(前回からの続き)
前回書いたように、北海油田の石油資源が枯渇しつつあるなか、これからのスコットランドには拠るべき産業が乏しいため、かりに独立したとしても、「国民」がいまの生活水準を維持していくことは難しいだろう、と思っています。
このあたりはスコットランドが独立後にどの「通貨」を使用するのかをイメージしてみると想像がつきやすいでしょう。で、その通貨の選択肢は「スコットランド・ポンド」「ユーロ」「英ポンド」の3つのうちのいずれかとなるわけですが・・・。
はじめに独自通貨「スコットランド・ポンド」を選ぶという道が考えられます。通貨政策は、外交や国防等の各政策と同様、独立国家としてもっとも基本的かつ重要な政策のひとつであり、当該国家が独自の通貨を持つことは財政・金融政策との整合性を取るうえでもいちばん自然な成り行きだと思われます。
しかし、いまのスコットランドにはこの選択は難しいでしょう。スコットランド・ポンドはユーロや英ポンドなどに対して弱い通貨となると想定されるからです。
もしスコットランドが英国から独立したら、当然、英国はその国家債務のかなりの分をスコットランドに背負ってもらおうとするでしょう。実際にその金額がどれくらいになるのかはべつにしても、英国のいまの現状―――2013年の公的債務残高:約1.49兆ポンド―――から想像すると、スコットランドは独立当初から現状の「国力」では手におえないほどの巨額の国家債務を抱えることになりそう・・・。これは当然、通貨安の要因となります。
しかも、先述のとおり、スコットランドには貿易・経常収支を黒字に持っていけるほどの有力な産業は見当たりません。つまり自国通貨のスコットランド・ポンド安をテコに「輸出」で稼ぐという手が使えないということです。そのため、頼みの輸出品である石油の産出量が減り続ける今後の国家運営に明るい見通しは立たない―――スコットランドの経常赤字は年々膨らみ、金利は上昇していかざるを得ない・・・(多くの新興国と同じ)。
以上を考えると、独自通貨スコットランド・ポンドという選択肢は、通貨安を通じてスコットランドとその国民を貧しくさせるリスクが高いため、採用は困難ということになりそうです。そのためスコットランド独立派としては、独自通貨の導入をあきらめ、代わりに強い通貨の傘に入れてもらうという方向性を模索せざるを得ないということになります。
では次に「ユーロ」を選択するという道について。このあたりは欧州で最近独立した国々がめざすところと同じで、現実的であり、十分に検討に値しそうに思えます。
でも実際には政治的な理由でこれまた難しそうです・・・。スコットランドは独立しても欧州連合(EU)に加盟できるかどうか微妙だからです。
EUに参加するためには加盟28か国すべての同意が必要となりますが、カタルーニャの分離独立を阻止したいスペインが(英国とともに?)反対しそう(もしスコットランドの加盟を認めたらカタルーニャの独立を食い止められなくなるおそれが出てくる)。現にスペインは、2008年にセルビアから独立を宣言したコソボのEU加盟を承認しませんでした。これに関連し、EUのバローゾ委員長も「(独立スコットランドのEU加盟は)不可能ではないがきわめて困難」との見解を示しています。ユーロ導入のためにはEUに入れてもらわなくてはなりませんが、こうしたEU内の諸事情から判断すると、独立後のスコットランドのユーロ採用のハードルは相当に高い感じがします。
(続く)
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