【ぼちぼちクライミング&読書】

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「2040年の日本」野口悠紀雄

2024年03月29日 07時29分40秒 | 読書(現代事情)


「2040年の日本」野口悠紀雄

P63
年金については、支給開始年齢を、現在の65歳から70歳に引き上げるといった対策が必要になるだろう。

P131
日本は、賃金の面で、もはや魅力的な国ではなくなりつつある。国際的な介護人材は、中国やオーストラリアにとられてしまい、日本には来なくなるといった事態は、十分に考えられる。

P139・・・2050年の未来予測(カリフォルニア大学)
ガンが克服される。
視覚障害者はいなくなる。
遺伝子編集工学によって、新しい人類を造ることも可能になる。
人間とAIの融合が可能となる。
人工腎臓が開発されるので、人間が臓器提供する必要がなくなる。
失った歯が再生可能になる。
エイズが根絶される。

P211
自動車が完全自動運転になれば、交通事故は8割以上減少するといわれる。そうなると、交通警察は縮小を余儀なくされ、警察は大量の余剰人員を抱えることになる。(タクシー業界はどうなるのだろう?電気自動車になれば、車に使われている内燃機関はどうなるのだろう?すそ野の、部品供給下請けは?)

P264
作業ロボットが普及すれば、無人工場、無人店舗、無人物流倉庫、無人宅配搬送が実現する。

【感想】
かつて、パソコンが普及すればペーパーレスになると言われた。
実際は、紙の使用が増えた。
私が子どもの頃、1人1台「携帯」を持つ時代が来ると思わなかった。
未来を予想するのは難しい。

【ネット上の紹介】
20年後、いまと同じ社会が続いていると無意識に考えていないか。2040年、国民の年金や医療費などの社会保障負担率は驚くべき数字になる。現在と同じような医療や年金を受けられると思ったら大間違いだ。事態改善の鍵を握る、医療や介護におけるテクノロジーの進歩は、どこまで期待できるのか。60年近くにわたって日本の未来を考え続けてきた著者が、日本経済や国力をはじめ、メタバースやエネルギー問題、EVや核融合・量子コンピュータなど幅広い分野について言及。未来を正しく理解し、変化に備えられるかどうかで、人生の後半は決まる!
第1章 1%成長できるかどうかが、日本の未来を決める
第2章 未来の世界で日本の地位はどうなるか
第3章 増大する医療・介護需要に対処できるか
第4章 医療・介護技術は、ここまで進歩する
第5章 メタバースと無人企業はどこまで広がるか
第6章 自動運転とEVで生活は大きく変わる
第7章 再生可能エネルギーで脱炭素を実現できるか
第8章 核融合発電、量子コンピュータの未来
第9章 未来に向けて、人材育成が急務
おわりに:われわれは、未来に対する責任を果たしているか?


「名画で読み解くブルボン王朝12の物語」中野京子

2024年03月25日 07時31分50秒 | 読書(歴史/時代)


「名画で読み解くブルボン王朝12の物語」中野京子

読み返し。

P32、P32、P40・・・マリー・ド・メディシス
●「告白好きの人間は逸話が少なく、面白みもない」
●政治より自己陶酔が大事だったのだろうか?「見て見て、わたしを見て!」と主張せずにおれなかったのか。確かに、周囲の顰蹙に対して徹底して鈍感なのが、ある意味彼女の強みではあった。
●自意識と自惚れは強いが強烈な個性やカリスマ性に乏しく、周囲を平伏させる能力はなかった。

P69
アンヌ・ドートリッシュの人気が高いのは、女性としての魅力もさることながら、この母性、それも盲目的な愛ではなく賢明な愛を息子に与え、導き、偉大なる王にし、さらには息子からも深く愛されたという、その点にあるに違いない。

P98・・・マリア・テレサ
「王妃になって以来、幸せな日はたった1日しかなかった」と言い残して44歳でみまかった。悲しい言葉だ。(中略)王妃の死を知らされたルイの感想は「彼女が余に迷惑をかけるのはこれが初めてだ」

