逝きし世の面影

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対外純資産21年連続世界一の日本を最大債務国(米)が格下げ

2012年05月26日 | 経済

『世界一の金持ち国(債権国)日本』

財務省が5月22日に発表した2011年末の対外資産・負債残高によると、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を引いた対外純資産残高は前年末比0.6%増の253兆円(GDP比では54%)となった。
円高を背景に日本側による海外企業のM&A(合併・買収)などの直接投資(対外資産残高)が増えたが、反対に海外勢が日本の短期債を買い増し(日本にとっての対外負債残高)も増えて、最終的なプラスマイナスで日本の対外純資産の伸びは小幅にとどまった。
日本は昨年(2011年)3・11東日本大震災や史上最高値の1ドル70円台の円高の影響で1980年以来初の貿易赤字を記録している。
この貿易赤字のマイナス要因にもかかわらず、日本の純資産残高の規模は最大だった2009年末(266兆円)に次いで過去2番目の高さである。
日本は70年代に収支が黒字化して以来海外資産は40倍、海外純資産は60倍も積み上がり、1991年に対外純資産47兆円(1ドル140円~160円)で世界一になって以後、バブル崩壊で日本経済が低迷しているにも拘らず円ベースで6倍、ドルベースでは11倍に膨れ上がり21年連続で世界最大の債権国となっている。
2011年の対外資産残高は前年と比べて3.3%増の582兆円。対外負債は5.5%増の329兆。
欧州債務危機が深刻となり、海外投資家の資金が比較的安全とされる日本の短期債に流れ込んだ。
一昔前(冷戦当時)の『危ない時のドル買い』に変わり、昨今では『金融危機の時の円買い』の動きが世界に定着して久しい。
短期債の負債残高(国債の外人買い)は45兆9090億円で、統計がいまの形式になった1996年以降で最も大きかった。
11年末時点の各国の対外純資産をみると、中国が日本の半分の138兆(GDP比24%)で第2位。ドイツが94兆円(GDP比36%)で第三位だが日本の対外純資産残高の大きさが際立っている。
ちなみにモノづくりを疎かにしたアメリカは1985年度(1ドル240円~260円)には貿易赤字が1000億ドル(25兆円)を超えてしまい第一次大戦の終結以来初めて世界最大の債権国から債務国に転落している。
日本とはまったく対照的に、以来26年間もアメリカは世界最大の純債務国で、2011年5月には連邦政府の債務残高が法律で定められた上限の14兆2940億ドル(1120兆円)に達し一時新たに国債を発行出来ない事態に追い込まれデフォルト寸前に来ているが、これ以外にも企業と家計の恒常的な巨大な三つ子の赤字に苦しめられている。

『最大の債務国(借金大王)のアメリカが最大の債権国(大金持ち)の日本を格下げ』

5月22日、アメリカの格付け会社大手のフィッチ・レーティングスは日本国債を一段階下げて最上位のAAAから数えて5番目のシングルAプラスに引き下げた。
フィッチによる各国の『格付け』をみると米国はAAA(トリプルA)で最高ランクある。
世界最大の債権国の日本をシングルAプラスとする一方で、日本に次ぐ世界第二位の債権大国の中国がAA-で日本よりも一つ上のクラスである。
世界最大の債務国(借金大王)の米国国債を最高格付けのAAAにしたのと同じように巨大な債務を抱えて苦しんでいる韓国が中国の一つ上のAAでは、その国の正しい経済実体からの判断ではなくて政治的な別の動機による『格付け』であることは明らかであろう。
公明正大な審判による判定とは到底言い難く、欧米系格付け会社の『格付け』はインチキ臭いプロレスのレフェリー並の胡散臭さで姑息なダブルスタンダードの極みである。
必ず破綻することが判り切っている詐欺的なネズミ講とサラ金が合体したようなサブプライムローンを、今回のフィッチ・レーティングスだけでなく、スタンダード&プアーズやムーディーズなど全ての欧米系の格付け会社が最後まで『最高評価』のAAA(トリプルA)にしてリーマンショックを引き起こし、ユーロ危機など世界経済を大混乱に陥れている。
3年前のリーマンショックは今の世界の金融システムに深刻な打撃を与えているが、このソブリン危機による世界経済の大混乱は未だに収まる見込みが無い。
最大の借金大王(世界一の債務国)のアメリカが最高のAAAで、最大の純債権国日本がシングルAに格下げするとは、まったく懲りることも反省することも無い、これ等のインチキ臭い欧米の格付け会社の『格付け』こそ必要であろう。
今回『安全ではない』との理由で格下げされた日本国債。
ところが、自分の金を実際に運用、投資する世界の金融機関や投機筋からは、金利が1%にも満たない(金利的には魅力がまったく無い)超低金利の日本国債が『一番安全だから。』と、欧米系の格付け会社の判断とは正反対の理由で大量購入されている。
この目の前の明らかな事実を、これ等の欧米系格付け会社は経済論理的に如何説明する心算なのだろうか。
実に不思議で、何とも不真面目な腹立たしい話である。

