非国民通信

ノーモア・コイズミ

未来はないみたいです

2010-10-06 23:01:03 | ニュース

中途採用悪化49.9%減 30代無職に未来はあるのか!?(ZAKZAK)

 これまで30代無職の就職活動の過酷さを見てきたが、その背景を転職事情に詳しいリクルートワークス研究所の主任研究員・豊田義博氏はこう分析する。

「09年では中途採用枠が一社あたり約7.4人と、08年の約14.7人と比べて約半数となっています。10年も09年とさほど変わらない見通しです。というのも、近年稀にみる不況に大打撃を受けた大企業の財布の紐が固くなってしまった。で、その下請け会社である中小零細企業は依然不況から脱することができていないんです。本来であれば、中小零細企業にこそ人材が必要なのに、雇うだけの金銭的な余裕が全くないんです」

 また、転職率の推移からも、30代無職の就職活動のキツさが読み取れるという。

「10年1~3月期には1年以上の完全失業者が114万人に達しました。にもかかわらず、転職率が依然右肩上がりにならない。失業者が増えても採用枠は減っていますから、競争率は激化していくわけです。明らかに企業の需要不足の影響が大きい。一旦、職を失ってしまうと、専門的なスキルがないかぎり、正社員になるのは厳しいと言わざるをえません」

 では景気回復を、ただ手をこまねいて待つしかないのか。

「30代後半ともなると、企業は、組織で人をまとめる能力を求めるようになりますから、その経験がないと転職は絶望的です。そうならないように、30代前半のうちに、ティッシュ配りなど、誰でも代替のきく仕事ではなく、アルバイトでも構わないので、教育担当やチームリーダーなどの立場になれる仕事を選ぶべきです。で、そこから『PLAN(計画)-DO(実行)-SEE(検討)-ACT(改善)』といったビジネスの基本的な考え方を学んだほうがいいですね」

 アルバイト経験を侮るなかれ。

「時すでに遅し」となる前に、行動あるのみだ。

 職務経験はさておき、失業と転職経験に関しては豊富なつもりでいるのですが、その失業経験豊富な自分から見ても昨今の就職事情は異常ですね。一応は首都圏に住んでいることもあって、数年前までは色々と妥協すれば仕事はすぐに見つかった、決して満足のいくものではないながらも失業保険の世話になる前に仕事は見つかってきたものですが、まさか失業保険の給付期間が終わっても再就職先が決まらないなどとは思っても見ませんでした。で、具体的なデータとしては上に挙げたようなものが出てきたわけです。いやはや、わずか1年で半減とは何とも力強い下がりっぷりです。加えて超の付く買い手市場の中で、今や中小企業でも中途採用を減らして新卒採用にシフトするところが多いとも聞きます。経済誌風の表現をすれば、新卒者や第二新卒の就業機会確保のために30代以降が犠牲にされている、といったところでしょうか。

 で、この手の記事で出てくるような解決策は往々にして的外れです。いまどきアルバイト経験が30代の転職活動で評価されるとは思えないところもあります。あるいは『PLAN(計画)-DO(実行)-SEE(検討)-ACT(改善)』などと、いかにも「それっぽい」用語で誤魔化していますが、研修屋の受け売りみたいなことを語ってみたところで、その理解は求職者側が雇用側に証明できるものなのかどうか。そもそも「企業は、組織で人をまとめる能力を求める」ゆえに「教育担当やチームリーダーなどの立場になれる仕事を選ぶべき」とのことですけれど、この条件を満たせる職場というのは意外に限られているはずです。

 「人をまとめる」立場になるためには、部下が必要です。部下がいないのでは絶対に無理、一人ではどう頑張っても人を纏めることなどできない、当たり前ですよね? そこで30代やそこらで「人をまとめる」ポジションに付くためには、それに対応しただけの部下や後輩の頭数が必要になる、30代一人に対して20代が最低でも3~4人は存在することが30代で「人をまとめる」ための必須要件となります。しかし少子化が進む現代において、そのような世代構成が維持されている職場はどれだけあるのでしょうか? 20代の若手が減っている中でも30代に「人をまとめる」役割を期待する、これって日本の人口ピラミッドを見ればかなり無理がある話だと思います。

