【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「この世界の片隅に」

2016年12月31日 07時33分14秒 | 映画(一般)

アニメ「この世界の片隅に」を観てきた。
これはすごい、お薦め!
全編至福映像超絶技巧作品。
この作品を観のがしていけない。
映画館でエンディングが流れても、誰も席を立たない、ざわめきも無い。
皆さん、静かに余韻にひたっていた。
私のオールタイムベストは、「千と千尋」「Ghost In The Shell」の双璧だが、本日から、この作品も加えることにする。

映画「この世界の片隅に」公式サイト

【おまけ】
映画化されたときから観たかったが、最初限られた映画館でしか上映しなかった。
梅田まで出かけるのは時間的に無理だな…DVDになるのを待つか、と。
しかし、口コミで評判が高まり、近くのイオンシネマでも上映してくれた。
おかげで観ることが出来た。ありがたいことだ。
【おまけ】2
個人的には、原作にあるリンさんのエピソードをもっと入れてほしかった。

今年のブログは、これにてオワリ。
また、来年もよろしくお願いします。
よいお年をお迎えください。


村上さんの件、続報

2016年12月30日 20時06分39秒 | クライミング(広報)

クラックスFacebookの記事を以下、転載する。

【ご報告】
当フェイスブックページで車探しをお願いさせていただきました行方がわからなくなっている村上肇さんに関して、現時点でわかっていることをお伝えします。

12月24日午後、クライマーにより三重県の奥香肌にて、村上さんの車が発見されました。即日大阪の天満警察と三重の松坂警察に連絡をとり車の確認が行われました。日没が迫っていためこの日捜索は行われませんでした。

...

翌25日早朝より村上さんのクライミング仲間11名でまず捜索に入り、午後からは地元松坂警察の捜索隊もこれに加わって、駐車場周辺のボルダリングエリア、沢、登山道を捜索しましたが、この日は発見には至りませんでした。

当フェイスブックで車探しのお願いを発信したのが12月22日の夜でしたので、車発見と捜索開始までは非常にスピーディではありましたが、村上さんの行方がわからなくなったのは12月19日からのようで、捜索段階ですでに1週間が経過しているため、警察による捜索は救命活動という観点から行えないということでその後の捜索はされていません。

車が発見された場所は、台高山系の野江股ノ頭や白倉山の登山口でもある江馬小屋谷が蓮川に出会う場所(奥香肌峡ボルダリングエリアの駐車場)です。ここから村上さんはこの周辺の山に登った可能性があります。

現時点でははっきりしていることは、今後の捜索はクライミング仲間を中心とした有志によって行われるということです。

当初村上さんの足取りが全くつかめなかったため、ご家族のご依頼の元、当サイトで車の情報収集のお手伝いをさせていただき、皆様のご協力をいただきましたが、今後の捜索活動についての詳細な報告はこちらのサイトでは行えませんので、ご了承ください。

改めて、ご協力いただいた皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。一刻も早く見つかることを祈っています。

今後はお問い合わせ等ございましたら、コメントではなく直接お電話にてお問い合わせいただきますようお願いいたします。

クラックス
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車を見つけてくれた方に感謝したい。
車が見つかったので、交通事故の可能性は無くなった。
あとは、2つ考えられる。
①岩を探していて道に迷った…台高山脈は山深い、登山者も少ないので踏み跡も分かりにくい
②岩を探していて、滑落した…こちらも可能性アリ
いずれにせよ、サバイバル能力を信じたい


年末恒例行事

2016年12月30日 19時41分02秒 | 身辺雑記

12/29、仏壇の掃除、お餅を米屋で2種類購入、練習2.5h、夜に年賀状、料理・残りのシチュー、読書(夜目がさえる)
12/30、早朝年賀状投函、映画、買物、練習2h、雑煮用お餅と白味噌購入、料理・おでん、読書
12/31、台所掃除、フィルター交換、2階の掃除、買物、料理(百合根は4分で十分、それ以上煮ると煮崩れする、クワイは20分煮たが味見で舌をヤケド…来年注意)
以上、覚書。


「辛夷の花」葉室麟

2016年12月27日 22時43分04秒 | 読書(歴史/時代)


