【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「子どもたちの階級闘争」ブレイディみかこ

2018年04月30日 19時56分11秒 | 読書(海外事情)

「子どもたちの階級闘争」ブレイディみかこ

2017年 第16回 新潮ドキュメント賞受賞作品。
英国在住の保育師が、英国の託児所について書いている。
結果として、英国事情、英国論ともなっている。
想定以上に、充実した内容だった。

P39
ふとしたはずみでマヤがオレンジジュースのコップをひっくり返してしまった。
 ものすごい剣幕で父親が怒鳴り始めた。(中略)
 父親が握りしめているTシャツからジュースのしずくが垂れ、その脇にみるみる大きな水たまりが広がった。マヤが失禁したのである。わたしは椅子から立ち上がって親子のほうに飛んでいった。
「もう十分でしょう」
 私はマヤの手を引いて託児所に連れてゆき、下着とズボンを着替えさせた。
 涙がぽとぽと床に落ちていたが、彼女は声を出さなかった。声を出さずに泣く子どもたち。こういう子どもたちをわたしは知っている。

P80-81
「移民の子どもたちのほうが明るいというか、彼らのほうが幸福な子どもたちに見えるというのは不思議な発見です」
 大学で心理学を学んでいるというヴォランティアの青年がそう言った。
「移民の家庭は、親も子もわかりやすい反応をするからね」
 私が言うと、ミドルクラス風の美しい発音で英語を話すその青年は言った。
「どんなプアでも、過去より未来のほうがよくなるんだと信じられる人々の方が幸福度は高い。でも、それがこんな年齢の子どもたちまで当てはまるとは……」

P86
移民や難民について「よその国の福祉で楽に暮らすために来てる」などという人はあまりに現実を知らなすぎる。欧州に来る移民は自らの能力を発揮するために国境を越えて来る、勤勉で上昇志向の強い人々だ。

P94-95
「ねえ、あなたも外国人だからわかるでしょう?」
 母親の一人がわたしのほうを見て薄笑いしながら言った。
「は?何がですか?」
 私はそう言ってフォークの脇にプラスティックのナイフも突き立てて言った。
「私もミカコも九年前からここで働いています。あの頃は、スタッフも保護者も子どもたちもほとんど英国人でしたから、私たち外国人はマイノリティでした。でも、私たちはまったく他のスタッフと同じように迎えられました。どこの人間でも、どんな人だろうと、どんな問題を抱えていようと歓迎する。ここはそういう理念のもとに作られた託児所です。たとえスタッフが変わっても、私たちのスピリットは変わりません」
 友人が前方でぴしゃりとそう言った。(この友人はイラン人の女性だ)

P103
 アイーシャとケリーにはよく似たところがあった。二人とも、倒れようが殴られようが泣かないのだ。普通、幼児というものは、痛い目にあったり怖い目にあったりすると、声をあげて泣いて周囲の人々にそれをわからせようとする。これは、まだ周りの大人に庇護されなければ生きていけない段階の未熟なヒューマンビーイングの生きる知恵でもあり、自己を保護するための生存本能とも言える。
 だが、アイーシャとケリーにはそれがなかった。まるで周囲の大人たちに何の期待もしていないようだ。

P155
「右とか左とかいうイデオロギーは、結局、庶民を貧しくするものにしかならないんじゃないかと思うときがある」

【蛇足】
本作品は昨年から知っていた。要チェック作品だな、と。
急に「いま読まないと」、と思ったのが、大宅壮一賞の候補になったから。(今は名前が変わって、大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞、というそうだ)
もし受賞したら、図書館の予約、激しい順番待ちになってしまう、早めに借りておこう、と。それが今回の事情だ。(読んで良かった!)

