逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

下りの坂道を全速で突っ走る馬車

2016年07月11日 | 政治
5月の最後に月曜日(今年は5月30日)のメモリアルデイ(戦没将兵追悼記念日 Memorial Day)には必ず街中の一番目立つ場所に掲げられる星条旗と第二次世界大戦で戦死した若者の遺影。毎年恒例のメモリアルディの影響なのか今でもアメリカ人が『日本』と聞いて一番最初に連想するのは(日本人が全員忘れている)第二次世界大戦(日米戦争)なのですから怖ろしい

『坂道を走る馬車に日本をなぞらえた毎日新聞主筆小松浩の不吉すぎる主張』

参議院選挙が露骨な右翼国粋主義の安倍晋三自民党が56議席当選に対して、ブレーキ役を期待されていた野党第一党の民進党が32議席に終わった7月11日の毎日新聞の第一面ですが、『坂道を走る馬車』と題して小松浩(毎日新聞社論説委員長)が主筆の肩書で東山魁夷画伯の絵を引き合いにして『馬車をゆっくりと走らせろ』と警告しているのですから怖ろしい。
(新聞協会賞27回の受賞を誇る毎日新聞の理念 - 会社案内によると、主筆は、編集の独立 、責任体制、民主的な運営の責任者として編集を統括し、筆政のすべてをつかさどるとしている)
昭和を代表する日本画家東山 魁夷(ひがしやま かいい、1908年- 1999年)は第2次世界大戦前夜である5・15事件の直後の最も危険な1933年(この年にヒトラーが政権を掌握)から2年間ベルリン大学に留学していて、ドイツ語が堪能であるばかりか歴史や文化全般にも造詣が深い。
日本が高度経済成長真っ盛りの時期に書かれた『馬車よ、ゆっくり走れ』(新潮社、1971年)は東山魁夷が夫人を伴って1969年に3ヶ月半西ドイツやオーストリアへ旅行した紀行文。(絵画ではない)
東山魁夷は著著の中で、環境を犠牲にして、古き良き物を破壊しつつ高度経済成長を続ける日本人への警鐘として繰り返し『馬車よ、ゆっくり走れ』と書いている。
ラウエンブルクの春
『ある朝、馬車を走らせて田舎道を進んでくる人がある。よほど急ぐとみえて砂塵を立てて走って来た。道端にいたティルの前で馬車が止り、「次の町まで何時間かかるかね?」と聞く。ティルは馬車の様子を見て答える。
「そうさね。ゆっくり行けば4,5時間だね。急いで行くと、1日がかりかね。」
「人を馬鹿にするな」と、男は怒って馬に鞭を当て、前よりも早く馬を走らせた。
2時間ほどで馬車の車が壊れ、次の町へようやく辿り着いたのは真夜中だった。』

山の湖オーバー湖で見かけた飾り皿『安息は人びとにとって神聖なもの、ただ狂人のみが急ぐ。』
いまや、驚異的な科学の発達も、機械文明の過度の進展も、畏れを失った人々も、すべてが、狂的で、魔的な力の暴走の中に在る。それが、「人類の偉大な進歩」であるとしても、ブレーキが必要であることは、もう、誰の眼にも明らかである。
そのブレーキとなるものは、いま、多くの人間が失いつつある、素朴で謙虚で、自然との調和を考え、情緒と潤いを大切にする、人間らしい生き方ではないだろうか。
ティル・オイレンシュピーゲルの声が聞こえる。
『馬車よ、ゆっくり走れ!』夏は終わった。私の旅も、いま終わろうとしている。

『一字違いで大違い』下り坂を暴走する日本

東山魁夷の名著『馬車よ、ゆっくり走れ』ですが毎日新聞主筆の小松浩が今回言っているような『坂道を走る馬車』の意味ではない。起伏が少ない広大な欧州大陸の話なのです。しかも書かれた当時は日本が上り坂にあった高度経済成長(インフレ)の真っ最中である。
ところが今は180度逆のデフレでマイナス成長が長い間続いている。日本経済はほぼ25年間も静かに死につつあるデフレ状態(下り坂)である。
毎日新聞の小松浩主筆ですが、坂道が上向きなのか下向きなのかの言及がないが、だれが考えても今は上り坂ではなくて下り坂。今の日本を例えるなら馬車というよりも坂道を転げ落ちる石ころである。


アメリカの祝日である戦没将兵追悼記念日(Memorial Day)の直前に行われた歴史的なバラク・オバマ大統領のヒロシマ訪問でも第三次世界大戦用の核のボタンを持った軍人が傍らに控えていた

