【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

大阪歴史博物館

2023年06月29日 07時11分26秒 | お出かけ

大阪歴史博物館に行ってきた。
地下鉄谷町線、谷町4丁目駅2番出口から徒歩5分くらい。










【参考リンク】
ようこそ!大阪歴史博物館へ (city.osaka.jp)


「誰に似たのか」中島要

2023年06月27日 07時03分12秒 | 読書(歴史/時代)


「誰に似たのか」中島要

中島要作品、最新刊。
筆墨問屋・白井屋の人々を描いている連作長編。
全6話収録されていて、全て語り手が異なる。
過去の中島要作品の中でもトップクラスの面白さ。
シリーズ化して、続編もぜひ出版して欲しい。
今年ベストの1冊。

P102
墨は煤を集めてにかわを混ぜ、香木で香りをつけて固めたものだ。主に松の木を燃やした煤を固めた松煙木と、菜種油や胡麻油の煤で作る油煙木がある。

P258
「親は神でも仏でもない。我が子をかわいがった分だけ、許せないこともあるんだよ。(後略)

【ネット上の紹介】
江戸日本橋の筆墨問屋白井屋は、太兵衛が大店にした。妻のお清は、太兵衛の女遊びに苦労させられたが、隠居後は夫婦で穏やかに暮らす。しかし、夫の死後に裏切りを知り、大激怒。妻に逃げられた年下の蕎麦屋の男に自らを重ねて、貢ぎはじめる。世間体を気にする長男、貧乏長屋に暮らしお清からの援助を期待する長女は、老母の恋を止めようとするが…。隠居した母の恋に振り回される兄妹、実家の隠し子騒動に苛立つ嫁、料理人修業中の孫娘―。


「ヨーロッパ史入門」池上俊一

2023年06月25日 15時18分54秒 | 読書(歴史/時代)


「ヨーロッパ史入門」池上俊一

P10
前1世紀以後、ゲルマン人が東方からケルト人を押しこみ、ライン川方面に移動させました。ローマ帝国もケルト人を屈服させて、そのためケルト人はまもなく大陸にはいらなくなってしまいます。彼らは西の方に追いやられ、アイルランド、スコットランド、ウェールズなどの島嶼と大陸の先端のブルターニュにのみ残ったとされています。

P15
ゲルマン語系の代表はドイツ語で、そのドイツ語にももちろんさまざまな分枝があり、低地ドイツ語とか、高地ドイツ語などと呼ばれています。オランダ語もドイツ語系の言語です。英語もゲルマン語派に属しますが、その共通型からは離れて、フランス語やラテン語からの借用も多く、独自の展開をとげました。

P40
ゲルマン人たちは、自然崇拝をし、多神教を信じていました。彼らは、キリスト教に改宗してからも、じつは旧来の信心を守っており、いわば表面のメッキがかわっただけだったのです。個人崇拝や聖遺物崇敬は、異教時代の大樹や巨石・泉信仰、それら自然物に宿る神々への帰依を、聖母マリアや他の聖人たちへの崇敬に置きかえたものでしたし、現にそうした樹木や巨石、泉などを破壊・除去した跡地に、教会が建てられたのです。また、キリスト教会暦、聖人暦などの暦も、異教の祭儀の時を置きかえたものでした。たとえばキリスト生誕を祝うクリスマスは、じつはローマの「不敗の太陽」の祭儀の日の置きかえでした。

P92
十字軍は教皇が唱導し、それに呼応して各国の君主・諸侯が家臣と共に十字架を負って聖地エルサレム解放に向かう企てです。(中略)
ところでキリスト教徒がこれほどまでにエルサレムにこだわったのは、そこがキリスト受難と復活の地だったからです。しかしイスラーム教徒にとっても、638年にこの町を支配下に収めてからは、メッカ、メディナに次ぐ第3の聖地になっていたのでそう簡単には手放せません。またそこは、紀元前1000年頃ダビデ王が古代ユダヤ王国の聖都とした都でディアスポラ(離散民)となったユダヤ人やその子孫にとっても聖なる都でした。

P138
「近世」というのは一般にはその終点がフランス革命とされることが多いので、近世の途中まで、と言ったほうが正確かもしれません。この期間のしょっぱなには3つの転換、近代化の指標があります。「地理上の”発見”」と「ルネサンス」と「宗教改革」です。

アステカ王国とインカ帝国の滅亡
P153
血も涙もない労役と、天然痘・チフス・はしか・インフルエンザなどヨーロッパ人が持ち込んだ疫病で、先住民は激減します。そこで労働力を補うため、奴隷としてのアフリカ人の「輸入」が始まりました。

スペイン人・セプルベダの言葉
P154
「先住民は悪徳に満ちた残虐な野蛮人だし、偶像崇拝や人身御供などの蛮習にふけっているゆえに、懲罰としてスペインの支配を受けるのは当然だ。それは神の法・自然法によりスペインに課された義務だ」
「先住民は、キリスト教への改宗を強制されれば、魂の救済も得られるのだから、スペインの支配には悪いところはひとつもない」
(白人優位主義の考えの基本がこれ、と思われる。また、日本人女性は白人至上主義者に好まれる、という話もある――日本女性イメージとして、小柄、スリムで、性的、男性に尽くす、との偏見がもたれているから。ジェンダーギャップG7最下位だし)

