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安部悦生『文化と営利』「第Ⅱ部」「終章 文化衝突と経営文化論の展望」(続):グローバル企業において、世界の潮流は「成果主義」だ!日本は単純な「タテ社会」でない!

2020-06-30 19:36:11 | 日記
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019「第Ⅱ部 経営文化の国際比較」「終章 文化衝突と経営文化論の展望」(続)

(4)1990年代後半、アメリカ流経営をまねて日本的経営システムの修正:①成果主義、②フラット化、③報酬委員会!(340-341頁)
J 日本では1990年代後半(※バブル崩壊と金融危機で「失われた10年」の時期)、アメリカ流経営をまねて、日本的経営システムの大きな修正が行われようとした。
J-2 その筆頭は①「成果主義」だ。年功給でなく成果給で企業の競争力を強化しようとした。(ただし2000年代には揺り戻し。)
J-2-2 「成果主義」は、「成果をどのように測るか」で困難があった。(ア)グループで作業するため個人単位の成果を測りにくい。(イ)成果を上げやすい仕事に飛びつく=短期的近視眼的志向に陥る、(ウ)目標設定の困難な部署に無理やり目標を設定しうまく機能しない。かくて職場に混乱が起こり成果主義の評判が下がった。
J-3 また②「フラット化」が時代のキャッチフレーズになった。しかしフラット化で職階を一つ減らすと、管理する部下の数が5人から20人位に増え、組織全体の効率が低下した。
J-4 ③委員会制度が日本企業にも導入され、その内のひとつの「報酬委員会」がトップ経営者の報酬を決めるようになった。しかし日本の常識を超えた報酬が決定されるようになり、従業員の一体感、会社への忠誠心にマイナスに作用する危険性があった。
J-5 かくて「成果主義」等のアメリカ流経営は、警戒心を呼び揺り戻しが起きた。しかし企業の「グローバル化」の状況のもと、事態は複雑化している。

(4)-2 企業の「グローバル化」:人的資源のグローバルな活用のため、世界の潮流が「成果主義」となることは必至だ!(341-342頁)
K 日本企業が「グローバル化」(※多国籍企業化、海外企業化)した場合、外国人従業員の認識は、(a)アメリカ流の短期的成果主義(反・年功賃金)、(b)スピード出世(反・年功昇進)だ。
K-2 日本企業がグローバル企業を望むなら、「年功制」の維持は無理だ。「成果主義」以外、選択の余地がない。
K-3 独仏がやや日本に近いと言っても、程度の問題だ。「年功制」を維持してきたのは日本だけだ。欧米に加え、印、中など、今後の経済大国では、「成果主義」の発想が強くなる。
K-4 世界の潮流が「成果主義」となることは必至である。グローバル企業において、日本の「年功制」は消滅せざるをえないかもしれない。

(5)経営文化の国際比較:①プロテスタント・家族主義・国有企業・組織主義、②経営者企業・経営者資本主義の強さ、③)縦ラインの指揮命令系統の強さ!(342-344頁)
L 経営文化の国際比較①プロテスタント・家族主義・国有企業・組織主義:(ア)イギリスとアメリカは元々プロテスタントの国として共通性を持つ。(イ)中国とイタリは家族主義という点で、また国有企業が有力という点でも類似。(ウ)ドイツと日本は組織主義という点で共通点。
L-2 経営文化の国際比較②:(エ)経営者企業・経営者資本主義の強さに関しては、「日本・アメリカ・イギリス」が強い、(エ)-2「ドイツ」は中間、(エ)-3「イタリア、中国」は経営者企業・経営者資本主義が弱い、(エ)-4 日本は国際的にみて突出して非血縁的な経営者企業が多い。
L-3 経営文化の国際比較③:(オ)縦ラインの指揮命令系統の強さは、強い順にドイツ、アメリカ、イギリス、日本だ。(中国、イタリアについては不明。)
L-3-2 (オ)-2 かくて日本は単純な「タテ社会」でない。日本は先輩後輩関係が重要な点では「タテ社会」だが、企業の縦ラインの指揮命令系統が弱い点では「タテ社会」でない。
L-3-3 (オ)-3 企業に関して「タテ社会」のドイツやアメリカでは「上役に盾突く」などありえない。しかし日本では上役へのある程度の「反抗」は許容範囲だ。
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兼好法師『徒然草』第82段「羅(ウスモノ)の表紙(ヘウシ)は」:秩序(美)とは①人間の「好みの造形」であるか、あるいは②「規則性つまり同型的に繰り返すこと」だ!