『共産、比例目標の9議席下回る 「人殺す予算」発言潮目』2016年7月11日 朝日新聞デジタル

共産は選挙区と比例区を合わせて6議席を確保した。
ただ、共産が今回、比例区で掲げた獲得目標は9議席。改選3議席は上回ったが、前回2013年の8議席に及ばず、期待したしたほどの党勢拡大は果たせなかった。
選挙中の潮目になったのは藤野保史政策委員長(衆院議員)の先月26日のテレビ番組で、藤野氏は防衛費について『人を殺すための予算』と発言し、これを共産党執行部が撤回し2日後に辞任に追い込まれた。このことが、与党側からは『自衛隊の解消』を明記した党綱領と合わせて批判を浴びた。
憲法や安全保障関連法制を争点に掲げた共産にとっては痛い失点となった。
共産は、安保関連法が成立した昨年秋、他党に先駆けて同法廃止に向けた野党共闘を呼びかけた。
今年2月には、多くの1人区で独自候補を取り下げる方針を表明。『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』との捨て身の方針で、政権批判票の取り込みを図った。
志位氏は次期衆院選でも野党間の選挙協力を進める構えで、党内では衆院小選挙区でも独自候補の取り下げを検討している。しかし、政権選択が問われる衆院選で、外交や安保など基本政策で民進と違う点をどうすり合わせるかが、高いハードルとなりそうだ。
2016年7月11日 朝日新聞デジタル (要約)

『一字違いで大違い。左翼の共産党が右翼の自民党と同じ主張をして勝てるわけがない』

比例目標9議席の大躍進を目指した共産党ですが『人殺す予算』発言の顛末が大きく影響したとの朝日新聞の政治認識には全面的に賛成したい。これが『潮目になった』のは間違いないでしょう。
ただし、この朝日新聞記事ですが、いくつもの悪意ある間違いが意識的に注入されている何ともいかがわしい代物。『前回2013年の8議席』は比例区ではなくて合計数。(前回比例は5議席で地方区で3議席を確保)
確かに予定していた大躍進は果たせなかったが、3年前と同数の比例区の当選者を出したが、京都(定数2)と大阪(定数4)で競り負けて次点に終わっている。
(マスコミの事前予測では7~10議席だったが結果は6議席。大敗北した6年前から議席は2倍増したが、基本的な得票は3年前とほとんど同じ数字になっていて当選者数では地方区が定数6の東京都のみで2議席減)
朝日新聞ですが、今回初めて5兆円を超えた軍事費は『人を殺すための予算』発言を、わざわざ防衛費だと書き換えていたが、軍事費が『人を殺すための予算』である程度は日本以外の外国なら子供でも例外なく誰でも知っている常識である。(このニュースでは朝日に限らず全員が藤野氏の発言の『軍事費』を勝手に『防衛費』と書き換えている)
今回『一字違いで大違い』で本来左翼である筈の日本共産党が、歴史の書き換えや解釈改憲の右翼の自民党と同じ愚かな主張をしているのですから、これでは逆立ちしても勝てる訳がないと知らなかったのだろうか。実に不思議だ。
憲法9条のお蔭で日本は71年間も戦争を知らずに過ごしているが右翼も左翼も平和ボケ。平和が続き過ぎている今では、軍事費が『人を殺す予算』であるとの、誰もが知っておくべき当然の事実を多くの日本人が失念していることは事実だが、世間の間違った認識を啓蒙するのが左翼の役目である。今のように安易に世間の風向きに自分の主張を合わせるようでは左翼とは呼べない。

『道に迷った時でも警官に道を聞いてはいけないアメリカ』

テレビなどで流暢な関西弁を喋る京都外国語大学教授ジェフ・バーグランド(65)は教え子の日本人学生に対して自分が生まれたアメリカでは道に迷った時でも(安全な日本と同じと勘違いして油断するととんでもないことになる)『危ないから絶対に警官に道を聞いては駄目です』と、銃器が街中に溢れるアメリカの危険性を注意しているのです。
建国以来延々と戦争を続けているアメリカでは警察官を5人殺した元アフガン従軍兵士が警官隊と銃撃戦となり、数時間の交渉中にロボットにより爆殺されているが、まさに警官が軍人化しているのです。(日本では、そもそも爆弾が警察にあるなど論外)
アメリカでは軍が人を殺す組織だと誰でも知っているが、困ったことに我が日本では世界の一般常識が通じないのです。共産党までが同じレベルで、『軍事』が殺し殺される過酷なものだとは知らなかった悲劇というか喜劇ですね。
何時の間にか日本では左翼は絶滅していて、共産党を含め全員が穏健保守になっていたのです。しかも下り坂を全速で暴走しているのですから破滅は避けられないでしょう。






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1 コメント

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Unknownさんへ (宗純)
2016-07-12 12:17:51
この『逝きし世の面影』ブログでは繰り返し繰り返し何度も書いているのですが、
ここは正誤が判りやすい高尚な科学ブログでは無くて、正誤や善悪が判り難い、大悪党小悪党が跳梁跋扈するおどろおどろしく不可解な政治の世界を扱う下世話な政治ブログです。
しかも、この『逝きし世の面影』ブログは、『お前達は間違っている』(今までが間違っていた)というオルタナティブな政治ブログとして、政府やマスコミだけではなくてネット空間での数々の擬装や悪質なプロパガンダを告発した関係で多くの読者を獲得した半面、
自分たちの悪事を暴かれて恨みに思っている阪大の菊池誠を教祖とする不思議な偽科学教カルトとか解同の糾弾会モドキを繰り返すkojitakenグループ、護憲左翼を装う極左暴力集団の生き残りBLOG BLUESなど、何とか足を引っ張りたいと思っている悪党連中も数多い。
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