「辛夷の花」葉室麟

澤井家の志桜里は姑と折り合いが悪く、実家に帰される。
ところが、それが思わぬところでお家騒動と関係してくる。
隣家には「抜かずの半五郎」と呼ばれる藩士も引っ越してくる。
刀の鍔を縛って、抜けないようにしてるのだ。
これではいざという時戦えない。

P191
「ひとはおのれが正しいと思った道を歩むしかないのではありますまいか」
志桜里は自分に言い聞かせるよう言った。
「さて、そうであろうか。ひとは誰もが聖人君子となれるわけではない。時に迷い、誤った道を歩みつつも、おのれを見失わねば正道に立ち返ることができる。誤った道を歩むまいと心を縛って生きるばかりが道ではないと思うが――」

P190
時しあればこぶしの花もひらきけり
君がにぎれる手のかかれかし

【おまけの感想】
「螢草」、
「さわらびの譜」ほど、すっきり爽快感はないが、一気読みで楽しめた。


【ネット上の紹介】
九州豊前、小竹藩の勘定奉行・澤井家の志桜里は近習の船曳栄之進に嫁いで三年、子供が出来ず、実家に戻されていた。現藩主の小竹頼近と家老三家の間に、藩政の主導権争いの暗闘が火を噴きつつある近頃、藩士の不審死が続いていた。ある日、隣家に大刀の鍔と栗形を浅黄の紐で結んで“抜かずの半五郎”と呼ばれている藩士が越してきた。庭の辛夷の花に託した歌の意味とは…。爽快、痛快、迫真の長篇時代小説!
 


「日本人の肖像」葉室麟

2016年12月26日 21時11分27秒 | 読書(歴史/時代)


「日本人の肖像」葉室麟

思った以上におもしろく楽しめた。
葉室麟さんの博識ぶりに感心した。

宮本武蔵について
P16-18
リアリズムで剣の技術論を追求し、精神性に力点を置かない。戦争体験から、日本軍の精神主義はよくないと痛感されたのでしょう。吉川版は精神性を重んじたが、司馬「武蔵」はスピード、技術・能力の優劣で勝つ合理性を描き、ある種のニヒリズムを内包する。
(中略)
『バガボンド』は現在の青年像として、自分探しを続けるフリーターのように見える。自分は何者か、居場所はどこかと探し、悩む姿が今の時代らしい。強敵と出会った時だけ自己存在の手応えがあるような、アスリート的個性と言える。競技中だけは自分を信じられ、相手も自分にも存在感の手応えがある。バブル経済崩壊後、己を見失った日本人像とダブります。

なぜ宮本武蔵の物語を好むのか?
組織に属しながらも、その中で独り努力を重ねることを美風とし、孤高を愛するメンタリティが我々にはある。それは世界の中での国の立ち位置とも重なります。

竜馬について
P23
日本人は不思議にもイデオロギーが好きではなく現実的。そういう日本人の資質とも結びつき、広範な読者に指示されたのでしょう。イデオロギーと宗教は似ている。日本にキリスト教が定着しなかったのも、日本人の資質に合わなかったのかもしれない)(中略)
当時、米国の南北戦争が終わり、世界的に銃器が余っていた、竜馬そこに目を付け、長州側へ乗り込んでいった。武器を買ってもらうためには勝つ条件を整えなければならない。新しい国造りの理想だけではなく、彼なりの利害もあった。それは、人として世の中を作ることに参加する利害感覚でしょう。志士としてのイデオロギーだけで考えては、竜馬の魅力は半減する。
P84
「尊皇攘夷」は古代中国で、周王朝を尊び、外敵の蛮夷を打ち払うという考え方で、斉(せい)の桓公(かんこう)が唱えています。

P85
吉田松陰もそうなのですが、最初は攘夷のための尊皇でした。それが不思議なことに、途中から尊皇のための攘夷になる。

廃藩置県について
P87
もともと薩摩・島津家や長州・毛利家などに仕える武士だった彼らが、藩主に逆らう行動をとるとか、廃藩置県で藩主の土地を取りあげるなんてとんでもない話だったはずです。しかし明治維新という革命をやり遂げるためには、彼らにとって天皇が必要だった。いわば倫理的な保証でした。本来なら彼らは「不忠者」になるはずだった。その論理を越えるのが天皇だったのです。彼らも天皇でやっていくしかなかったという感じがします。