2020-06-29 23:40:51 | 日記
※兼好法師(1283?-1352?)『徒然草』(1330-31頃)

(1)
「羅(ウスモノ)を使った書物は、すぐに傷むのが困る」とある者が言った。これに対し「天地の糸がほつれたりしている方が味わいがある」と申した者がいた。「感心させられた」と兼好法師。
(2)
「揃っている冊子本や巻子(カンス)本がおのおの同じ体裁でないと見苦しい」と普通、言う。これに対し「物を絶対に完備させようとするのは、つまらない者のすることである。不揃いであるのがよい」と言った者がある。「素晴らしい」と兼好法師。
(3)
兼好法師が言う。「すべて何も皆、ことのととのほりたるはあしきことなり。し残したるをさてうち置きたるは、面白く、息のぶるわざなり。」(だいたい何事もみな、整然としていることはかえってよくないことである。どこかやり残してあるところをそのままにしてあるのは、かえって興趣があり、ほっとするものである。)

《感想1》書物について「天地の糸がほつれたりしている方が味わいがある」とは妥当だ。カオス(混沌)でないこと、つまり秩序(美)とは①人間の「好みの造形」であるか、あるいは②「規則性つまり同型的に繰り返すこと」だ。「糸がほつれていること」が①好みの造形なら、それが秩序つまり美だ。
《感想2》「不揃いがよい」のも、「完備」が良いのも、相互に対立するが、どちらも①「好みの造形」なら、それぞれの者にとって、秩序つまり美だ。
《感想2ー2》だが世の中の多数派は、②「規則性つまり同型的に繰り返すこと」を秩序つまり美と考える。兼行法師は、そう考えない。彼らにとっては「糸がほつれていること」や「不揃いであること」が①「好みの造形」であり秩序つまり美だ。
《感想2ー4》人間がこの世界に「好み」(=欲望=意図=感情)にもとづいて造形したもの、つまり「好み」(=欲望=意図=感情)を対象化したものは、すべて秩序つまり美だ。
《感想3》私的(個人的)には①各人の「好みの造形」が秩序つまり美である。
《感想3-2》しかし公的には、つまり共同体的には、あるいは権力的には、たとえば国家的な儀式に当たって、②「規則性つまり同型的に繰り返される」ことこそが普通、秩序つまり美とされる。権力は「規則性」つまり「同型的に繰り返されること」を好む。書物の天地の糸がほつれていたり、揃っているべきものがバラバラであることを許さない。公的儀式の世界は、物が完備していなくてはならない。個人の「好み」など許さない。公的儀式は、国家・共同体・そしてその権力・権威の完全性・崇高性・偉大性・強大性を示し、人を緊張させ恐れさせねばならない。「規則性」・「同型的に繰り返される」ことはそうした効果を持つ。
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「隠棲」とは生きながら死ぬことだ!隠棲者は死者だから自分(死者)のために生きることが論理上できない!隠棲者は他者(他なる生者)のために生きる!

2020-06-29 01:30:28 | 日記
「隠棲」とは、この世の一切の付き合いから離れることだ。隠棲者は独りで生きる。何も所有しない。そして生きながら死ぬ。隠棲者は生きる意味と無縁だ。死を生きるからだ。本来、隠棲者には死がふさわしい。だが自殺は周囲に迷惑がかかる。だから生きる。隠棲者は死者だから自分(死者)のために生きることが論理上できない。(死者は生きていない。)死を生きる隠棲者は生者のためにのみ生きることができる。生者は自分でありえない。(自分は死者だ!)隠棲者にとって生者は、他者だ。隠棲者は他者(他なる生者)のために生きる。
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安部悦生『文化と営利』「終章 文化衝突と経営文化論の展望」:少子高齢化による国内市場狭隘化のため、日本企業は海外進出(国際化)せざるをえない!

2020-06-28 21:42:58 | 日記
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣(2019)「第Ⅱ部 経営文化の国際比較」「終章 文化衝突と経営文化論の展望」