【ネット上の紹介】
「ヨーロッパ」誕生以前の古代ギリシャ・ローマから、文化的統合体としてのヨーロッパが成立した中世半ば、そして大航海時代、ルネサンスや宗教改革を経て、絶対王政の全盛期である17世紀末までを考察。まとまりでありながら常に多様性を内包し、個性的なプレーヤーがぶつかり合いながら推進されてきた、その歴史とは?
第1章 ヨーロッパの誕生―古代ギリシャ・ローマの遺産(古代)(自然と地理
人種と民族 ほか)
第2章 ロマネスク世界とヨーロッパの確立―中世前半(原形としてのフランク王国
アンビバレントな「他者」としてのイスラーム教徒 ほか)
第3章 統合と集中へ―後期中世の教会・都市・王国(中世後半)(学問の発展と俗語使用
騎士と騎士道 ほか)
第4章 近代への胎動―地理上の「発見」とルネサンス・宗教改革(15~17世紀)(中世末期の光と影
スペイン・ポルトガルの海外進出と価格革命 ほか)


「大統領でたどるアメリカの歴史」明石和康

2023年06月22日 07時49分30秒 | 読書(英・米)


「大統領でたどるアメリカの歴史」明石和康



P6
建国から200年余の期間で、独立直後の大切な時期を指導したワシントンと19世紀半ばの南北戦争を克服したリンカーン、そしてフランクリン・ルーズベルトの3人が、アメリカ史上最も尊敬されている大統領です。

P24
満場一致で2度も大統領に選出されたのはワシントンだけです。

P26
ワシントンは惜しまれながらも、二期8年で引退しました。これは、生まれて間もない民主主義国アメリカの指導者の在り方を明瞭に示した点で大きな意義があります。つまり、大統領の権力は非常に強いけれども、民主国である以上、1人の指導者が権力の座に長くとどまるのは良くないとの信念です。(毛沢東、金日成など政治家より、教祖か家元に近い気がする)

P80
双方とも、よもやこの戦い(南北戦争)が4年も続き、計62万人もの犠牲者をだす近代史上最大規模の内戦に発展するとは思ってもいなかったようです。(中略)第1次世界大戦での米兵の死者数は40万5千人、ベトナム戦争では5万8千人です。

P150
民間経済が失敗したなら、連邦政府が積極的に経済に介入して、国民の生活を守らなければならない。それを行動で示し、危機の時代のリーダーシップを確立したのがルーズベルトです。(中略)30年代から40年代に大人になった多くのアメリカ人は「彼が職を与えてくれた」「彼が救ってくれた」との思いが強く、民主党時代は戦後の60年代まで続くのです。黒人層がリンカーンの政党だった共和党から民主党支持に変わる歴史的な変化が起きたのも、中間層が急速に厚くなったのもルーズベルトが築いた民主党時代の特徴と言えるでしょう。

P175
ベトナム戦争は、アメリカが軍事的に支援する現地政府に対して、南ベトナムの人々が植民地主義からの脱却を目指して戦う民族解放戦争の意味合いがありました。東南アジアにおける共産主義の浸透を恐れるあまり、ジョンソン政権はもちろん、多くのアメリカ人がそのことをなかなか理解しようとしなかった点にも問題があります。
68年1月に北ベトナムが仕掛けたテト攻勢(the Tet Offensive=テトとはベトナムの旧正月です)はアメリカ軍を守勢に追い込みます。国内の批判が高まる中で、同年3月31日、ジョンソンは北爆の中止と自らの再選出馬断念をテレビを通じて国民に発表します。ちょうど68年が大統領選の最中だったため、民主党は大混乱。(中略)フランクリン・ルーベルト以来、長年続いた民主党優位の時代は、ベトナム戦争の激化とともに終焉を迎えるのです。

P201
カーターの稚拙な外交手腕に失望した保守的な民主党員の中には、レーガンの指導力に引き付けられ、共和党入りする人が出てきました。(中略)まさに、「レーガン革命」とも言うべき政治的大変動が起きたのです。そのうねりは、基本的に第43代ジョージ・W・ブッシュ政権まで続き、共和党主導の一時代を画するのです。

【参考リンク】
歴代アメリカ合衆国大統領の一覧 - Wikipedia

【ネット上の紹介】
大国アメリカを率い、世界に強い影響力を及ぼすアメリカ大統領はどのように指導力を発揮してきたのだろうか。「建国の父」と呼ばれる初代ワシントンから、リンカーン、ルーズベルト、レーガン、ブッシュそして初の黒人大統領オバマまで、歴代大統領の足跡をたどりながらアメリカの歴史をわかりやすく解説します。
序章 大統領が導くアメリカ
第1章 独立からフロンティア拡大の時代―一七七六‐一八六〇年
第2章 分裂の危機と南北戦争―一八六〇‐一八九六年
第3章 欧州列強に並ぶ大国への道―一八九六‐一九三二年
第4章 ルーズベルト連合と民主党の時代―一九三二‐一九六八年
第5章 アメリカの復活とレーガンの時代―一九六八‐二〇〇八年
第6章 変わるアメリカ、オバマの登場―二〇〇八年‐現在


「嘘つきは姫君のはじまり」シリーズ再読

2023年06月21日 09時44分57秒 | 読書(歴史/時代)

「嘘つきは姫君のはじまり」シリーズを再読した。
次の13冊。

「ひみつの乳姉妹」
「見習い姫の災難」
「恋する後宮」
「姫盗賊と黄金の七人 前編」
「姫盗賊と黄金の七人 後編」
「ふたりの東宮妃」
「東宮の求婚」
「寵愛の終焉」
「少年たちの恋戦」
「初恋と挽歌」
「千年の恋人」
「貴公子は恋の迷惑」
「夢見るころを過ぎても」