千利休について
P100
かくありたいというのではなく、自分がなれるかどうかは別問題でその存在を認めざるを得ないという。こういう人物を現代ではカリスマと呼ぶのではないでしょうか。

P204
平和ボケという言葉の定義はごく単純。戦争をしたがる人が平和ボケです。平和でありたいと思う人はボケていない。戦争の苦しさを忘れてしまった人が戦争をしたいと言い出す。ところが、戦後七十年の節目の年に安保法制が成立してしまった。

【ネット上の紹介】
時代小説の最前線をゆく直木賞作家が、浪漫あふれる「この国のかたち」を見つめ直す!なぜ英雄に感動するのか。庶民のヒーロー、本物のリーダーの条件は?そして、天皇とは―
[目次]
第1部(黒田官兵衛
宮本武蔵
坂本竜馬
織田信長 豊臣秀吉 徳川家康
女帝の世紀 ほか)
第2部(大坂の陣四百年
朝鮮出兵の時代
対外交流からみた中世
国家と宗教
柳川藩立花家 ほか)


「世界史としての日本史」半藤一利/出口治明

2016年12月24日 20時46分09秒 | 読書(昭和史/平成史)


「世界史としての日本史」半藤一利/出口治明

思った以上に良かった。
参考図書も紹介されている。
世界史の中の日本、として捉えると、別の角度から光が当たり、異なる面が見えてくる。

P78
第二次大戦を理解するうえで一番大事な人間はヒトラーとスターリンです。この二人を理解しないと、第二次大戦は見えてこない。

ISについて
P134
あれは単なるテロではなくて、非成立国家が余計なことをして秩序を破壊してきた国に対する戦争を仕掛けているのではないかと捉えたほうがいいんじゃないかと。


P135
フサイン=マクマホン協定、サイクス・ピコ協定について書かれている。
中東のもめ事の原因となった協定である。

出口 ノンフィクション作家の星野博美さんが書かれた『みんな『彗星を見ていた』という本には、日本は400年前に何万人ものキリシタンを拷問のあげく殺したことが書かれています。
半藤 あの本は面白かったですね。日本人も昔、ISと同じことをやっていた。
(参考→「みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記」星野博美

日独伊三国同盟について
P250
同盟締結に断々乎として反対するのが米内光政大臣、山本五十六次官、井上成美軍務局長の海軍トリオであったことはよく知られています。国賊山本次官を殺せの声も高く、山本がひそかに遺書をしたためていたほど真剣に、日本はこの問題にとり組んでいたのです。

P149
『コストを試算!日米同盟解体』によると
日本→米国…思いやり予算等の日米同盟にかかるコスト総額1兆8千億円
日米同盟をやめて自前で軍隊を保ち中国に対抗した場合のコストは22兆~24兆円



PS
半藤一利さんは1930年、東京都生まれ。東京大学文学部、文藝春秋に入社し、「週刊文春」「文藝春秋」の元・編集長。
出口治明 1948年、三重県生まれ。京都大学法学部を卒業で実業家。
興味深い対談である。 

【ネット上の紹介】
近年メディアを席巻する“日本特殊論”。しかし、世界史のなかに日本史を位置づければ、国家成立時から現代に至るまでの、日本と、日本人の本当の姿が浮かび上がる。作家・半藤一利とライフネット生命保険会長・出口治明。圧倒的教養を誇る二人が、既存の歴史観を覆し、再び世界に後れを取ったわれわれが、今なすべきことを語り尽くす。
[目次]
第1章 日本は特別な国という思い込みを捨てろ
第2章 なぜ戦争の歴史から目を背けるのか
第3章 日本が負けた真の理由
第4章 アメリカを通してしか世界を見ない危険性
第5章 世界のなかの日本を知るためのブックガイド
第6章 日本人はいつから教養を失ったのか


竜王山

2016年12月23日 19時58分48秒 | 登山&アウトドア(関西)