大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞|日本文学振興会 - 文藝春秋

【おまけの感想】
海外事情、それも英国の事情を描いた作品と言えば、木村治美さんの「黄昏のロンドンから」を思い出す。(旧い!)
その次に思い出すのが、高尾慶子さん。
リドリー・スコット氏の家政婦となって(!)英国事情を書いた。

そして今回が、保育師・ブレイディみかこさんだ。
私の中では、そういう流れになっている。
 

【ネット上の紹介】
地べたのポリティクスとは生きることであり、暮らすことだ―在英20年余の保育士ライターが放つ、渾身の一冊。
1 緊縮託児所時代 2015‐2016(リッチとプアの分離保育
パラレルワールド・ブルース
オリバー・ツイストと市松人形
緊縮に唾をかけろ
貧者分断のエレジー ほか)
2 底辺託児所時代 2008‐2010(あのブランコを押すのはあなた
フューリーより赤く
その先にあるもの。
ゴム手袋のヨハネ
小説家と底辺託児所 ほか)


交野山

2018年04月29日 20時15分27秒 | 登山&アウトドア(関西)

交野山に登ってきた。
暖かくてハイキング日和。

くろんど荘の近く

交野山へはもう少しで到着

やっと到着

山頂を振り返る

いきものふれあいセンター横の池…ここからさらに国見山を目指す

【資料】
9:40自宅出発(自転車で)~10:05京阪枚方市駅~10:18京阪私市駅(210円)
 ↓
(10:20私市駅-月輪の滝-すいれん池-くろんど荘-八ッ橋-榜示-交野山-いきものふれあいセンター-トンネル-国見山-14:00JR津田駅…ハイキング3時間40分)
 ↓
14:00に津田駅に到着(バス停の横にパン屋があり店内で飲食可能、ピザを頼むと温めてくれる+アイスミルクを飲みながらバスを待った…ミックスピザ206円、アイスミルク258円)
14:15JR津田駅前から京阪バスで京阪枚方市駅南
16:00自宅到着(途中で買物立ち寄り)


「わたしが妹だったとき,こども」佐野洋子

2018年04月26日 19時46分34秒 | 読書(エッセイ&コラム)

「わたしが妹だったとき,こども」佐野洋子

北京で過ごした幼い日々を描いた童話と エッセイ。

文庫本あとがきより
P267
子供はその日その日しか生きていない。先のことを心配するにしても、せいぜい、親にばれるまでの時間でしかない。想像する源の経験が絶対的に不足しているからである。だから大人の方が、ずっと思いわずらうことが多く不安も絶望も盛り沢山である。
 にもかかわらず、子供の時の気持ちを思い出すとどっと疲れる。経験の不足はその時その時をそれ一筋にかかり切るのである。それが一瞬のことであってもそれにしか、かかり切る事しかなすすべがないというのはつらいことであった。めいっぱいそのことにいのちがついやされていったのだ。大人になってそんな事は出来ない。あれこれわき道が用意されていて、大人は大人の右往左往があるのだ。

【ネット上の紹介】
わたしとお兄さんは、だれよりも気の合う遊びなかまでした。わたしに弟ができ、また弟ができたのに、いつもお兄さんとばかり遊んでいました。お兄さんが、ある日、遠くへいってしまうまで―。幼くして亡くなった兄と、妹だった「わたし」の日々を絵と文で綴った、珠玉の短篇童話集。北京で過ごした幼い日々を回想したエッセイ「こども」を併録。
わたしが妹だったとき(はしか
きつね
かんらん車
しか
汽車)
こども


「わが家は祇園の拝み屋さん」望月麻衣

2018年04月25日 20時43分07秒 | 読書(小説/日本)

「わが家は祇園の拝み屋さん」望月麻衣

著者は北海道出身だけど、京都弁を駆使して作品を書いている。
それもそのはず、京都在住だから。
さらにネイティブの方にチェックもしてもらっている。

この作品のツボは、京都の中心部・祇園を舞台にしていること。
観光名所や、知ってる地名がいろいろ出て来る。
さらにミステリ仕立てで展開する軽快なストーリー。
軽く読めて楽しめる。

【ネット上の紹介】
東京に住む16歳の小春は、ある理由から中学の終わりに不登校になってしまっていた。そんな折、京都に住む祖母・吉乃の誘いで祇園の和雑貨店「さくら庵」で住み込みの手伝いをすることに。吉乃を始め、和菓子職人の叔父・宗次朗や美形京男子のはとこ・澪人など賑やかな家族に囲まれ、小春は少しずつ心を開いていく。けれどさくら庵は少し不思議な依頼が次々とやってくる店で!?京都在住の著者が描くほっこりライトミステリ!


