非国民通信

ノーモア・コイズミ

実現するかはわかりませんが

2010-04-25 23:01:11 | ニュース

【スクープ】政府「法人税ゼロ」検討 成長戦略で外資の参入促進、シンガポール並み優遇に(日経BP)

 政府が6月にまとめる成長戦略の目玉として、新たに日本に進出する外国企業を対象に、法人税を大幅に減免する外資導入促進策を検討していることが明らかになった。

 日本の法人税率は主要国で最も高い水準にあり、日本企業の国際競争力を減殺するだけでなく、日本市場に進出するチャンスをうかがう外国企業にとっては最大の参入障壁となり、日本経済が閉鎖的と批判される要因ともなっていた。

 鳩山由紀夫首相は日本企業の法人税負担も軽減する方針を示しており、自民党政権下では手が付かなかった法人税改革が進む機運が高まってきた。

 日経新聞の「スクープ」だそうです。元より意見にまとまりがない上に方針が二転三転するのが民主党政権ですから、この「戦略」が具現化するかどうかは微妙なところですけれど、とりあえず首相の鳩山を筆頭に法人税を下げたがっている人は少なからずいますので、こういうプランが出てくることは不思議ではありません。日経新聞の期待も込めての「スクープ」なんでしょうね。

 経済産業省の調べによると、主要企業の法人課税負担率(2006~08会計年度平均、連結ベース)は日本が39.2%でダントツに高く、米国、フランス、英国、ドイツは30%前後。台湾、シンガポールにいたっては13%台と、日本の3分の1程度だ。

 とかく経済系の論議では実態が無視されがちなもので、ネットのコピペレベルでは国税と地方税を合算した日本の法人税と、諸外国の法人税の国税部分を比較して「日本の法人税は高い」とする主張がまかり通っています。しかるに、日経新聞も同程度みたいですね。アメリカの法人税が30%前後って、それはいくら何でも無理があります。所詮は経済誌、典型的なためにする議論と言えます。アメリカの場合は州によって法人税額に結構な差がありますので地方税相当分については一概に言えないところもあるのは事実ですが、財務省がモデルケースとして提示しているカリフォルニア州の場合は40.75%と日本よりも法人税が高い、その辺を無視するのはどうなのでしょうか。ニューヨーク市に至っては実効税率は45.67%に上ります。これでアメリカが法人税の高さのために企業が国外に逃げ出している、ニューヨーク市が深刻な不況に陥っているとか言うならまだ話は成り立ちますが、そんなことはないはずです。企業の進出に与える法人税の影響なんて微々たるものですから。

ちなみに日本の「税+社会保険料負担」は低いです

・・・・・

 政府が今回、法人税減免の対象と想定しているのは、国境を越えて活動する多国籍企業が、アジア域内の拠点を日本に新設するケースだ。「日本のアジア拠点化」を旗印に、海外、特にアジアの新興市場の活力を取り込むことで、日本経済の新たな競争力の核となりうる企業を積極的に誘致する考えだ。

 米欧企業がアジアのビジネスを統括する地域本部を置く場合や、研究開発(R&D)を担う研究拠点を設ける場合は、国や自治体が法人課税の減免を柱に、さまざまな恩典で対日進出を支援する新法を作り、来年の通常国会に提出する。5~10年程度の時限措置とし、なるべく早く成果が上がることを目指す方針だ。

 ただ今回の政府案で目新しいのは、対象を海外企業が日本国内に進出する場合に絞っているところです。優遇策によって企業誘致を目指すというわけですね。まぁ、新 興 国ではよくあることです。しかし発展途上国や未開発国が新興国を目指す過程でこのような優遇措置を定め、外国企業の誘致を目指すのは決して珍しいことではありませんけれど、曲がりなりにも先進国であるはずの国が、その前段階である新興国を目指すかのような政策を採るというのは極めて異例なことと考えられます。日本は「これから」新興国を目指す国ではなく、すでに新興国の段階を終えた国なのですが。

国税がアマゾンに140億円追徴 日本事業は課税対象(共同通信)

 米国のインターネット通販大手「アマゾン・コム」の関連会社(本部・米シアトル)が東京国税局の税務調査を受け、2005年12月期までの3年間で140億円前後の追徴課税を受けていたことが5日、分かった。アマゾン側は不服として日米間の協議を申請している。

(中略)

 関連会社は「アマゾン・コム・インターナショナル・セールス」で、北米以外の各国の事業を統括。日本では物流などを日本法人2社に委託した上、契約や売上金計上などは同社で行い、納税先も米国側に集中させていた。

 そしてこの辺を見ると、日本側がわざわざ優遇措置など設けるまでもなく、独自に課税逃れを行っている企業もあることがわかります。今後は課税していく方向性と思われますが、だからといってアマゾンが日本から撤退するという話など全く出ていません。法人税の有無や高低によって、日本に進出したり逆に撤退したりする会社は、そう多くないのではないでしょうか。市場として魅力があれば、自然と営利企業は集まってくるものです。

