【ぼちぼちクライミング&読書】

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バチカンと中国

2020年09月29日 07時34分04秒 | 読書(海外事情)
中国に政府公認カトリック教会がある、って知らなかった。
「中国天主教愛国会」だ。
バチカンと中国は対立してきたが、暫定合意により、中国側が決めた司教を教皇が追認するようにした、と。
一方、政府の介入を嫌いローマ教皇に直接つながろうとする人々は中国各地で非公認の「地下教会」をつくり、弾圧を受けている、と。

関係改善により、弾圧は減るのだろうか?
バチカンは台湾との外交を維持している。
こちらにも影響が出るかもね。
朝日新聞2020/9/28

「動的平衡 新版」福岡伸一

2020年09月26日 08時12分14秒 | 読書(科学)
「動的平衡 新版」福岡伸一

生命とは何か?
分かりやすく解説してくれる。
とても面白い。お薦め。

P36
脳細胞は一度完成すると増殖したり再生することはほとんどないが、それは一度建設された建造物がずっとそこに立ち続けているようなものではない。脳細胞を構成している内部の分子群は高速で変転している。その建造物は至る部分でリフォームが繰り返され、建設当時に使われていた建材など何一つ残ってはいないのである。

P37
人間の記憶とは、脳のどこかにビデオテープのようなものが古い順番に並んでいるのではなく、「想起した瞬間に作り出されている何ものか」なのである。

P46
つまりタンパク質の新陳代謝速度が、体内時計の秒針なのである。
そしてもう一つの厳然たる事実は、私たちの新陳代謝速度が加齢とともに確実に遅くなるということである。つまり体内時計は徐々にゆっくり回ることになる。 (中略)
つまり、歳をとると1年が早く過ぎるのは「分母が大きくなるから」ではない。実際の時間の経過に、自分の回転速度がついていけていない。そういうことなのである。

P117
タンパク質は貯蔵できない。なぜならタンパク質(正確に言えばその構成物質であるアミノ酸)の流れ、すなわち動的平衡こそが「生きている」ということと同義語だからである。

P201
森鴎外は、それでも脚気を病原体による病気だと信じて疑わず、「農学者が何を言うか。米糠で脚気が治るわけがない」と言った。そして、死ぬまで「脚気菌」を探していたという。(今では、脚気はビタミンB1欠乏、ってのが常識。ここで言う、農学者とは、世界初のビタミンの発見者・鈴木梅太郎のこと。北里柴三郎も「脚気は細菌が原因ではない」と言っていた。結果として、恩師や母校を批判したことになり、冷や飯を食わされたそうだ・・・学問の世界、って基本「徒弟制度」。今もそう? ところで、森鴎外は医師としても文学者としても立派な人物だが、「引く」と言うことを知らない。論争好きで、あちこちで喧嘩を売り、退かない。自分の非を認めない。ある意味、迷惑な人。偏差値は高かったかもしれないが、柔軟性はなかった。近づきたくない人物だ)

P296
確かに食物(主に炭水化物)はエネルギー源として燃やされる部分もあるが、タンパク質は違う。私たちが毎日、タンパク質を食物として摂取しなければならないのは、自分自身の身体を日々、作り直すためである。(中略)
生命にとって重要なのは、作ることよりも、壊すことである。(中略)
秩序あるものは必ず、秩序が乱れる方向に動く。宇宙の大原則、エントロピー増大の法則である。この世界において、最も秩序あるものは生命体だ。生命体にもエントロピー増大の法則が容赦なく襲いかかり、常に、酸化、変性、老廃物が発生する。これを絶え間なく排除しなければ、新しい秩序を作り出すことができない。そのために絶えず、自らを分解しつつ、同時に再構築するという危ういバランスと流れが必要なのだ。これが生きていること、つまり動的平衡である。