「室町繚乱」阿部暁子

2018年04月24日 20時42分51秒 | 読書(歴史/時代)

「室町繚乱」阿部暁子

思った以上に面白かった。
時代背景は南北朝・足利義満の頃。
室町時代を舞台にした作品は少ない。
このややこしい時代を分かりやすく、しかも面白く表現している。
ヒロインは南朝の帝の妹宮・透子、相手役は少年猿楽師・世阿弥、そして足利義満。
さらに、楠木正儀、細川頼之、斯波義将も登場。
よく調べている。秀逸、と感じた。
この著者、今後要チェック。

P153
「確かに皇女とは本来ひと目をさけて暮らすもので、こうして姿をさらしたり宮を抜け出たりするわたしは、少しだけ皇女らしくないかもしれないわ。でも、考えてみてほしいのだけど、昔から今日までに、一体何人の皇女がいたと思って?その数えきれないほどの皇女の誰一人として、わたしのように志を持って外にとび出した者がいないと言えるかしら。そんなことは、ないはずよ。単に話が伝わっていないだけで、きっと一人か二人、いえ十人くらいは、絶対にいたと思うわ」

【疑問】
吉野から京都まで2日で来た、と書かれているが、速すぎないか?
約100キロとして、1日25キロとしても、4日掛かる。
荷車に乗せてもらったとあるが、それでも速いように思う。

【おまけ】

比較的最近読んだ室町時代を舞台にした作品といえば、「室町無頼」を思い出す。

【ネット上の紹介】
京と吉野に二人の帝が存在した、南北朝の時代。南朝の帝の妹宮・透子は、北朝に寝返った武士・楠木正儀を連れ戻すべく、乳母と二人きり、吉野から京へと乗り込む。京についたとたん人買いに攫われてしまった二人を救ってくれたのは、猿楽師の美少年・世阿弥と、透子たちの宿敵である足利義満で…。世間知らずの姫君が混迷する時代の中で見たものは。瑞々しい筆致で描く書き下ろし時代小説。


「定年オヤジ改造計画」垣谷美雨

2018年04月23日 20時10分42秒 | 読書(小説/日本)

「定年オヤジ改造計画」垣谷美雨

垣谷美雨さんの新刊。
大手石油会社を定年退職した庄司常雄。
退職したものの、やることがない。
妻は、夫を避けようとする。


P82
「(前略)妻は夫といっしょにいることがストレスなんだ。だが男は独りでいることがストレスになる」
「となると、夫婦に接点がないじゃないか」
「もとは他人なんだから、もともと接点なんかないんだよ」
 だったらそれまでの生活は錯覚の上に成り立っていたのだろうか。

男って、勤めていた会社や役職を引きずって、新たな友人を作れない。
これは年齢もあるかも。
若い時に引っ越したら、子どもの絡みもあって、知り合いも増える。
歳をとって新しい環境に置かれても、適応できない。
本書は、定年あるある、の書である。

定年後、妻と旅行をしようとしても、妻は女友達と行ってしまう。
亭主とは行こうとしない。
世の中には、歳をとって一緒に旅をしたり仲良し夫婦、っている。
それは、寝室が同じ夫婦。
アンケートではそうなっているようだ。

【ネット上の紹介】
大手石油会社を定年退職した庄司常雄。夢にまで見た定年生活のはずが、良妻賢母だった妻は「夫源病」を患い、娘からは「アンタ」呼ばわり。気が付けば、暇と孤独だけが友達に。そんなある日、息子夫婦から孫二人の保育園のお迎えを頼まれて…。崖っぷち定年オヤジ、人生初の子守を通じて離婚回避&家族再生に挑む!


ポンポン山▲678.9m

2018年04月22日 20時15分01秒 | 登山&アウトドア(関西)

久しぶりにポンポン山に登ってきた。

登山道がリニューアル

右が旧道、左が新しい登山道

赤線が新しい道

山頂で犬を見かけた、毛皮で暑かったでしょう、登頂ご苦労さんです

【おまけ】
神峰山寺へのアクセスも新しい道路が開通していた。
但し、駐車場は工事中…工事現場の方に聞いたら、GW頃には駐車場が完成するんじゃないか、と。


「ヒマラヤ 生と死の物語 奇跡の生還と遭難の悲劇」池田常道

2018年04月19日 21時14分36秒 | 読書(山関係)
「ヒマラヤ 生と死の物語 奇跡の生還と遭難の悲劇」池田常道

 池田常道さんは前作で「現代ヒマラヤ登攀史」を上梓されている。
「現代ヒマラヤ登攀史」は、盛りだくさんに情報が詰まっている。資料としての価値あり。
 一方本作は、ヒマラヤにおける印象的なエピソードを掘り下げて詳細に書いてある。
読んで面白いのはこちらのほうである。

