化してるし)
対策として、高齢者でも死の直前まで働き、プラス、移民を受け入れるの?
「日本沈没」しなくても「滅亡」に近い状態にはなるかも。
読んでいて不安になった。

【ネット上の紹介】
人間以外の生物は老いずに死ぬ。ヒトだけが獲得した「長い老後」には重要な意味があった。生物学で捉えると「老いの常識」が覆る!
第1章 そもそも生物はなぜ死ぬのか
第2章 ヒト以外の生物は老いずに死ぬ
第3章 老化はどうやって起こるのか
第4章 なぜヒトは老いるようになったのか
第5章 そもそもなぜシニアが必要か
第6章 「老い」を老いずに生きる
第7章 人は最後に老年的超越を目指す


「面白くて眠れなくなる人体」坂井建雄

2023年02月07日 07時58分15秒 | 読書(科学)


「面白くて眠れなくなる人体」坂井建雄

P37
胃の粘膜は33日、小腸にいたっては約1日で入れ替わってしまいます。

P113
哺乳類の中で色鮮やかな世界を楽しんでいるのは、人間とサルだけなのです。例えば犬や猫には色を感じる錐体がないので、モノトーンに近い世界を見ています。

P134
鼻の孔は、どうして2つあるのでしょう?(中略)
実際には、鼻は交互に孔を使って呼吸しているのです。(中略)
敏感な嗅覚を休ませるという意味もあります。(中略)
左右が交代する周期は個人差がありますが、だいたい1~2時間ごとといわれています。

P167
実際に受精するのは、1つの卵子に1つの精子だけです。それにもかかわらず、精子は1日に3,000万個作られます。1回の射精で放出される精子に数は、1~4億個といわれています。

P181
体液を調節するためには、塩分を捨てる必要があります。
さて、私たちの体には、常に体液の濃度を一定に保とうとするホメオスタシスという働きがあります。その役目を担っているのが腎臓です。

【ネット上の紹介】
我慢したオナラはどうなる?血管は日本列島の二倍も長い!?鼻の孔はどうして二つある?男女をわける遺伝子のスイッチ。人体は最大のミステリー。
1 人体はふしぎに満ちている(とても器用なノド―呼吸する、食べる、声を出す
「もぐもぐ」と哺乳類の進化
胃の容量はどれくらい? ほか)
2 面白くて眠れなくなる人体(医学とギリシャ神話の意外な関係
黒い瞳と青い瞳では見えている色が違う?
長時間携帯を見ると視界がぼやけるしくみ ほか)
3 人体は小宇宙(精巣と月経のはなし
男女の性別はどうやって決まる?
最も進化した内臓―腎臓 ほか)


「徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか」稲垣栄洋

2023年02月05日 07時33分35秒 | 読書(科学)


「徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか」稲垣栄洋

戦国武将を植物から読み解く。
この視点の作品は初めて。
とても興味深くおもしろい。

P27
上方からくるものは「下りもの」と言われ重宝された。一方、関東で作られた品質の悪いものは「下らないもの」と評された。現代でもつまらないものを「くだらない」というのは、この言葉に由来する。

P36
1石は、1人が1年間に食べるだけの量を基準として定められた。すると、100万石というのは、100万人が1年間に食べるだけの量の米がとれる、ということになる。
1石の10分の1が1斗、1斗の10分の1が1升、そして1升の10分の1が1合となる。さらに1合の10分の1が1勺である。

P112
秀吉の側室の淀君は日本で初めてタバコを吸った女性として知られ、1日中タバコを手放すことがないほどの愛煙家だったという。

【ネット上の紹介】
★日本人の植物常識はすごい! ●加藤清正が築城した熊本城は食べられる城だった! ●なぜ戦国武士は草食系の食事で戦い続けられたのか ●植物の知識で暗躍した甲賀忍者 ●世界最大のリサイクル都市、江戸はどうやって作られた ●大名がやっかいな雑草を家紋にした理由 ●なぜ関ヶ原の戦いで家康は生米を食べるなと指示したのか などなど、戦国の世から江戸時代における植物と武士の知られざる関係を描く これまでにない驚きの日本史!
第1章 徳川家康はなぜ江戸を都に選んだのか―家康が築いた植物都市(家康が江戸を選んだ理由
湿地帯を開発すれば広大な農地が確保できる
江戸の地名と植物の深い関係 ほか)
第2章 完全リサイクルの循環型社会ができるまで―大名が投資したイネという植物(織田信長の兵農分離革命
田んぼが作った単位
武将は面積の単位も田んぼを基準にした ほか)
第3章 お城にはなぜ松が植えられているのか―植物を戦いに利用した戦国武将(松の木は軍事用の植物
黒田長政が非常食のワラビを隠した方法
加藤清正が築城した熊本城は食べられる城だった ほか)
第4章 三河武士の強さは味噌にあり―地域の食を支える植物(徳川家康家臣団、強さの秘密
家康が愛した八丁味噌の由来
戦国日本を席巻した赤味噌武将たち ほか)
第5章 織田信長はトウモロコシが好き―戦国武将を魅了した南蛮渡来の植物(信長が好んだ赤こんにゃく
信長が愛した意外な花
玉蜀黍の漢字の意味 ほか)
第6章 門外不出だったワサビ栽培―家康に愛され名物となった植物(家康と信玄の抗争から生まれた門松
薬草マニアだった家康
家康が駿府の鬼門封じに植えた果物 ほか)
第7章 花は桜木、人は武士―武士が愛した植物、サクラの真実(日本人はなぜサクラに惹かれるのか
お花見の始まり
サクラよりもウメが愛されていた ほか)
第8章 ヨーロッパ人を驚かせた園芸大国―植物を愛する園芸家となった武士たち(武士が築いた園芸国家
戦国武将が愛したチャ
茶器の高騰を利用した織田信長 あほか)
第9章 徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか―武将が愛した植物の家紋(三つ葉葵のモチーフになった地味な植物
フタバアオイは不思議だ
葵の紋はもともと京都賀茂神社の神紋 ほか)


