逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

アメリカ「超保守派」の世界観「ジョージ・ブッシュ」の頭の中身

2008年03月14日 | 宗教

『ジョージ・ブッシュは原理主義。?』

切れ者の父に対して、凡庸な息子。
「資質には相当の差がある」は、世間の一致した評価だ。
しかし、当選の経緯に、正当性が疑われ、インテリ層には取るに足らないブッシュ・ジュニアも所謂アメリカの草の根の民衆にとってはよき大統領である。
むしろ父よりも親しまれている。

父は、自分でテキサス人をいくら標榜しても、体質的に、東部のエスタブリッシュメントである。
知性に問題が有った庶民派レーガン大統領時代、父ブッシュは冷徹で手堅い副大統領だった。
民衆受けするタイプではない。
1988年父ブッシュは熱心な宗教右派(福音派)のダン・クエールを副大統領にして選挙で勝利する。
宗教右派は、共和党内の最大勢力で、彼らの支持なくして大統領選に勝つことは出来ない。

『宗教右派』

アメリカでは単に、保守的なキリスト教理解をしている人は、宗教右派といわない。
それは普通の福音派である。
一般に福音派は教会の権威や儀礼よりも聖書、その中でも新約聖書を重んじる。

しかも、何の解釈も加えず、『聖書を歴史的事実』として、そのまま信じる。
また、『良く家庭』を非常に重視する特徴がある。

その福音派の中で政治に自分達の価値観、信仰を反映させる為に能動的、かつ政治的に行動する人たちこそが、原理主義的な宗教右派なのです。

聖書を何の解釈もせず、そのまま事実として信じている保守的な福音派の人がアメリカ人口の40%。
選挙活動で政治に(宗教を)反映させようとする宗教右派は18%であるとされている。
この数字は日本の選挙で、当落のキャスチングボートを握っている創価学会の二倍から三倍の数字で、アメリカの政治家が宗教右派に対して従順なのは当然といえよう。

『福音派牧師?ブッシュ』

若い時分は1972年に麻薬所持で逮捕されたりアルコール中毒になったり、放埓な生活を送っていた。
ところが、39歳の時にビリー・グラハム牧師に出会ってコンバージョンを持ったというのである。

グラハム牧師とは、歴代大統領就任式に招待され祈祷を行う、いわばアメリカの「国家の牧師」で、父ブッシュが湾岸戦争突入前夜にも、その要請によってホワイハウスに出向き次の朝まで大統領のそばに付き添っていた。

その国家の牧師ビリー・グラハムから、息子ブッシュは『按手』をうけたという。
按手とはカトリックの叙品に当たる牧師資格を与える時の儀式。この時先輩牧師から新しく牧師になる者の頭に手を置く。
ビリー・グラハム牧師とブッシュの場合は、牧師就任というよりも、アタマに手を置かれることで「使命感が当てえられた」と見るべきだろう。

ジョージ・ブッシュはビリー・グラハム師からの按手によって、『神から使命を与えられた』という強い意識をもった。

『コンバージョン』

通常宗教的には『回心』と訳されている。
『罪からの霊的な、精神的な覚醒』のこと。
人に負っては光が見えたり、主イエスを見たなどの神秘的な体験を告白することもある。
ブッシュ本人はそういう神秘体験を、具体的には語っていないが、『自分は回心の体験をした』ということをおおぴらに言っている。

ブッシュは『私は神が自分に語りかけていると言うことを、日々感じている』と語っている。

『大統領就任演説の秘密』

大半のアメリカ人は新大統領の演説に期待しているのは、内政外交の具体的政策ではなく『アメリカのナショナル・アンデンティティ』についての発言である。

『国家としてのアメリカの存在意義は何処にあるのか?』
『アメリカをアメリカたらしめている理念とは何か?』
『アメリカは何処に向かって進めばよいのか?』

やはり予想されたとおり、息子ブッシュの就任演説は非常に宗教色を帯びたものだった。

『天使が旋風を御し、嵐を導く』

『わが国の理想の中でもっとも壮大なものは、全ての人に場所を与え、全ての人に機会を与え、生まれ来る全てのものに意義を与える、というアメリカの希望の実現である』(「生まれ来る全ての者」の表現に注意。宗教右派の中絶禁止に対する配慮)

『なぜなら、我々は、自らの姿に似せて我々を創りともうた、より大きな力(神)に導かれ居るからだ。』

『弱さが挑戦を招くことが無い様、挑戦を凌駕する国防力を構築する。
新たな世紀が新たな恐怖に曝されることのないよう、大量破壊兵器と対決する』

『全ての国家に対してわが国の建国以来の価値観を主張していく』

『わが国の目標が、エリコへの道で出会った傷ついた旅人を避けて通ることの無いものであることを私は誓う』(ルカの福音書第十章)

『競争は必ずしも早いものが勝つのではなく、戦は必ずしも強いものが勝つものではないことを我々はしっている。
天使は旋風を御し、この嵐を導いているとは思わないか』(アメリカの国家としての運命を左右するのは、国家を超越した神「天使」の力である)

聖書や宗教的表現をちりばめた就任演説は、ブッシュは、大統領就任式がアメリカ国民にとって、宗教儀式であることを因り鮮明にさせた。
と同時に、自分が歴代大統領に比してより『宗教的』であることを印象ずけた。

そして9・11事件が起こり、この宗教的価値観、体質を持った大統領が対テロ戦争、強制民主化戦争へと突き進んでいく。

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