P4-5
生死の境目は、とくにヒマラヤのような極限の環境の下では、文字どおり紙一重に過ぎない。落ち度はなかったのに悲惨な結果に終わったもの、失敗を重ねてなお幸運な生還を果たしたもの、ふたつが混在している。どちらがいいのか悪いのか、そんな判定はしていない。
 ただ、そこに至ったプロセスを、資料に基づいて、できるだけ忠実に再現しようと考えた。

P19
前回最高到達点まで登ったフィンチは呼ばれなかった。彼が英国本土ではなく、植民地(オーストラリア)の出身地だったからだといわれる。(登山とナショナリズムの関係は興味深いテーマだ。なんだかんだ言って、登頂者は国旗を立て、あるいは持って、写真を撮る)

P43
しかし万一、二人が初登頂して帰還したとしても、当時のドイツ社会はドイツ人以外の成功を、もろ手を挙げて喜んだかどうか。後年のブールやメスナーの例を思うとはなはだ疑問である。(メスナーはイタリア・南チロル出身だが、そこはドイツ語圏なのでドイツ登山隊に呼ばれる。ご存じのように、ナンガ・パルバットで弟を失い、その時の対処で十数年のマラソン裁判となる。91年ヘルンリヒコッファーが75で死去したのち遺族と和解。メスナーの名誉は回復され「赤い信号弾」も復刊。さらに「裸の山」も刊行。P109を読んでみて)

【おまけの感想】
本書が興味深いのは、内容もさることながら、面識ある方が複数登場すること。
Mさんとは、柏木で一緒に酒を飲んだし、エピソードも直接聞いた。
Eさんには、城ヶ崎で会った時、伊豆の観光図書をいただいた。「観光好きでしょう」、と。
お二人とも酉年である。

【参考図書】

現代ヒマラヤ登攀史8000メートル峰の歴史と未来

【誤植】
P231
アンデスヤカフカスなど
  ↓
アンデスやカフカスなど
(校正者見逃した?)

【ネット上の紹介】
登山史に刻まれた命の軌跡。
マロリー、アーヴィンの謎―エヴェレスト 1924
ジルバーザッテルの敗走―ナンガ・パルバット 1934
人類初の栄光の陰に―アンナプルナ 1950
高所キャンプからの脱出―K2 1953
メスナー兄弟の下降―ナンガ・パルバット 1970
人食い鬼からの脱出―バインター・ブラック 1977
見捨てられた攻撃隊―ミニヤコンカ 1982
日本人無酸素登頂の葛藤―エヴェレスト 1983
ブラックサマーの生還者―K2 1986
六千メートルの宙吊り救出作戦―トランゴ・タワー 1990
公募登山隊の破綻―エヴェレスト 1996
北壁からの生還―ギャチュン・カン 2002
七四〇〇メートルの国際救助隊―アンナプルナ 2008

「問題があります」佐野洋子

2018年04月17日 21時17分52秒 | 読書(エッセイ&コラム)

「問題があります」佐野洋子

佐野洋子さんと聞いて、すぐピンとくるのは、絵本好きな方でしょう。
「百万回生きたねこ」の著者として有名。
絵本作家としか認識してなかったが、大間違い。
味のある文章で感心した。

それもそのはず、相当な読書家で、様々な経験も積んでいる。
1938年北京に生まれ、その後、引き揚げ。
武蔵野美大に学び、後に谷川俊太郎氏と結婚、その後、離婚。
母とはずっと確執があったが、母が認知症になって、和解。

P34
一昨年の夏、93歳で母が死んだ。
死ぬまでの十年以上、痴呆だった。
正気の母親と私は、実に折り合いが悪く、母を好きだったことはなかった。
死んだ人は皆いい人である。

