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安倍自民党と日銀のつばぜり合い:日銀の独立性を考える④

2012-12-29 00:00:16 | 日本

(前回からの続き)

 というわけで、現行の通貨や日銀に関する法律を読むかぎり、わが国の金融政策における「日銀の独立性」の確保と同政策への政府(=民主主義国家においては国民)の関与とのバランスはそれなりに計られているものと思います。つまり日銀の金融政策は政府が選んだ日銀役員が決定するわけだから政府の意向がそれなりに反映されるだろうし、一方で日銀役員は(たとえどんなに政府に嫌われたとしてもやめさせられることなく)その権限を行使して5年の任期をまっとうすることができるということです。

 通貨発行権のほうですが、無制限に通用する法貨を作れるのは政府ではなく日銀のほうなので、政府には実質的な通貨発行権があるとはいえませんが、一方で日銀は政府のいわば「子会社」であり、しかも政府任命の役員が業務執行にあたることから、日銀が政府以外の出資者の利益のために「親会社」である政府の意向を無視してこの権利を濫用するようなことも考えにくいでしょう。

 以上のことから、個人的には政府と日銀の関係は現状どおりでよいと感じており、したがって日銀法の改正は不要であると思っているのですが・・・。

 本稿冒頭で紹介した自民党の安倍総裁の日銀に対する金融緩和要求ですが、さらにエスカレートしてきた感じです。その後のTV番組などで同氏は、次回1月の金融政策決定会合で日銀が2%の物価目標(マイナス金利政策)を導入しなかった場合は政府と日銀のアコード規定を盛るなどの日銀法の改正に着手すると述べました。さらに同法の改正にあたっては物価の安定だけでなく雇用の確保までも日銀の使命として明記する意向も示しています。

 このあたりは、望ましいとする為替レート(1ドル85円よりも円安水準)について言及していることから推察すると、2%インフレでドルと円の実質金利差をドル>円として円安ドル高を促そうという(相変わらずの?)「円安誘導による外需狙い」なのでしょうか。先日も書いたとおり、これには得るものは少なく、危険性やダメージは小さくないという懸念を持っています。もっとも需要不足で貧血気味の日本経済の現状で、金融政策だけでインフレ率を2%に持ち上げるのは至難の業。2%超えは最近ではバブルの頃(1989~91年:最高で3%台前半くらい)だけです(さらに同時期の長期金利は5~7%くらいで実質金利は十分にプラスだった)・・・。

 「雇用確保」に至っては完全に政府の政策の範疇ではないでしょうか(米FRBが雇用確保を目的に掲げているので、それをまねようというのでしょうが・・・)。金融政策でどのように雇用を増やしたり失業率を低下させようというのか、もっと分りやすく国民に教えていただきたいものです・・・。

 以上のように、金融政策に関してはどうにもアベノミクスには危うさを感じざるを得ません。そして日銀法の改正(総裁解任権など、日銀に対する政府の関与を高める等)やその反対に日銀の独立性強化(政府出資割合を下げる等)に関する論争を巻き起こしそうです。繰り返しですが個人的にはいずれも不要と考えているので、こうした議論に時間やエネルギーを費やすのはいかがなものかと感じています。

 一方で10兆円規模の補正予算による公共事業前倒しの表明や、景気が回復しない場合の消費増税停止について含みを持たせるなど、アベノミクスの財政政策面での期待は大いにできそうだと思っています。理由は前稿で長々と書いたとおりです。

 といったわけで、安倍新政権の経済政策は不安半分・期待半分といったところ。不透明な世界経済情勢のもと、政府と日銀が現行の法令等に基づく関係を維持しつつ、適正な規模の金融政策で実質ゼロ金利のラインをキープしながら、財政出動で景気浮揚と社会インフラの強靭化を図る、というのが望ましいアベノミクスの姿だと考えているのですが・・・とにかく年明けの日銀の金融政策決定会合から目が離せなくなってきましたね。

(「安倍自民党と日銀のつばぜり合い:日銀の独立性を考える」おわり)


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