(1)文化が衝突するとき:1960年代以降、加速度的に国際化が進行し、世界経済がグローバル化、企業が多国籍化した!(331-333頁)
A サミュエル・ハンチントン『文明の衝突』はキリスト教文明、イスラム教文明、儒教文明のマクロレベルでの「衝突」について語った。
A-2 企業のレベルでは、多国籍企業が生産拠点・販売拠点を海外に置くことで文化摩擦・「文化衝突」が発生する。(ア)《現地への派遣社員》と現地社員との文化摩擦、(イ)本国企業の経営方針(ビジネスポリシー)と現地企業の経営方針との矛盾・対立、つまり「文化衝突」の問題が発生する。
A-3 こうした問題は、これまで異文化コミュニケーション論(Ex. 文化摩擦)、多国籍企業論(Ex. 経営方針)で扱われた。
A-4 ここでは比較経営文化論の観点から、企業が海外に活動を「移植」(transplant)した時、どんな問題が発生するか考察する。
B 第2次大戦後は、多国籍企業化(企業の海外進出)の時代だ。(アメリカ企業が中心、その後、ヨーロッパ企業、日本企業が積極的に海外進出。)1960年代以降、加速度的に国際化が進行し、世界経済がグローバル化、企業が多国籍化した。
B-2 1970年代、日本企業が本格的に海外進出。(ア)文化衝突の問題、(イ)移植工場(transplant fctorry)の現地経営をどう行うかの問題、(ウ)世界中に広がった子会社・工場群をどのように統括するかの問題などが発生。
B-3 1980年代は「日本的経営」・「日本の経営文化」が世界から脚光を浴びたが、日本企業にとっては、海外での文化摩擦に対処し、グローバル経営を成功させることが切実な課題となった。

(2)なぜ企業は海外に行くか:少子高齢化による国内市場狭隘化のため、日本企業は海外進出(国際化)せざるをえない!(333-335頁)
C 企業はなぜ海外進出するか?多国籍企業論によれば以下の5点だ。①現地生産による関税回避。②半製品で運んだり、原材料を現地調達し(※輸出の)輸送費削減。③現地の低廉な労働力の利用。④製品動向把握のため市場立地。(※市場内に立地する!)⑤研究開発情報を現地で得るため研究所子会社設置。
C-2 日本の場合、少子高齢化による国内市場狭隘化のため、企業は海外進出(国際化)せざるを得ない。
C-3 関税はGATTの多国間交渉で引き下げられた。だが最近は「関税戦争の再来か」と言われる状況だ。(ア)米国が保護貿易を唱える。(Cf. 2017トランプ政権!)(イ)中国が自由貿易を求める。(しかし中国は自由投資させず、非関税障壁が大きい。)
C-4 日本は、(a)1970年代、低廉な労働力(③)を求め東南アジア進出。(b)1980年代は市場立地(④)の狙いで北米へ。(c)最近、東南アジア、インドは経済的に発展してきたので安価な労働力(③)という誘因だけでなく、市場(④)としての重要性が増した。
D 企業の海外への進出形態には、100%出資の「独資」と、「合弁」形態での進出がある。「合弁」は意思決定が複雑になる。
D-2 進出形態は、グリーンフィールド投資(新たな工場建設)や、ブラウンフィールド投資(企業買収による既設工場の取得)がある。

(3)企業は人からできている(a):人は文化特性の大きな影響を受けている!(335-336頁)
E 製品には高文化要素製品がある。食品、服、化粧品、家具などの消費財は国の文化が影響する。(テレビ、白物家電、PC、スマホなどの消費財は国の文化が影響するほど大きな好みの差はない。)生産財は何処の国でも大体同じ仕様でよい。
E-2 人間は言わば、最高の高文化要素製品だ。人間の行動・モチベーション・インセンティブは文化特性に左右される。
E-4 企業は人で構成されており、トップからミドル、ロワー、ランクアンド・ファイル(平社員)まで文化特性の大きな影響を受けている。
E-5 かくて《現地への派遣社員(expatriate)》と現地社員との文化摩擦が起こる。Ex. 日本人の完璧主義=「今日のうちにやっておく」、ラテン系の「明日できることは今日しない」

(3)-2 企業は人からできている(b):日本流のやり方を「適用」するか、現地のやり方に「適応」していくかの問題!(335-336頁)
F 日本流のやり方を「適用」するか、現地のやり方に「適応」していくかの問題。特に、日本流のやり方をとらないと、競争優位(competitive advantage)を失う場合は大問題だ。
F-2 日本的な制度(Ex. ①長期勤続、年功賃金、年功昇進、②ジョブローテーション、多能工、広い職域区分、③QCサークル、④社歌、朝礼、ロゴなどによる一体感、⑤提案箱による苦情処理)を実施するには、企業への「忠誠心」、会社に「コミットメントする気概」が必要だ。
F-3 日本的経営のソフトウェア(Ex. ②ジョブフレキシビリティ、つまり職務区分を広くし職種・職務上の移動を容易にすること、④チームコンセプト、⑤現場主義、⑥細部へのこだわり、⑦厳格な規律、⑧メンテナンスの重視、とりわけ問題発生を未然に防ぐプリメンテの考え方、③QCサークルと⑤提案制度による品質管理、⑨5Sつまり整理・整頓・清潔・清掃・躾)の移植には、現地の文化特性、社会習慣などを十二分に配慮しなければならない。
F-4 アメリカ人は日本人以上に「時間にきっちり」している(time-conscious)。「タイム・イズ・マネー」の精神。(Ex. 日本の経営者が、アメリカの従業員とのグループディスカッションに10分遅刻し冷ややかに対応される。)メキシコ人などラテン系は時間におおらか。