惚けてからの母と著者の会話
P79
「ねえ、母さん、私もうくたびれたよ。母さんもくたびれたよね。一緒に天国に行こうか。天国はどこにあるんだろ」。
 母は言った。「あら、わりとそのへんにあるみたいよ」。

P47
書籍には、間違いなく人類の知恵がつまっているものであるが、同時に毒も盛られているのである。本から離れられない人間は、その毒に魂を吸われているのである。

P98
芸術と信仰ほど、水と油の様に反発するものはないと私は思っている。芸術とは、捨てるに捨てられない自我が生むものである。信仰とは自我を捨てるものではないか。
 芸術は大きな真実と大きな嘘を含むものである。
 そして表現されたものは残り、人間は死ねばその人間性もほろびる。才能と人格はその才能が大きければ大きい程無関係のような気がする。

枕草子と源氏物語の比較をしている
P114
源氏はあまたの女に情けをかけながら1人として幸せにしていない。若紫も嫉妬に苦しんでみじかい生涯を終えた。

P166
夫婦は中からは容易に破れるが、外からつっついて壊そうとしても決して壊れないものである。
妻子持ちの男と不倫をするお姉ちゃん、やめときなさい。骨折り損です。
多分それは、愛ではなく情だからである。愛は年月とともに消えるが、情は年月と共にしぶとくなるのである。
夫婦とは多分愛が情に変質した時から始まるのである。情とは多分習慣から生まれるもので、生活は習慣である。
離婚した友人夫婦が、何年かして、ある結婚式で、顔を合わせた。式が終わった時、もと亭主が、もと女房に「おい、帰るぞ」とつい言ってしまい、もと女房も「はいはい」とあとをついて行ってしまったそうである。
私は二度目の亭主に、前の亭主の名前で呼びかけてしまうことがあった。


手元にある絵本を読み返した。
やはり良かった。
他の作品も読んでみたくなった。

【ネット上の紹介】
中国で迎えた終戦の記憶から極貧の美大生時代まで、夫婦の恐るべき実像から楽しい本の話、嘘みたいな「或る女」の肖像まで。愛と笑いがたっぷりつまった極上のエッセー集。

1(薬はおいしい
お月さま
「問題があります」まで ほか)
2(大いなる母
いま、ここに居ない良寛
子どもと共に生きる目 ほか)
3(北軽井沢、驚き喜びそしてタダ
幸せまみれ
役に立ちたい ほか)
4 特別附録(或る女)


「昭和トラベラー」北見けんいち

2018年04月14日 20時45分29秒 | 読書(マンガ/アニメ)
立ち読みする
「昭和トラベラー」北見けんいち

あの「釣りバカ日誌」の北見けんいちさんが、昭和をイラストで再現。
かつて赤塚不二夫のアシスタントをしていたので、その頃のエピソードも披露されている。。


フジオ・プロは、赤塚先生がアイデアとコマ割りと人物のアタリを切って、高井さんが鉛筆でしっかり下描きをし、古谷三敏さんがペンで線を入れ、ボクがベタやホワイトを入れるという流れ作業でした。しかも、ダヨーンやイヤミやデカパンなど高井さんしか描けないキャラもたくさんいたので、高井さんがいないと原稿ができないのです!!


さあ、DDTの時間です!!連れてこられた部屋には保健所の人と米兵が立っていて、生徒1人1人に、寄生虫を駆除するためのDDTという殺虫剤を吹きかけます!!

戦後70年が経ちましたが、終戦2年目の夏の様子を描いてみました。いわゆる「闇市」です。

【ネット上の紹介】
フルカラー厳選77画&濃密エッセイ。満州で生まれ、日本に引き揚げ東京で親戚の家を転々とし、ついに母と弟と暮らし始めた北見少年は、日本経済とともに成長し、激動の時代をのんびりと生きていきます。あの頃の昭和の風景と出来事を12か月順にフルカラーで77画収録しています。漫画誌ビッグコミックで10年以上にわたり連載している好評作品、待望の単行本化です。昭和の出来事と暮らしとココロを美麗イラストとエッセイで綴る、笑えて泣ける新感覚単行本です。

「英語は「やさしく、たくさん」」伊藤サム

2018年04月13日 20時35分00秒 | 読書(英語)