【ネット上の紹介】
「人間は考える『管』である」「私たちが見ている『事実』は脳によって『加工済み』」「歳をとると、一年が早く過ぎるのは、実際の時間の経過に、自分の生命の回転速度がついていけないから」などの身近なテーマから「生命とは何か」という本質的な命題を論じていく。発表当時、各界から絶賛されベストセラーになった話題作に、最新の知見に基づいて大幅加筆。さらに、画期的な論考を新章として書き下ろし、「命の不思議」の新たな深みに読者を誘う。
プロローグ 生命現象とは何か
第1章 脳にかけられた「バイアス」―人はなぜ「錯誤」するか
第2章 汝とは「汝の食べた物」である―「消化」とは情報の解体
第3章 ダイエットの科学―分子生物学が示す「太らない食べ方」
第4章 その食品を食べますか?―部分しか見ない者たちの危険
第5章 生命は時計仕掛けか?―ES細胞の不思議
第6章 ヒトと病原体の戦い―イタチごっこは終わらない
第7章 ミトコンドリア・ミステリー―母系だけで継承されるエネルギー産出の源
第8章 生命は分子の「淀み」―シェーンハイマーは何を示唆したか
第9章 動的平衡を可視化する―「ベルクソンの弧」モデルの提起

国税調査

2020年09月25日 09時21分01秒 | 身辺雑記

国税調査に回答した。
取りかかるまでが壁。
いざ回答を始めると早い。
10分くらい。


「中野京子の西洋奇譚」中野京子

2020年09月22日 08時43分06秒 | 読書(怪談/奇譚)
「中野京子の西洋奇譚」中野京子
 
歴史奇譚がテーマ。
世の中には合理的に説明できない不思議な出来事がある。
 
P47-48
イエスが十字架を背負ってエルサレムの街を歩かされた時、疲れ果ててユダヤ人の靴屋の家の壁に寄りかかろうとして拒まれた。イエスは彼に言った、自分は死して安らぐが、おまえは永遠にさすらい続けねばならない、と。かくしてこのユダヤ人(ユダヤ人そのものの象徴)は、地上のどこにも安住の地はなくなった。
 
P72
ヒトラーが4月30日という日を選んで自殺したことに、何か意味があったと考える研究者がいても不思議はないし、また痛烈なナチス批判の書が、『第三のヴァルプスギスの夜』(カール・クラウス著)というタイトルなのも頷けよう。
 
P114
民俗学者の折口信夫が命名した「貴種流離譚」とは、「高貴な血脈に生まれながら自国を遠く離れてさすらい、数々の試練を経て神や尊い存在になる」という説話の1型を指す。
これは民の側から見れば、自分のすぐ近くに身をやつした貴人がいるかもしれない、との期待にもつながる。正体不明の謎の人物を「流離した貴人」と見なす、いくつかの例を見てゆこう。
 
【おまけ】
グリムに「ハーメルンの笛吹き男」がある。
「グリム童話」の中でも、異質な作品で気になる。
どうして多くの子どもたちが連れ去られたのか? 
どこに連れ去られたのか?
はっきりしていない。
 
P23『つまり、まだ万人を納得させるに足る定説はないのだ』
興味は尽きない。
昔、ドイツに行ったときも、阿部謹也先生の「ハーメルンの笛吹き男」を持って、ハーメルンを訪問した。地元の方による「野外劇」もあって楽しめた。
 
【ネット上の紹介】
笛吹き男に連れられ姿を消したハーメルンの子供たち、暗殺された二人の米大統領、その驚愕すべき共通点。悪魔に憑かれたルーダンの修道女とエクソシスト。冷戦下のソ連で学生達を襲った凄惨な未解決事件。蛙の雨、ドッペルゲンガー、犬の自殺橋、etc.事件や伝承に隠された、恐ろしい真実とは?
【目次】
ハーメルンの笛吹き男
マンドラゴラ
ジェヴォーダンの獣
幽霊城
さまよえるオランダ人
ドッペルゲンガー
ゴーレム
ブロッケン山の魔女集会
蛙の雨
ドラキュラ
犬の自殺
ホワイトハウスの幽霊
エクソシスト
貴種流離譚
デンマークの白婦人
大海難事故
コティングリー事件
十字路
斬られた首
ファウスト伝説
ディアトロフ事件