最後の2冊は外伝。

「姫盗賊と黄金の七人 前編」P273
「おれは文殊丸――いや、源頼光だ。父は左京一条に住む源満仲という者だ」

「千年の恋人」P241
「酒飲みの童子か・・・・・・そのまま名前にすれば、酒呑童子だな」
酒呑童子と茨木。流れ者みたいな奇妙な男たちだったが、(後略)

源頼光といえば、酒呑童子退治のエピソードが有名。
茨木は酒呑童子の配下。
その話が巧みに盛り込まれている。

以前も描いたが、このシリーズで一番気に入っている登場人物は、五節と姫子のペア。この二人が描かれる短編が、「尼姫さまがやってきた!」「ふつうの速さで歌うように」は、特におもしろく、何度も読み返している。
スピンオフで、また描いてくれないだろうか?

【誤植】
「恋する後宮」P206
(誤)宮子のぞんだ事態ではなかった。
(正)宮子ののぞんだ事態ではなかった。

「ふたりの東宮妃」P64
(誤)兄の伊尹が大姫の事件に関するいっさいを兼通に
(正)兄の伊尹が大姫の事件に関するいっさいを兼家に

「ふたりの東宮妃」P64
(誤)「何しろ母上は兼通の粗暴・乱暴な性質を
(正)「何しろ母上は兼家の粗暴・乱暴な性質を

「東宮の求婚」P202
(誤)一条殿に後押しをされてる二条の姫の
(正)堀川殿に後押しをされてる二条の姫の

「初恋と挽歌」P14
(誤)そして烏鷺切りの持ち主は
(正)そして狭霧の持ち主は

【参考リンク】
初瀬観光協会公式ホームページ


「詩歌川百景」(3)吉田秋生

2023年06月17日 08時56分55秒 | 読書(マンガ/アニメ)

立ち読みする
「詩歌川百景」(3)吉田秋生

谷あいの温泉地を舞台に濃厚な人間関係が描かれた群像劇。
悪意の描き方が巧い。
リアリティを盛り上げる、風物詩もすばらしい。


 田舎の共同体はよくわからないものには敏感だ
無知と警戒感が限界に達した時
共同体は牙をむく

体格や筋力のちがいで歩幅や足の持ち上げる高さは個人差があります
でも階段は皆 同じ高さで足を上げなくてはなりません
自分のペースで登ることができない階段が疲れるのはこのためです

どんなに経験を積んでいても入念に準備しても事故は起きる時は起こってしまう
でもせめてその確率を下げる努力はしたいと思うんだ

↑ P182
西野さんて沢登りのエキスパートなんだってさ
(「沢登り」のルビに「シャワークライミング」となっている。
シャワークライミングは沢登りの一形態、要素にすぎない。
同義語ではないので要注意)

【参考リンク】

「詩歌川百景」(1)吉田秋生

「詩歌川百景」(2)吉田秋生

【ネット上の紹介】
穏やかな山間の温泉町を揺さぶる、事件。  老舗温泉旅館「あずまや」で湯守見習いとして働く青年・和樹の頼れる幼なじみ類は、冷静で優秀でお年寄りにもやさしい林田家の「最強の長男」。そんな彼をおとしめる投書が・・・!?  【編集担当からのおすすめ情報】  悪意も争いもままならぬ事もありながら大人たちに見守られ、一歩ずつ、心を紡ぐように成長していく青年たち。この山間の静かで確かな物語をぜひ体感してください。


「アメリカ国立公園」牧野森太郎

2023年06月16日 10時23分42秒 | 読書(写真エッセイ)
「アメリカ国立公園」牧野森太郎

P10
アメリカの国立公園はナショナル・パーク・サービス(NPS)が運営している。
NPSが誕生したのは1916年。
現在、アメリカにはメインランド(48ヵ所)、アラスカ(8ヵ所)、ハワイ(2ヵ所)の合計58ヵ所の国立公園がある。(中略)
入園料は車1台あたり3~25ドル。つまり1台に1人乗っても同じ値段だ。徒歩や自転車で入場するときは1人ずつの徴収となる。どんな場合も1週間有効なので領収書はなくさないように。


グランドキャニオン(モニュメントバレー)

ヨセミテ

イエローストーン

ジョシュアツリー


【ネット上の紹介】
第1章 絶対行きたいアメリカ国立公園10(ヨセミテ国立公園
セコイヤ国立公園
デスバレー国立公園 ほか)
第2章 まだまだあるよ!オススメ国立公園5(ジョシュアツリー国立公園
アンテロープアイランド州立公園
クレーターオブザムーン・ナショナルモニュメント・アンド・プリザーブ ほか)
アメリカ国立公園 旅の準備編(旅の準備もまた楽し
旅程を立てる
初めての旅行でも…レンタカーで旅しよう! ほか)
一生に一度は行っておきたい国立公園を厳選し、それぞれの特徴を丁寧に解説。マップ、行き方、宿などの情報ページも充実。

アルパカ引っ越し

2023年06月13日 17時21分49秒 | お出かけ

アルパカを見に行ったのに引っ越していなかった。
代わりに、カピバラがいた。
(カピバラといえば長崎バイオパークが有名)









せっかくなので天保山に登った。
日本一低い山だ。
高低差がないのがさびしい。


「海が聞こえる」氷室冴子

2023年06月09日 17時26分36秒 | 読書(小説/日本)