P138
王はポンパドゥールの死後4年間、公式寵姫の座を空位にした。だが王妃の亡くなった1か月後には、娼婦あがりのデュ・バリーを新たにヴェルサイユに引き入れた。人々はそこで改めて、ポンパドゥールがいかに類希な女性であったか思い知るのであった。

P141
処刑前夜、家族で過ごしたいと願うアントワネットに対し、王はひとりでいたいからと自室へこもっている。翌日も、会いたがる妻を避け、悠々とひとりで朝食をとってギロチン台への馬車へ乗り込んだ。みんなを悲しませたくなかったからとも、悲しむみんなをみたくなかったからとも言われるが、むしろひとりが居心地良かったのではないだろうか。
淡々と死んでいった。

フランス革命→ロベスピエール→ナポレオン
この移り変わりを分かりやすく説明してくれている。(P176-P178)

ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』について。(P190)
ファイル:Eugène Delacroix - La liberté guidant le peuple.jpg
実は彼女は人間ではない。人間の姿形をとった抽象概念なのだ。
擬人像「自由」は従来、フリジア帽をかぶった女性として描かれるのが決まりである。

【総括】P199
栄華を誇ったブルボン王朝だが、こうして見ると、終わるべくして終わったとの感が強い。ルイ太陽王の過去の威光があまりにまばゆく、プライドばかりが肥大して柔軟性を欠き、自滅の様相を呈しての終焉だ。とはいえ壮大なヴェルサイユと、世界に対するフランスの文化的優位は立派に残したのであった。

【ネット上の紹介】
[要旨]
世継ぎの混乱と血みどろの宗教戦争に彩られた王朝の誕生から、十九世紀、ヨーロッパ全土に吹き荒れた革命の嵐による消滅まで、その華麗な一族の歴史を、十二枚の絵画が語りだす。『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』に続く、ヨーロッパの名家を絵画で読み解く第2弾。
[目次]
ルーベンス『マリーのマルセイユ上陸(『マリー・ド・メディシスの生涯』より)』;ヴァン・ダイク『狩り場のチャールズ一世』;ルーベンス『アンヌ・ドートリッシュ』;リゴー『ルイ十四世』;ベラスケス『マリア・テレサ』;ヴァトー『ジェルサンの看板』;カンタン・ド・ラ・トゥール『ポンパドゥール』;グルーズ『フランクリン』;ユベール・ロベール『廃墟となったルーヴルのグランド・ギャラリー想像図』;ゴヤ『カルロス四世家族像』;ダヴィッド『ナポレオンの戴冠式』;ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』


「ニッポンのおじさん」鈴木涼美

2024年03月22日 09時29分41秒 | 読書(エッセイ&コラム)

「ニッポンのおじさん」鈴木涼美


P33・・・明石家さんま
「偉くなってしまった人が面白くあるのは、権力者が権力批判するのと同じだけ困難だ」を体現する存在。

P46
「ダメな俺」に居心地の良さを感じる男が必要とするのがスピッツだとしたら、「ダメな俺」をそう簡単に認めたくない男が必要とするのがミスチルだろうか。

P61
「するべきことをしない不良と、しちゃいけないことをする不良がいて、前者は許されがち、後者は愛されがち」

P67
「男性は家庭に不満がないときに浮気しがち、女性は家庭に不満があるときに浮気しがち」(トイアンナ)

【ネット上の紹介】
誰もが知るおじさん著名人たちへのファジーな嫌悪感の正体に迫る!!キャバ嬢、AV女優など実体験を通して夜の世界を体現しつつ、社会学の視点と女の感性を織り交ぜた軽妙な筆致で人気を博している文筆家・鈴木涼美によって、日本社会が生み出した難解なおじさんたちが今、解剖される
愚かなおじさんは愚かじゃない女がお好き?―ビートたけし
言い難き嘆きも手―岡村隆史・藤田孝典
分け入っても分け入っても、あるよ山―乙武洋匡・ダースレイダー
僕らがミスをチル理由―Mr.Children
嫌われ男の一生―麻生太郎
多目的トイレの神様―渡部建
星野源になりたいボーイと小沢健二の全てに意味を持たせたガール―星野源・小沢健二
世界はそれをクロと呼ぶんだぜ―箕輪厚介・鬼滅の刃・愛の不時着
この街に降り積もってく真っ黒な悪の華―松浦勝人・惡の華
ブスの瞳に恋するな―燃え殻〔ほか〕