「怖くて眠れなくなる植物学」稲垣栄洋

2023年01月27日 05時47分14秒 | 読書(科学)


「怖くて眠れなくなる植物学」稲垣栄洋

P17
昆虫は、情報を処理する脳が、足の付け根にも分散しています。そんため、素早く動くことができるのです。人間の脳のように、迷ったり悩んだりすることもありません。

P127
ヒガンバナは毒があります。この毒が遺体を食い荒らすネズミや盛り土に穴を空けてしまうモグラを寄せ付けない効果があると言われています。(中略)ヒガンバナの球根には毒がありますが、水にさらして毒を抜くと豊富なでんぷんを得ることができます。そのため、飢饉や天災など、いざという時の食糧にするために、植えられたのです。

P160
魔女は英語で「witch」と言います。これは、もともと「wicca」という「賢い女性」を意味する言葉に由来します。

魔女の手先としてネコが大量に殺された結果・・・
P163
中世から近世にかけてヨーロッパではペストが大流行し、無数の人々が病に倒れることになってしまいました。ペストの伝染源はネズミです。ネコを殺しすぎたためにネズミが大繁殖したこともペストが蔓延した原因の一つとなってしまったのです。

P170
トリカブトの塊根は、「附子(ぶす)」と言います。トリカブトを口にすると、神経系の機能が麻痺して無表情になります。これが、「ブス」の語源であると言われています。
ブスというのは、顔が醜いことではありません。表情がないことがブスなのです。

P186
7月7日の頃に妊娠していると、もっとも忙しい稲刈りの時期に大きなお腹で動けなくなってしまいます。無理に重労働すれば流産の危険があるばかりか母体も危なくなります。
そのため、7月7日にはホオズキを飲んだり、ホオズキの煎じた汁を子宮にいれて堕胎したのです。
昔はどこの農家の庭先にもホオズキが植えてありましたが、ホオズキにはこんな利用法もあったのです。

P189
華岡青洲は麻酔手術で人々の命を救いたいと、麻酔の研究をしました。このとき用いたのが、チョウセンアサガオというナス科の有毒植物です。チョウセンアサガオは、別名を「きちがいなすび」と言います。誤って食べると、幻覚を見て、泣きわめいたり、踊りだしたりと狂乱状態になることから、そう名付けられているのです。(中略)日本麻酔学会のロゴマークはチョウセンアサガオが用いられています。

【関連図書】

「オスとメスはどちらが得か?」稲垣栄洋

「なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか」稲垣栄洋

「生き物の死にざま」稲垣栄洋

「世界史を変えた植物」稲垣栄洋 

【ネット上の紹介】
食虫植物ハエトリソウ、死骸の花ラフレシア、絞め殺し植物ガジュマル、百獣の王を殺すライオンゴロシ、美しき悪魔ホテイアオイ、植物の毒の誘惑…。読み出したらとまらないおそろしい植物のはなし。
1 植物という不気味な生き物(何度でも蘇る
不老不死の生き物 ほか)
2 奇妙な植物(もし、あなたが虫だったら
人食い植物の伝説 ほか)
3 毒のある植物たち(毒の森でリフレッシュ
毒を使うプリンセス ほか)
4 恐ろしき植物の惑星(共生の真実
操られしもの ほか)

 


「できそこないの男たち」福岡伸一

2022年12月05日 08時18分12秒 | 読書(科学)


「できそこないの男たち」福岡伸一

著者は分子生物学教授。
本書を簡略にまとめると、
生命体は女性が基本、と書かれている。
興味深くおもしろい。

P160
その部分はちょうど女性器の割れ目にあった左右の大陰唇を縫い合わせてできた、だぶつきがある袋状の場所である。こうして陰嚢が出来上がる。

P166
男性は、生命の基本仕様である女性を作りかえて出来上がったものである。だから、ところどころ急場しのぎの、不細工な仕上がり具合になっているところがると。(中略)
アダムがイブを作ったのではない。イブがアダムを作り出したのである。

P182
地球が誕生したのが46億年前。そこから生命が発生するまでにおよそ10億年が経過した。そして生命が現れてからさらに10億年、この間、生物の性は単一で、すべてがメスだった。

P184
生命が出現して10億年、大気には酸素が徐々に増え、反応性に富む酸素は様々な元素を酸化するようになり、地球環境に大きな転機がおとずれた。気候と気温の変化もダイナミックなものとなる。多様性と変化が求められた。
メスたちはこのとき初めてオスを必要とすることになったのだ。

P188
今からおよそ50年後、日本の人口は8200万人となり、100年後には3400万人となる。(国立社会保障・人口問題研究所の最も厳しい条件による推計。これは江戸時代末期の人口とほぼ同じ。但し、65歳以上が40%以上の超高齢社会)

【関連図書】



「生物と無生物のあいだ」福岡伸

「動的平衡 新版」福岡伸一 

「動的平衡 2 新版」福岡伸一  

「動的平衡」(3)福岡伸一

【関連図書】2

「オスとメスはどちらが得か?」稲垣栄洋

【ネット上の紹介】
「生命の基本仕様」―それは女である。本来、すべての生物はまずメスとして発生する。メスは太くて強い縦糸であり、オスはそのメスの系譜を時々橋渡しし、細い横糸の役割を果たす“使い走り”に過ぎない―。分子生物学が明らかにした、男を男たらしめる「秘密の鍵」。SRY遺伝子の発見をめぐる、研究者たちの白熱したレースと駆け引きの息吹を伝えながら「女と男」の「本当の関係」に迫る、あざやかな考察。
第1章 見えないものを見た男
第2章 男の秘密を覗いた女
第3章 匂いのない匂い
第4章 誤認逮捕
第5章 SRY遺伝子
第6章 ミュラー博士とウォルフ博士
第7章 アリマキ的人生
第8章 弱きもの、汝の名は男なり
第9章 Yの旅路
第10章 ハーバードの星
第11章 余剰の起源