久しぶりに竜王山に登ってきた。

ここが山頂・・・立派なやぐらがある

やぐらの上からの景色

節分会の旗が道に並んでいる…行ってみたいが平日の午前


尋ね人

2016年12月23日 05時42分08秒 | クライミング(広報)

crux・facebookにアップされていたので、当ブログでも掲載(転載)します。
次のとおり。

クライマー仲間である村上肇さん(むらかみはじめ/男性/58歳)と12月18日(日)から連絡が取れなくなっており、ご家族が行方を探しておられます。

自家用車で岩探しまたはハイキングに行った可能性があります。車の情報はグレイのトヨタプリウス、ナンバーは「なにわ301 ね64-70」です。

この車を岩場や登山口の駐車場など、どこかで見かけられた方はお手数ですが、クラックス大阪までご連絡お願いします。

クラックス大阪
電話番号:06-6310-6105
メール:cruxosaka@crux-jp.com

********
村上さんとは、一緒によく登りにいったので、私も心配している。
つぎの2点が考えられる。
①車で岩を探しに行って、事故に遭った。
②山の中を歩いていて、滑落等で動きが取れない。
いずれにせよ、車を見つけることが鍵になると思う。


「半席」青山文平

2016年12月22日 20時05分31秒 | 読書(歴史/時代)


「半席」青山文平

直木賞受賞後、待望の第一作。
6編収録されていて連作となっている。
ミステリ仕立で毎回事件が起きる。
ただし、犯人がわかっている。
「なぜ犯行におよんだのか?」を調査する。
仲のよかった者が急に加害者と被害者になる。
その経緯が描かれる。
江戸と武家社会の蘊蓄と共にストーリーが展開する。

橋の管理について
P135
橋の世話になる者たちが、組合をつくって組合橋を管理するように、武家地では、しかるべき区画の内の武家屋敷が、それぞれ費用を出し合って辻番所を運営する。南北の御番所合わせても三十人足らずの廻り方同心で、なんとか大江戸の治安を保っているのは、町人地には街が置く自身番が、そして武家地には辻番所があるからだ。

【ネット上の紹介】
分別ある侍たちが、なぜ武家の一線を越えたのか。直木賞受賞後、待望の第一作! 若き徒目付の片岡直人に振られたのは、腑に落ちぬ事件にひそむ「真の動機」を探り当てることだった。精勤していた老年の侍がなぜ刃傷沙汰を起こしたのか。歴とした家筋の侍が堪えきれなかった積年の思いとは。語るに語れぬ胸奥の鬱屈を直人が見抜くとき、男たちの「人生始末」が鮮明に照らし出される。本格武家小説の名品六篇。


ジム会費

2016年12月21日 21時00分32秒 | ジム練習

先日、ジム年会費を支払った。
・・・108,000円(継続全店フリーパス)
有効期限は12月23日。
一年間、病気や怪我に注意して、練習したい。
以上、覚書として書いておく。

今年はジム10周年だそうだ。(もう、そんなに経つのか…と感慨深い) 
聞くところによると、10年継続会員は3人だけらしい。
7-8年くらいで、会員メンバーが入れ替わっているように感じていた。
あながち、私の憶測は間違っていないのかもしれない。

【独白】
練習に比例して上達している間はいいが、いずれ行き詰まる。
その時、どう自分に折り合いをつけるのか?
また上級者ほど、維持の為の時間と労力が必要となる。
いかにモチを維持するのか? 

PS
10年会員で継続更新の方は15,000円の商品券をプレゼント!、との事。
ありがたいことだ。 


「家裁調査官は見た 」村尾泰弘

2016年12月19日 20時14分28秒 | 読書(エッセイ&コラム)

新潮新書<br> 家裁調査官は見た―家族のしがらみ 
「家裁調査官は見た 」村尾泰弘

著者は家庭裁判所調査官で臨床心理士、家族心理士の資格を持つ。
自分が担当した様々な家族を例に取りながら、具体的な解決策を提示する。

感情移転について
P23
深刻な人間関係のもつれには、その人が抱え込んできた身近な人物への強い感情が絡んでいることが少なくない。人はときに、親やきょうだい等、過去の重要な人物に対して感じていた感情を現在の人間関係に移し換えてしまうのだ。

