sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

「レンタサイクルにしたら?」とよく言われる

2023-05-31 | 自転車
ブロンプトンでの輪行の話をする時、乗ってるのはいいし畳むのも開くのも一瞬で簡単だけど
運ぶのだけは重くて大変なのよねぇとぼやくと、
無理して持って行かなくてもレンタサイクル借りればいいよ、と
アドバイスしてくれる人が結構いるんだけど(気持ちはありがたいけど)
いや、あの、そういうことじゃないんだよなぁ…
全然違う、ほんと、そういうことじゃない。

知らない街に降り立って、自分の自転車を展開するほんの30秒のその瞬間の、
地球の重力や世の中のしがらみや人生の重荷から解放されるような、あの気分!
鞄をセットして、よいしょとまたがって、背中を伸ばして頭を上げて、
えいっと一足漕ぎ出した時のあの、知らない世界へ踏み出すような旅の冒険感!
乗り慣れた自転車で初めての街や野山をすいすいと走る時の心地よい孤独と自由!
どれも自分の相棒の自転車だから味わえるんだよ。
ブロンプトンは一人旅の大事な相棒なんだよ。
レンタサイクルは自転車に乗る気持ちよさはあっても、
相棒ではなくただの道具で、その時だけの移動の足。
でもブロンプトンはずっと一緒の自分だけの相棒なのよ。
ほんと全然違う。

映画:小さき麦の花

2023-05-30 | 映画


この手の地味ながら滋味のある中国映画にとても弱いんだけど、その中でも特に地味で滋味。
素朴で正直な善人が時代の波に翻弄されてというような要素も、
人の心の隙間に忍び込むような微妙な悪意もなく(調子よく人を利用する人は出てくるけど)
主に主人公夫婦の貧しく質素な生活の中でのお互いへの慈しみなどに要素が絞られている
シンプルな作りの映画で淡々としたドキュメンタリーのような趣きがあります。

お互い相手以外何も持たないような貧しい夫婦が麦を植え、卵を孵して鶏を育て、家を建て、
季節は巡り、相手のいる幸せをしみじみと嚙みしめ…
屋根の上のシーン、水の中のシーン、何度か現れる麦の花のシーン、
印象的な暖かい良いシーンがたくさんあって、地味でも退屈はしません。
主役二人の演技は素晴らしく、やわらかく抑えた色調の映像も味わい深く美しい。
小さく貧しい家の中はどことなく聖性を感じさせるのだけど、
(「苦海浄土」に出てくる貧しい貧しい漁師の家の描写の美しさの圧巻!を思い出す)
中でも、予告編にもある段ボールから光の漏れるシーンの美しさといったら!
(予告編に少し出ています)
中国で、わたしも好きな監督ジャ・ジャンクーに次ぐ監督と言われると、今後も期待したくなりますね。

そしてロバ好きのわたしには、「イニシェリン島の精霊」に並ぶロバ映画でもありました。
砂丘のロバのシーンの美しさ、そしてそのあとのロバのシーンの演出の巧みさたるや。
ロバにしかできない役でした。ロバ偉い。

あと、主人公ふたりが饅頭を食べるシーンがすごく多くて、食べたくなります。笑
中国には米文化の地方と粉文化の地方があると聞いたけど、
この映画の舞台はご飯ではなく饅頭を食べる地方のようですね。
湯気の出るふかふかの真っ白な饅頭、どんな貧しい人もこれは食べられるのかな。

しかし、いい映画だけど中国で若い世代に社会現象と呼ばれる大ヒットをして
奇跡と呼ばれたというのは言い過ぎかなと個人的には思う…
前述したような、もっと大きな物語の中に描かれる夫婦の話の方が
映画としての複雑さや深みもあるのではと思うし
個人的にも愛し合う男女の閉じた話はあまり好みではないのです。
「イーダ」がすごく良かった監督の「コールドウォー」があまり好みじゃなかったと書いたのも、
パク・チャヌクの素晴らしい映画「別れる決心」にさほど乗り切れなかったのも同じ理由だけど
中国映画だと→「在りし日の歌」「芳華」などが近代中国の体制に翻弄される個人を大きな流れの中に描いてとても良かったです。