自治会から

2020年09月21日 19時42分29秒 | お婆さんの話
9月22日は、敬老の日。
恒例行事「敬老会」は、コロナの影響により中止。
その代わり、自治会から3,000円とタオルを頂いた。
ウチのお婆さんの米寿祝い。
ありがたいことだ・・・自治会に何ら貢献してないのに。

ところで、思い出したことがある。昨年初めのこと。
「ごめんなさい、ごめんなさい」、とお婆さんが、しきりに謝る。
私は、なにも怒っていないのに、突然どうしたんだろう?
なにを謝っているのだろう? よく聞くと・・・
「長生きして、ごめんなさい」、と。
胸がつまり、言葉の返しようがない。

「あきない世傳金と銀」(9)高田郁

2020年09月19日 19時06分08秒 | 読書(歴史/時代)
「あきない世傳金と銀」(9)高田郁

シリーズ9巻目。
6巻目の途中から、舞台が大坂から江戸に移動したが、
今回は、大坂に戻り、再び江戸へ。
懐かしい人物も登場して嬉しい。
サブタイトルは「淵泉篇」・・・意味深だ。
大変な危機に見舞われるが、深い淵にあっても知恵が泉のように湧き出てくる。

P55
「音羽屋は型紙を『土産』と言ったけれど、とんでもない誤算です。あれは用い方次第で、あなたを追い詰めもすれば、『嫁資』としてその立場を守りもする。今後は自分の力で、才覚で、しっかりと生き抜きなさい」

P67
「ひとは何時までも同じではいられない。立場やものの見方、考え方も変わっていくものです。誰かに守られたまま、一生を終えることなど出来ないのですから」

P175
「堅く筋張った菜根は、よく噛まねばならない。ひとは不遇や逆境を嚙み締め、乗り越えることで真の人生を味わい、多くのことを成し得る――『菜根譚』はそう教えてくれます。(後略)」

【ネット上の紹介】
大坂から江戸に出店して四年目、まさにこれから、という矢先、呉服太物商の五鈴屋は、店主幸の妹、結により厳しい事態に追い込まれる。形彫師の機転によりその危機を脱したかと思いきや、今度は商いの存亡にかかわる最大の困難が待ち受けていた。だが、五鈴屋の主従は絶望の淵に突き落とされながらも、こんこんと湧き上がる泉のように知恵を絞り、新たなる夢を育んでいく。商道を究めることを縦糸に、折々の人間模様を緯糸に、織りなされていく江戸時代中期の商家の物語。話題沸騰の大人気シリーズ第九弾!!

免許証更新

2020年09月17日 18時31分53秒 | 身辺雑記
運転免許証の更新に、門真まで行ってきた。
コロナの影響で完全予約制、葉書にそう書いてある。
それを見落として、いつもどおり行ったら・・・
「完全予約制ですよ」、と。
「あちゃー」、となった。
でも、キャンセルがあったので、入れてもらった。
更新手続費用、3,000円。
帰宅したら13:30分だった。

昼食をとって、買い物へ。その後、市役所へ。
健康保険が切れるので、手続きが必要。
用紙に必要事項を書き込んで、押印して提出。
新しい保険証は10月初旬に送られてくる。
保険料決定通知書は、10月中旬以降に郵送されてくる。
今日は色々忙しかった。
*来週は車検、自動車税支払いの領収書を探す必要あり。
*再来週は、お婆さんの病院と自分の歯医者。
*来月早々、吹田年金事務所に行く必要あり。
*雑草取りと植木の散髪
*新しい給湯器購入の見積もりと検討
*終活が終わったのに、なかなか心が休まらない。

「駆け入りの寺」澤田瞳子

2020年09月13日 10時55分14秒 | 読書(歴史/時代)
「駆け入りの寺」澤田瞳子

連作時代小説。
修学院の近くにある林丘寺が舞台。
そこは、落飾した皇女が住持を務める比丘尼御所。
前住持・元瑶と、現住持・元秀が住んでいる。
雑用をする寺侍、見習い尼などが絡んで、様々な人間模様が描かれる。