「英語は「やさしく、たくさん」」伊藤サム

P42
大人にとって、語学学習の根本的障害は、「もう子供ではない」こと、つまり脳が完成し成長がほぼ止まり、新しいことは覚えにくくなったことでしょう。英語についても、何度勉強しても同じミスを繰り返すようになり、上達しなくなります。こういったpermanent error patterns状態になることを、言語学者はfossiize(化石化する)、と呼んでいます。
これは英語力がいつまでたっても中級のまま止まってしまった、といった状態です。化石化の原因は詳しくは分かっていませんが、脳の成長、母語(日本語)による干渉、学習法などが関係しているとされています。

P46-47
脳の研究が進むにつれ、人間の脳は70代になっても80代になっても、必要があれば変わろうとする性質があることが分かってきています。(中略)
脳をさらに成長させるには、新しいこと(英語)にチャレンジする意欲を持ち、正しい方法で勉強し、脳に刺激を与え続けることが大切だと思います。(中略)
一度成長が止まった脳に、もう一度エンジンをかけるには、「たくさん」の刺激が必要です。

P47
日本人の脳は、もう「日本語の発音・文法・単語のみが正しい」ということに凝り固まっています。「新しいことを覚えても、すぐ忘れてしうまう」と嘆く方はたくさんおられますが、脳には日本語への復元力があるのではないでしょうか。(中略)
この復元力に似たことを言語学者は「母語干渉」(first language interference)と呼んでいます。

P67
学者の論文を見ても、実用レベルに達するまでに要する学習時間数は3000時間などとあるので、妥当な期間だろうと思っています。もし毎日、起きてから寝るまで英語漬けになったとすると、半年でこの時間数に達します(1日16時間×183日=2928時間)。

【蛇足】
本書を読んでいて、クライミング練習に当てはめて考えてしまった。
ある程度のレベルになると、いくら練習しても上達しない。
脳と身体が「もう十分」と判断し、「これ以上やると身体が壊れるよ」と信号をだす。
「化石化」「母語干渉」である。
これを打破するには、「たくさんの刺激」と言うことだろう。
(でも、上達する前に、故障か怪我をするかも)
本書を読んでいて、そんなことを考えた。

【ネット上の紹介】
今度こそ、本気でやり直したい人のために。日本で長いこと行われていた英語の勉強スタイルは、訳読式の「難しく少し」でした。これを続けてきて、伸び悩んでいませんか?そういう人は今こそ、「やさしくたくさん」に転換すべき時です。やさしい教材に大量に接すれば接するほど、脳に与える刺激は大きく、効果バツグンなのです。今さらやさしい教材に戻るのはプライドが許さないかもしれませんが、そのプライドを捨てて、今一度基礎に戻ってみて下さい。実はそれこそが、英語習熟への一番の早道なのです。
第1章 やさしくたくさん、とは?
第2章 今すぐできる「CDはかけっぱなし」
第3章 英語が話せないのは「化石化」のため
第4章 英語マスター超特急―私の体験から
第5章 英語「そのもの」を学んできましたか?
第6章 やさしいイマージョンで英語脳を伸ばす
第7章 すぐ英語が必要な人は基礎+専門用語
第8章 やさしくたくさん聞く
第9章 やさしくたくさん読む
第10章 やさしくたくさん話す
第11章 やさしくたくさん書く


「官僚の責任」古賀茂明

2018年04月12日 20時09分48秒 | 読書(現代事情)

「官僚の責任」古賀茂明

元・通商産業省(現・経済産業省)官僚による官僚の生態を暴いた作品。

P54-55
これだけ我慢強く、まじめで、勤勉な国民がそろっているにもかかわらず、将来に希望をもてない国になってしまったのは――政治の責任もあるが――やはり官僚の責任が大きい。政治家と違って身分が保証されている官僚は、長期的視野に立って物事を考えられたはずだからだ。それなのに官僚は、将来訪れるであろう問題に対して、なんら効果的な対策を施さなかった。

P208
それにしても、経産省や保安院の幹部は、津波の基準を甘くした責任者である。そんな人間たちの言うことは信じられないし、その責任を問わない大臣も信用できるわけがない。
さらに、電力会社に多くの天下りを送り込んでいる現状を見るかぎり、経産省は電力会社と癒着していると思うのが自然な感覚だ。

