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「ヤクザ・チルドレン」石井光太

2022年02月08日 09時00分33秒 | 読書(風俗/社会/貧困)


「ヤクザ・チルドレン」石井光太

親がヤクザだと、どんな「家庭」になるのだろうか?
子どもはどう育つのだろうか?
いくつもの家庭、何人もの子どもたちが登場するか、おおむね悲惨な人生を送っている。
でも、泣ける話もあったので、紹介しておく。

たまたま面倒を見てくれた親分とスナックのママの話
P180~182
親分は店のママに亜夕美を紹介した。
「この女の子、家が貧乏なんだけど、なんとか高校へ行きたいって言ってるんだ。このご時世、高校くらい卒業しておかねえと何にもできねえだろ。できることなら夢を叶えてやりてえ。そこでママにお願いなんだが、この子を店で雇ってやってくれねえか。こんな若い子がいれば客は喜ぶし、週6日勤務ならそれなりの金になるだろ。ママはこの子が稼いだ金で学費を払ってくれればいい。人助けだと思って力になってくれ」
(中略)
こうして亜夕美は、女子高生とスナックのホステスの2足のわらじを履いて生きていくことになった。
(中略)
亜夕美は学業と仕事の両立がうまくいかなくなったことに加えて、プライベートの悩みも重なり、学校での勉強が嫌になった。彼女は(スナックの)ママに「もう高校は中退する。学費払わなくていいから」と言って行かなくなった。
数ヵ月が過ぎ、3月になった。ママが急に亜夕美を呼んで言った。
「そういえば、高校はそろそろ卒業式でしょ。一緒に行かない?」
亜夕美は意味がわからなかった。すでに高校は中退しているのだ。
「なんで中退した高校に行かなきゃいけないの?それに卒業式なんて終わってるでしょ」
「いいじゃん、時間があるから行ってみようよ」
ママは渋る亜夕美の手を引いて、通っていた高校へ行った。すると、驚いたことに、教員が出て来て、亜夕美の卒業証書を渡してくれたのだ。
後で聞いた話では、ママは亜夕美が学校へ行かなくなった後も、学費をしっかり納めていたそうだ。

P168
そもそも暴力団の構成員は、しつけに対する考えがゆがんでおり、他人ばかりでなく我が子にも暴力を振るうことが多い。母親についても同様で、殴る蹴るという行為によって子供を言いなりにしようとする傾向にある。

【参考図書】
過去に、少なからず石井光太作品を読んできた。
まず薦めるとしたら、次の2冊。

「レンタルチャイルド 神に弄ばれる貧しき子供たち」石井光太
「地を這う祈り」石井光太
「感染宣言」石井光太
「飢餓浄土」石井光太
「ルポ餓死現場で生きる」石井光太
「遺体 震災、津波の果てに」石井光太
「ニッポン異国紀行 在日外国人のカネ・性愛・死」石井光太
「アジアにこぼれた涙」石井光太
「戦場の都市伝説」石井光太
「ノンフィクション新世紀」石井光太/責任編集
「世界の産声に耳を澄ます」石井光太
「浮浪児1945- 戦争が生んだ子供たち」石井光太

【ネット上の紹介】
差別、貧困、虐待、離婚、ドラッグ―“暴力団の家庭”のなかには社会のあらゆる問題が詰まっている。生まれながらにして“罪の血”を背負った人間はどのように生きるのか。
第1章 密売人の家(父も母も夫も全員売人
学生ヤクザと呼ばれて ほか)
第2章 稼業を継ぐ(右翼は仕事じゃなく趣味
十九歳で二児の母、夢は古紙回収 ほか)
第3章 家から逃れる子供たち(刑務所から届いたパパの手紙
ヤクザとLGBT)
第4章 その愛は幻か(お父さんと一緒のお墓に入りたい
刺青と少年野球 ほか)
第5章 夢も希望もない(ヤクザにはなるな
生きるために故郷を捨てた)

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