(3)-3 企業は人からできている(c):ブルーカラーとホワイトカラーの横の平等の問題!(338頁)
G 日本的経営は相対的に平等主義的要素が強い。例えば職員と工員の一体性。日本ではどちらもサラリー(月給制)。米英では、ホワイトカラーはsalary(月給制)、ブルーカラーはwage(週給制)。
G-2 日本では工職一体の労働組合。英米では、ブルーカラーは労働組合(trade union)、ホワイトカラーは別な組織(association)を作る。
G-3 日本企業の英米工場では、昼食のカフェテリアはブルーとホワイトの共用。ブルーカラーは喜ぶ、ホワイトカラーは自分らの権利(特権?)が侵害されていると感じる。

(3)-4 企業は人からできている(d):重役・幹部社員と平社員との上下の平等の問題!(338-339頁)
G-4 アメリカの日本企業では、駐車場は社長から平社員まで、朝、先着順に駐車できる。(Cf. 日本本社では規模が大きいので重役用の駐車スペースあり。)
G-5 アメリカの日本企業では、上位の者も下位の者も同じ食堂を利用する。

(3)-5 企業は人からできている(e):「日本企業はレイオフなし」の問題!(339頁)
H アメリカ、イギリスの日系企業で、一番歓迎されているのは、「日本企業はレイオフなし」という点だ。会社への忠誠心醸成のためだ。ただし、これは努力目標でレイオフする日本企業もある。

(3)-6 企業は人からできている(e):日本の企業別組合の問題!(339-340頁)
I 日系企業は、「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」をベースに経営しようとする。
I-2 日本企業は、アメリカでは組合活動が活発でない地域を選ぶ。
I-3 なお英米日で典型的だが、ここ数十年、スウェーデン、ドイツなどを除けば、労働組合は世界的に退潮している。
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映画『カサンドラ・クロス』The Cassandra Crossing(1976年、伊英西独仏米):細菌兵器の研究を行っていた米軍の謀略!

