名南将棋大会ブログ 名古屋

名南将棋大会告知や結果のほか、
将棋が強くなるための記事を書きます。
まずは将棋上達法則を見てください。

大山将棋研究(530); 四間飛車に居飛車穴熊(加藤一二三)

2017-05-25 | 大山将棋研究
☆ 昨日の復習

先手番大山先生の次の手は?


☆ 今日の棋譜20170525
昭和55年3月、加藤一二三先生と第29期王将戦第6局です。


大山先生の四間飛車に加藤先生はまたも居飛穴です。

大山先生はいつものおとなしい序盤です。

もう少しあとには78金右と上がらずに、75歩同歩同銀という指し方が出てきます。そうならないで組み合うのは、4枚の穴熊が堅いけれども、攻撃力が足りない、という評価になるのです。

38飛には73角。こうやって攻撃をけん制しておくのが大山先生の好みです。

加藤先生は65歩を気にしながら3筋の歩を換えて

18香まで備えてから2筋に戻します。

角を転回して今度は5筋から。

飛も回って好調のようなのですが、右桂が使えていないので攻撃力が足りません。

攻め駒を増やすために左桂を使いました。やりたい手ではないのですが

大山先生としてもこの桂を取り切るのは大変なのです。

85の桂はそのままに、左桂で1歩を得ました。26歩なら65歩57銀54歩と行きます。

加藤先生は77角~57銀でその筋に備え、43歩を打たせる。ここまでは良いのですがこの先が難しいです。少し指しにくいのでしょう。

3筋に後手の飛を呼んで

角を切って銀を打つ。これでは少し悪いでしょう。

51飛成には63金ですね。大山先生の35飛がうまい手でした。

55歩には同飛で悪いなりに勝負だったのだと思います。

ここで飛の取り合いでは

角を殺せるとはいえ

後手が59と を使える形ですし、「米長玉」がかなり堅いです。

角を取って47角は粘りに行った手ですが、銀を埋められ

69と を取れないのでは角打ちの意味が小さいです。(69同角には29飛成、69同金には56銀か。)

56銀から桂の取り合いになり

大山先生は桂を打って成桂作り。ゆっくり攻めています。

でもここで と金を引くのは早いのではないかな?(ゆっくり47銀成か67銀成)