「世界史を変えた植物」稲垣栄洋

2022年11月15日 09時16分34秒 | 読書(科学)


「世界史を変えた植物」稲垣栄洋

コンパクトな中に情報がぎっしり詰まっている。
とても面白く、お買い得な作品、と思う。
読んでみて!お薦めです。

P41
コメは栄養価にも優れている。炭水化物だけでなく、良質のタンパク質を多く含む。さらにはミネラルやビタミンも豊富で栄養バランスも優れている。(中略)
唯一足りない栄養素は、アミノ酸のリジンである。ところが、そのリジンを豊富に含んでいるのがダイズである。そのため、コメとダイズを組み合わせることで完全栄養食になる。ご飯と味噌汁という日本食の組み合わせは、栄養学的にも理にかなったものなのだ。

P135
世界で最も多く栽培されている作物はトウモロコシである。次いでコムギの生産量が多く、三位はイネである。トウモロコシ、コムギ、イネという主要な穀物は世界三大穀物と呼ばれている。四位がジャガイモ、五位がダイズであり、食糧として重要なこれらの主要な作物に次いで生産されているのがトマトである。

P192
日本人が古くから飲んできた番茶に含まれるカフェインの量は、1杯当たりおよそ10ミリグラムである。一方、高級なお茶であった煎茶は20ミリグラムである。
これに対して、コーヒー1杯には、60ミリグラムものカフェインが含まれる。

P211
世界の古代文明の発祥は、主要な作物と関係している。
メソポタミア文明やエジプト文明には、オオムギやコムギなどの麦類がある。また、インダス文明には麦類とイネがある。長江文明にはイネがあり、そして黄河文明にはダイズがある。
アメリカ大陸に目を向けると、アステカ文明やマヤ文明のあった中米はトウモロコシの起源地であり、インカ文明のあったアンデスはジャガイモの起源地である。

P258
サクラの「さ」は、田の神を意味する言葉である。
サクラの他にも、稲作に関する言葉には「さ」のつくものが多い。田植えをする旧暦の五月は「さつき」と言う。そして、植える苗が「さなえ」である。さらに、「さなえ」を植える人が「さおとめ」である。(中略)
そして、サクラの「くら」は依代という意味である。つまり、サクラは、田の神が下りてくる木という意味である。つまり、稲作が始まる春になると、田の神様が下りてきて、美しいサクラの花を咲かせると考えられていたのである。

【ネット上の紹介】
古代の文明が植物によって生みだされたとしたら、どうだろう。近代社会を生みだした産業革命の原動力となったものが、ある植物であったとしたらどうだろう。世界一の大国であるアメリカの隆盛の陰に、ある植物があったとしたらどうだろう。アメリカの南北戦争やイギリスと清とのアヘン戦争の陰に、ある植物の存在があったとしたらどうだろう。人類の歴史は、植物の歴史でもある。本書では、そんな植物から見た世界の歴史をのぞいてみたいと思う。
イネ―稲作文化が「日本」を作った
コショウ―ヨーロッパが羨望した黒い黄金
トウガラシ―コロンブスの苦悩とアジアの熱狂
ジャガイモ―大国アメリカを作った「悪魔の植物」
トマト―世界の食を変えた赤すぎる果実
ワタ―「ヒツジが生えた植物」と産業革命
チャ―アヘン戦争とカフェインの魔力
コーヒー―近代資本主義を作り上げた植物
サトウキビ―人類を惑わした甘美なる味
ダイズ―戦国時代の軍事食から新大陸へ
タマネギ―巨大ピラミッド建設を支えた薬効
チューリップ―世界初のバブル経済と球根
トウモロコシ―世界を席巻する驚異の農作物
サクラ―ヤマザクラと日本人の精神


「生物と無生物のあいだ」福岡伸一

2022年08月28日 07時45分11秒 | 読書(科学)


「生物と無生物のあいだ」福岡伸一

2007年 第29回 サントリー学芸賞・社会・風俗部門受賞

科学読み物の秀作、と思う。
2008年 第1回 新書大賞受賞作品だけど、古さを感じさせない内容。
ぜひ読んでみて、お薦めです。
「面白かった、読んでよかった」、って思える内容です。

P4
生命とは何か?それは自己複製を行うシステムである。20世紀の生命科学が到達したひとつの答えがこれだった。

P36
ウイルスは、栄養を摂取することがない。呼吸もしない。もちろん二酸化炭素を出すことも老廃物を排出することもない。つまり一切の代謝を行っていない。(中略)
ウイルスは自己複製能力を持つ。(中略)
結論を端的にいえば、私は、ウイルスを生物であるとは定義しない。つまり、生命とは自己複製するシステムである、との定義は不十分だと考えるのである。

P84
博士号とかけて足の裏についた米粒と解く
そのこころはとらないとけったくそ悪いが、とっても喰えない

P163
私たちが仮に断食を行った場合、外部からの「入り」がなくなるものの内部からの「出」は継続される。身体はできるだけその損失を食い止めようとするが「流れ」の掟に背くことはできない。私たちの体タンパク質は徐々に失われていってしまう。したがって飢餓による生命の危険は、エネルギー不足のファクターよりもタンパク質欠乏によるファクターのほうが大きいのである。エネルギーは体脂肪として蓄積でき、ある程度の飢餓に備えうるが、タンパク質はためることができない。