「海が聞こえる」氷室冴子

久しぶりの読み返し。
土佐、東京を舞台にした氷室冴子作品。

ジブリ作品になったので内容ご存じかもしれない。
宮崎駿作品とは異なる路線の先駆けでもある。

あらすじは、里伽子の父母が離婚。
母親の実家がある高知県に、高校2年2学期に引っ越すことになる。
東京に父と残りたかった里伽子は、土佐の高校生活に馴染めず、他生徒と軋轢を生じる。これらのことが、土佐の高校生・杜崎拓君の1人称で語られる。

以上簡潔にまとめたら、自分勝手なワガママ女に振り回される男の話。
今この手の話は時々あるが、先駆的な作品と思う。

P63
「妻持ちで浮気っていう常識からいえば、卑怯なやつかもしれないけどさ、知沙も男を見る目はあったわけだよ。だけど先着順だからな、こういうのは」(一夫一婦制なので、結婚は先に出会ったもの勝ち、っていう面がある。そういう意味で、「先着順」である。不倫は電車の順番待ちで横入りしてちゃっかり座る大阪のおばちゃんのようなもの。それにしても、米国なら3組に2組、日本なら3組に1組が離婚するのに、「法律婚」を国策・行政・福祉の根幹に据えているのも考えもの)

P248
「選手生活やってた10年間で覚えたのは、負けることだって」
「負ける・・・・・・」
「どんなに努力しても、どんなに練習つんで万全だと思っても、やっぱり神様に愛されたやつってのが、スポーツ界にはいるんだそうだよ。骨格とか筋肉のつき方、それとセンスな。これはもう、どうしようもないんだそうだ」


以下、Wikipedia「海がきこえる」からの抜粋。

ジブリとしては宮崎駿や高畑勲が全く関わらない初めての作品となり(中略)
鈴木敏夫は「宮崎・高畑には絶対に作れない作品。彼らにしか描けないものがちゃんと描けている」と絶賛している

宮台真司は、宮崎駿との対談において「『耳をすませば』よりも『海がきこえる』の方がより現実的な女子中高生の描写ができている」と発言し、二人の間で論争となった。

1995年公開のスタジオジブリ作品『耳をすませば』は、同作の脚本・絵コンテ・製作プロデューサーを担当した宮崎駿が『海がきこえる』に触発されて制作に乗り出したものであるとされ、同じ若者の恋愛物をぶつけてきたことについて近藤勝也は「ジブリの恋愛物と言えば『海がきこえる』ではなく『耳をすませば』を皆が連想するようにしたかったのでは」と推測している。また、2011年公開の宮崎駿企画のスタジオジブリ作品『コクリコ坂から』とは脚本とキャラクターデザインが共通であるなど非常に密接な関係がある。


「耳をすませば」「コクリコ坂から」より、「海が聞こえる」が面白いと思う。
やはり、原作・氷室冴子さんの力量と言える。
早世されたのが残念でしかたない。

PS
会話が見事な土佐弁で描かれている。
氷室冴子さんは、「雑居時代」では、大阪弁を駆使されていた。
感心した。

もしだけど、「RDG」で、高柳一条が京都弁で話したらどうなんだろう?
荻原規子さんは、あえて標準語で会話を進めている。
物語の雰囲気がだいぶ違ってくるかも。

【ネット上の紹介】
写真の里伽子を見ているうちに、いくつかの里伽子がいるシーンが甦ってきた。六年生(高3)になって同じクラスになったことや。ゴールデンウィークの小旅行や。ふたりで泊まったホテルや、いろんなことを。ぼくにはわりに楽しかったり、驚いたりもしたいくつかのことも、里伽子には、なんの意味もなかったわけだな。それはなんだか、すこしばかり淋しいことだった。ぼくはそのとき初めて、里伽子をすごく好きだったことに気がついて、とりかえしのつかないような気持ちになった。作家生活15周年を期して氷室冴子が贈る、土佐、そして東京を舞台にした青春小説の決定版。


「島へ免許を取りに行く」星野博美

2023年06月07日 11時34分47秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「島へ免許を取りに行く」星野博美

再読した。

星野博美さんは1966年(丙午)生まれ。
人間関係が破綻し、友達を失い、愛猫にも死なれ、閉塞状態となる。
それを打開するために、40台半ばにして思い立つ。
「免許を取ろう」と。
ネットで検索したら、長崎の五島列島に希望に添った自動車教習所が見つかる。
無料で馬にも乗れて、目の前が海というロケーションのよさ。
この作品は、そこでの寮生活、日々の奮闘を描いている。

P18
合宿免許・・・・・・。二十年前ならともかく、もう40も半ばだよ。高校卒業したての子たちと一緒に合宿するなんて、悪い冗談にしか聞こえなかった。
私はもともと協調性に著しく欠け、クラブ活動やサークル活動もろくにしたことがない。当然、合宿経験は一切なし。通学する時も、同級生がいない遠くの車両にわざわざ乗るくらい人間関係が煩わしく、会社勤めだって、ロッカールームや女子トイレでたむろする女性たちの井戸端会議がいやで挫折したほどだ。旅行にしても一人旅が鉄則。団体行動がとにかく苦手なのだ。

P61
人間、何かができれば嬉しいし、できなければ悲しい。できないことばかりを考えていたら前には進めない。だからできないことは、「自分には向かない」と言い訳して存在を無視する。そうやってこれまで生きてきた。

P142
「いいなあ。大村って1回いってみたい。大村純忠の町でしょ」と言ったところ、「誰ですか、それ?」と思いきり怪訝な顔をされた。
「大村純忠。知らない?日本で最初に洗礼を受けたキリシタン大名で、十字架を首からさげて戦場に行ってたらしいよ」

