映画『LAMB/ラム』（2021、アイスランド・スウェーデン・ポーランド合作）：「羊頭を持つ人間」が現実に存在する点で、幻想世界が現実世界に浸透している！

（１）山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、頭が羊、首から下は人間の姿の子羊が生まれた。娘アダを亡くして傷心の2人は、神からの「奇跡」の授かりものとして、羊頭のアダを、自分たちの子として育てる。
（２）数年が経ち、羊頭のアダは順調に成長し夫婦イングヴァルとマリアに大きな幸せをもたらす。だがアダの親羊（雌羊）が、しばしばアダを求めてメーメー鳴く。マリアは怒り、夫イングヴァルにも羊頭のアダも知らない間に秘かに、その雌羊を射殺し、地中に埋めてしまう。
（３）夫婦イングヴァルとマリア、そして羊頭の子供アダは幸せな生活を送っていた。夫イングヴァルの弟ペートゥルがやってきて、羊頭の子供アダについて「あれはいったい何なんだ」と問うが、イングヴァルは「口出しするな」と弟を黙らせる。妻マリアが、夫の弟ペートゥルを無理矢理去らせる。
（４）ところがある日、羊頭の子供アダの父親が出現する。父親は羊頭の人間だった。羊頭の父親は、自分の妻の羊、つまり羊頭の子供アダの母親羊、そしてその母親羊はマリアに射殺されたのだが、その仇を取るため、マリアの夫イングヴァルを射殺し、羊頭の子供アダを自分の子供として連れ去る。
（４）-2 かくてマリアは、羊頭の子供アダ（亡くなった娘アダの身代わり）を失い、また夫イングヴァルを殺された。

《感想》①母親羊が産んだ「羊頭の子供アダ」が人間と同じ知能を持って存在することに、不思議を感じない点で、夫婦イングヴァルとマリアは異常だ。あるいは②「羊頭を持つ人間」が現実に存在する点で、幻想世界が現実世界に浸透している。