P180
常に傷ついたタンパク質、変性したタンパク質を取り除き、これらが蓄積するのを防御することができる。(中略)生命はさまざまなストレスにさらされ、その都度、構成成分であるタンパク質は傷つけられる。酸化や切断、あるいは構造変化をうけて機能を失う。糖尿病では血液の糖濃度が上昇する結果、タンパク質に糖が結合し、それがタンパク質を傷害する。(アルツハイマー病、狂牛病、ヤコブ病もタンパク質が構造に異常を来し、脳の内部に蓄積する。廃物の蓄積速度が、くみ出す速度を上回った状態になる、と)

【ネット上の紹介】
ページをめくる手がとまらない極上の科学ミステリー。分子生物学がたどりついた地平を平易に明かし、目に映る景色がガラリと変える。読むとかならず誰かにすすめたくなる一冊です。15万部突破!。朝日新聞、読売新聞、産経新聞、週間文春等各詩誌、王様のブランチ(TBSテレビ系)ほかで絶賛、話題沸騰!「福岡伸一さんほど生物のことを熟知し、文章がうまい人は希有である。サイエンスと詩的な感性の幸福な結びつきが、生命の奇跡を照らし出す。」――(茂木健一郎氏)「超微細な次元における生命のふるまいは、恐ろしいほどに、美しいほどに私たちの日々のふるまいに似ている。」――(内田樹氏)「スリルと絶望そして夢と希望と反逆の心にあふれたどきどきする読み物です!大推薦します。」――(よしもとばなな氏)「分子生物学の最前線は福岡さんの異議申し立てにどう反論するか。興味津々だ」――(最相葉月氏)
ヨークアベニュー、66丁目、ニューヨーク
アンサング・ヒーロー
フォー・レター・ワード
シャルガフのパズル
サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ
ダークサイド・オブ・DNA
チャンスは、準備された心に降り立つ
原子が秩序を生み出すとき
動的平衡とは何か
タンパク質のかすかな口づけ
内部の内部は外部である
細胞膜のダイナミズム
膜にかたちを与えるもの
数・タイミング・ノックアウト
時間という名の解けない折り紙


「動的平衡」(3)福岡伸一

2022年07月18日 17時12分38秒 | 読書(科学)


「動的平衡」(3)福岡伸一

生命とは何か?
シリーズ3冊目。
とても興味深いので読んでみて。

P32
幸い、ニューヨーク州は、北に自然豊かなキャッツキル丘陵地帯がある。そこから長大なトンエルを掘ってニューヨーク市街に水を導くことになった。

P33
ニューヨークの水道水はおいしいことで評判だ。

P80
私たちが毎日、タンパク質を食物として摂取しなければならないのは、自分自身の身体を日々、作りなおすためである。

P119
免疫システムの最大の敵は、ストレスなのである。

P131
がん細胞は、いうなれば、社会の一員として職業に就き、自分の専門の仕事に邁進していた大人が、あるとき何の拍子か、すべてを放り投げて、青春期に戻って当てのない自分探しを始めてしまったようなものだ。

P174
抗生物質の発見は、近代医学史上、最大の革命のひとつに数えられる。

P196
赤ちゃんは子宮から押し出され、そのかわいらしい、しかし大きな脳をもつ頭部を狭い産道にこすりつけながら、やっとの思いで外に出てくる。まさに生まれ出ずる苦しみだが、このとき、赤ちゃんは好むと好まざるとにかかわらず、産道の壁に口や鼻をぴったりと押し付けることになる。膣の壁は外界に直接通じており、そこはある意味で雑菌がうようよ棲みついている。赤ちゃんはこれらを無理矢理なめとらされる。赤ちゃんはお母さん以外の生命体に初めて出会うことになる。これが腸内細菌の最初の候補者となる。(乳酸菌とビフィズス菌が、お母さんからのプレゼントだ。じゃあ、帝王切開の場合どうなるのか?親がアレルギー体質だと、アレルギー疾患のリスクが高まる、とも言われている。正常分娩の方が、赤ちゃんは良いスタートを切れる、と言える)                                                   

【関連図書】1

「動的平衡 新版」福岡伸一 

「動的平衡 2 新版」福岡伸一                                                                                                                               
【関連図書】2


「微生物の狩人」ポール・ド・クライフ

【ネット上の紹介】
生命現象の核心を解くキーワード、それは「動的平衡」。哲学する生物学者が問う生命のなりたち、ふるまい、ありよう―流麗な文章でつづられる、福岡生命理論の決定版。
第1章 動的平衡組織論
第2章 水について考える
第3章 老化とは何か
第4章 科学者は、なぜ捏造するのか
第5章 記憶の設計図
第6章 遺伝子をつかまえて
第7章 「がんと生きる」を考える
第8章 動的平衡芸術論
第9章 チャンスは準備された心にのみ降り立つ
第10章 微生物の狩人


「動的平衡 2 新版」福岡伸一

2021年01月25日 15時08分41秒 | 読書(科学)
「動的平衡 2 新版」福岡伸一

「動的平衡」第2弾。
前回に引き続き、生命とは何か、と根源的な問題を考察し、
関連して、最新サイエンスが紹介される。

P61
たぶん、遺伝子は音楽における楽譜と同じ役割を果たしているにすぎない。記された音符の一つ一つは同じでも、誰がどのように演奏するかで違う音楽になる。

P100
ヒトにとって最もアミノ酸バランスのよい食材の一つが鶏卵である。私たちが必要とするアミノ酸が、必要とするバランスで含まれている。

P233
腎臓には1日1700リットルもの血液が流れ込む。これは全身の血液が1日300回以上循環する計算になる。

P240
1分間に20回呼吸をするとして、それだけで10リットル。1日は1440分だから、私たちは毎日およそ1万5000リットルもの息を吐いていることになる。
 この息のうち4パーセント、つまりざっと600リットルが二酸化炭素である。