P25
一般に、つらければつらいほど声高に他者に助けを求めると考えがちだ。しかし、他者にSOSを発するにも、ある程度の精神的パワーを要するのだ。

対立をエスカレートさせる言葉を探す
P159-160
あるケースでは、母親の「あんたはいつも」という言葉に子どもが刺激されていた。別のケースでは青年の「わかりもしないくせに」が母親を激怒させていた。
(中略)
そこで、「わかりもしないくせに」と言いそうになったら「わかってほしいんだよ」という言葉に置き換えてみることを提案した。このことだけでも会話の流れは激変した。

ナラティヴ・セラピー…物語を書き換える心理療法
P168-169
「あなた(子ども)をあんな劣悪な託児所に預けたために、あなたは酷い扱いを受けてあの病院に入院することになったのよ。私はダメな母親だ」
 ↓(書き換え)
「あなたが預けられた託児所は酷いところで、酷い扱いを受けたけど、お母さんはあなたを救い出して、あの病院に入院させたのよ。おかげで、あなたはこんなに元気で立派な小学生になったのよ」

【参考リンク】
一般社団法人 家族心理士・家族相談士資格認定機構

CLCA 特定非営利活動法人 子供と生活文化協会

日本家族心理学会

日本家族研究・家族療法学会


12/18スポーツ欄

2016年12月18日 11時28分10秒 | クライミング(コンペ、国体)

2016.12.18朝日新聞・スポーツ欄
クライミング記事が掲載されていた。


「マチネの終わりに」平野啓一郎

2016年12月15日 23時02分20秒 | 読書(小説/日本)


「マチネの終わりに」平野啓一郎

恋愛小説は読まないのだが、あまりに評判が良いので読んでみた。
確かに、面白かった、完成度の高い作品だ。
特に、第6章「消失点」の途中から俄然面白くなり一気読み。

ヒロインはジャーナリストの洋子40歳、フランス在住。
男性は天才ギタリスト・蒔野38歳、世界を股に活動。
東京、バグダッド、マドリード、パリ、台北、ニューヨークと舞台は移っていく。 
イラク侵攻と自爆テロ、リーマンショック等の時事問題を背景に展開する。 
個人の恋愛事情でありながら、社会の波に大きく翻弄される。
非常にリアリティのある演出で、大人の恋愛小説だ。

ヒロインのプロフィール
P23
「洋子さんって、え、何カ国語喋れるんですか?」
「基本は、日本語、フランス語、英語、あと、大学でドイツ語を。第一次大戦前後のドイツ文学を勉強してましたから。特にリルケを。あと、ラテン語は読めます。それで、多少わかる言葉もありますけど――ルーマニア語とか――会話は難しいです。だから、何カ国語っていうのか、……」

P31
最後に名残惜しく交わした眼差しが、殊に「繊細で、感じやすい」記憶として残った。それは、絶え間なく過去の下流へと向かう時の早瀬のただ中で、静かに孤独な光を放っていた。彼方には、海のように広がる忘却!その手前で、二人は未来に傷つく度に、繰り返し、この夜の闇に抱かれながら、見つめ合うことになる。

P66
洋子の最初の赴任は、フセイン政権崩壊後、ようやく制憲議会選挙にまで漕ぎ着け、ジャアファリー首相の移行政府が誕生して、丁度その新憲法の国民投票が行われた時期だった。その後、改めて議会選挙が行われ、2006年5月に、ようやく現在のマーリキー政権が発足している

P74
美しくないから、快活でないから、自分は愛されないのだという孤独を、仕事や趣味といった取り柄は、そんなことはないと簡単に慰めてしまう。そうして人は、ただ、あの人に愛されるために美しくありたい、快活でありたいと切々と夢見ることを忘れてしまう。しかし、あの人に値する存在でありたいと願わないとするなら、恋とは一体、何だろうか?