10年ぶりの東京5:寄席と新幹線

2023-05-29 | 一人旅たまに人と旅
食事の後午後からは浅草寺をぶらぶらしてから寄席に。





大阪では時々寄席に行くけど、お江戸の寄席に行くのは初めて。
関西でチケットの取れない人気噺家さんも普通に出ているのがうれしい。
しかも東京には定席の寄席がいくつもあってよりどりみどり。いいな〜。
その中で今回行ったのは浅草演芸ホール。

関西で何度か聴いた菊之丞さんや市馬さんを楽しく聴かせてもらいました。
この日は江戸屋猫八さんの襲名披露で、その記念の?猫の手ぬぐいも買って
それがトップの写真ですが、もうこれすごくかわいいー!
猫八さん、襲名おめでとうございます!

寄席の後は余裕を持って新幹線に乗りましたが
帰りに車内で飲みながら食べようと思ってた崎陽軒のシウマイ弁当が探せず、普通のお弁当に。



季節やなにやら、限定というのに弱いですね。笑
この前の城崎でもそうだけど、旅の車内でお弁当食べるの本当に好きなんですよ。
行きにプシュッとビールなど飲む開放感もいいけど
のんびりとお弁当をアテにちびちび飲むのも本当に好き。
コロナ禍の頃はできなかったので、できるようになったのは嬉しい。
ちなみに東京へ行くときのお弁当はこちら。




猫が留守番してるので、いつもできるだけ早く帰ってあげようと思ってしまう。
猫が平気ならいいけど、最近は旅行から帰ると、普段は鳴かないのに
ミャーミャーミャーミャーミャーーーミャー!と抗議鳴きをされるのです。
まあ文句言われても、猫が元気で無事ならほっとして、よかった、家はいいなぁと思うんだけどね。
猫がいるので1泊以上はなかなか行けないし、1泊でもなんだか気がひけるけど
今年は毎月のように小さい旅行があって、ごめんよと思いながら行くことになりそうです。

10年ぶりの東京4:交差点で飲む人と穴子

2023-05-28 | 一人旅たまに人と旅
翌日、当初の予定では隅田川の水上バスで浅草まで北上したかったのだけど
(陸のはとバスと川の水上バスを対比させたかったのよね)なんと満席で予約取れず。
気を取り直して東京の友達とランチをすることにしました。
ホテルをチェックアウトして、時間が早かったので駅までの間の公園で少しのんびり。






日本橋の穴子のお店で、本店は並ぶから一番で入りましょうということで11時前の約束だったけど早く着いて、
これが午後なら目についた立ち飲みかカフェにはいるのだけど
さすがに11時前だし、駅のそばには休めるカフェも見あたらない。
大きな銀行などの建物が並んでいる広い道で、この交差点は四条烏丸の大きな交差点に似てるなぁ
などと考えながらキョロキョロしてたら滋賀県の広報をするお店「ココ滋賀」が目に入った。

東京まできて、自分にとって身近な滋賀に関わる必要はないかと思いながらも、
すごいひこにゃん推しの友達がいるので、ついふらっと入ったらコーヒーやお酒が売られていて、

お店の外においてある椅子に座って飲んでもいいとのことだったので
朝から滋賀のウィスキーでハイボール。気温の上がった日だったので美味しくいただきました。


それから友達と会って、連れて行ってもらった穴子の老舗の本店は既に数人並んでたけど
開店と同時に十分入れて、ビールを飲みながら穴子のお重をいただきました。

うなぎのひつまぶしに似た食べ方で、最初はそのまま、次に薬味と一緒に
最後にお出汁をかけて食べるよう言われ、これが本当に美味しかった!
穴子も鰻と同様、特に好きなわけじゃなく自分では食べないんだけど、
ひつまぶしを初めて食べてすごく美味しかったのと同じで
今回の穴子も本当に美味しくて、是非また来たいと思いました。