P262
どんなに科学技術が進歩したところで、人間は森羅万象の全てを理解することはできない。常に「わからないこと」を抱えて生きていかなければならない存在である。
 そのとき、私たちは「真か偽か」という科学的な議論から離れ、「善か悪か」という哲学的な判断を迫れることになる。しかし、この場合にも私たちは部分しか見ることができない。そして部分の効率や幸福を求めると、逆にみんなの効率や幸福には繋がらないことも少なくないのである。
 では、いったい、私たち人間は何を判断基準に生きていけばいいのだろうか。これはもう一義的に言えるようなテーマではないと思う。ただ、個人的な感想として言えば「真偽」「善悪」の次のフェーズとして「美しいか、美しくないか」という「美醜」のレベルがあるように感じている。
(生命がテーマだけど、別な話をする。例えば、クライミングにおいて「チッピング」の「真偽」「善悪」は、どう判断するか?・・・これに対して、「美しくない」、と返せる)

【ネット上の紹介】
身近な話題から深淵なテーマまで、さまざまな切り口で、最新のサイエンスを紹介。読者を「生命の本質とは」という根源的な問題に誘っていく。新書化にあたり、時間についての論考を追加。知的興奮が味わえる「福岡ハカセの生命理論」決定版。
第1章 「自由であれ」という命令―遺伝子は生命の楽譜にすぎない
第2章 なぜ、多様性が必要か―「分際」を知ることが長持ちの秘訣
第3章 植物が動物になった日―動物の必須アミノ酸は何を意味しているか
第4章 時間を止めて何が見えるか―世界のあらゆる要素は繋がり合っている
第5章 バイオテクノロジーの恩人―大腸菌の驚くべき遺伝子交換能力
第6章 生命は宇宙からやって来たか―パンスペルミア説の根拠
第7章 ヒトフェロモンを探して―異性を惹き付ける物質とその感知器官
第8章 遺伝は本当に遺伝子の仕業か?―エピジェネティックスが開く遺伝学の新時代
第9章 木を見て森を見ず―私たちは錯覚に陥っていないか
第10章 「動的平衡」時間論―世界は流れゆく

「動的平衡 新版」福岡伸一

2020年09月26日 08時12分14秒 | 読書(科学)
「動的平衡 新版」福岡伸一

生命とは何か?
分かりやすく解説してくれる。
とても面白い。お薦め。

P36
脳細胞は一度完成すると増殖したり再生することはほとんどないが、それは一度建設された建造物がずっとそこに立ち続けているようなものではない。脳細胞を構成している内部の分子群は高速で変転している。その建造物は至る部分でリフォームが繰り返され、建設当時に使われていた建材など何一つ残ってはいないのである。

P37
人間の記憶とは、脳のどこかにビデオテープのようなものが古い順番に並んでいるのではなく、「想起した瞬間に作り出されている何ものか」なのである。

P46
つまりタンパク質の新陳代謝速度が、体内時計の秒針なのである。
そしてもう一つの厳然たる事実は、私たちの新陳代謝速度が加齢とともに確実に遅くなるということである。つまり体内時計は徐々にゆっくり回ることになる。 (中略)
つまり、歳をとると1年が早く過ぎるのは「分母が大きくなるから」ではない。実際の時間の経過に、自分の回転速度がついていけていない。そういうことなのである。

P117
タンパク質は貯蔵できない。なぜならタンパク質(正確に言えばその構成物質であるアミノ酸)の流れ、すなわち動的平衡こそが「生きている」ということと同義語だからである。

P201
森鴎外は、それでも脚気を病原体による病気だと信じて疑わず、「農学者が何を言うか。米糠で脚気が治るわけがない」と言った。そして、死ぬまで「脚気菌」を探していたという。(今では、脚気はビタミンB1欠乏、ってのが常識。ここで言う、農学者とは、世界初のビタミンの発見者・鈴木梅太郎のこと。北里柴三郎も「脚気は細菌が原因ではない」と言っていた。結果として、恩師や母校を批判したことになり、冷や飯を食わされたそうだ・・・学問の世界、って基本「徒弟制度」。今もそう? ところで、森鴎外は医師としても文学者としても立派な人物だが、「引く」と言うことを知らない。論争好きで、あちこちで喧嘩を売り、退かない。自分の非を認めない。ある意味、迷惑な人。偏差値は高かったかもしれないが、柔軟性はなかった。近づきたくない人物だ)

P296
確かに食物(主に炭水化物)はエネルギー源として燃やされる部分もあるが、タンパク質は違う。私たちが毎日、タンパク質を食物として摂取しなければならないのは、自分自身の身体を日々、作り直すためである。(中略)
生命にとって重要なのは、作ることよりも、壊すことである。(中略)
秩序あるものは必ず、秩序が乱れる方向に動く。宇宙の大原則、エントロピー増大の法則である。この世界において、最も秩序あるものは生命体だ。生命体にもエントロピー増大の法則が容赦なく襲いかかり、常に、酸化、変性、老廃物が発生する。これを絶え間なく排除しなければ、新しい秩序を作り出すことができない。そのために絶えず、自らを分解しつつ、同時に再構築するという危ういバランスと流れが必要なのだ。これが生きていること、つまり動的平衡である。