【ネット上の紹介】
「霞が関は人材の墓場」―著者はそう切り捨てる。最高学府の卒業生、志を抱いて入省したはずの優秀な人間たちが集う日本最高の頭脳集団。しかし彼らの行動規範は、「国のため」ではなく「省のため」。利権拡大と身分保障にうつつを抜かし、天下りもサボタージュも恥と思わない…。いったいなぜ官僚たちは堕落の道をたどるのか?逼迫する日本の財政状況。政策提言能力を失った彼らを放置すると、この国は終わる。政官界から恐れられ、ついに辞職を迫られた経産省の改革派官僚が、閉ざされた伏魔殿の生態を暴く。
【目次】
第1章 「政治主導」が招いた未曾有の危機(早まった日本崩壊のカウントダウン
テレビドラマ程度の対応策すら実行できなかった政府 ほか)
第2章 官僚たちよ、いいかげんにしろ(発送電の分離は十五年前からの課題だった
原発事故の一因は経産省の不作為にあり ほか)
第3章 官僚はなぜ堕落するのか(改革派から守旧派へ転じた経産省
規制を守ることが使命という「気分」 ほか)
第4章 待ったなしの公務員制度改革(増税しなければ国は破綻するという脅し
官僚一人のリストラで失業者五人が救われる ほか)
第5章 バラマキはやめ、増税ではなく成長に命を賭けよ(ちょっとかわいそうな人は救わない
年金支給は八十歳から? ほか)


「夕暮れへ」齋藤なずな

2018年04月10日 21時15分01秒 | 読書(マンガ/アニメ)
 「夕暮れへ」齋藤なずな

何年も前に新刊パトロールに登録していた。
しかし、いっこうに出版されず。
もう創作活動をやめたのかな、と。
ほとんど諦めていたら、今回の出版。
嬉しいかぎりだ。即購入。

内容は、現在入手困難となっている「片々草紙」から8作品(90年代の作品)、また近作2本が収録されている。
「トラワレノヒト」2012年12月発行「キッチュ」より
「ぼっち死の館」2015年12月発行「アックスVol.108」より
この2作品がすばらしかった。
20年ぶりなのに、衰えるどころか進化している。
漫画好きな方には、特にお薦めします。


…・あんたには長いこと隠していて悪かったけど
実は私――
アウン・サン・スー・チーなの

ボケて一皮むけたな、あの性格
お体裁がなくなった分よりあらわになったよネ

死の島?!
そんなもんあってたまるもんですか!!

ご存じとは思うが、アルノルト・ベックリンの「死の島」がモチーフになっている
死の島 (ベックリン) 

こうなってくると……
……
……
スタップ細胞もあってよかったような気がしますね

結婚って
しないのも大変だけど
しても大変ね

【おまけ】
近藤ようこさんの帯の推薦文。
「こんな大人の漫画読んだことない。今までいろいろあって、これからもいろいろある、私たちの人生の物語。」
解説が呉智英さん。
この二作は、ともに老いと死がテーマである。齋藤なずな自らがその年代に入り、先述のように家族の介護や見取りを経験したからであろう。両作とも、人間の奥底にひそむエゴが死を前に噴出する様が辛辣なまでに描かれる。

【関連作品】


【ネット上の紹介】
葛藤、嘆き、喜び等、かあらみあう人間の煩悩を、巧みな人物描写で細やかに丁寧に描かれた人間ドラマは絶品! 恋愛、夫婦関係、介護、孤独な老人、と重たくなりがちなテーマを、気取らず自然体で善も悪も織り交ぜて描かれた作品は、豪快な生命力さえ感じてしまう! 
2017年より、『ビッグコミックオリジナル増刊号』にてシリーズ連載『ぼっち死の館』を開始、と70歳をすぎてもマンガ表現に力を注ぐ齋藤氏、日本の漫画界において、忘れてはならない、今年イチオシの作家です!


「沸点桜」北原真理

2018年04月09日 20時08分53秒 | 読書(小説/日本)

「沸点桜」北原真理

馳星周バイオレンスを桐野夏生が描いたような作品。
面白さのツボは、性格も年齢も異なる女性2人が逃亡し過去を隠し生活する、って設定だ。
これだけで、十分おもしろい。
ミステリとしては多少ムリやり感があるが、作品に勢いがある。
一気に読ませるベクトルである。
感心した。

P43
「あれ、何て山なの」
「唐沢岳、右から三ツ岳、水晶岳、槍ヶ岳、穂高」
(これらを眺める場所ってどこだろう?水晶岳、って野口五郎岳の陰になって見えないのでは?)

