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「近代中国史」岡本隆司

2021年08月02日 07時15分24秒 | 読書(台湾/中国)


「近代中国史」岡本隆司

このところ、中国ドラマを観ていて、その社会背景が気になったので読んだ。
これで、「瓔珞」「月に咲く花の如く」「明蘭」の理解が深まる・・・かも。
人口と経済からみた近代中国史。
目から鱗の良書、ぜひ読んでみて。

P30
そもそも中国史・東洋史とは、遊牧世界と農耕世界の共生・相克がその大部分をしめており、経済史もその例にもれない。

P64
清朝の時代には、しばしば課税の減免があった。とりわけ18世紀の好景気で、税制に余裕があった乾隆帝の時代に多い。(中略)
その善政は決して、一般の庶民にまでとどいていない。(「瓔珞」「如懿伝」は、乾隆帝の時代)

P142
ヌルハチは1583年に挙兵し、およそ30年かかってジュシェン全体を統一した。ジュシェンは以後、自らマンジュ(満州人)と改称し、のちの清朝政権が成立する。
以上のような経緯から、この政権は、多種族からなる武装貿易集団の性格が濃厚である。(中略)清朝ははじめから、満州人を中核として、漢人・モンゴル人を包含する多種族の混成政権を志向していた。
このような清朝政権は、商業を忌避し、交通を遮断し、「外夷」と「中華」・外国と中国・異種族と漢人とを分断しようという明朝の志向とは、全く相反する存在である。(中略)
したがって、明と清は対立を深めざるをえなかった。1億と50万、高度な農工業と狩猟・遊牧。人口や生産力をみるかぎり、彼我の優劣は、火を見るより明らかである。明・清の王朝交代は、史上の一大奇跡といってよい。
清朝は実際、いかにしても自力で長城を突破して、明朝を打倒することはできなかった。明朝が1644年、内乱で自滅したために、北京に入って中国に君臨できたのである。

P154
ドル貨は円形なので「圓」、あるいは同音で画数が少ない「元」と称する。

P167
「17世紀の危機」という歴史用語がある。もともとはヨーロッパ史の概念であり、1630年代から40年代にわたって、異常気象と飢饉がおこり、また新大陸の銀輸出が激減したために、社会的・経済的な混乱をきたしたことに始まる経済下降局面を指していう。(中略)同じ時代・明末清初期の中国も、例外ではなかったからである。

P148
1644年、清朝が北京に入って以後の中国支配は、前代明朝の制度・慣行を尊重して、在地在来の秩序になるべく手をふれないことを原則とした。目につきやすいところでは、皇帝独裁・官僚制・科挙の踏襲・全面的な漢人の登用などをあげることができる。

P268
「貧しきを患(うれ)えず」、均しからざるを患う」という理想が有効なかぎりは、それでも通用した。文化大革命までの時代である。「貧しさを患え」たところから「改革開放」がはじまった。その結果は貧富の懸隔・沿海と内陸の乖離という、「均しからざるを患う」現状になっている。経済発展をとるのか、中国の一体化をとるのか。もはや二者択一できない。両立せねばならないところに、現代中国のジレンマがある。

【疑問】
とても面白かったのだけど、疑問が残った。
少数民族の満州人が、圧倒的多数の漢民族をどう支配したのか? 具体的なところがよくわからなかった。また、弁髪はどの程度、漢民族に浸透したのだろう?
宮廷ドラマでは、満洲民族の風習として、左右の耳に3つずつ、合計6つイヤリングを付けている。庶民の女性も、そうしたのだろうか??・・・そのところを知りたい。

【蛇足のファンタジー】
シンデレラの足は小さかった・・・纏足していただろうか?(ガラスの靴をはいて、外反母趾にならなかったのだろうか? そもそも纏足していて踊れたのか?) 満州人の少女がシルクロードを使ってヨーロッパにやってきてシンデレラになったのだろうか?・・・ファンタジーだ。本書を読んでそんなことを考えた。(もともと中国にあった話がヨーロッパに伝わった、とみたほうが自然かもね)

【ネット上の紹介】
中国とは何か。その原理を理解するための鍵は、近代史に隠されている。この時代に、「幇」とよばれる中国団体をはじめ、貨幣システム・財政制度・市場秩序など、中国固有の構造がつくられたからだ。本書は経済史の視座から一六世紀以降の中国を俯瞰し、その見取り図を明快に描く。かつて世界に先んじた中華帝国は、なぜ近代化に遅れたのか。現代中国の矛盾はどこに由来するのか。グローバル経済の奔流が渦巻きはじめた時代から、激動の歴史を構造的にとらえなおす。
プロローグ―中国経済と近代中国史
1 ステージ―環境と経済
2 アクター―社会の編成
3 パファーマンス―明清時代と伝統経済
4 モダニゼーション―国民経済へ向かって
エピローグ―中国革命とは何だったのか

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