だからさ、君とかあなたとかぼくとか代名詞使ったタイトルは
覚えにくいんだってば。邦題って、全く・・・と思うことが本当に多いですね。
そもそもこの映画の原題は「錆と骨」というもので
そういう、少しざらっとしたところのある骨太な映画なんですよ。
それになんで甘い邦題をつけるんだろうなぁ。
映画自体は思ってたような「最強のふたり」っぽヒューマン系ドラマではなく、
原題通りの骨太さが大変よろしい。好きな映画でした。
足を失くした後の強くて弱いマリオン・コティヤールが美しい。
本能だけで生きてるような、戦うことが好きな、
暴力的で馬鹿で単純でむき出しの獣のような男。
彼には恋愛とかの概念さえないんだけど、相手と信頼を積み重ねることはできて、
なんの同情もなく、シンプルに1対1の人間同士として、
シャチのショーをやってる時に事故で足を失くした女(マリオン)に向き合う。
外に出るのも嫌がった彼女を連れ出し、
切断されている足のことを何も気にせずに、一緒に泳ぐか?と聞く。
無神経と言えば無神経なんだけど、同情にうんざりしている時には、
足がないだけのごく普通の一人の人間として扱ってくれるこういう態度が
ありがたいし、ラクなんだろうっていうのはわかる。
そして彼女は少しずつ生きる意欲を取り戻し、
欲情することも取り戻し(それって生きる意欲に大きく関係することですから)
彼を愛しはじめて、そして
義足をつけ自分で歩くようになって行く。
でも彼は粗野な男で、セックスもただセックスとしか思ってないので、
彼女と関係を続けている間でも平気で別の女と先に帰ってセックスしちゃうし、
それの何がいけないのかさっぱりわからない男。
クラブに遊びに行った時、男が悪びれずにじゃあまた明日な、と
別の女と先に帰っちゃった後のシーンで、
マリオンが自分の義足にそっと上着をかける場面は、とても切ない。
でも二人の信頼もセックスも深まって行き
彼女は彼のやってた賭け格闘の仕切りをまかされるようになる。
義足で、荒くれ男たちの賭けの中に入って、
負けずに仕切るマリオン・コティヤールのかっこいいこと。
最後の方のシーンで男が電話で言う、ジュテームは響く。
男は女を、元々好きで信頼はあったけど
彼女を必要としているわけではなかったんです。
セックスの相手としても代替可能な存在のようだったけど、
このとき初めて、他の誰でもない彼女にそばにいてほしい、
彼女が必要なんだと気がついたんだろうなぁ。
結構たくさん映画を見てると、ただ面白い映画というのも嫌いじゃないけど
(むしろばかばかしいのは好き)、
これくらいの当たり映画が3本に1本くらいはほしいなぁ。
実際は5本に1本くらいかな。
全然おセンチな映画じゃないのに、途中は切ない、でも
やっぱり骨太な、いい恋愛映画。
sigh さんのコメント、私の表現できないところを代弁してくれてありがとう、って感じがしました。
この映画は、あまり期待しないで見始めたのですが、思ったよりずっとよくて、うれしかったです~。