10年ぶりの東京3:戸越銀座と恵比寿のイタリアン

2023-05-27 | 一人旅たまに人と旅
息子が就職して以来住んでいるワンルームマンション(社宅です)へ向かいました。
地下鉄の駅を出てすぐのこのゆるい階段の景色はいいなぁ。

息子は最近まで、友達の家のシェアハウスに住んでいて、この社宅は物置代わりになってたらしいけど
最近そのシェアハウスがなくなったので今はここに普通に住んでいるそうです。
(でもまたすぐに別のシェアハウスへ移るようで、シェアハウス楽しいのね。)
狭い部屋だし散らかってはいるけど足の踏み場もないほどではなく許容範囲。
若い男の子の家ってこんなもんなんだろうな。
でも冷蔵庫開けたらビールしか入ってなくて笑った。

息子は副業でクラフトビール作って売ってるので、仕事以外の週末はビール中心に過ごしてるみたい。

食事の前に戸越銀座というのが近くにあって、そこを少しぶらぶらしました。

日本中にあまたあるなんとか銀座という呼称の発祥はここなのだとか。
関東大震災で本家の銀座の瓦礫を、沼地?だったここに持って来て埋めて土台を作り
それでこの商店街が戸越銀座と呼ばれるようになったらしい。ほんとかな?
そしてここは東日本では一番長い商店街だそうです。
まあ、日本一長い大阪の天神橋筋商店街の敵ではないな、という程度の長さだけど
結構賑わっていて、下町の雰囲気も楽しい通りでした。
駅もなんだかかわいい。




翌日、息子はアメリカに出張に行くのであまり遅くはなれないけど、
誕生日前夜ということもあって、良いイタリアンを予約してもらっていました。

夕食の時間は前テーブル一斉スタート、というタイプの店は
予約の取れない有名店では多いんだけど、ここもそう。
ちょっと遅れたけど気持ちよく迎えてもらい食事をスタート。
ワインはペアリングをお願いして、料理に合わせてグラスでサーブしてもらう。
どの料理も独創的なアイデアがあってそれをうまくまとめ上げててとても美味しかった。
ワインは今風にナチュールが多く、途中浅草仕込みのミード(ハチミツのお酒)が出たりして
ナチュールはあんまり好きではないのに料理にはすごく合ってて、美味しく面白い経験になりました。
以下は食べたものの写真の記録だけなので興味のない方はスルーしてください。
(実際はもう何皿かありました。安い店ではないけどそれでもこの内容ならすごくお得。)























10年ぶりの東京2:ホテル

2023-05-26 | 一人旅たまに人と旅
はとバスに乗った後、電車を乗り継いでホテルへチェックイン。
ホテルは浜離宮恩賜公園のそば。窓から見えます。時間があれば散歩したかったな。

スカイツリーも遠くに見えます。

窓からの景色は夕方も夜もきれいでした。





そしてなんと部屋にキーボードがある。

タブレットが置いてあって(チェックアウトもこれでやります)
そこにキーボードの使い方、弾けない人が「さくら」を弾けるようになるインストラクション、
そしてよく知られたポピュラーなクラシック曲の楽譜などが入っていました。

冷蔵庫のドリンクは飲み放題だけど、夜にワインをたくさん飲むのでビールは我慢。
冷蔵庫の横のグラスなどの入っている引き出しには、なんとお抹茶のセットが。
これもタブレットに、外国人向け?に説明があってお茶の立て方が入ってます。

洗面所のアメニティは本の形で、センスがいいし楽しいな。







なんか部屋でずっとゆっくりしていたいけど、夕食の予約があったので慌ただしく出かけます。
あと、部屋入ったらすぐのところに青いクマがいて、これフラッシュ炊くとこんな模様が!