P145
「バイキング」というのは、島の北端、三井楽にある道の駅「遣唐使ふるさと館」のレストランでバイキング式ランチを食べる、という意味だ。(中略)
「遣唐使館、三井楽教会、淵ノ元カトリック墓碑群、水ノ浦教会、楠原教会、ってルートはいかがでしょうか」
先生は目を丸くした。
「星野さんはまだ路上にも出とらんのに、島の地理をよう知っとるね」

P155-156
「近くを見るから怖いんだ。遠くを見ろ!そうしたら怖くなくなるぞ」
言われた通りにすると、すーっと恐怖が消えて無くなった。
(中略)
「メリハリというのはつまり、大胆と慎重、勇気と臆病、自信と謙虚といった、二つの正反対の価値観を使い分ける、ってことですか?」
「すごく難しく言えば、そういうことです」
(中略)
勇気ある前進と、細心の安全確認。大胆な走りと、慎重な危険予測。自分は大丈夫という楽観主義と、どんな悪いことも起こりうるという悲観主義。その際限ない繰り返しが、車を運転するということか。

P204
 私が旅の信条としていることだが、世界のどこにもおもしろくない場所など存在しない。自分が行先に選んだ場所をおもしろがれないとしたら、それは楽しむ努力が足りない自分の責任なのだ。想定と違うのなら、その想定をチューニングするべきだ。それでもどうしても楽しめないというなら、立ち去ればいい。通過者にはその自由があるが、選んだ場所を批判する権利はない。

免許を2週間で取得する予定が1ヶ月過ぎようとしていた。
いつしか『寮長』とあだ名されるようになり、若い子たちの面倒もみて、人生相談にものるほどになる。
23歳でバツイチ3歳の子持ち、母を亡くし、生活のために免許を取りにきたガラパちゃん。
P205
「自分、普通の人が一生かけて経験することを、この歳で全部やっちゃったって感じです。この先、いいことなんてあるんですかね?」
自分に発言する資格などないように思えたが、あえて言った。いいことだらけの人生はないし、悪いことだらけの人生もない。いろんなことをゆっくり経験する人もいれば、一気に経験する人もいる。いまは嵐のように思えるかもしれないが、嵐のあとには必ずナギが来る。これからいいことはいくらでもやって来る。それをしっかり掴めばいい。


なんとか運転も出来るようになり、卒業検定も合格、落ちこんでいた精神状態も回復。
平成22年5月25日、東京の鮫洲運転免許試験場で筆記試験を受け、合格する。
P233
誰もが無理だと思っていた車の免許を、本当に取ったぜ!誰かに見せびらかせたい。「どう?」と愛猫、のりに見せてみる。「うるさいなあ、まだ眠いんだよ」という顔で見事に無視される。

あとは実践を積んでさらに上達するだけ。
でも、なかなか上手くならない。
教習所の校長先生に電話をかける。
P248-249
質問 いつまでも運転がうまくならず、「下手くそ」と言われ続けています。
回答 運転を形容する言葉は二種類しかありません。それは「安全」と「危険」であって、「上手」「下手」ではない。目指すべきは「安全な運転」であてって、「上手な運転」ではない。運転技術の向上などまったく目指さなくてよか。「上手だけど危険」、これが一番いかん。「下手でも安全」、それでよかとです。


【参考リンク】
・・・五島自動車学校
〒853-0026 
長崎県五島市浜町424番3

「島へ免許を取りに行く」星野博美

「島へ免許を取りに行く」星野博美

【ネット上の紹介】
愛する猫をなくしたうえに、人間関係はズタズタ。いやな流れを断ち切りたい。日常に小さな風穴を開けたくて向かったのは、島の小さな自動車学校。そこは、山羊や犬やにわとりがいて、馬にも乗れる牧場のような学校だった!人生の示唆に富む運転教習に悪戦苦闘しながらも過ごした数週間。人や動物や車とのふれ合いから見えてきた風景は?読めば、新しい何かに挑戦したくなる名作エッセイ。

[目次]
第1章(それはにわとりですか?
自動車学校で馬に乗る?? ほか)
第2章(新しい生活
初めて車を運転する ほか)
第3章(世界が逆転する
不思議な教科書 ほか)
第4章(車脳
逃避行 ほか)
第5章(仮免
路上デビュー ほか)
第6章(五島は「出る」
それぞれの旅立ち ほか)
第7章(免許取得
地獄篇 ほか)


「悪魔のような花婿」シリーズ再読

2023年06月05日 18時24分12秒 | 読書(小説/日本)

「悪魔のような花婿」シリーズを再読した。
次の10冊からなる。

「悪魔のような花婿」
「遅れてきた求婚者」
「薔薇の横恋慕」
「ダイヤモンドは淑女の親友」
「愛と誘惑の黄金宮」
「魔女たちの仮面舞踏会」
「魔法使いの恋人」
「薔薇の祭典」
「エメラルド島の花嫁」
「プリンセス・フェスティバル」

「遅れてきた求婚者」P206
先ほど聞こえていた「シャキーン・・・・・・シャキーン・・・・・・」という物騒な金属音は何かと思ったら、尼が首にかけていた銀鎖を打ち鳴らす音だった。
悪魔や魔のものは大きな金属音を嫌うとされているので、聖職者は知らない場所に入るとき、身につけている装身具をそのように鳴らす習慣があるのである。

「薔薇の横恋慕」P98
「子どもたちは天使ではないわ。誰の中にも良い芽と悪い芽がある。周囲がせっせと悪い芽に水をやっていたら、その中でそちらが大きく育ってしまうのは当然のことよ」