「ハプスブルク家の12の物語」中野京子

2024年03月20日 07時40分02秒 | 読書(絵画)


「ハプスブルク家の12の物語」中野京子

読み返し。

P121
ヨーロッパ諸国を巻き込んだ30年戦争は、カトリック対プロテスタントの、最大にして最後の宗教戦争であり、舞台となったドイツの荒廃はなはだしく、これでドイツはいっそう後進国へ成り下がった。ハプスブルク家はブルボン家に破れ、ここからヨーロッパにおけるフランスの優位性が確定する。ただしハプスブルクは領土が縮小した反面、自領からプロテスタントを一掃でき、以降、宗教問題に悩まされることはなくなった。

P159
ナポレオンは愛妻ジョゼフィーヌにもはや子が産めないと見限って離縁し、新たな皇妃、それも自分に箔をつけてくれる由緒ある王家のプリンセスを物色し始めていた。(中略)最初はロシアのロマノフ王朝に狙いをつけたらしいが、すぐにも出産できそうな相手の方がいいと目を転じ、フランツ二世の娘マリー・ルイーズに白羽の矢を立てた。


【ネット上の紹介】
スイスの一豪族から大出世、列強のパワーバランスによって偶然ころがりこんだ神聖ローマ帝国皇帝の地位をバネに、以後、約650年にわたり王朝として長命を保ったハプスブルク家。常にヨーロッパ史の中心に身を置きながら、歴史の荒波に翻弄され、その家系を生きる人物たちの運命は激しく揺さぶられ続けた。血の争いに明け暮れた皇帝、一途に愛を貫いた王妃、政治を顧みず錬金術にはまった王、母に見捨てられた英雄の息子、異国の地でギロチンにかけられた王妃――。過酷な運命と立ち向かい、また定めのまま従容と散っていったヒーロー、ヒロインたちは、どこまでも魅力的。彼らを描いた名画に寄り沿い、その波瀾万丈の物語をつむぐ。
アルブレヒト・デューラー『マクシミリアン一世』
フランシスコ・プラディーリャ『狂女フアナ』
ティツィアーノ・ヴィチェリオ『カール五世騎馬像』
ティツィアーノ・ヴィチェリオ『軍服姿のフェリペ皇太子』
エル・グレコ『オルガス伯の埋葬』
ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス』
ジュゼッペ・アルチンボルド『ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世』
アドルフ・メンツェル『フリードリヒ大王のフルート・コンサート』
エリザベート・ヴィジェ=ルブラン『マリー・アントワネットと子どもたち』
トーマス・ローレンス『ローマ王(ライヒシュタット公)』
フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター『エリザベート皇后』
エドゥアール・マネ『マクシミリアンの処刑』


「引き抜き屋」雫井脩介

2024年03月18日 07時22分41秒 | 読書(小説/日本)

①「引き抜き屋 鹿子小穂の冒険」雫井脩介
②「引き抜き屋 鹿子小穂の帰還」雫井脩介

読み返し。
新米ヘッドハンターの活躍を描くお仕事小説。
 
①P156
 ヘッドハンティングは、その業界ではエグゼクティブサーチとも言われ、ヘッドハンティング会社はサーチファームという名で呼ばれている。ヘッドハンターはコンサルタントという肩書きが付くのが一般的だ。(中略)
必要な資格はなく、参入障壁もないから、ビジネススタイルもそれぞれだ。ただし、人脈がなければ何もできないし、能力がなければ信頼は勝ち取れず、依頼は回ってこない。誰でもできるようでいて、誰もができるわけではない仕事である。


①P357
矢来が見るに、花緒里は離婚を経てから、自分の眼力でどんな人物をも見極められるというような驕りを捨て、ヘッドハンターとしても一皮むけたように感じられる。ウォートンスクール出身というプライドもどこかに置き、夜はいとこのママがやっている銀座のクラブで、財界人らを相手にせっせと酌をしているという。そこまでやられると、ヘッドハンターとして勝ち目はないと、矢来は白旗を揚げたくなる。
 