いろいろ楽しませてくれるホテルでした。

10年ぶりの東京1:はとバス

2023-05-25 | 一人旅たまに人と旅
とあるクレジットカードについてるホテルの宿泊ポイントを使ってしまいたかったので
そのポイントで行けるホテルで、よく行く京都奈良大阪神戸でない別の場所を探していて
そうだ東京に行こう!と思い立った。

東京には就職して6年目の息子が住んでいるけど、なんとまだ一度も息子を訪ねたことがない母である。
いい機会だから、ポイントで泊まれるホテルに泊まって、息子とご飯でも食べようと思いました。
わたしが泊まる日は息子の誕生日前日でもあったので、お誕生日のご馳走をしようと張り切っていたら
翌日から海外出張と言われがっくりするけど、朝早くないので大丈夫ということになって良かった。

ただでいいホテルに泊まって息子と美味しいもの食べるだけで十分だけど
せっかくなので少しは何かしようと思うも、東京を知らなすぎて思いつかない。
ガイドブックを買ってみたけど、テーマパークが好きじゃないし
流行やファッション的なものに興味がないし、
つくづく自分は東京に興味がないのだなぁと思いしった。
関西よりなんでもあって、流行の先端も文化もあるのはわかってるけど
そんなに先端でなくてもいいし文化は流行でなくていいし
歴史ということだと京都や奈良に日帰りでいつでも行ける関西で間に合っちゃう。

とりあえず有名なはとバスというのに乗ってみるかとググったら、いろいろあるのね〜
東京1日観光のバス、くらいの認識しかなかったけど時間も距離もあらゆるコースがある。
中には歌舞伎町でホストと遊ぶ、みたいなコースもあって
興味ある人が雰囲気味わうにはこれ手頃で怖くなくていいんじゃないでしょうか?笑

結局着いた日の午後に1時間ほどでさっと東京の半分くらいを
降車なしでさらっと回るコースにしました。2千円。
>>日比谷公園>霞ヶ関>国会議事堂>虎ノ門ヒルズ>東京タワー>
>レインボーブリッジ>お台場>豊洲>勝鬨橋>築地>歌舞伎座>銀座>というコース。
東京の右半分(東側、方向音痴の人って東西南北じゃなく上下左右で言いがち。笑)ですね。

少し時間があったので駅を出て、

向かいのビルから駅を眺める。



でも景色より感心したのはそこのエレベーターの中の壁。

これ水滴がついてるみたいに見えるでしょ?違うのです。
よく見ると盛り上がってる水滴に見えるところは削られて凹んでいるのです。不思議。




ちょっと雨が降りそうだったけど2階建バスのルーフトップの一番前の席で
風に吹かれながら気持ちよく乗って来ました。いやぁ、楽しかった!



非常にベタなお上りさんらしい観光だったけど1時間くらいのコースって
隙間時間に行けるし、初めての人にはとてもいいと思いました。

映画:マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン

2023-05-24 | 映画


数年前に中之島の東洋陶磁博物館でマリメッコ展見て、
このファブリックデザイナーのことは知ってたけど、そのドキュメンタリー。
なるほどマリメッコのデザイナーはこういう人だったのか。
映画は当時の写真や映像、新しく作られたアニメーションなどで進んでいきますが
女性の声で語られるテキストはほぼマイヤの一人称。
訥々と静かに喋るマイヤの話をずっと聞いている感じで進んでいきます。

恋して結婚してまた恋してまた結婚してまた恋して…旅して絵を描いて旅して絵を描いてまた旅して旅して。
でも、恋多き女という感じではなくもっと自然な感じに見えた。
なによりも自分を優先させることを知っていたからかな。
恋をしてもそれに振り回されているようには見えなくて、
子供は親に預け、とにかく自由に旅をして仕事をしていたけど
晩年はやや若い恋人に振り回されてるような感じもあって、それも人間らしくて良い。
途中パリだったか、トーベ・ヤンソンとトゥーティと食事したみたいなところがあって、
これは確かに自由なフィンランド女性同士なのだなぁとはっとした。
女性の人権が(完全ではなくても)普通に保障されている世界を見慣れなくて。
日本や韓国ではありえない自由だなと、ちょっとびっくりしながら見た。

マリメッコの創業社長アルミの話も、どの恋人よりどの夫よりたくさん出てきたけど
常に仲良しだったわけではなく反目に近い関係の時期もあったのに
結局長いパートナーシップを続けたこの人のことをもっと知りたい気もしました。

すでに高齢になっている娘のクリスティーナも出てきますが
母親にはわりと放置されて育ったのに母親のことを大好きで尊敬もしているのね。
このクリスティーナの家が出てきて素敵だなぁと思ったらここはアトリエらしい。
マイヤの遺した多くの絵やデザインや写真が保存されているそうです。
マイヤの家の近くということだけど、すごく素敵なアトリエで、憧れるなぁ。
マイヤがなくなった後、この娘や孫が彼女のデザインを継承して復刻したりもしているようです。
しかし北欧のデザインは人気だけど、本当になんであんなに何もかもセンスがいいのか?

