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「遺体 震災、津波の果てに」石井光太

2011年11月23日 07時55分07秒 | 読書(ノンフィクション)


「遺体 震災、津波の果てに」石井光太

震災関連の読書。
3.11以降、何冊か読んできたが、リアリティではこれが一番。
ドキュメンタリータッチで、人々の行動と心理が詳細に描かれる。
その時、人はどう感じ、どう動いたか?
様々な人物にインタビューし、行動を共にしながら、「遺体」をキーワードにルポルタージュを作っている。

P262
東日本大震災によって死亡した人の数は、行方不明者も合わせて約2万人。一瞬のうちにこれほどまでに膨大な遺体があちらこちらに散乱したのは、六十六年前の太平洋戦争後初めてのことであり、震災に限れば関東大震災から八十八年の間で最大の規模の犠牲者数だ。

千寿院の住職惠應の話。
P228
ある老婆がつぶやいた「神も仏もない」という言葉についうなずいて、愚痴を漏らした。
「もう仏様なんて何の役にも立たないのかもしれないな・・・・・・」
仏に祈ったり、頼ったりすることの意味がもうわからなかった。
すると、同じ部屋にいた長女がふり返り、惠應を睨みつけた。彼女は強い口調でこう言った。
「お父さん、違うよ。仏様の教えがあったから私たちはこの逆境に耐えていられるんじゃない?今頑張れているのは、仏様の教えがあるお陰じゃないの?」
胸をつかれたような思いだった。たしかにこの苦境のどん底でも避難者を受け入れ、守ろうとしたのは仏の教えがあったからだ。自分はずっと仏に支えられてきたことを忘れていたのだ。


【著者の言葉・リンク】
遺体を映すべき?
動画&トークイベント
『遺体――震災、津波の果てに』刊行記念著者インタビュー
新刊発売 『遺体――震災、津波の果てに』

【ネット上の紹介】
2011年3月11日。40000人が住む三陸の港町釜石を襲った津波は、死者・行方不明者1100人もの犠牲を出した。各施設を瞬く間に埋め尽くす、戦時にもなかった未曾有の遺体数。次々と直面する顔見知りの「体」に立ちすくみつつも、人々はどう弔いを成していったのか?生き延びた者は、膨大な数の死者を前に、立ち止まることすら許されなかった―遺体安置所をめぐる極限状態に迫る、壮絶なるルポルタージュ。
[目次]
プロローグ 津波の果てに;
第1章 廃校を安置所に;
第2章 遺体捜索を命じられて;
第3章 歯型という生きた証;
第4章 土葬か、火葬か;
エピローグ 二カ月後に

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