と金を捨てて金銀の取り合いということになり、張り付けば先手玉を薄くできます。

穴熊の位置から引きずり出して、香を補充すれば悪くはないのですが、

結局粘られてやりなおしです。こうなったら持ち駒は盤面に打って遠巻きにゆっくり攻めるのがよいです。

金も投入して86の歩を取れました。

とうとう85桂を取り切って、ゆっくり勝ちに行きます。とにかく玉頭方面の勢力だけ考えておけばよいです。

桂馬が2枚急所に入り

馬を消し、逆モーションですが銀を取りに行き

64の桂も取ってしまいました。

カド番ですから加藤先生も粘るしかないのですが、大山先生は歩を入手して

銀を剥がして、玉頭の厚みだけ考えればよいです。

投了図。

長い戦いでしたが、ずっと大山先生のほうが良かったと思います。寄せそこなっているような、逆転しないように気を付けているような、不思議な将棋です。頑張ってもずっと悪いままですから、結果としてもう穴熊なんてやりたくない、と思わせる効果がありますね。
この王将が大山先生の最後のタイトル獲得となりました。57歳目前。今の羽生先生が10年後にタイトルを持っているかどうか、という比較です。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:加藤一二三王将
後手:大山十五世名人
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 6八玉(59)
8 4二飛(82)
9 7八玉(68)
10 6二玉(51)
11 5六歩(57)
12 7二玉(62)
13 5七銀(48)
14 4三銀(32)
15 7七角(88)
16 8二玉(72)
17 8八玉(78)
18 7二銀(71)
19 9八香(99)
20 5二金(41)
21 9九玉(88)
22 6四歩(63)
23 8八銀(79)
24 7四歩(73)
25 2五歩(26)
26 3三角(22)
27 6八角(77)
28 9四歩(93)
29 6六銀(57)
30 2二飛(42)
31 7九金(69)
32 6三金(52)
33 5九金(49)
34 5四歩(53)
35 6九金(59)
36 8四歩(83)
37 7八金(69)
38 8三銀(72)
39 3六歩(37)
40 5一角(33)
41 3八飛(28)
42 7三角(51)
43 3五歩(36)
44 同 歩(34)
45 同 飛(38)
46 3四歩打
47 3七飛(35)
48 7二金(61)
49 1八香(19)
50 9五歩(94)
51 2七飛(37)
52 5一角(73)
53 1六歩(17)
54 8五歩(84)
55 4六角(68)
56 4五歩(44)
57 3七角(46)
58 4四銀(43)
59 5五歩(56)
60 5二飛(22)
61 5四歩(55)
62 同 飛(52)
63 5五歩打
64 5二飛(54)
65 2六飛(27)
66 1四歩(13)
67 5六飛(26)
68 7三角(51)
69 5九飛(56)
70 3五歩(34)
71 7七桂(89)
72 5三歩打
73 5六飛(59)
74 4六歩(45)
75 同 歩(47)
76 8四角(73)
77 8五桂(77)
78 1三桂(21)
79 5九角(37)
80 2五桂(13)
81 7七角(59)
82 3六歩(35)
83 5七銀(66)
84 4三歩打
85 3四歩打
86 3二飛(52)
87 5四歩(55)
88 同 歩(53)
89 4四角(77)
90 同 歩(43)
91 4三銀打
92 3一飛(32)
93 5四銀成(43)
94 6二金(63)
95 6六銀(57)
96 3四飛(31)
97 6四成銀(54)
98 3五飛(34)
99 7五歩(76)
100 5五歩打
101 5九飛(56)
102 7六角打
103 8六歩(87)
104 3七歩成(36)
105 3六歩打
106 4八と(37)
107 3五歩(36)
108 5九と(48)
109 6五銀(66)
110 同 角(76)
111 同 成銀(64)
112 3九飛打
113 6四角打
114 9二玉(82)
115 7四成銀(65)
116 7三歩打
117 8四成銀(74)
118 同 銀(83)
119 4七角打
120 8三銀打
121 5一飛打
122 6九と(59)
123 8九金(79)
124 5六銀打
125 2五角(47)
126 2九飛成(39)
127 4三角成(25)
128 6五桂打
129 5五飛成(51)
130 5七桂成(65)
131 8七馬(43)
132 6八と(69)
133 同 金(78)
134 同 成桂(57)
135 5六龍(55)
136 7八金打
137 5九歩打
138 8九金(78)
139 同 玉(99)
140 1八龍(29)
141 7九銀打
142 同 成桂(68)
143 同 銀(88)
144 6三香打
145 4二角成(64)
146 6五銀打
147 5一龍(56)
148 7六金打
149 7八馬(87)
150 8六金(76)
151 8七歩打
152 8五金(86)
153 6四桂打
154 7六銀(65)
155 6八桂打
156 8六歩打
157 同 歩(87)
158 同 金(85)
159 7六桂(68)
160 同 金(86)
161 4三馬(42)
162 7七桂打
163 9九玉(89)
164 8六桂打
165 8七銀打
166 7八桂成(86)
167 同 銀(87)
168 8七歩打
169 同 銀(78)
170 6九桂成(77)
171 7六馬(43)
172 7九成桂(69)
173 8八金打
174 6四香(63)
175 5八金打
176 8五銀打
177 7七馬(76)
178 6七香成(64)
179 同 金(58)
180 8六歩打
181 同 銀(87)
182 同 銀(85)
183 同 馬(77)
184 7八角打
185 投了
まで184手で後手の勝ち

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20170525今日の一手(その513);相手の働いている駒を攻める

2017-05-25 | 今日の一手
20170525今日の一手

4月22日の名南将棋大会から、MさんとSさんの対局です。形勢判断と次の一手(できれば少し先まで)を考えてください。

おまけ、寄せ方の問題です。

先手優勢ですが、紛れのない寄せ方はどれでしょう。


一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
先手の1歩得で竜を作りあっています。後手に持ち歩があるので損得なしとします。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は(96角は後手の囲いに届いていないので除外)21竜と持ち駒銀銀桂で4枚。
後手の攻め駒は33角29竜と持ち駒銀桂で4枚。

総合すれば先手不利です。

☆ 大局観として
終盤では駒の損得の重みが下がり、玉の堅さを重視することになります。この場合は玉の堅さがかなり違うのです。
穴熊だから堅い、というわけではなくて、金銀3枚(73金は働きが弱いですが、無いよりは良い)と81桂VS金金と跳ねてしまった77桂の差があります。穴熊だからというのは玉の深さによるもので、78にあるよりは91のほうが相手の攻め駒からは遠いわけです。手番を持っているので攻めたいと思うわけですが、単純に寄せ合いに行くと2手くらい違いそうな局面です。

困りましたね。攻防になるような手が欲しいです。


△ 実戦は94歩で勝負。だったのですが、なんとこれを手抜かれて66歩

と踏み込まれました。66同歩67歩同金55桂58銀

67桂成同玉55銀78桂に79金

79同金同竜69金99竜

端を手抜いて99の香を取ってしまえば優勢です。ただしこれは先手のHさんがいうことを聞きすぎました。

79金には93歩成です。

93同桂同香成同香85桂

後手の端の取り方で変化がありますが、93同桂ではない時に85桂と跳ねれば攻防になります。69金と取られても詰めろにならないのです。これは先手の勝ち筋。チャンスがありました。
後手としては79金が危なくて、94歩と手を戻すべきでした。

では最初の94歩66歩に93歩成が成立しているかどうか。

93同桂に94桂と打っておき、67歩成同金66歩

この時に82桂成同玉91銀72玉71竜

で後手玉が詰んでいます。

後手はどこかで51歩と受ける必要があり

これで形勢互角のはずなんですが、ちょっと先手が悪いみたいです。うまい守りの手がないし、攻め合いでは少し足りません。32竜にも66歩で負けそうです。

また仮に最初の94歩に同歩だとして

後手に歩を余計に渡したので、66歩同歩67歩の筋が厳しくなっています。少し条件が悪くなっているか。(ただし後で調べる変化に影響がないものもあります。)