【蛇足】
ミステリって作者も読者も「意外性」にこだわるように思う。
別に、ムリに「意外性」を作らなくてもいいのでは?
十分おもしろいんだから。

【ネット上の紹介】
新宿歌舞伎町でセキュリティをするコウは、生きるためなら手段を選ばないしたたかな女。元情夫のシンプの指示で、風俗店“天使と薔薇”から逃亡した淫乱で狡猾な美少女ユコを連れ戻しに成城の豪邸へと向かう。そこには敵対する角筈の殺し屋たちが待っていた。窮地を躱したコウはユコを連れ、幼いころに暮らした海辺の団地に潜伏する。束の間の平穏、団地の住民たちとの交流、闇の世界から抜け出し、別人に生まれ変わった危ない女とやっかいな女の奇妙な共同生活。幼いころから虐待され、悲惨な人生を歩んできた二人に、安息の日々は続くのか―。第21回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

「80’s」橘玲

2018年04月08日 20時37分45秒 | 読書(伝記/自伝/評伝)


「80’s」橘玲

思った以上におもしろかった。
いままで、著者の作品(小説&ノンフィクション)を何冊か読んできたが、一番おもしろかったかも。
80年代から90年代前半を懐かしく思い出しながら読んだ。

P141
マイケル・ジャクソンの「スリラー」が世界を席巻したのは1982年で、「MTV]とそこで流されるPV(当時は「ビデオクリップ」と呼ばれた)がはじめてテレビで紹介された。83年にはシンディ・ローパーが「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」で、84年にはマドンナが「ライク・ア・ヴァージン」で大ヒットを飛ばした。イギリスの人気デュオ、ワム!がクリスマスソングの定番「ラスト・クリスマス」を出したのもこの年だ(世の中はグリコ・森永事件で大騒ぎしていた)。

P199
89年1月に昭和天皇が崩御し、「不確実性の時代」が始まった。もちろんそれは日本だけのことではない。世界ではベルリンの壁崩壊(89年11月9日)とソビエト連邦の解体(91年12月25日)という現代史を揺るがす大事件が起き、第二次世界大戦後の国際秩序をつくってきた冷戦が終演した。
 この混乱に乗じてイラクのサダム・フセインがクェートに侵攻し、91年1月にはアメリカを中心とする多国籍軍の攻撃が始まった。日本では自衛隊の参加の是非が大論争を巻き起こしたが、じつはサウジアラビアが国土防衛のため米軍の駐留を認めたことが歴史を大きく動かすことになる。聖地メッカを異教徒が守ることに反発したウサーマ・ビン・ラーディンが、2001年の同時多発テロを起こすことになるからだ。
 もちろんこれは現代から振り返っていえることで、渦中にいるときはいったいなにが起きているのかわからなかった。89年6月には中国で民主化を求める天安門事件が起き、その後、中国共産党は鄧小平のもとで大胆な経済自由化に踏み出すのだが、当時の論調は難民が「盲流」となって日本に押し寄せてくると煽るものばかりで、中国の驚異的な経済成長が始まることを予想したひとはほとんどいなかった。

【おまけ】
橘玲さんて頭はよいけどエキセントリックでとっつきにくい人って思っていたが、本書を読むと、真面目で、友だち思いな面もある。つまりけっこう「いいやつ」じゃないか。見なおした。

【参考リンク】
橘玲『80's ――ある80年代の物語』

【ネット上の紹介】
日本がいちばんきらきらしていたあの時代、ぼくは、ひたすら地に足をつけたいと願った。バブルの足音からその絶頂、そして崩壊まで、1982年から1995年までの長い長い“80年代”の青春。
Prologue No Woman,No Cry
1978‐1981 雨あがりの夜空に
1982 ブルージンズメモリー
1983 見つめていたい
1984 雨音はショパンの調べ
1985‐1995 DEPARTURES
1995‐2008 マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン
Epilogue Redemption Song