ドラマ化されたけど、小説の方がずっとおもしろい。

【ネット上の紹介】
父が創業した会社で若くして役員となった鹿子小穂は、父がヘッドハンターを介して招聘した大槻によって会社を追い出されてしまう。そんな小穂を拾ったのは、奇しくもヘッドハンティング会社だった。新米ヘッドハンター・小穂は、一流の経営者らに接触するなかで、仕事や経営とは何か、そして人情の機微を学んでいく―。緊迫感溢れるミステリーで人気の著者が新境地に挑んだ、予測不能&感涙のビジネス小説。

「名画で読み解くイギリス王家12の物語」中野京子

2024年03月11日 10時17分10秒 | 読書(絵画)


「名画で読み解くイギリス王家12の物語」中野京子

読み返し。

P16
小さな島国だというのに、イングランド人、スコットランド人、ウェールズ人、北アイルランド人で支配権を争い、なお且つ外国からの侵攻や宗教戦争も絶えなかった。

P36
チューダー時代は短かったにもかかわらず、ヘンリー八世、アン・ブーリン、ジェーン・グレイ、エリザベス一世という四人もの大スターを輩出した。彼らについての歴史書、小説、映画、テレビドラマがどれほど多く生まれ、今なお生まれ続けていることか。

P97-98
ピューリタン(清教徒)とは前章でも触れたが、宗教改革をさらに推し進めようとするイギリスのカルヴァン派を言い、自らをピュアとし、腐敗した国教会をピュアにするのを目的とした。この度の議会派の中心が彼らだったので、1642年から王政復古年1660年までを「ピューリタン革命」と呼ぶ。フランス革命と同じ市民革命である。

P99
クロムウェルは神軍の将からから王殺し、共和制樹立者(今も国会議事堂前には剣と聖書を持つクロムウェルの銅像が建つ)から独裁者、さらにピューリタン革命のさなか、アイルランドを蹂躙した男である。アイルランド人の土地を奪ってイギリス人入植者に与え、徹底的に収奪した。これが現在に続く来たアイルランド紛争の元凶なのだ。クロムウェル評価のいまだ定まらない所以である。

P112
イギリスは絶対王政を否定しつつ国王を戴き、共和制を否定しつつ人民の権利を認めたわけだ。階級制度が気に入っているのかもしれない。

P167
ヴィクトリア女王のイメージは、「愛される妻」「優しい母」としてのそれだった。エリザベス一世が処女王として、一種超越的な存在感とカリスマ性で君臨したのとは、それは何という違いであろう。

P180
しぶしぶ奴隷貿易をやめた後、イギリスはまた別の三角貿易を目指した。中国貿易での輸入過剰を解消するのに、インド領で生産した阿片を奴隷代わりに選んだのだ。せっせと中国(清朝)へ送り込み、抵抗されると出兵した(アヘン戦争)。野党が「不義の戦争」として反対したにもかかわらず、通したのがメルバーン内閣であり、認めたのはヴィクトリアだった。

【ネット上の紹介】
第1部 テューダー家(ハンス・ホルバイン『大使たち』
アントニス・モル『メアリ一世像』
アイザック・オリヴァー『エリザベス一世の虹の肖像画』)
第2部 ステュアート家(ジョン・ギルバート『ジェイムズ王の前のガイ・フォークス』
ポール・ドラローシュ『チャールズ一世の遺体を見るクロムウェル』
ジョン・マイケル・ライト『チャールズ二世』)
第3部 ハノーヴァー家(ウィリアム・ホガース『南海泡沫事件』
ウィリアム・ビーチー『ジョージ三世』
ウィリアム・ターナー『奴隷船』
フランツ・ヴィンターハルター『ヴィクトリアの家族』
フランツ・ヴィンターハルター『エドワード王子』
ジョン・ラヴェリ『バッキンガム宮殿のロイヤルファミリー』)


いわた山

2024年03月11日 08時30分49秒 | 登山&アウトドア(関西)

いわた山に登ってきた。











「印象派で「近代」を読む-光のモネから、ゴッホの闇へ」中野京子

2024年03月08日 07時51分56秒 | 読書(絵画)