「プラダ」で不当解雇と訴え 日本法人元部長の女性(共同通信)

 高級ブランド「プラダ」の日本法人「プラダジャパン」元部長の女性が、外見に関する上司の発言や、売り上げを伸ばすため社員が自社製品購入を要求されていることなどをイタリアの本社に報告したため不当に解雇されたとして、近くプラダジャパン側に慰謝料などを求める訴えを東京地裁に起こすことが15日、関係者への取材で分かった。

 この詳細についても色々と考える余地はありそうですが、今回は「外資系企業」における「解雇」の一例として捉えてください。世間一般のイメージとして、「外資」は高給だが業績が上がらないとすぐにクビを切られるとされています。プラダの例も、その類と言えるでしょう。一方、「日本では正社員は解雇できない」とも言われているはずです。どちらが正しいのでしょうか? まさか「外資系企業は正社員の解雇を自由に行えるが、国内企業はその限りではない」などということもないはずです。

 外資系企業による一方的な解雇が許されているなら国内企業における同様の行為も黙認されるでしょうし(=実態)、国内企業による正社員の解雇が厳しく制限されているのなら外資系企業の場合だって同様の制限を受けているはずです(=建前)。それなのに、簡単にクビを切る外資のイメージと、正社員は解雇できないという矛盾したイメージが併存しているのはどうしたわけでしょうか。しかるに、外資系企業は免税にしようという今回のプランが現実化するのなら、ダブルスタンダードが公認のものになるわけです。外資は税金を払う必要がない、外資は解雇が自由、今までの「イメージ」に合わせて現実の法律の方が修正されていくことになると言えます。

 そして、外国企業向けの法人税減免策の延長線上には、企業全体を対象とする法人税減税構想が浮かんでいる。

 直嶋正行経済産業相は19日の講演で、法人税について「私も高いと思っている。消費税との関係や将来の財政が議論されているが、日本を成長させるために何が必要かとの観点から法人税を改めてとらえ直すべきだ」と語った。

 もっとも、新規参入の外資系企業を対象とした法人税減税案は一時的なもので、将来的には企業全体を対象とした法人税減税を既定路線とする人もいるわけです。そして法人税減税の財源となるのはやはり、消費税のようです。二度あることは三度あるとはよく言ったものですね。財政再建を目的とした消費税増税論と、社会保障財源としての消費税増税論があって、前者はダメだが後者は悪くないみたいなことを言い出す人もいるわけですが、どちらも最終的な到達点は同じなのではないでしょうか。消費税は、今後とも法人税減税の財源に回される可能性が極めて高いです。

 

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6 コメント

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Unknown (バサラ)
2010-04-25 23:43:36
今より更に消費税メインの税体系にしたら、今の日本の“景気に関係無く国民所得が下がり続ける”と言う、経済学的にも歴史的にも有り得ない状況が現出しているのを放置したままでは、構造的な税収不足を招くだけだと思うんですけどね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-04-26 00:44:38
>バサラさん

 ある意味、グローバル化と完全に決別した独自進化の道を日本経済は辿っているとすら思えるんですよね。なんというか法人税を下げるのが目的化していて、そのイデオロギーを実現させるためにあらゆるものを犠牲にしようとしているようにすら見えてきます。
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そもそも (HANAKO)
2010-04-26 11:29:23
財政再建の為の消費税増税と福祉目的の為の消費税増税とをどう見分けるのかが不明です。それにしても、採用する人間の選り好みといい、税制優遇といい、ますます雇用者に甘い世の中になるも、だからこそ?日本社会は貧しくなりそうです。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-04-26 18:48:03
>HANAKOさん

 まぁ結局、題目の違いであって実際に何をやるかという点では同じですからね。下手に見分けるよりも、同一視した方が間違いがないような気すらします。政財界が目指している先は一つですから。
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消費税増を正当化する論理 (ヒイロ)
2010-04-26 22:55:42
税収減、福祉目的、どこもかしこもそう言うけど、「ふざけるな」と思うことに変わりはありません。
法人税増には触れると身内のネトウヨ様のように烈火の如く喚くのがいるわけで。法人税の減収分を消費税増で賄うことも正当化しているのでタチが悪いです。

個人的なことですが、仕事量の減少で生殺し状態でクビになる可能性もありやです。今月中に偉い人と話をしてどうかなという状態です。内容は、今週末にでもと思います。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-04-26 23:14:30
>ヒイロさん

 おや、ヒイロさんもクビが危ういのですか。類は友を呼ぶというわけでもないのでしょうが、私の友人も何人か失業しており、私も含めて再就職先が見つからない状態です。前にいた会社では業務改善活動と称して余計な仕事を増やすばかりであることに苛立っていたものですが、仕事を水増しする努力でもした方が良かったのかも知れませんね。
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