P11-12
(前略)他の比丘尼御所では、「表」の侍が「奥」の尼と親しく口を利くことはありえないという。寺の奥に踏み入れるのは御家司1人であり、寺侍は御清所の敷居すらまたげぬ定めだとも聞かされていた。
 だがその歴史の浅さと、洛中から遠く隔たった土地柄ゆえであろう。林丘寺では見習い尼はもちろん、必要となれば公家の出である尼公までもが、侍に直に言葉をかける。

P31
「こなたはこの寺の住持、松嶺元秀や。そもじはいったい何用あって、此地へまいった」
 耳慣れぬ御所言葉が理解できなかったらしく、女子は一瞬、戸惑い顔となった。しかしすぐに強く唇を引き結ぶや、「お助けください、尼公さま」と額を地面にこすりつけた。
「う、うちは連れ合いと、どうしても離縁しとうおすのや。お願いどす、尼公さま。どうかうちの人に、三行半を書くようお申し付けとくれやす」
「三行半だと。おぬし、いったいご住持さまを何と心得る」
 思わず静馬は、元秀の存在も忘れて女を怒鳴りつけた。
「夫と離縁したいのなら、その旨、親元か町役に相談すればいいだろう。この林丘寺は駆込寺ではないのだぞ。不心得もたいがいに致せ」

【参考リンク】
林丘寺=京都府京都市左京区修学院林ノ脇 


【ネット上の紹介】
誰にだって、逃げ出したい時がある――悩みを抱える人々が、駆込寺の門を叩く。落飾した皇女が住持を務める比丘尼御所。そのひとつである林丘寺では、前住持であり後水尾帝の皇女・元瑶と、現住持である霊元帝の皇女・元秀を中心に、宮中と同じような生活が営まれていた。四季折々の年中行事、歴代天皇の忌日法要を欠かさず行い、出家の身でありながら、和歌管弦、琴棋書画を嗜む。尼たちの平穏で優雅な暮らしのなかに、ある日飛び込んできたのは「助けてほしい」と叫ぶ、若い娘だった――。現世の苦しみから逃れた、その先にあるものとは何なのか。雅やかで心に染み入る連作時代小説。

ミーユエ 王朝を照らす月

2020年09月12日 10時28分15秒 | TV/ドラマ
中国ドラマ「ミーユエ 王朝を照らす月」をU-NEXTで観た。
(全81話、1話43分)
原題:「羋月傳」(2015年)

秦・昭襄王の生母、宣太后がモデル。
第1話は、商鞅が捕らえられ、殺されるシーンから始まる。
物語が進むにつれ、このシーンを忘れるが、後半に振り返ると、物語全体に大きな影響を及ぼすシーンであることが分かる。(商鞅=変法、だから)
歴史背景は、紀元前338年、世は戦国時代。
秦、楚、魏、斉などが争っている。

覇星が現れ世を征すると予言される。
ところが、生まれたのは男児ではなく女児だった。
それが本作ヒロイン・ユエである。
後宮の庶子に生まれたため、王后・威后から罠を仕掛けられる。
やがて、義母姉の秦への輿入れに同行。

【感想】
中国宮廷ドラマ屈指の面白さ、と思う。
全81話であるが、普通20話くらいで退屈してくる。
しかし背景は、楚→秦→燕→秦と目まぐるしく変化するので、退屈するヒマが無い。後宮だけでなく、各国の政治情勢も語られるのが興味深い。
「中国ドラマで学ぶ中国の歴史 2020年版」より

【雑感】
いくつか気づいた点を書いておく。
当時は、靴を脱いで家の中に入っていたようだ。
何度も、靴を脱ぐシーンが出てくる。
貨幣も流通していたようだ。
紙はまだ発明されていないので、竹簡が使用されている。
兵馬俑(へいばよう)を作るシーンが出てきて驚いた。
紀元前が背景なので、仏教は入ってきていない。(紀元1世紀頃)
代わりに、少司命が祭られている。
ユエも生まれてすぐ、王后により川に流される・・・この逸話は第1話の山場。狂ったようにわが子を探しまわる生母=向夫人(しょうふじん)。川には滝があるが、どうなるのか? 少司命の加護が顕現するシーンだ。(生まれてすぐ陰謀に巻き込まれるとは、今後の波瀾万丈が予想される)