 社員の定着率が高く、かつ経営の安定した企業では必然的に世代構成がフラットになる、そうなると30代の人間にとっての部下になる20代の数はほぼ1:1にしかなりません。にもかかわらず30代の人間全員に「人をまとめる能力」を求めるとしたら、随分と無駄の多いことにも見えます。それでは「人を纏める能力を持っているのに、いつまで経っても部下を持たせてもらえない」人ばかりが増えてしまうでしょう(こうなると会社へ不満を抱く人も増えますよね?)。ただ、世代構成がフラットではない、主として非正規の若年層を少数の社員が統率するような職場も少なからずあるわけです(たとえば飲食店や小売店など)。それは現時点では限られた業界に特有の世代構成である一方、この世代構成を他所の業種にも展開していこうという思惑が財界筋にはあるのかも知れません。

 元より、相対的に賃金の高い中高年層を薄給の若年層に置き換えたいという経営側の思惑は少なからずあるわけで、それが若年層の雇用機会拡大という名目で外部からも押し進められようとしているフシがあります。30代後半からは幹部候補のみを残して、後は低賃金の若年/非熟練労働者で埋め合わせようというのが日本の経済人の思い描く未来なのではないでしょうか。いかに少子化が進もうと、就業機会を若年層に絞り込み、中高年層を切り捨てていけば結果として社員の世代構成はピラミッド型になる、30代以降の新規就業者に軒並み「人をまとめる能力を求める」ことの合理性も出てくるわけです。加えて中高年=親世代の雇用が不安定化すれば子世代にも影響が出てきます。親世代の就労環境が悪化することで、経済的な理由から進学を諦めて早い段階での就職を迫られる人が子世代には増えてくるでしょう。こうして高等教育修了者を減らして低賃金な非熟練労働者を増やせば、30代にとって取り纏める対象となる年下の従業員の比率は高まる、そうすることで「人をまとめる能力を求める」こととの整合性も出てきます。職場に残されるのは一部のエリートと、若くて安価な労働者――これが日本の進んでいる方向なのでしょう。私には決して、持続可能なモデルには見えないのですが。



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5 コメント

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Unknown (ホルへ)
2010-10-06 23:37:59
この記事を見て、日本企業が経費削減をして人材育成や研修を軽視及び放棄して非正社員を増やし、ただ儲けることしか考え来なかったつけが、企業に人材育成をする力や臨機応変な対応力を低下させたと俺は断言できるで。このまま景気回復を待っても日本経済が成長や発展や活性化を図れへんから、長期的視野で考えて、今から未経験の人材を一から育成して、日本企業の成長や発展や活性化を図ることにチャレンジして、同時に日本企業に人材育成能力があることを証明して、更なる社員の成長を図るべきやと俺は感じたで。
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Unknown (1985)
2010-10-07 11:12:35
30代で就職活動中ですが、今回のエントリーの状況に直面しています。実に厳しいですね。
特にIT系の求人がほとんどありません。
リーマンショック以降特にそうなったような気がします。
以前は簡単に取れたような仕事でも今は激しい奪い合いになっています。自営業を始めるしか道はないのでしょうか?菅総理もあれだけ雇用雇用と言っていたのですから具体的な政策出して欲しいですね。と言ってもないでしょうけど。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-10-07 23:36:03
>1985さん

 ほんの数年前と比べても、激変と言えるほど急速に厳しくなっていますよね。一応は政府筋でも就労支援プランは練られているようですが、実効性にはどうも疑問を感じざるを得ないものが多いですし……
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介護も (介護員)
2010-10-08 18:06:37
人手不足と歎くわりには
雇わないです、悪条件の癖に、それで将来はなんて歎いている介護施設関係blog管理人居ます
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-10-08 23:11:14
>介護員さん

 人を雇って介護「させる」方は将来性があっても、自ら介護「する」人は辛そうですね。不況を言い訳に人件費を抑え込むように、介護業界は人手不足を言い訳に現場の授業員に無理をさせているところもあるのでしょうか。
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