【ネット上の紹介】
「人間は考える『管』である」「私たちが見ている『事実』は脳によって『加工済み』」「歳をとると、一年が早く過ぎるのは、実際の時間の経過に、自分の生命の回転速度がついていけないから」などの身近なテーマから「生命とは何か」という本質的な命題を論じていく。発表当時、各界から絶賛されベストセラーになった話題作に、最新の知見に基づいて大幅加筆。さらに、画期的な論考を新章として書き下ろし、「命の不思議」の新たな深みに読者を誘う。
プロローグ 生命現象とは何か
第1章 脳にかけられた「バイアス」―人はなぜ「錯誤」するか
第2章 汝とは「汝の食べた物」である―「消化」とは情報の解体
第3章 ダイエットの科学―分子生物学が示す「太らない食べ方」
第4章 その食品を食べますか?―部分しか見ない者たちの危険
第5章 生命は時計仕掛けか?―ES細胞の不思議
第6章 ヒトと病原体の戦い―イタチごっこは終わらない
第7章 ミトコンドリア・ミステリー―母系だけで継承されるエネルギー産出の源
第8章 生命は分子の「淀み」―シェーンハイマーは何を示唆したか
第9章 動的平衡を可視化する―「ベルクソンの弧」モデルの提起

「カラスは飼えるか」松原始

2020年09月10日 09時25分53秒 | 読書(科学)
「カラスは飼えるか」松原始

著者は、東京大学総合研究博物館・特任准教授。
専門は動物行動学で、研究テーマはカラスの行動と進化。
本書の内容は、カラスだけでなく、鳥類全般を対象としたエッセイ、コラム、といったところ。

P35
若いカラスの群れにははっきりした順位があり、上位のオスはよくモテるし、上位のオスを巡ってメス同士にも争いがあることが知られている。彼らは集団で社会を作っているからこそ、メンバーの力量をよく知っている。だから、一見さん相手に第一印象を競う必要がない。問題は中身と順位なのだ。

P152
そもそもカラスを飼うのは大ごとだ。第一に、カラスのように飛び回る鳥を閉じ込めておくのが大変だ。それにカラスはペア単位で縄張りをつくるから、集団で繁殖させるのが難しい。オスメス関係なくしょっちゅう喧嘩もする。(つまり、基本、飼えない、と)

P218
もしイギリスに行くことがあれば、ぜひロンドン塔を訪ねてほしい。6羽のワタリガラスが飼われている。「ロンドン塔からカラスが去る時、王家に災いがふりかかる」という占星術師のお告げにより、国王チャールズ2世(在位1660ー1685)が法令を定めたからである。

【ネット上の紹介】
鷹の速さやフクロウの平たい顔の秘密、恐竜との関係や天候不順にどう対応しているかなど、身近な鳥の秘密に迫りつつ、案外とヘタレで弱気なのに悪賢いと思われがちなカラスの生態やポイントを、あますところなく「カラス先生」が伝えます。カラスって、やっぱりおもしろい!カラス好き、鳥好きに贈る、愉快な一冊。
脳内がカラスなもので
1章 フィールド武者修行
2章 カラスは食えるか
3章 人気の鳥の取扱説明書
4章 そこにいる鳥、いない鳥
5章 やっぱりカラスでしょ!
付録―カラス情報

「生き物の死にざま」稲垣栄洋

2020年05月27日 18時16分51秒 | 読書(科学)
「生き物の死にざま」稲垣栄洋

いろんな生き物が登場する。
どのように死んでいくのだろう?
死にざまは、生きざま、である。
読んでいて感情移入し、悲哀を感じてしまう。

【セミ】
一般に、セミの幼虫は土の中で七年過ごすと言われている。そうだとすれば、幼稚園児がセミをつかまえたとしたら、セミの方が子どもより年上ということになる。

【ハサミムシ】
ハサミムシは成虫で冬を越し、冬の終わりから春の初めに卵を産む。
石の下のハサミムシの母親は、産んだ卵に体を覆いかぶせるようにして、卵を守っている。そして、卵にカビが生えないように一つ一つ順番にていねいになめたり、空気に当てるために卵の位置を動かしたりと、丹念に世話をしていく。
卵がかえるまでの間、母親は卵のそばを離れることはない。もちろん、母親は餌を口にする時間もない。餌を獲ることもなく飲まず食わずで、ずっと卵の世話をし続けるのである。(中略)
ハサミムシは肉食で、小さな昆虫などを餌にしている。しかし、孵化したばかりの小さな幼虫は獲物を獲ることができない。幼虫たちは、空腹に耐えながら、甘えてすがりつくかのように母親の体に集まっていく。(中略)
あろうことか、子どもたちは自分の母親の体を食べ始める。
そして、子どもたちに襲われた母親は逃げるそぶりも見せない。むしろ子どもたちを慈しむかのように、腹のやわらかい部分を差し出すのだ。

【カマキリ】
メスは、交尾の間も体をひねらせて何とかオスを捕らえようとするので、オスは食べられないように避けながら交尾をしなければならない。もし、交尾の途中につかまれば、オスは食べられてしまうのである。(中略)
交尾に対するオスの執念はすさまじい。運悪くメスにつかまっても、オスは決して交尾をやめようとしないのだ。
交尾をしている最中でも、食欲旺盛なメスは、捕らえたオスの体を貪り始める。しかし、オスの行動は驚愕である。あろうことか、メスに頭をかじられながらも、オスの下半身は休むことなく交尾をし続けるのである。

P96
古代の地球の海で、有機物が集まり、最初の生命が産声を上げた。この最初の生命が「ルカ(全生物最終共通祖先)」と呼ばれている。

P107
チャートと呼ばれる岩石は、放散中と呼ばれる小さなプランクトンの作り出した殻が積み重なって形成されたものである。また、石灰岩も有孔虫という小さなプランクトンの殻が堆積してできたものである。

P140
細胞の中の染色体には、テロメアという部分がある。このテロメアが、細胞分裂をするたびに短くなることが知られており、これが老化の原因とされている。(中略)
テロメアさえなければ、人は老化することなく、不老不死が実現するのではないかという考えもある。