「印象派で「近代」を読む-光のモネから、ゴッホの闇へ」中野京子

読み返し。

P50
アカデミック絵画のヒエラルキーにおいて、風俗画は「歴史画(宗教画、神話を含む)」より格下と見做されていたのですから。(ちなみにアカデミーによる認定は、「歴史画」「風俗画」「肖像画」「静物画」「風景画」の順。組織人というものは何にでも順位をつけ、自らを権威付けたがるものらしい)

P22
「シャルパンティエ夫人と子どもたち」。
典型的なブルジョワの邸宅。右隅に東洋風の小物が飾られている。
真ん中の少女は、この家の長男。(当時の風習)
シャルパンティエ夫人とその子どもたち

P104
オスマンによるパリ改造目的のひとつは、猛烈な勢いで地方から流入してきていた貧民イコール潜在的犯罪者の一掃だったので、何はともあれ中心部から彼らを追いはらう必要があった。それには地価を高騰させ、金持ちしか住めないようにすればよい。

P128
1780年の記録によると、パリに生まれた子ども2万1千人のうち、何と2万人が遠い田舎へ里子に出され、多くが早世しています。(「レ・ミゼラブル」のコゼットは、特殊な例でなかった)

P137・・・識字率
だいたい19世紀半ばのロンドンやパリで、2割以下だったと推定されています。(江戸では7、8割)

P139
1880年に女子の公教育が制度化されたとき、「わたしが一番好きなのは、字が読めなくて、赤ん坊の尻のしまつができる女だね」と言ったのはルノワールでした。

P180
「グランド・ジャット島の日曜日の午後」。
右端の女性は、ドゥミ・モンディーヌ(高級娼婦)であろう、と。


P190「エトワール」
左端に黒い燕尾服の紳士がいる。
踊り子のパトロンであろう、と。
『踊りの花形(エトワール、あるいは舞台の踊り子とも呼ばれる)』(1878年頃) オルセー美術館
バレエはオペラの添え物でしかなく、踊り子は売春婦と同義であり、プリマとして踊ったからといって実力があるとは限らず、単にパトロンの後押しによったのかもしれない、そういった歴史的事実です。

ドレフュス事件について書かれている箇所も面白かった。
(P72-75)

P108
日本には「清貧」という言葉があり、貧困をあまり恥と考えません。それについてはすでに戦国時代のイエズス会ヴァリニャーノ(イタリア人)が、ヴァチカンへこう報告しています。「貧困は日本人を罪悪感や卑しさへと駆り立ててない」。逆に言えば、西欧人は貧困によってそうしたものへ駆り立てられる、ないし駆り立てられると信じられている、ということになりましょう。

P116
ドガ「カフェにて」だけど、女性の前にあるのが、あの有名な「アブサン」。
二十世紀初頭に、製造販売禁止、ニガヨモギを主に、いろんな香草のエキスを混ぜたリキュールで、いわばアルコールと麻薬を混ぜたようなもの。強烈な幻覚作用があり、ゴッホとロートレックがアブサン中毒。(ロートレックは精神病院に入院し、ゴッホは左耳を切断した)
ファイル:Edgar Germain Hilaire Degas 012.jpg

P117
ナナというのは、固有名詞であると同時に、日本語でいう(少し古い言い回しかもしれませんが)「かのじょ」、もっと露骨には「愛人」の意味でも使われる言葉です。
シルクハットの紳士の目の前で、下着姿のまま堂々とお出かけ用の化粧をしているのですから、これはもう見間違いようもなく「囲われた愛人」ですし、豪華な邸は彼によって与えられたもの。このナナは高級娼婦、いわゆる「ドゥミ・モンディーヌ」とわかります。
ドゥミ・モンディーヌというのは、ドゥミ・モンド(=半社交界)に生きる女性のことを指します。上流階級人士には、半分しか入れない。パトロンと一緒なら入れるが、ひとりだと出入り不能。
『ナナ(英語版)』1877年。油彩、キャンバス、154 × 115 cm。ハンブルク美術館。同年サロン落選[126]。