「薔薇の横恋慕」P139
マザーフィールドの領地を治めることになった夫に若きモード・パイパーが求めたものは、領民たちへの慈悲の心、仕事への情熱、家族への愛情、妻への誠実さといったものだった。
 その全てを完璧に満たしてもらえるとは彼女自身も思っていなかっただろう。だが、ただの一つも与えられないとはさすがに考えなかったはずだ。

「薔薇の横恋慕」P151・・・誤植
(誤)――ヒューを遅い、紋章印を奪った
(正)――ヒューを襲い、紋章印を奪った

「ダイヤモンドは淑女の親友」P273-4・・・エリザベス登場
「そんなに疑うなら彼に直接聞いてみればいいんだわ。――『あなたは本当に記憶をうしなっているんですか、ウイリアム』」
ジュリエットを膝に乗せている娘がいきなり古語ではなしかけてきた。
「『ええ、そうです。あなたの発音はとってもきれいですね。エリザベス』」
(中略)
(エリザベスは順序で言えば11番目の子どもか。ジュリエットと一番仲のよかった姉――シャムロックの修道院に入ったというのはこの子だな。賢そうな顔立ちのきれいな娘だ)

「愛と誘惑の黄金宮」P260
(誤)――ジュリエットを急いで彼に駆け寄った。
(正)――ジュリエットは急いで彼に駆け寄った。

「魔女たちの仮面舞踏会」P194レディ・エリノアのセリフ
「それを否定するつもりはないわ。私は愛を感じたことはないけれど、愛の存在を主張する人々が全員揃って嘘を言っているとも思わないから。幽霊のようなものね。ある人は確かに見たと言い、ある人はただの幻だと言う……。(後略)」

「魔女たちの仮面舞踏会」P204ジュリエットのセリフ
「でも、あの、生意気なことを申すようですけど、わたしにとって、愛の存在を疑うことは自分を疑うことと同じように思われます、王妃さま。両手をながめて、これは本当に自分の手なのかと考えるような・・・・・・わたしは家族から惜しみない愛情を与えられて育ちましたし、それは確かにわたしの一部になっていると感じますの。愛など幻だと否定したら、それを一部としているこのわたしも幻ということになってしまう気がします」 

「魔女たちの仮面舞踏会」P205エヴァンジェリン王妃のセリフ
「愛はたくさんの顔をもった怪物だわ。微笑みを浮かべた美しい顔だけを探すから、愛が見えないのよ」

「魔法使いの恋人」P227
スープの味を知るのに鍋1杯のスープを飲みほす必要はない、という理屈もわからなくはない。最初の1匙2匙でそれが自分の口に合うかどうかは判断できるものだ。

「たんぽぽと卵」P255
「落ちたらまた受ければいい」
 リオンは言った。
「それでもだめなら、他の場所で、あなたにふさわしい他の道を新たに探し始めればいい――エリザベス・スプリング」
 初めて彼からその名前で呼ばれ、エリザベスがかすかに目を見開いた。
(エリザベスを主人公としたスピンオフを読みたい)

【参考リンク】1
「悪魔のような花婿」シリーズ再読

「嘘つきは姫君のはじまり」再読 


「昭和史 戦後篇」半藤一利

2023年06月02日 08時09分36秒 | 読書(昭和史/平成史)


「昭和史 戦後篇」半藤一利

読み返し。
先日の『戦前編』に続き、『戦後編』も読んだ。

敗戦後の変わり身の早さについて
P19
今日まで「一億玉砕」「戦士であるおまえたちがそんなだらしないことでどうする」と横ビンタ張っていた人たちが、次の日から「これからはアメリカだ」「民主主義だ」なんて言い出すんですから、その変わり身の早さにも驚かざるを得ません。

特殊慰安施設協会・RAAの売春婦募集について
P20
特殊慰安施設協会(RAA)がつくられ、すぐ「慰安婦募集」です。いいですか、終戦の3日後ですよ。
「営業に必要なる婦女子は、芸妓・公私娼妓・女給・酌婦・常習密売淫犯らを優先的に之を充足するものとす」
そういうプロの人たちを中心に集めたいということです。内務省の橋下政美警保局長が18日、各府県の長官(当時は県知事を長官と言いました)に、占領軍のためのサービスガールを集めたいと指示を与え、その命を受けた警察署長は八方手を尽くして、「国家のために売春を斡旋してくれ」と頼み回ったというんです。およそ売春を取り締まらなきゃいけない立場の警察が「売春をやってくれ」と頼み回ったなど日本ではじめてのケースだと思います。
(中略)
「池田さんの『いくら必要か』という質問に野本さんが『一億円ぐらい』と答えると、池田さんは『一億円で純潔が守れるなら安い』といわれた」これはあくまで「良家の子女」の純潔です。ちなみに池田さんというのは、当時の大蔵省主税局長でのちの首相、池田勇人です。

P41
天皇とマッカーサー元帥の会話(皇太子(現天皇)の家庭教師を務めたバイニング夫人日記より)
元帥「戦争責任をおとりになるか」
天皇「その質問に答える前に、私のほうから話をしたい」
元帥「どうぞ。お話なさい」
天皇「あなたが私をどのようにしようともかまわない。私はそれを受け入れる。私を絞首刑にしてもかまわない」
これは原文では、You may hang me.となっています。

