みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

1455 羽山と三人の姫

2010-05-03 08:00:26 | 花巻周辺
     《↑ 羽山(中央正面の山、別名台羽山)》(平成22年3月8日撮影)

 花巻の羽山(台羽山)にまつわる伝説がある。

 早池峰山は女神『瀬織津姫』を祀っているという。それゆえ瀬織津姫は早池峰大神とも呼ばれていて、千年以上にわたって早池峰の郷の守護神として尊崇されてきたようだ。
 その瀬織津姫に関しては、遠野地方では
 はるか遠い昔、ひとりの女神が三人の娘を連れてこの地を訪れて言った。
「今夜、ここでいい夢を見た子に、あのいちばんきれいな早池峰山をあげよう」
 その夜、姉姫の胸に霊華が降ったのを見た末の姫は、こっそり自分の胸の上それを置いた。こうして末の姫は早池峰山の神となった。彼女の名前は「瀬織津姫」。姉姫たちは六角牛山と石上山を得たという。

   <『遠野』(加藤 敬著、学研)より>
と言い伝えられているという。
 ずっとそうとばかり思っていたのだが…、所変って花巻地方になると次のように語られていることをこの度知った。
  『早池峰の女神』
 薬の神のところには、三人の娘があった。
 ある秋晴れの一日、三人の姉妹は、薬草を採りに出かけて、そちこちを歩き回った。この姉妹は、それぞれ山の神として鎮まる身の上であったから、薬草を採りながらも、四方の山々を眺めては心あての山を探した。そして、三人とも、早池峰の秀麗な山容に見ほれて、何とかして自分が、あの山の主になろうと考えたのであった。
 宮野目の花野に行った姉妹たちは、花野の美しさについに遊びほうけて、すっかり疲れたので、その中で眠ってしまった。三人が眠っている間に、虚空から一輪の蓮華の花が降り下って、上の姉の枕元にとまった。その花を持った者が早池峰の神になるという定めであった。
 その内、最初に目覚めた末の妹が、それを見つけて、いったん気を落としたが、姉がぐっすり寝込んでいるのをさいわいに、その花を自分が取り上げると、早々に早池峰をさして飛び去ってしまった。
 次に目を覚ました中の娘は、妹に先に早池峰を取られたのを知ると、自分は羽山(花巻市湯本の花巻温泉地内)に飛んで、その山の神となった。
 最後に残った上の姉は、すでに妹たちがそれぞれの山を定めたのを見て、あわてて胡四王山(花巻市矢沢)に飛んでいき、そこの神となった。…

   <『花巻の伝説 下』(及川惇著、図書刊行会)より>
つまり、花巻辺りになると件の伝説は
          遠野地方   花巻地方
  上の姉姫  石上山  → 胡四王山
  中の姫   六角牛山 → 羽山
  末の妹姫  早池峰山 = 早池峰山
のように上の姉姫と中の姫の山がそれぞれ他の山に入れ変わってしまう。
 もちろん、伝説だからそれぞれの地に根付いたものとなるだろうから、遠野に於いては遠野盆地から望める山から、花巻に於いては花巻から見える山から選ばれるのは当然と言えば当然ではあろう。言い換えれば、早池峰山は遠野からも花巻からも望めるが、花巻からは六角牛山も石上山も全く眺めることは出来ないから、花巻から望める山々が、それも格式の高い山々が選ばれたのであろう。もちろん、早池峰山、六角牛山、羽山、胡四王山はいずれも山岳信仰の篤かった山々であり、おそらく格式は
 遠野では ①早池峰山 ②六角牛山 ③石上山
 花巻では ①早池峰山 ②羽山    ③胡四王山
という順になるのだろう。因みに、花巻に三嶽神社という神社があるが、そこはこの3つの山を祀っているという。

 これら早池峰山、羽山、胡四王山のうち、まだ羽山については未報告だったので少しく報告したい。
 花巻温泉から台温泉に向かう。かつてのその道は羽山の北側を回ったというが、現在は湯の沢川に沿って造られた舗装道路を進む。花巻温泉紅葉館の後側を通り過ぎて”渡月の谷”を渡ると
《1 左手に滝が現れる》(平成21年3月18日撮影)

 その手前には神社の堂宇と
《2 滝不動尊?》(平成22年4月9日撮影)

があり、生花が供えてあった。
 そして、その後にその滝
《3 緒ヶ瀬の滝》(平成22年4月9日撮影)

が流れ落ちている。
 なお、たまたま手元にあった
《4 かつての緒ヶ瀬の滝の絵葉書》

であり、今より高さが高かったように見える。なお、この絵葉書のタイトルは
  ”(陸中台温泉名所) をがせ瀧 ”
となっているから、おそらくまだ花巻温泉よりは台温泉の方が有名だった頃のものであろう。かつては、滝の左下に展望台?があって、そこにも滝の一部が流れていたということか。
 
 さらに先程の舗装道路を進むと右手に釜淵の滝の入口があるが、そこはやり過ごしてさらに進む。ほどなく左手に岩手医大花巻温泉病院の建物が見れる。さらに進むと右手に羽山神社の赤い鳥居が見え境内が現れる。羽山神社の概要については報告済みなので、そのとき報告をしなかったものを少し。
 境内には五庚申塔、七庚申塔、普通の庚申塔も多いがその他にも供養塔が沢山あるがその中に珍しいし
《5 黄金》(平成21年3月18日撮影)

という石塔があった。どういう謂われなのだろうか。
 そして、ここの境内の
《6 お清め水》(平成21年3月18日撮影)

は湧き水であり、それはとても美味しい水らしくいつも多くの人が汲みに訪れている。

 では、ここから奥の院がある羽山の頂上へ登ってみる。
《7 四合目の石標》(平成21年3月18日撮影)

《8 麓俯瞰》(平成21年3月18日撮影)

《9 頂上間近》(平成21年3月18日撮影)

《10 奥の院》(平成21年3月18日撮影)


 頂上からの展望はあまりよくなく、目立つものといえばNHKの中継所が建っているくらいのものだった。

 なお、今の時期(5月初旬)周り山々は百花繚乱なのに台羽山には山野草は殆ど咲いていない。その少ししか咲いていない山野草については後ほど報告したい。

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