なぜ日本では印象派が人気なのか?
あとがきに書かれている・・・P210-211、P186

【ネット上の紹介】
十九世紀後半のフランスに起こった絵画運動で、現代日本でも絶大な人気を誇る「印象派」。“光”を駆使した斬新な描法が映し出したのは、未だ克服せざる「貧富差」による“闇”であった。マネ、モネ、ドガからゴッホまで、美術の革命家たちが描いた“近代”とは―。

[目次]

第1章 新たな絵画の誕生;第2章 「自然」というアトリエ;第3章 エミール・ゾラをめぐる群像;第4章 キャンバスに映されたパリ;第5章 都市が抱えた闇;第6章 ブルジョワの生きかた;第7章 性と孤独のあわい;第8章 印象派を見る眼


「西の善き魔女」全4巻、荻原規子

2024年03月04日 08時24分50秒 | 読書(小説/日本)
「西の善き魔女」全4巻、荻原規子
 
久しぶりの読み返し。4回目。
(中央公論新社のハードカバー版)

このシリーズは、荻原規子作品の中でもっとも遊び心が強い。
物語としての楽しさ、波瀾万丈の展開。
各キャラクターもしっかり描かれている。
おもしろさはトップクラス。






中央公論版は絶版。
現在入手可能なのは角川文庫版。全8巻。
特別短篇が3篇収録されている。
(本編の雰囲気を忘れないうちに、図書館で借りて読んだ)
 3巻目「ハイラグリオン王宮のウサギたち」・・・ユーシスとレアンドラの出会い
 4巻目「ガーラント初見参」・・・12歳のユーシス
 7巻目「彼女のユニコーン、彼女の猫」・・・ユーシスとアデイルのその後
 
【ネット上の紹介】
15歳になったフィリエルは、はじめての舞踏会の日、燦然と輝くダイヤと青い石の首飾りを贈られ、幼なじみの少年ルーンに、それがフィリエルの母の形見であると告げられる。青い石は女王試金石と呼ばれ、王国でもっとも大切な宝石であることが明かされていく。それは自らの出生の秘密とつながっていた―。人里離れた北の高地で育った少女の運命が、大きく動きはじめる。人気ファンタジー作家、荻原規子の新世界の幕が上がる!

「怖い絵」中野京子

2024年03月01日 07時52分40秒 | 読書(絵画)


「怖い絵」中野京子

久しぶりの読み返し。

P24
ヨーロッパでもっとも数多くの絵画や像の主題となったのは、キリストの磔刑、次いで聖母子、三番目が受胎告知と言われている。

概要 画像

P26
受胎告知を描くには、いちおう幾つかの約束ごとがあった。必須三点は、大天使ガブリエル、聖母マリア、そして精霊の鳩だ。

P75
ブリューゲルが活躍した16世紀半ばのネーデルランドは、他の国々同様、宗教改革による影響をまともに受け、魔女裁判や異端審問がもっとも激しい時代だった。

概要 画像


P130
エリザベス一世の父であり、6人の妻のうち2人まで断頭台へ送ったことで知られるイングランド王ヘンリー八世の、これは40代半ばの過ぎの全身像である。

【参考】「火の柱」ケン・フォレット

P154
完全な子ども専用服は18世紀後半になるまで登場しない。


【ネット上の紹介】
「特に伝えたかったのは、これまで恐怖と全く無縁と思われていた作品が、思いもよらない怖さを忍ばせているという驚きと知的興奮である」。絵の背景にある歴史を理解してこそ浮き彫りになる暗部。絵画の新しい楽しみ方を提案して大ヒットした「怖い絵」シリーズの原点が、満を持しての文庫化。ドガの『エトワール』、ラ・トゥールの『いかさま師』など全22作の魅力。
ラ・トゥール『いかさま師』
ドガ『エトワール、または舞台の踊り子』
ティントレット『受胎告知』
ダヴィッド『マリー・アントワネット最後の肖像』
ブロンツィーノ『愛の寓意』
ブリューゲル『絞首台の上のかささぎ』
クノップフ『見捨てられた街』
ボッティチェリ『ナスタジオ・デリ・オネスティの物語』
ホガース『グラハム家の子どもたち』
ゴヤ『我が子を喰らうサトゥルヌス』〔ほか〕