P179
(クリスマス・イブは)ニワトリたちにとっては、まったくの厄日である。いったいどれだけの鶏が命を落とし、オーブンの中で荼毘に付されていることだろう。

【ネット上の紹介】
すべては「命のバトン」をつなぐために── 子に身を捧げる、交尾で力尽きる、仲間の死に涙する…… 限られた命を懸命に生きる姿が胸を打つエッセイ! 生きものたちは、晩年をどう生き、どのようにこの世を去るのだろう── 老体に鞭打って花の蜜を集めるミツバチ、 地面に仰向けになり空を見ることなく死んでいくセミ、 成虫としては1時間しか生きられないカゲロウ…… 生きものたちの奮闘と哀切を描く珠玉の29話。生きものイラスト30点以上収載。
空が見えない最期―セミ
子に身を捧ぐ生涯―ハサミムシ
母なる川で循環していく命―サケ
子を想い命がけの侵入と脱出―アカイエカ
三億年命をつないできたつわもの―カゲロウ
メスに食われながらも交尾をやめないオス―カマキリ
交尾に明け暮れ、死す―アンテキヌス
メスに寄生し、放精後はメスに吸収されるオス―チョウチンアンコウ
生涯一度きりの交接と子への愛―タコ
無数の卵の死の上に在る生魚―マンボウ〔ほか〕

「なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか」稲垣栄洋

2020年03月27日 15時12分04秒 | 読書(科学)
「なぜ仏像はハスの花の上に座っているのか」稲垣栄洋

仏教と植物の関係が書かれている。とても興味深く面白い。

P23
ハスの不思議といえば、昔からハスの花が咲くときに、ポンと音が鳴るといわれています。実際には、ハスの花が咲くときに音が鳴ることはありません。(中略)真相は謎のままです。

P40
イチジクは漢字で書くと、「無花果」と書きます。これも花が無いという意味です。イチジクを食べると果実の中に小さな粒々がありますが、これがイチジクの花なのです。

P47ー48
中国では、奇数が縁起が良いとされてきました。日本でもその影響を受けて、奇数が好まれます。三三九度や三三七拍子のように奇数を重ねるのです。
日本の仏教もその影響を受けたのでしょうか。初七日や、七七日(なななのか)である四十九日、三回忌、七回忌、十三回忌、三十三回忌というように、仏教でも奇数が多く使われます。
ところが中国では、奇数が重なるとかえって陽の気が強すぎて不吉であるとされ、奇数が重なる節句には、薬効ある植物の力を借りて邪気を払おうとしました。
それが、一月七日の春の七草、三月三日の桃、五月五日の菖蒲、七月七日の笹であり、陽数である奇数の中でもっとも大きい数字、九が重なる「重陽の節句」には、キクの酒を飲んだのです。(縁起の良い菊は、皇室やパスポートに利用されている。邪気を払い、日持ちするので仏花にも使われる)

P76
仏教儀礼には「香り」がつきもので、香りは神仏の食べ物であるといわれます。(中略)そこで死者のために供える香りが「線香」です。

P99
栄養価の高いソバは、精進料理が主体の寺の食事で盛んに食べられるようになり、次第に蕎麦打ちの技術が発達していったのです。

P129
アズキは、日本では古くから霊力のある豆とされてきました。アズキの赤い色には魔除けの力があると信じられたのです。節目節目となる重要な行事に、赤飯や小豆粥などアズキで作った料理を食べるのはそのためです。
実際、アズキの赤い色素であるアントシアンには高い抗酸化成分があるので病気の予防や老化防止効果があります。

P190
キリスト教やイスラム教では、人間と人間以外の生物を大きく区別します。人間以外の生物は、神が人間のために創り出したものです。
一方、日本人にとってはすべての生物が仏性を持った存在でした。つまり、人間と同じ存在だったのです。そのため、植物や虫の命さえも供養しました。

P192
仏教とは異なり、キリスト教の世界では、善と悪を明確に分ける傾向があります。(中略)
欧米の人々にとって、神の恵みである穀物の成長を妨げる雑草は、邪魔者でした。夜中のうちに悪魔がやってきて雑草の種をまいていると考えられていたほどです。ですから、欧米では悪い草を「雑草」と呼び、役に立つ良い草を「ハーブ」と呼びます。

【ネット上の紹介】
不浄である泥の中から茎を伸ばし、清浄な花を咲かせるハスは、仏教が理想とするあり方、極楽浄土に最もふさわしい花とされる。このように仏教ではさまざまな教義が植物に喩えて説かれ、寺や墓のまわりも仏教が尊ぶ植物で溢れている。球根が土砂崩れを防ぐ特性から墓地を守る花として重宝されたマンジュシャゲ、疫病を避ける物質を持つため鬼門に植えられるナンテン、神聖な花の象徴であり寿命が長いために墓に供えられるキク。人気植物学者が、仏教が理想とした植物の生きる知恵を楽しく解説。植物と仏教の新たな魅力がわかる一冊。
第1章 仏教と縁の深い植物の謎(泥の中から花を咲かせるハスの秘密
なぜハスは困果倶時のたとえに用いられたのか ほか)
第2章 仏教と植物の意外に美味しい関係(隠元禅師が日本に伝えたのはインゲンマメかフジマメか
ネギは神聖なのか不浄なのか ほか)
第3章 心に染みる仏教と植物の話(仏様の渇きをいやすミソハギのしくみ
ともに生きるレンゲの智恵 ほか)
第4章 仏教が理想とする植物の生き方(どうして肉食が禁止されるようになったのか
どうして植物を食べることは殺生ではないのか ほか)

「オスとメスはどちらが得か?」稲垣栄洋

2020年03月14日 09時17分32秒 | 読書(科学)