【後宮のヒエラルキー】
八子→美人→良人→夫人→妃→王后

#19
「仕事は教えればいいけど、性根は変えられないわ」
#56
「かよわい女が乱世に生きるには男に頼るしかない」
「今までの人生は男に頼ってきた これからは別の生き方をするわ」
「金銀財宝ならいつか返せばいい」
「返せないものもある?」
「情よ 受けた情けを返すのは難しいわ」

【参考リンク】


【中国語】
妹=妹妹(メイメイ)
姉=姐姐(ジェジェ)
弟=弟弟(ディディ)
兄=哥哥 (グーグー)

終活一段落

2020年09月11日 09時03分51秒 | 身辺雑記
終活が一段落した。
 
終活内容を摺り合わせる
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エンディングノート作成
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銀行の持つ遺言執行プランへの落とし込み
 ↓
銀行の方とチェック(以上に9カ月掛かったけど、実質は5カ月くらい)
 
昨日、銀行の方2人立ち会いのもと、公証人のところにも行ってきた。
原本は役所、写しは私と銀行の2箇所。
私が亡くなった場合、銀行に通知が行くようにしてある。
そうすると、遺言執行プランが発動する、と。

具体的には、銀行100%出資のサポートセンターと協力して、遺言は執行される。火葬して埋葬、親戚への通知、死亡届の提出。
デジタル遺品の処分、クレジットカード、公共サービスの解約、銀行口座の閉鎖、年金事務所(社会保険事務所)への通知。
もちろん、当ブログも閉鎖してもらう。
以上、これらのことは既に預けてある預金が経費として使用され、余ったらプランにしたがい配分される。
 
まだ元気なのに、そこまでする必要があるの?、と言われそう。
しかし、逆縁を想定した場合、具体的なプランを設定していないと、責任が曖昧になってしまう。それを恐れての、今回の終活だ。
終活のタイムリミットは、あって無いようなもの。
思い立ったが吉日、だ。
 
今回、これで一段落したが、まだ課題はある。
つまり私自身が、さらに弱ってきたときの対処だ。
具体的には、免許証の返納、車の売却、後見人の設定。
一定時間動きがないとセコムに通報される「安否見守りサービス」などのオプション・プランの設定。
場合によっては、高齢者住宅、あるいはホームへの移住。
悩みはつきないが、とりあえず現状維持で休息に入りたい。

「カラスは飼えるか」松原始

2020年09月10日 09時25分53秒 | 読書(科学)
「カラスは飼えるか」松原始

著者は、東京大学総合研究博物館・特任准教授。
専門は動物行動学で、研究テーマはカラスの行動と進化。
本書の内容は、カラスだけでなく、鳥類全般を対象としたエッセイ、コラム、といったところ。

P35
若いカラスの群れにははっきりした順位があり、上位のオスはよくモテるし、上位のオスを巡ってメス同士にも争いがあることが知られている。彼らは集団で社会を作っているからこそ、メンバーの力量をよく知っている。だから、一見さん相手に第一印象を競う必要がない。問題は中身と順位なのだ。

P152
そもそもカラスを飼うのは大ごとだ。第一に、カラスのように飛び回る鳥を閉じ込めておくのが大変だ。それにカラスはペア単位で縄張りをつくるから、集団で繁殖させるのが難しい。オスメス関係なくしょっちゅう喧嘩もする。(つまり、基本、飼えない、と)

P218
もしイギリスに行くことがあれば、ぜひロンドン塔を訪ねてほしい。6羽のワタリガラスが飼われている。「ロンドン塔からカラスが去る時、王家に災いがふりかかる」という占星術師のお告げにより、国王チャールズ2世(在位1660ー1685)が法令を定めたからである。