公式サイトのストーリー紹介、長いけど貼っておきます。
>フィンランド南部リーヒマキ、アロランミ。1927年、マイヤは農家の3人娘の末っ子として生まれた。農作業を手伝い、姉妹で紙の人形を作ってままごとをして遊んでいた。13歳から家を出て一人暮らしとなり、厳しい戦時下を生き抜いた。45年、17歳年上の商業芸術家ゲオルグ・レアンデリン(ヨック)と結婚し、翌年19歳でクリスティーナを出産。ヨックとは共に暮らすこともなく離婚し、母トイニにクリスティーナを預け、マイヤはヘルシンキの芸術大学へ進学する。この時から、マイヤは離れて暮らす娘に手紙を送り続けていく。初めてのノルウェーへの海外旅行で出会った壺をデザインしたファブリックを大学のコンテストに出品すると、マリメッコの前身であるプリンテックス社を立ち上げた(マリメッコ創業は1951年)アルミ・ラティアの目に止まる。アルミはマイヤの作品を購入し、マイヤはデザイナーとして雇われることになる。経営者とデザイナー、アルミとマイヤの唯一無二のパートナーシップの始まりである。
52年、画家のヤーッコ・ソメルサロと二度目の結婚。2人は描いた絵を売りながらヨーロッパを旅し、カウニスマキに小さなアトリエを構えた。この頃のマイヤはアシスタントとしてヤーッコを支えたが、こっそりと絵を描き続ける。55年にヤーッコと離婚してから、抑えていたものが爆発するように創作に邁進し、旅する生活がその源となっていた。58年に手がけた「装飾シリーズ」は評判となり、マイヤの名前が知られるきっかけとなった。マリメッコはアメリカ進出を果たし、60年にジャクリーン・ケネディが購入したドレスを着て雑誌の表紙を飾ったことが話題となる。その後の「バロックシリーズ」や「建築シリーズ」など、マイヤの大胆でカラフルなデザインは、マリメッコの海外での成功に大きく貢献した。64年には「(花はそのままが一番美しいので)花をファブリックのモチーフにすることは許さない」としていたアルミの意に反し、マイヤは花のデザインだけを集めた「花シリーズ」を制作。そのデザインを見たアルミは考えを変えて、多くのデザインを購入。そのうちのひとつが「Unikko(ウニッコ)」であり、その後マリメッコのアイコンとなった。

映画:丘の上の本屋さん

2023-05-23 | 映画


いかにも、黒柳徹子が予告編のナレーションをしてユニセフが共同制作してる感じの映画で
映画としては素朴というか単純で素人くさいというか、
カメラも演出もちょっとズッコケそうになる辿々しさ?なんだけど、
ゆるゆると優しい映画で、すごい映画ばかり見てる中にこういうのも混じってていいかもしれない。
30本に1本くらいなら。笑
ラストもわかりきった終わり方で芸も何もないんだけど、
その本がそれとは、わたしの弱いとこついてきたなって感じで少しグッときました。

お話は
>イタリアの風光明媚な丘陵地帯を見下ろす丘の上の小さな古書店。店主リベロは、ある日、店の外で本を眺める移民の少年エシエンに声を掛け、好奇心旺盛なエシエンを気に入ってコミックから長編大作まで次々と店の本を貸し与えていく。リベロが語る読書の素晴らしさに熱心に耳を傾けるエシエン。感想を語り合ううちに、いつしか2人は友情で結ばれていく…。(公式サイト)
丘の上の古本屋さんの場所が石畳の古い街の中で、きれいすぎてセットかな?と思ったけど
これは チヴィテッラ・デル・トロントという美しい村らしい。
こんなところで古本屋さんをできる人生、いいなぁ。