「オスとメスはどちらが得か?」稲垣栄洋
 
とても興味深い内容で、面白かった。
生物界は多様で、何とかして遺伝子を残そうと奮闘している。オスを必要としない生物もいるし、途中で性転換してしまう生物もいる。ほんといろいろだ。
 
P4
男と女は、相当にエネルギーと時間の必要な無駄なシステムである。それでも、世の中には男と女が存在する――。どうしてなのだろう。(これは私も学生時代、疑問に感じた・・・ゾウリムシのように細胞分裂すればいいじゃないか、と。そうしたら、犯罪が激減するのに、と。ただ、そうなると名作と言われる文学作品がほとんど無価値になってしまう・・・ジレンマだ)
 
P21
他の個体と遺伝子を交換する利点のひとつは、「多様性」を生み出すことである。もし、元の個体がコピーをし続けると、元の個体と同じ性質の個体が、無限に増えていくだけだ。この場合、増殖した個体はすべて、元の個体と同じ性質である。そのため、環境が変化すると、対応できずすべての個体がいっせいに死滅してしまう恐れがある。
 
生物と病原菌ウイルスとの攻防:「赤の女王仮説」
P34
走り続けるアリスのように、生物は変化し続けなければ生き残ることができないのだ。
 
P39
オスにとっては「パートナーの数」が重要であり、できるだけたくさんのメスと交わろうとする。これに対して、メスは「パートナーの質」が重要であり、優れたオスを選ぶ戦略になる。
 
P40
オスとメスは、繁殖するうえで効率のよいシステムである。しかし、実は「どうしてオスがいるのか?」という、あまりに素朴な問いに対する確かな答えは、残念ながら出ていない。
 
P98
生物の世界を見回してみると、役立たずの男はいらないとばかりに、オスがいなくてもメスだけで子孫を残してしまう例も少なくない。(中略)
そもそも、全ての個体が子どもを産むメスならば、それだけで子孫は2倍になる。オスがいないほうが、ずっと効率的なのだ。(中略)
聖母マリアの場合は「処女懐胎」と言うが、このようにメスだけで子どもを産むことは、生物界では「単為生殖」と呼ばれている。
 
オンブバッタについて
P151
この2匹は夫婦であり、下にいる大きなバッタがメスだ。卵を生むために、メスの体は大きくなっている。それでは、小さなオスはなぜ、メスの背中に乗っているのだろうか。
オスの不安を想像すれば、もう、おわかりだろう。
オスは、交尾をすませたメスが他のオスと交尾しないように、片時も離れず、見張っているのである。
 
仲の良い夫婦の象徴、オシドリについて
P152
オシドリも、他のオスにメスを奪われないように、ぴったりとついてメスを監視しているだけなのだ。心配な気持ちは、昆虫も鳥も同じなのだろう。
 
P156
オスは生まれてきた子どもが自分の子であることを認知しにくい。メスを信じないというわけではないが、本当に自分のこどもかどうかわからないのだ。哺乳類のオスが子育てをしないのは、そのためである。(獰猛といわれるオオカミ、ジャッカル、コヨーテはオスが子育てする。理由は・・・「圧倒的な強さでメスの信頼を勝ち得たオスであれば、生まれてきた子が自分の子であると確信できる。そんな強いオスが子育てするのである」
 
【おまけの感想】
読んでいて、「メスがメインで、オスはオマケ」、と感じてきた。
【ネット上の紹介】
人間が男と女に苦労しているように、実は、生物たちもオスとメスの存在に振り回されている。その悲喜こもごもな世界に迫ったのが、本書である。オスはメスのために存在するのか?オスにとって戦いは宿命か?家族を持つメリットは?浮気は必然か?弱いオスはどのようにして子孫を残すのか?などなど、役に立つ(!?)情報も満載!
第1章 オスとメスの誕生
第2章 「オス」という進化
第3章 オスを必要としない生き物たち
第4章 性転換する生き物たち
第5章 オスとメスの駆け引き
第6章 人間の「夫婦」の戦略
終章 そして、「死」が生まれた

「バッタを倒しにアフリカへ」前野ウルド浩太郎

2017年09月30日 19時27分02秒 | 読書(科学)


「バッタを倒しにアフリカへ」前野ウルド浩太郎

私は虫が苦手である。
でも、興味はある。
バッタ博士・前野氏のアフリカ・サハラ砂漠での奮戦の書。
と同時に、学者が食べていく苦労も描かれている。(好きな事をするのも大変だなぁ)
モーリタニアの風習も描かれていて興味深い。
軽妙な文章で、楽しく読めるよう工夫されている。

P158
「砂漠のヘビは水を求めて深夜徘徊する。ベッドの脇に水を置くのはヘビを呼んでいるようなものだ。寝るときは必ず水をベッドから離すこと。そして、ベッドは砂丘の頂上にセッティングするのがベストだ。草木の周りにはヘビがよく潜んでいるから、襲われやすいぞ」

P207
日本では細めの女性が好まれる傾向にあるが、逆にモーリタニアでは、ふくよかなほうがモテる。そのため、少女時代から強制的に太らせる伝統的な風習がある。これは「ガバージュ」と呼ばれるもので、現在は健康によくないからやめるようにと政府が呼びかけている。

【ネット上の紹介】
バッタ被害を食い止めるため、バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。それが、修羅への道とも知らずに…。『孤独なバッダが群れるとき』の著者が贈る、科学冒険就職ノンフィクション!
第1章 サハラに青春を賭ける
第2章 アフリカに染まる
第3章 旅立ちを前に
第4章 裏切りの大干ばつ
第5章 聖地でのあがき
第6章 地雷の海を越えて
第7章 彷徨える博士
第8章 「神の罰」に挑む
第9章 我、サハラに死せず