△ 53角成が自然な攻め方です。

72金引には64桂89銀79玉

角が移動すると77桂の守りが減るので、89銀から77角成という筋ができるのですが、次の72桂成が詰めろなので、これはどうにか先手の勝ちか。

また、63から桂を打って

62金上同馬同金71銀

と詰めろを続けていくのもありそうです。

ならば53角成で先手が良さそうなのですが、いきなり77角成が厄介です。

77同玉には85桂86玉77銀

どんどん攻められて71馬の余裕がありません。(後手は詰めろになっていなくても角をもらって詰めばよい。)

戻って77同金には85桂

桂馬のお代わりがあるので、89桂と受けたいですが、77桂成同桂66桂

から詰めろが続きます。(66同歩89銀68玉66歩)

平凡に86銀と打って受けても

77桂成同銀85桂のお代わり。59桂で抵抗しますが

38竜68銀打77桂成同玉58歩

のんびり桂馬を取りに来られ、71馬から行けば44角の王手竜取りが待っています。71竜から同銀同馬72金打

こういうのが穴熊の深さなんです。角を渡すと44角が両取りか攻防になるので先手の負け筋です。馬を引き上げると59歩成から85桂で寄せられます。


△ 65桂という勝負手もあります。

金を逃げたら66銀と埋めれば案外に耐久力があります。99角成に73桂不成

といけば詰めろ。でも73同桂72銀に89銀79玉78香

78同金寄同銀成同玉66桂同歩89馬

きれいに詰まされます。

途中で73同桂のところで72銀の詰めろではなく、89金と受けることになるのですが、77香

77同角同馬同金65桂打

で1手負けでしょう。


△ 受けるなら58銀と埋める手。

これで53角成とやりやすくなります。でも59銀とかけられると金を逃げられません。53角成68銀成同玉64桂88桂56歩

一手受けるだけでは後手の攻めの速度は落ちません。

59銀に79銀と埋めて頑張ってみます。

68銀成同銀64桂88桂19竜

先手の攻撃力が減ってしまい、また、駒損で長くするわけにもいきません。53角成も防がれたので94歩同歩85桂ですが76桂

という強烈な返し技があります。ジリ貧になりそうな展開になり、動けば斬られます。


× 88銀と受ければ

65桂や85桂と攻めやすいわけですが、66歩同歩67歩

の筋に対応できていないので悪いです。


○ 後手の攻め筋は角が中心でしたから、31竜と角を追います。

まだ77角成は早いですし、銀を使って受けるわけにもいかず、44角45歩26角に94歩同歩85桂72金引64桂

角筋がそれたら(53角成を防ぐ逃げ方でしたが)端攻めを絡めて攻められます。62金寄に93歩同桂同桂成同香72銀

まだ後手に受けの余地がありますが、攻めは十分に続きます。これはうまくいきすぎました。

45歩には55角の方ですね。

56歩19角成53角成62銀

は長いけれどやや穴熊のペースです。

44角には重く53銀と打つのが良さそうで

26角には65桂63金55桂

という調子です。べたべた重く攻めても、先手玉に寄り筋が見えないので勝てそうです。

55角には62銀打。

これも先手のほうが勝ちやすそうです。

ということは31竜に最初から55角と逃げるのが正しく(また、55角などではなく39竜には37歩が有効です)

有効な利かしが入ったと考えます。39歩として待つか、56銀46角65桂72金引53桂成

としておくか(64桂が狙い)。形勢は互角ですが、問題図よりは改善していると思います。


☆ まとめ
問題図では先手が不利。そこで勝負手としてみれば

実戦の94歩というのは後手玉に嫌味をつけるという意味で成功しています。穴熊に攻められるだけというのは避けたいのです。相手の攻めが切れそうでなければ、いつでも寄せ合いにできるようにしておくとか、入玉を見るか、というのが勝ち方です。
さすがに94同歩の一手ではないかと思ったら、手抜いてもらえてチャンスが生じていました。

65桂で寄せ合い勝負、というのも怖いですが、形勢不利と思えばやる価値があります。次の73桂不成が詰めろですが、後手に桂を渡すと99角成が詰めろになっていて負け筋です。これは一発勝負。

普通に指すなら
53角成が自然な攻め方で、72金引なら寄せ合いで勝てそうです。62銀と受けられて・・・のほうを考えこんでしまいそうですが、実はばっさり77角成で寄せられてしまいます。こういうのは穴熊の怖さです。

銀を打って受けるだけというのはじり貧負けです。

一番働いている33角に働きかけるというのが最善で、追いかけ方は31竜がベター(34歩とか32竜とか45桂も悪くはないですが)。55角ならまだ難しいのですが、受けやすくなっています。

地味な感じなのですが、相手の働いている駒を攻めると有効だということがあります。取ることができなくても、一番良い位置から移動させると働きが鈍るのです。気を付けて棋譜を眺めてみると、この類の手は何度も出てきます。


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