映画の最後に主人公が移民の少年にすすめる本が、
何の本かな?哲学かな?と思ってたら予想外。
ゆるゆるふんわりの最後にこれがくるか!と、ちょっと、よっしゃ!という気持ちになって
この単純で素人くさい映画を、まあいいかと思いました。

その本は(以下ネタバレ)






「ピノッキオ」「ドンキホーテ」「白鯨」「アンクル・トムの小屋」などのあとに
どんなすごい文学か哲学か、あるいは詩集かと思ったら
その本は「世界人権宣言」でした。
ここまでゆるくぬるく作られた映画でも、言いたいことはそこだったのねとちょっと感動した。
「そもそも国民に主権があることがおかしい」とか
「国民の生活が大事なんて政治は間違っています」とか言うような政治家のいる政党が
長年与党である国では生まれない発想でしょうね…

「愛しい小酌」

2023-05-22 | 本とか
料理のレシピ本も料理や食にまつわるエッセイも好きだけど、
写真の小さい本はあまり買わない。
老眼で小さい写真は見にくいというだけですが、
見えにくさがこんなに本の読み方や選び方に影響するとは若い頃は思ってもみなかった。
精神が同じなら多少のハンデや体調や条件の変化は大したことないと思ってた。
いやぁ、年はとってみないとわからないものですね。

でもこの本を買ったのは、ぱらっとめくった前書きのような文章がすごくよかったからです。
「小酌、よき。」と題した冒頭の寅さんの飲み方の文章から心を鷲掴みにされたけど
その後の酒を飲む理由には三種類あるように思う、というところからがもうすごく好き。以下引用。
 ひとつめは、自然に誘われて。桜の下でプシュッと缶ビール。海の家のハイボール。ぬくい部屋で雪を眺めながら飲む燗酒。日本だけではなく、世界のどの国にも、こうした季節の誘いがあるだろう・
 ふたつめは、心が熟したとき。小さな節目を迎えた褒美や、祝いの席に参列する時なんかもこれにあたる。誰かを見送る別れの日にも、酒は欠かせない。
 みっつめは、心が乾いた時。つまり、寂しいときだ。そんな日は多くないほうがいいが、寂しさがまったくない人生も、軽すぎる。舌を潤すことで、心の渇きは確かにいくぶんか紛れるし、胸の深いところをあたためることもできる。

ここだけでも素晴らしいけどこの先がまたいいのです。
 ふたつめとみっつめの間にある、なんでもないようなお酒が、いちばん身近で自分の日という気がする。
 そうしたとき、冷蔵庫を除いて、手を動かし、あるものでちょっと飲む。それは料理というより、薄く切ったり、残ったおかずをまっすぐ盛り付けし直したりといった、”ととのえる”程度のこと。人生のところどころに、こうした小酌の小休止を挟んで今日を締めくくろうと思う同士が、この本を手に取るのだろう。

ああ、てにとらずにおれようか!同士よ!

基本的にレシピの本で、そっちは自分が普段使わない食材や組み合わせが多いけど
ヒントになるアイデアもいくつもあって良かったです。
さつま芋と茗荷のかき揚げやパクチーの根っこの天ぷらなどは、自分では絶対思いつかないし、
余ったワンタンの皮を茹でて、オリーブオイルとアンチョビ乗せて胡椒かけて
台所でシャルドネと立ち飲みとか、
生のピーマンとおかかのタルタルにウィスキーとか、
冷蔵庫にあるものでどこまでも広がる小酌の可能性の広さに
気持ちがふわーっと大きく温かくなる。
白菜の昆布茶あえにマグカップに入れたシャンパンを合わせるのは、
シャンパン好きすぎるのでわたしはいいシャンパンはグラスで飲みたいけど
こういうさりげないセンスと日常の姿勢はこころから共感するし
同士よ!と叫びたくなる。