『債務と債権はコインの裏表の関係』

『債務』とは、ある者が他の者に対して一定の行為をすることを内容とする(借金した人が貸した側に対して生じた支払い)『義務』のこと。またはその『借金』そのもののこと。
義務を負う方を『債務』者と呼び、権利を有するものを『債権』者と呼ぶ。
ですから『債務』(支払い義務)と反対の意味の『債権』とは 貸し金を支払ってもらう『権利』のことであり、大相撲の勝ち星と負け星の数か同じであるように、常に債務の総額と債権の総額とは『同じ』となる。
コインの上(借りた側)から見れば『債務』だがコインの下(貸した側)から見れば『債権』であり、経済学的に見れば誰も彼も全員が債権者になることは絶対に出来ない仕組みなのです。
借金(債務)と貯金(債権)とは無関係ではなくて、一つのコインの裏表の関係にあり『同じものである』ともいえ、一方(債務)が増えれば自動的に他方(債権)も増える。もちろん減らす場合も同じことが言え両方が縮小する。
言葉を変えれば、一方に借り手がいるから貸し手が生まれるし、反対に貸し手がいるから借り手が出来るとも考えられて『鶏が先か卵が先か』の話と同じなのです。
現在の1000兆円近いGDP比200%もの日本国の膨大な公的『債務』(借金)であるが、その『債権』の9割以上は日本の保険会社や金融機関が保有しているのですが、財政再建で公的債権がゼロになれば安定した投資先を失ったこの1000兆円は何処に向かうのか。考えるだけでも結論が恐ろし過ぎる。

『90年代の世界各国の通貨危機とジャパンマネー』

もしも日本の政府が今のような意識的に借金(債務)を増やさず財務省の言うように財政健全化(公的債務ゼロ)に成功していれば、今日本国債として安定している日本国内では使い道の無い膨大なジャパンマネーが世界の金融市場に流れ出して、今以上に世界の経済は混乱して収拾がつかなくなる。
事実90年代には日本のバブル崩壊後の不景気で行き場を失った膨大な量のジャパンマネーが日本国から溢れ出して仕舞うのです。
あふれ出たジャパンマネーは世界に還流してアジア通貨危機やルーブル危機など数々の悪影響を世界経済に与えているのですから、なにやら放射能の危険性の話に近い。
膨大なエネルギーを持っている『原子力』は原子炉の圧力容器や格納容器の中に封じ込めている時には人類が制御出来るが、福島第一原発事故のように一度原子炉の外部に出た段階で誰にもコントロール出来なくなる。
今政府財務省が大問題だとしている現在のGDP比200%の日本国の公的債務であるが、実は内容的に『対外純資産21年連続世界一の日本』と無関係ではなくて、まったく同じ経済現象のコインの裏と表の関係にあるのです。
ちなみに今の1000兆円近い国債(国の借金)の利払い(年1%)も、20年ほど前の百数十兆円程度の国債残高で『財政健全化』が声高に叫ばれだした時の利払い(1991年の金利は約8%)も10兆円程度であり、『金利負担額』はまったく同額で『日本国』としての見れば『同じ』で変化が少しも無い。
日本の金融機関が金利が1%以下の日本国債を買い増している動機は他よりも一番安全で、結果的に一番儲かると判断したからである。
別に、この不思議の原因は日本の金融機関だけ世界の例外で、『愛国心があるから。』である可能性は金輪際、絶対に無い。
『資本』には基本的に国籍は無いが、今のような人、モノ、金、情報が自由に国境を越えるグローバルスタンダードの新自由主義の時代ではこの傾向がより加速している。
基本的に『資本』とは、『儲かる』か『損をする』かが唯一で最大の価値観であり、それ以上でもそれ以下でもない。
そもそも『資本』の基本的な性質上、際限のない自己増殖の本能的な欲望だけを持っているのですが、困ったことに愛国心も道徳心も無関係である。
この事実はアジア通貨危機等の通貨危機を演出し世界各国に跳梁跋扈して国家経済を破壊したヘッジファンド(ジャパンマネー)の動きが証明している。
社会の健全化の為には今のような無制限の規制緩和ではなくて、資本主義では『正しいコントロール』こそが一番大切な要素なのですが、これが一番むずかしい難事中の難事なのです。
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