2020-06-27 23:23:07 | 日記
(1)
ジュネーヴの国際保健機構に急患を装った3人のゲリラが潜入。1人は射殺され、1人は保健機構で感染性の強い病原菌に感染し死亡。逃走した1人がパリ経由ストックホルム行きの大陸縦断鉄道へ乗りこむ。
(2)
保健機構内で細菌兵器の研究を行っていた米軍は、発覚を恐れマッケンジー大佐にゲリラの行方を捜索させた。大佐は、ゲリラが大陸縦断鉄道に乗ったことを突き止める。さらに列車にチェンバレン博士(外科医)が乗車していることを知る。大佐は博士に連絡を取り、ゲリラを探し出し隔離するよう依頼した。
(3)
チェンバレン博士は乗り合わせた元妻ジェニファー(ソフィア・ローレン)やセールスマンのカプラン、車掌のマックスなどと共に車内を捜索、貨物車内でゲリラを発見する。しかしゲリラは病原菌に感染しており、その状態で車内を徘徊したため、乗客1,000人に感染の疑いがかかった。
(4)
マッケンジー大佐はヘリコプターを派遣し、感染したゲリラと貨物車で感染した犬を回収しようとする。犬だけ回収するが、ゲリラは病原菌により死亡する。保険機構のシュトラドナー医師は回収した犬の解毒方法を探る。マッケンジー大佐は「列車をニュルンベルクに誘導、そこで医療チームを乗車させ、ポーランドの隔離施設に移送する」よう指示する。
(5)
ニュルンベルクに到着するまでの間に、乗客たちが次々に病原菌に感染する。列車がニュルンベルクに到着すると、そこには完全武装したアメリカ兵が待機していた。彼らは酸素供給装置を持ち込んだうえで列車を完全に密封し、乗客たちを管理下に置いた。その様子を見たカプランは、ナチスによって収容所送りにされた過去を思い出し錯乱状態に陥る。
(6)
列車はアメリカ兵を乗せてポーランドに向け発車する。その途中でカサンドラ・クロス橋梁を通過すると知ったカプランは絶望する。カサンドラ・クロス橋梁は1948年に廃線となり、崩落の危険性が指摘され周辺住民はすでに立ち退いていた。
(7)
カプランから話を聞いたジェニファーは、「マッケンジー大佐に連絡してほしい」とチェンバレン博士に伝える。だが大佐は「安全性は確認されている」と答えるだけだった。実はマッケンジー大佐は上層部から「乗客たちをカサンドラ・クロス橋梁の崩落事故に見せかけ、全員口封じせよ」との命令を受けていた。
(8)
シュトラドナー医師は「隔離室で酸素供給を受けていた犬が感染症から回復した」ことを確認。列車を止めるように訴える。しかしマッケンジー大佐は苦悩しつつも、命令を忠実に実行し列車を止めない。
(9)
一方、列車内でも乗客たちが酸素の供給によって症状から回復したため、チェンバレン博士は列車を止めるよう車内のアメリカ軍指揮官に訴える。しかし指揮官は「列車を止める権限がない」と拒否する。
(10)
チェンバレン博士は「カサンドラ・クロス橋梁に到達する前に列車を止める」ため、ジェニファーや麻薬売人のナバロ、麻薬捜査官のハリーと協力して機関車を制圧しようと試み、アメリカ兵と銃撃戦を展開するが、武装したアメリカ兵に阻まれ失敗する。
(11)
チェンバレン博士は「調理室でガス爆発を起こし列車を切り離そう」と考えつくが、ナバロが列車の側面から窓の遮蔽版伝いに機関車に乗り込むことを志願し、同時並行で作戦を実行する。しかしナバロはアメリカ兵に見付かり射殺されてしまう。
(12)
チェンバレン博士の調理室爆破は、導火線の火が消え窮地に陥る。そこにライターを持ったカプランが現れ、自身を犠牲にしてプロパンガスに引火し調理室を爆破する。チェンバレン博士たちは、カサンドラ・クロス橋梁に到達する直前に、後方部分の二等車両を切り離す。
(13)
しかし列車の前半部分の機関車と一等車両は、乗客とアメリカ兵を乗せたまま、カサンドラ・クロス橋梁に進入し、橋梁の崩壊に巻き込まれ川に転落。こうして全員が死亡する。難を逃れた二等車両のチェンバレン博士や乗客たちは列車を降り脱出する。なお列車内への酸素供給によって、病原菌感染者は全員、回復した。
(14)
詳細を知らないマッケンジー大佐は「乗客は崩落事故で全員死亡した」と上層部に報告する。大佐はシュトラドナー医師に非難され罪の意識に苛まれる。しかし彼は、シュトラドナー医師に事実を漏らさないよう命じる。マッケンジー大佐も保健機構を後にする。
(15)
だがマッケンジー大佐とシュトラドナー医師には、監視がつけられていた。スタック少佐が2人の監視をするよう米軍上層部から命令を受けていた。
(16)
◎ジェニファー(ソフィア・ローレン):女流作家で、チェンバレン博士の元妻。
◎チェンバレン博士:神経外科医で、ジェニファーの元夫。カサンドラ・クロス橋梁崩落による列車事故計画を阻止し、乗客を救出すべくリードする。
◎ナバロ:兵器製造会社を所有するドレスラー夫人の若い愛人で、国際警察で指名手配中の麻薬の売人。
◎ハリー:麻薬捜査官。ナバロを逮捕すべく神父に変装して列車に乗り込む。アメリカ兵に射殺される。
◎シュトラドナー医師:国際保健機構の医師。マッケンジー大佐と共に事件に関わり、医学的視点で助力。しかし大佐が《米軍上層部の命令に従い事件隠滅のため乗客もろとも列車抹殺する》ことを変更しないので、大佐と対立する。
◎マッケンジー大佐:国際保健機構の米セクション情報部員。米軍による細菌兵器研究の発覚を恐れ上層部の命令を受け、内心の苦悩を抑えつつ、「カサンドラ・クロス橋梁崩落によって列車と共に1000人の乗客を殺害する計画」を立てる。
◎スタック少佐:「犠牲となった列車の乗客達に罪障意識を感じていると思われる」マッケンジー大佐、および事情を知ったシュトラドナー医師を、米軍上層部からの密命でひそかに監視する。
◎カプラン:初老のセールスマン。ユダヤ人で腕時計を扱う。過去の収容所生活で家族を失った上、自身も悲惨な体験を強いられたことがトラウマとなっている。列車がポーランドへ行くと聞き、過去の恐怖を思い出し恐慌状態に陥る。最後は調理室で自爆する。これによって床下の連結器を露出させ、列車を前後に切り離すことができた。
◎マックス:初老のベテラン車掌。チェンバレン博士らと共に乗客救出に尽力する。

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