P171
まっすぐに伸びた鉄道の線路は、彼方の消失点で結び合っているように見える。しかし、一駅経ても二駅経ても風景は同じであり、その平行するレールは、当然のように決して交錯しない。現在から見て、いつか必ず一つになるように見えるその点は、いわば幻に過ぎなかった。

P189
洋子はふと、自分だけは、他のみんなが持っている脚本とは、違うものを手渡されているような不安を感じた。そして、慌ててページを確かめるように、現在を見つめ直し、過去を振り返り、八月末の彼との再会の場面を、何も間違っていないはずだと自らに言い聞かせながら思い描いた。

【余計な分析】
恋愛小説に必要な要素、それは・・・
2人を隔てる壁とすれ違い、そして運命と偶然による効果的な演出。
しかし、これだけ便利で平和な世の中だと、壁もすれ違いも表現しにくい。
携帯、スマホ、スカイプで、すれ違いも起きにくく、(建前として)平等の世の中でもある。
そこを運命と偶然のスパイスを効かせて物語を紡いでいく困難な作業。
…見事な文章と構成である。
最初、「マチネの終わりに」って、さえないタイトルだな、と思っていたが、最後に意味が分かる仕掛けになっている。
2016年単行本で、屈指の作品と思う。

【ネット上の紹介】
深く愛し合いながら一緒になることが許されなかった蒔野と洋子は再び巡り逢えるのか。感涙必至。悲恋に泣いた切ない大人の恋愛小説。


「ザ、コラム 2006-2014」小田嶋隆

2016年12月12日 21時16分20秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「ザ、コラム 2006-2014」小田嶋隆

ソフトバンクの「週刊ビジスタニュース」メールマガジンに連載されていた
「大日本観察」というコラムを中心に、書籍化されていない作品を集めてある。

P67
いじめは、単なる暴力ではない。よくある子供同士の軋轢というだけのものでもない。いじめの最も顕著かつ深刻な特徴は、それが、「集団が個人に対して発動する暴力」だという点だ。しかも、ここで言う「集団」は、必ずしも、集団内の個々の成員1人1人を意味していない。むしろ、「場の空気」といった感じの、非人格的な、責任の曖昧な「雰囲気」が、暴力を主導しているところに、この社会的病理の不気味さがある。つまり、いじめをドライブしているのは、いじめっ子本人たちの個人的な意志ではなくて、むしろ、「尻馬に乗る」「空気を読む」「場から浮かないために皆がやっていることに同調する」といった、わたくしども日本人に特有な「横並び意識」そのものであったりするのだ。

【ネット上の紹介】
政治家たちの失言・スキャンダル、スポーツ・芸能界のゴシップ、メディアの機能不全まで、世の気になる出来事に対して常に辛辣で的確なツッコミを入れ続けるコラム界の至宝・小田嶋隆。多くの物書きからリスペクトを受ける「コラムニスト中のコラムニスト」が、この凡そ十年間に手がけた数多のコラムの中から、自らの手で選りすぐった超偏愛的ブライテストコラム集。ノイズまみれの世界に燦然と輝くコラムの金字塔にして永久保存版!
[目次]
1 Paint It,Black(天国への団塊
偽装ツッパリ層消滅の副作用について ほか)
2 Helter Skelter(日本語の短兵化傾向について
ウォークマンと私の30年 ほか)
3 Walk on the Wild Side(「アベノミクス」の勝利
荒川にカンガルーがいた頃 ほか)
4 Take It Easy(浦和をビッグクラブと呼ぶ日
松田直樹選手に寄せて ほか)


「今日も私は、老人ホームの看護師です」鈴橋加織

2016年12月11日 12時00分06秒 | 読書(マンガ/アニメ)

今日も私は、老人ホームの看護師です 〈2〉 - おとぼけナースと、かわいい仲間たち  
「今日も私は、老人ホームの看護師です」鈴橋加織

「老人ホームってどうやって入るの?」

「看護師いるの?給料いくら?」
「認知症ってどうなるの?」
これらの疑問と共に「高齢者あるある」が描かれている。

服の下から乳のはみ出るお婆さん…若かりし頃、巨乳だったのでしょうね…

看護師なら、自分の親を介護できるか?という疑問に…
介護をしている私たちでも自分の親の急激な変化を素直に受けいれるのはできないものです。
介護はとても長い「生活」なので、毎日はとてもたいへんです。

シモネタ、エロじいさんについて…
P44
認知症になるとシモネタが烈しく振り切れてしまう方も大勢おられますが
悪意はありませんので迷惑にならない程度なら暖かく見守ってあげて下さい

【不安】
私も年齢を重ね「シモネタ振り切れて」フル回転レッドゾーンに入ってしまう可能性があるかもしれない。
もしそうなった場合、温かい目で見守って下さい。