【ネット上の紹介】
鷹の速さやフクロウの平たい顔の秘密、恐竜との関係や天候不順にどう対応しているかなど、身近な鳥の秘密に迫りつつ、案外とヘタレで弱気なのに悪賢いと思われがちなカラスの生態やポイントを、あますところなく「カラス先生」が伝えます。カラスって、やっぱりおもしろい!カラス好き、鳥好きに贈る、愉快な一冊。
脳内がカラスなもので
1章 フィールド武者修行
2章 カラスは食えるか
3章 人気の鳥の取扱説明書
4章 そこにいる鳥、いない鳥
5章 やっぱりカラスでしょ!
付録―カラス情報

「昭和史が面白い」半藤一利/編著

2020年09月09日 17時39分31秒 | 読書(昭和史/平成史)
「昭和史が面白い」半藤一利/編著

半藤一利/編著となっているのは、対談というか鼎談、だから。
昭和史の重要なテーマを、貴重な証言から発掘しよう、って企画。
実際、すごい証言が出てくる。よくこれだけのメンバーを集めたものだ。すごい!

P12
あれ(昭和5年ロンドン条約)以来、統帥権の干犯問題がやたら出てくるんですが、あの言葉を案出したのは北一輝であるとよく言われます。

P13
昭和になってから、軍部が政治的に目覚めたんです。軍人は政治に関与せず、もっぱら軍事に精励していればいいというのが、それまでの軍の考え方ですね。その考え方を捨てた。あれは左翼の影響だと思います。共産主義、社会主義。あの左翼の政治運動がいろんな政治意識を目覚めさせた。

P15
半藤:(前略)満州事変の責任者を全部クビにしたら、相当ブレーキがかかったと思いますよ。
村上:主な人だけでいいですよね。
半藤:本庄、板垣、石原。

P52
近衛さんの頭のなかには、天皇の次に自分が日本で偉いんだという考えがある。

桃太郎の別な解釈
P64
鳥越:(前略)持って帰った桃をお婆さんが食べて若返って・・・・・・という話もある。
半藤:回春型というやつですね。
俵:お婆さんの股の間から桃太郎が生まれてくるという・・・・・・
(若返ったらお婆さん嬉しかっただろうし、お爺さんも、その方が嬉しかったかも・・・但し、お爺さんは、若返ったお婆さんに捨てられた可能性がある)

P133
岩田:私が最後にお目にかかったとき、もう死の準備をされていましたが、「今おれは死のうと思うがおまえはどう思うか」といきなり問われるのです。即座に「結構です」と答えると、大臣(阿南)は喜ばれましてね。ところが「私も閣下のあとを参ります」と言ったら怒られまして、私の頬を両手でバンバンと叩き「死ぬのはおれひとりでいい。みんなは死なずに国家再建のために尽くしてくれ」と。そう言って、私がハイというまでいつまでも私を抱きしめられました。
半藤:阿南さんは最後の最後まで、国体を護持しての国家再建を念願していたのでしょうね。(これぞ、貴重な歴史の証言だ)

P139
鈴木:ソ連参戦の報が来たときに祖母、つまり貫太郎夫人は「これで肚が決まりましたね」って私に言ったんです。

P140
半藤:日本の「国体護持」に関する問い合わせに対する連合の回答、サンフランシスコ放送でバーンズ回答が流された。
鈴木:そうそう、そのことです。「私は父に英和辞典を借りてしきりに考えていた。母の話によると、subject to some supreme commander(注=連合国最高司令官の制限下おかれる)と言う文句が聞こえたそうだ」

P150
大井:終戦後、私は陸軍作戦課長だった服部卓四郎と二人きりで会食したとき、「どうしてあんな負け戦をあなた方はやったんですか、主戦論の筆頭はあなたと辻だそうじゃないですか」と、ぶしつけに聞いたんです。同じ故郷の人間ですから、しゃべりよかったんです。すると「ドイツがヨーロッパで必ず勝つと信じたから」と言うんですね。(これも貴重な証言だ)

P165
ウェッブ裁判長がしばしば言ってますよね。「彼が泥棒したということはおまえが泥棒したことの弁解にならない。ここは日本を裁く法廷であって、連合国を裁く法廷ではないから連合国側の違法を立証しても何の助けにもならぬ。よって却下する」

