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sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:ディーパンの闘い

2016-03-06 | 映画


カンヌ映画祭で、コーエン兄弟やグザヴィエ・ドランら審査員たち満場一致で、
評判のいい『キャロル』を抑え、最高賞のパルムドールに輝いたというこの映画。
予告編見てもなんか地味そうだし、イマイチそそられなかったのですが
映画を1本見た後、ついでにレイト上映で見てみました。
地に足のついた地味さですが、なぜか全く退屈せず、最後まで見入ってしまった。
とはいえ、いくら力のある映画でもこれに賞を与えるカンヌすごいなぁと思う。
「キャロル」は友達に勧められるけどこれは勧めないかも。
わたしは見てよかったと思うけど、地味で殺伐としてるからなぁ。

→「君と歩く世界」の監督なんですね。
「君と歩く世界」はかなり好きな映画でした。

スリランカから、偽装家族と偽のパスポートでフランスに入国した難民の話ですが
スリランカの政治状況や宗教、歴史を知らなすぎて、
どうにももどかしい部分があったので少しググりました。
説明的なところのない映画なので、想像で補うしかなかったけど、
帰宅後に少し調べました。
公式サイトにも簡単な説明がありました。→スリランカについて

妻子を失って闘うのをやめた主人公の元兵士ディーパンは
ヒンドゥー教徒のタミール人で(それさえぼんやりとしかわかってなかった)
反政府組織の元兵士。
役者自身も実際に同じ元兵士で、そこのリアリティがはんぱないですね。

この偽装家族がフランスで住むのが、郊外の団地で、難民やアラブ系の人が多く
ドラッグの売人がいりびたり、昼間から銃声が聞こえるような治安の悪い土地。
こういうヨーロッパの荒廃した郊外の集合住宅地、みたいな風景は、
最近映画でたまに見るように思う。
たとえば、→「トライブ」の寄宿学校が、そのまま団地になったような雰囲気です。
殺伐として、暴力の気配に満ちた、希望のない荒れさびれた街。
そこで、偽装家族の3人は、不器用なコミュニケーションで
おそるおそる近づいたり離れたりする。でもだからといって、
少しずつ思いやりと愛情が生まれ家族になっていく、というような感動話ではなく
そんな風な温かいものを信じていいのか、どうやって信じるのかもわからない
この3人の関係は、一筋縄ではいかないのです。
主人公の妻役は、ディーパンにも子供にもなつかず、なつかせず、
ひどく薄情な女に見える。
それも、どんな風に接したらいいのかわからないのと、
自分の命や自分自身を守るのに、いっぱいいっぱいなだけなんですね。
ディーパンも女の気持ちを尊重してやる思いやりのある男ではない。

ラストでのディーパンの変化は、(たとえ偽装でも)家族を守る為というより、
それもあるけど、とうとう本当にキレちゃった、ということだと思う。
かつて兵士だった頃の、毎日戦い人を殺した日々の傷が、
封印してたものが爆発して溢れ出したんだと思う。
ベトナム帰還兵の心の傷がいびつな形で表出することがあるように。
これは東映の仁侠映画だって誰か評論家が言ってたので、
難しく考えず、我慢に我慢を重ねた主人公がキレて暴れまくるという
単純な映画のように見ればいいのかもしれないけど
それもまた違うように思うのです・・・。
難民の現実も重すぎるしなぁ。

そして一番最後の夢のような明るく暖かいシーンは
ただの夢なのか、のちの現実なのか、
夢でなければいいなぁと思いながら、
彼らがそんな風に幸せになる可能性って、あんまりないよなぁ、と思うと
なんだかやるせない。

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