P71
一方マスコミ・新聞はどうだったのか?・・・作家の高見順さんが次のように怒っている
「新聞は、今までの新聞の態度に対して、国民にいささかも謝罪するところがない。詫びる一片の記事も掲げない。手の裏を返すような記事をのせながら、態度は依然として訓戒的である。(後略)」

P75
11月28日の臨時議会での陸相・下村定大将の謝罪演説
進歩党・斉藤隆夫さんが「日本をこのような事態に導いたことについて陸軍および海軍大臣に所見をうかがいたい」と問う。
(前略)今回のごとき悲痛な状態を、国家にもたらしましたことは、何とも申しわけありませぬ」
つまり、陸軍が悪かったとはっきり言ったわけで、それまで野次がとんでいた議場もこのへんからしーんとなりまして、なかには「もうわかった、やめろよ」といった言葉さえ聞かれたといいます。下村さんはそれでも続けました。
「私は陸軍の最後にあたりまして、議会を通じてこの点につき、全国民諸君に衷心からお詫びを申し上げます。陸軍を解体いたします(後略)」

P158
一説に、幣原(喜重郎)さんが「今後はこういう平和日本にしたい」ということをマッカーサーに言い、感動したマッカーサーが「それはすばらしい。原子爆弾などという殺人兵器でもって戦争を続けていれば人類は滅亡する。日本が率先して軍備を全部捨て、戦争をしないと世界中に宣言するのはすばらしいことだ」と賛同し、それを新しい憲法の中に盛り込んだ――とされてます。いや、逆に幣原さんではなくマッカーサーから言い出したのだという説もあります。

P199
GHQ案・新憲法について、国会でのやりとり
リベラル派だとか社会党には「GHQ案で日本の国はよくなる」と喜ぶ人もいました。面白いのは、共産党がなぜか「軍隊を持たない」「戦争放棄」の条項に猛反対をしたんです。これでは国民の権利である自衛戦争も認められないではないか、と。今の共産党とはずいぶん違いますね。(共産党は戦中戦後、一貫した態度をとっている、と思っていたが、そうではなかった)

P220
ではどうやって、A級戦犯の28人を決めたのか?(中略)検事団にとって非常に役に立った人物が2人いて、1人が自身もA級戦犯である内大臣の木戸幸一さん、もう1人がかつての兵務局長の田中隆吉さんです。

P228
さて、被告席に並んだA級戦犯28人を見ますと、なんと陸軍軍人が15人もいます。それもほとんど軍政方面つまり陸軍省関係で、参謀本部関係はきれいに除外されています。(日本人自身の手で裁判していたら、偏りを少しは解消できたかもしれない)

P245
ちなみにBC級戦犯について申しますと、5702人が告訴され、裁判ののち984人に死刑が執行されました。これは法廷ではなく国別で裁いたもので、イギリスとオランダが一番多いことから、その憎しみの強さがうかがわれます。そして死刑になったすべての人が、靖国神社に祀られました。
(フランス人作家・ピエール・ブールは、「戦場にかける橋」の著者である。戦時中、日本人の捕虜になっている。さらに、この作家は、「猿の惑星」も著している。故に、猿の惑星の「サル」とは「日本人」のこと、と言われている・・・真偽不明)

P238
巣鴨に入れられていた準A級戦犯に鮎川義介(日産コンツェルン創始者)という人がいました。(中略)巣鴨時代には退屈でしょうがなかったので、芝居を作ってみた。配役は、チャーチルが「やり手婆あ」、ルーズベルトは「大金持ちの若旦那」、ヒトラーが「大山師」、スターリンは「因業高利貸し」・・・うまいですね。(中略)これを戦犯の皆が喜んで聞いていたそうです。

P245
東京裁判の意味
①日本人の現代史を裁くため、裏返せば、連合国のやってきたことが正義だったと再確認するためだ、と。
かつて植民地をさんざんつくってきた帝国主義は19世紀の話であって、それを20世紀においてやった日本の考え方は侵略的性格をもつ間違った戦争観であった、と。
②自国民を納得させるための一種の復讐の儀式
③何も知らされていなかった日本国民に事実を教え、侵略的軍閥の罪状を明らかにし、啓蒙すること。
(これを読んでいて思いだすのが、香港返還の際のイギリスのコメント、である。一片の謝罪もなく、「さすが大英帝国」、と私は感じた)

P286
希代の強姦間・小平義雄の死刑について
買い出しなどに出ていた女性をだまして物を奪い、数十人を強姦し、しかも7人を殺した挙句、捕まってこう言ったそうです。「中国従軍の時に覚えたあの味が忘れられなかった」。(小平義雄は特殊な例と思いたいが、戦争の狂気を引き摺りつづけた人は他にもいた、と思う。この当時PTSDという言葉はなかった)

P306
昭和26年4月11日、突如、マッカーサー元帥がトルーマン大統領により罷免された、最高司令官をクビになったという報せがラジオの臨時ニュースで流れました。いやまあ、私など腰が抜けるほど驚きました。
(マッカーサーが解任された時、皆が驚いたという。上村一夫さんの「サチコの幸」は昭和25-26年頃を描いている。第二巻P172に次のように書かれている)
「マッカーサーとかけて何ととく?」
「“へそ”ととく・・・・・・」
「そのココロは?」
「“チン”の上にある・・・・・・」と
いうぐらいエライ人だと思っていたのが 
いとも簡単にクビになってしまったのですから・・・・・・ 


P346
天皇の退位について
天皇陛下はご自分で「退位」について発言されたことが大きく言って3度あります。
①終戦直後の8月29日
②東京裁判の判決が出た時
③講和会議の調印後、国家が独立した時

