「持続可能な国づくりの会」設立総会・報告

2007年08月28日 | 持続可能な社会

 一昨日の「持続可能な国づくりの会」の設立総会のことを昨日書くつもりでしたが、コスモス・フォーラムの記事だけで手一杯でした。一日遅れでご報告します。

 総会の冒頭で、数日前のブログ記事とほぼ同じ内容の設立趣旨のスピーチをしました。

 参加者は多くはありませんが、みな本気の方ばかりでした。

 「私たちは、日本そして世界が安心して暮らせるかたちで末永く持続すること、まだ見ぬ将来世代にまでより豊かに引き継がれることを強く希望します。私たちは自然環境と調和した持続可能な経済・社会・政治システムの構築を目指します。」という前文、「本会は、日本を持続可能な緑の福祉国家にするために必要な諸事業を行い、世界と人類の持続に広く貢献することを目的とする。」という目的を含んだ「会則」が全員一致で可決されました。

 総会後の学習会では、まず私が「IPCC第4次報告などなど 1) 2)、十分な情報は提供されているにもかかわらず、市民にも政治家や経済人にも――資源の大量採取―大量生産―大量消費―大量廃棄という流れになる近代の産業システムを変えようという――適切な反応が起こらないのはなぜか?」という問題提起を行ない、みなさんと話し合いをしました。

 さまざまな有意義な発言がありましたが、その一部だけご紹介します。

 まず1つ、「『理性は情動の奴隷である』というヒュームの言葉をあげて、人間は差し迫った危機でないと情動が動かされないので行動しない」という指摘がありました。

 もう1つ、「経済と環境の関連 3) への報道は十分ではなく不足している。今日の生産物は明日の廃棄物というきわめて当たり前のことについて、正確な情報を与えれば人は動くはずだ」という発言もありました。

 それからもっとも初期からコンピューターなど新技術の開発-普及に関わってきた方から、「新しいものの普及は、20%から40%、そしてブレークスルーという傾向がある。最初の20%までが長い、そして大切。日本人は、理屈より周りの空気で動くものなので、空気が変わるまでが大変だが、空気が変わればがらりと変わる」という興味深い指摘がありました。

 それに対して、「そういう傾向は、拡大がいいことだと思われていた時代には当てはまるが、今後はどうか」という疑問が出されましたが、それに対して「環境問題についても、団塊の世代が動けば、動くと思う」と答えておられました。

 また、「日本は閉鎖系社会であり、等質な生き方、我がままを抑える、まわりに合わせるという民族性が育まれてきているが、それはプラスにもマイナスにもなる」という指摘もありました。

 さらに若い世代から、「リーダーの世代は、戦後の空腹体験とそれを経済成長で克服したという成功体験から抜けられないのではないか。次世代への想像力が欠けているのではないか」という発言がありました。

 また、「理性によって情動をコントロールできる人がリーダーであるべきで、理性的に行動すべきグループとそれができないグループを区別する必要がある」という意見も出ました。

 私は、情動と理性の関係について、「経済成長に対しての『目的合理性』と『エコロジカルな合理性』を区別するといいと思う。これからのリーダーに必要なのは『エコロジカルな合理性』だと思う」と述べました。

 そして最後に、適切な行動が起こっていない原因としては以下のことが考えられる、とまとめました。

 ①日本人の民族性としての、いくらでもおねだりに応えてくれどんな粗相をしても尻拭いをしてくれる優しい母のような自然への甘えの感性。4) 5)

②お上意識――民主主義の未成熟。6) 7)

③科学技術による経済成長・拡大・成功がアイデンティティになっている。アイデンティティの変更にはアイデンティティ・クライシス、不安が伴うので、大きな抵抗が起こる。

④心理学的にいうと、不安に対しては、2つの反応パターンがある。否認・抑圧という防衛メカニズム、不安の原因の認識‐適切な対応。後者のほうが適切な反応であることはもちろんだが、防衛メカニズムに陥ることがしばしばある。

⑤戦後の物質還元主義科学と個人主義的民主主義のせいで次世代への想像力―自然といのちのつながり意識が失われてきている(2005年8月頃の記事参照)。

 そして、では今後どうすればいいのか、どうするのかということについては次のことを提案しました。

 ①梅原猛氏の言葉を借りれば「日本人は雪崩をうつ国民」なので、情報・状況が閾値を超えるまで、つまりブレークスルーまで、辛抱強くアッピールし続ける。

 ②現代科学的な根拠のある「つながりコスモロジー」 8) を伝達していく。

 ③行動を動機づける主な情動に欲望、不安、愛情がある。情動=マイナスと捉える必要はない。愛情=つながり感覚という情動に動機づけられれば、次世代のための適切な行動が生まれる可能性は十分にある。

 最後近く、孫のいる女性から「行動できるかどうかのポイントは、次世代への愛情だと思う」というまさにポイントをついた発言がありました。

 公式プログラムが終わった後の二次会まで、有意義で楽しい集いでした。

 趣旨に賛同していただける方、次世代の子どもたちの未来のために、これから、ぜひご参加・ご入会下さい。




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