【ネット上の紹介】
「昭和」もすでに歴史になったというけれど。二・二六事件、「少年倶楽部」、引き揚げ、浅草ロック座、数寄屋橋、美智子妃誕生、東京オリンピック、大阪万博、昭和天皇―。リアルタイムで感じた昭和がここにある。
昭和史の“バケモノ”統帥権(杉森久英
村上兵衛)
新証言二・二六事件(池田俊彦
秦郁彦)
「少年倶楽部」懐かしの子供時代(加太こうじ
赤瀬川隼)
近衛新体制の教訓(林健太郎
野田宣雄)
桃太郎の履歴書(鳥越信
俵万智)
世界史から見た日米開戦(土門周平
池田清)
奇襲の日本史(津本陽
岩島久夫)
日本海軍提督論(千早正隆
吉田俊雄)
出陣学徒の真実(田英夫
野原一夫)
「日本のいちばん長い日」の証人(岩田正孝
高木俊朗)〔ほか〕

「鉄路の果てに」清水潔

2020年09月04日 09時22分11秒 | 読書(昭和史/平成史)
「鉄路の果てに」清水潔

ノンフィクションの佳編。
著者の父はシベリアに抑留され九死に一生を得て帰国。
存命中は戦争について語らず。
遺品を整理していて、地図とメモを見つける。
それを頼りに、韓国からシベリアへ、鉄路の旅にでる。

正露丸について
P99
「あれは元は、『征露丸』って書きましてね、日露戦争の時に日本軍の軍薬として作られたんですよ。(後略)」(だからラッパのマークがある、とのこと)

P127
ハルビン郊外で大慶油田が発見されたのは1956年(昭和34年)になってからである。
もし、満洲時代に日本が油田を発見していたら、歴史は変わっただろうか。(中略)少なくとも油田を求めての南方作戦はなかっただろう。(大慶油田は731部隊・安達実験場のすぐ近く)

P132
ソ連の参戦を知った天皇は、18分後に終戦への自分の意思を首相へ伝えるようにと指示をした。(中略)
つまり天皇が敗戦を決断したのは6日の広島市への原爆投下ではなく、ソ連の参戦だった可能性が高いのだ。むろん原爆投下があったうえでのソ連参戦で覚悟を決めた、という多段的な経緯が否定されるわけではない。あくまで決定した「時期」の話である。

P133
7月16日、アメリカはニューメキシコ州で原爆実験に成功する。
この瞬間、アメリカにとって、もはやソ連の対日参戦は不要になった。一方、原爆の実験成功を知ったソ連は、逆に懸命に日本への攻撃開始日を繰り上げたというのだ。二国が、先陣を競ったからこそ、あれほどの短期間に「広島原爆投下、ソ連参戦、長崎原爆投下」と集中した・・・・・・。そんな風に見ることもできる。

P238
アメリカのルーズベルト大統領から対日参戦を求められたスターリンは、ソ連の権益を求める条件を出したうえで、「ドイツの降伏後2~3カ月後に参戦する」と回答したのだ。
重要なのは「2~3カ月後」の意味だ。
この間、ソ連はいったい何をしていたのだろうか。
東方でドイツ軍を破ったソ連軍は、その莫大な軍事力を西方へ、万ソ国境へと移動していたのである。
シベリア鉄道を使って――。


【ネット上の紹介】
本棚で見つけた亡き父の「だまされた」というメモ書き。添えられた地図には、75年前の戦争で父が辿った足跡が記されていた。どんな思いで戦地に赴き抑留されたか。なぜ、犠牲にならねばならなかったか。薄れゆく事実に迫るために、韓国・中国・ロシアへ。国は過ちを繰り返す。何度も。これからも。
序章 赤い導線
1章 38度線の白昼夢
2章 ここはお国を何百里
3章 悲劇の大地
4章 ボストーク号
5章 中露国境
6章 シベリア鉄道の夜
7章 抑留の地
8章 黒パンの味
9章 バイカル湖の伝説
終章 鉄路の果てに