P350
昭和26年9月8日サンフランシスコ講和条約が締結され、日本は占領が終わり、国家主権を取り戻して独立国となることが世界的に認められました。
吉田茂首相の演説
「外交の権力をもっていない国は亡びるともいいますが、この条約によって国際社会に戻ることになった日本は、真に外交能力をもつ国になりたい」

P475
この年の生活といいますと、昭和30年に発足した日本住宅公団による公団住宅ができはじめます。今では公団住宅というと長屋のようなイメージがありますが、当時は高嶺の花で、ぼこ、ぼこ、と日当たりのいいところに達つじゃありませんか、入れるなんて夢のまた夢のような話でした。家賃は2LDKで3,500円から4,800円、申し込み資格は平均月収25,000円以上(所帯用)。念のために申しますと、当時の国家公務員の上級職の初任給は9,200円でした。この時はやった「ダンチ族」という言葉を命名した「週刊朝日」の7月20日号の調査結果によると、30代の夫婦、子供は1人か2人の核家族で、月収が2~3万円、「電機洗濯機が2軒に1台、電気冷蔵庫は7軒に1台、電気釜は3軒に1台・・・・・・」あったということです。ダンチ族は当時、ものすごいエリートだったのです。

昭和20年代と30年代について
P477
ではその時、なくなったのは何か。戦前から昭和20年代までの日常生活品です。ちゃぶ台、たらい、火鉢、アンカ、柱時計、蚊帳、蠅たたき、家の外に置いてあったゴミ箱、そして縁側(後略)。

戦後、歴代首相の命題
P500
吉田茂、再軍備せず、講和条約を結ぶ
鳩山、ソ連との国交回復
石橋、病で倒れ特になし
岸信介、安保条約の改定
池田、高度経済成長の実現
佐藤、沖縄問題の解決

P528
1970年万国博覧会
「月の石」に人気が殺到して、長蛇の列になった。
「人類の進歩と調和」をテーマにした万博を、これぞ「人類の辛抱と長蛇」の結果であった、なんて冷やかす人もいたわけです。

P536
47年(1972)5月15日、沖縄の施政権が日本に完全に返還され、沖縄県が発足しました。戦後26年たって、ようやく1道1都2府42県が「43県」になったのです。(中略)ともかくこの沖縄返還で日本の戦後は一応、終わったとみていいのではないかと思います。


P566
昭和天皇・マッカーサ会談

    期日 通訳 テーマ
20年 9月27日 奥村勝蔵 天皇の戦争責任
21年 5月31日 寺崎英成 食糧援助、東京裁判
21年 10月16日 寺崎英成 食糧援助、憲法9条、地方巡幸・・・
22年 5月6日 奥村勝蔵 新憲法下での選挙、日本の安全保障、日本経済の現状・・・
22年 11月14日 寺崎英成 沖縄問題
23年 5月6日 GHQ  
24年 1月10日 GHQ  
24年 7月8日 松井明 国内の治安
24年 11月25日 松井明 講話問題、シベリア抑留、ソ連の原爆開発・・・
25年 4月18日 松井明 共産圏の脅威?
26年 4月15日 松井明 儀礼的(お別れ)


【おまけ】
昭和天皇の口癖は、「あ、そう」であるが、米国人には、挑発的な侮蔑語“asshole"と聞こえたようだ。
また、昭和天皇と関係ないが、日本人の発音で“I love you”と言うと、“I rub you" (こすりたい)と聞こえる。
私も、知らずに、この種の誤りをしているかもしれない。 

【参考リンク】
平凡社ライブラリー<br> 昭和史 1926-1945 
「昭和史 1926-1945」半藤一利

【ネット上の紹介】
授業形式の語り下ろしで「わかりやすい通史」として絶賛を博した「昭和史」シリーズ完結篇。焼け跡からの復興、講和条約、高度経済成長、そしてバブル崩壊の予兆を詳細にたどる。世界的な金融危機で先の見えない混沌のなか、現代日本のルーツを知り、世界の中の日本の役割、そして明日を考えるために。毎日出版文化賞特別賞受賞。講演録「昭和天皇・マッカーサー会談秘話」を増補。

[目次]
天皇・マッカーサー会談にはじまる戦後―敗戦と「一億総懺悔」
無策の政府に突きつけられる苛烈な占領政策―GHQによる軍国主義の解体
飢餓で“精神”を喪失した日本人―政党、ジャーナリズムの復活
憲法改正問題をめぐって右往左往―「松本委員会」の模索
人間宣言、公職追放そして戦争放棄―共産党人気、平和憲法の萌芽
「自分は象徴でいい」と第二の聖断―GHQ憲法草案を受け入れる
「東京裁判」の判決が下りるまで―冷戦のなか、徹底的に裁かれた現代日本史
恐るべきGHQの急旋回で…―改革より復興、ドッジ・ラインの功罪
朝鮮戦争は“神風”であったか―吹き荒れるレッド・パージと「特需」の嵐
新しい独立国日本への船出―講和条約への模索
混迷する世相・さまざまな事件―基地問題、核問題への抵抗
いわゆる「五五年体制」ができた日―吉田ドクトリンから保守合同へ
「もはや戦後ではない」―改憲・再軍備の強硬路線へ
六〇年安保闘争のあとにきたもの―ミッチーブーム、そして政治闘争の終幕
嵐のごとき高度経済成長―オリンピックと新幹線
昭和元禄の“ツケ”―団塊パワーの噴出と三島事件
日本はこれからどうなるのか―戦後史の教訓
昭和天皇・マッカーサー会談秘話