※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019「第Ⅱ部 経営文化の国際比較」「終章 文化衝突と経営文化論の展望」(続)
(4)1990年代後半、アメリカ流経営をまねて日本的経営システムの修正:①成果主義、②フラット化、③報酬委員会!(340-341頁)
J 日本では1990年代後半(※バブル崩壊と金融危機で「失われた10年」の時期)、アメリカ流経営をまねて、日本的経営システムの大きな修正が行われようとした。
J-2 その筆頭は①「成果主義」だ。年功給でなく成果給で企業の競争力を強化しようとした。(ただし2000年代には揺り戻し。)
J-2-2 「成果主義」は、「成果をどのように測るか」で困難があった。(ア)グループで作業するため個人単位の成果を測りにくい。(イ)成果を上げやすい仕事に飛びつく=短期的近視眼的志向に陥る、(ウ)目標設定の困難な部署に無理やり目標を設定しうまく機能しない。かくて職場に混乱が起こり成果主義の評判が下がった。
J-3 また②「フラット化」が時代のキャッチフレーズになった。しかしフラット化で職階を一つ減らすと、管理する部下の数が5人から20人位に増え、組織全体の効率が低下した。
J-4 ③委員会制度が日本企業にも導入され、その内のひとつの「報酬委員会」がトップ経営者の報酬を決めるようになった。しかし日本の常識を超えた報酬が決定されるようになり、従業員の一体感、会社への忠誠心にマイナスに作用する危険性があった。
J-5 かくて「成果主義」等のアメリカ流経営は、警戒心を呼び揺り戻しが起きた。しかし企業の「グローバル化」の状況のもと、事態は複雑化している。
(4)-2 企業の「グローバル化」:人的資源のグローバルな活用のため、世界の潮流が「成果主義」となることは必至だ!(341-342頁)
K 日本企業が「グローバル化」(※多国籍企業化、海外企業化)した場合、外国人従業員の認識は、(a)アメリカ流の短期的成果主義(反・年功賃金)、(b)スピード出世(反・年功昇進)だ。
K-2 日本企業がグローバル企業を望むなら、「年功制」の維持は無理だ。「成果主義」以外、選択の余地がない。
K-3 独仏がやや日本に近いと言っても、程度の問題だ。「年功制」を維持してきたのは日本だけだ。欧米に加え、印、中など、今後の経済大国では、「成果主義」の発想が強くなる。
K-4 世界の潮流が「成果主義」となることは必至である。グローバル企業において、日本の「年功制」は消滅せざるをえないかもしれない。
(5)経営文化の国際比較:①プロテスタント・家族主義・国有企業・組織主義、②経営者企業・経営者資本主義の強さ、③)縦ラインの指揮命令系統の強さ!(342-344頁)
L 経営文化の国際比較①プロテスタント・家族主義・国有企業・組織主義:(ア)イギリスとアメリカは元々プロテスタントの国として共通性を持つ。(イ)中国とイタリは家族主義という点で、また国有企業が有力という点でも類似。(ウ)ドイツと日本は組織主義という点で共通点。
L-2 経営文化の国際比較②:(エ)経営者企業・経営者資本主義の強さに関しては、「日本・アメリカ・イギリス」が強い、(エ)-2「ドイツ」は中間、(エ)-3「イタリア、中国」は経営者企業・経営者資本主義が弱い、(エ)-4 日本は国際的にみて突出して非血縁的な経営者企業が多い。
L-3 経営文化の国際比較③:(オ)縦ラインの指揮命令系統の強さは、強い順にドイツ、アメリカ、イギリス、日本だ。(中国、イタリアについては不明。)
L-3-2 (オ)-2 かくて日本は単純な「タテ社会」でない。日本は先輩後輩関係が重要な点では「タテ社会」だが、企業の縦ラインの指揮命令系統が弱い点では「タテ社会」でない。
L-3-3 (オ)-3 企業に関して「タテ社会」のドイツやアメリカでは「上役に盾突く」などありえない。しかし日本では上役へのある程度の「反抗」は許容範囲だ。
(4)1990年代後半、アメリカ流経営をまねて日本的経営システムの修正:①成果主義、②フラット化、③報酬委員会!(340-341頁)
J 日本では1990年代後半(※バブル崩壊と金融危機で「失われた10年」の時期)、アメリカ流経営をまねて、日本的経営システムの大きな修正が行われようとした。
J-2 その筆頭は①「成果主義」だ。年功給でなく成果給で企業の競争力を強化しようとした。(ただし2000年代には揺り戻し。)
J-2-2 「成果主義」は、「成果をどのように測るか」で困難があった。(ア)グループで作業するため個人単位の成果を測りにくい。(イ)成果を上げやすい仕事に飛びつく=短期的近視眼的志向に陥る、(ウ)目標設定の困難な部署に無理やり目標を設定しうまく機能しない。かくて職場に混乱が起こり成果主義の評判が下がった。
J-3 また②「フラット化」が時代のキャッチフレーズになった。しかしフラット化で職階を一つ減らすと、管理する部下の数が5人から20人位に増え、組織全体の効率が低下した。
J-4 ③委員会制度が日本企業にも導入され、その内のひとつの「報酬委員会」がトップ経営者の報酬を決めるようになった。しかし日本の常識を超えた報酬が決定されるようになり、従業員の一体感、会社への忠誠心にマイナスに作用する危険性があった。
J-5 かくて「成果主義」等のアメリカ流経営は、警戒心を呼び揺り戻しが起きた。しかし企業の「グローバル化」の状況のもと、事態は複雑化している。
(4)-2 企業の「グローバル化」:人的資源のグローバルな活用のため、世界の潮流が「成果主義」となることは必至だ!(341-342頁)
K 日本企業が「グローバル化」(※多国籍企業化、海外企業化)した場合、外国人従業員の認識は、(a)アメリカ流の短期的成果主義(反・年功賃金)、(b)スピード出世(反・年功昇進)だ。
K-2 日本企業がグローバル企業を望むなら、「年功制」の維持は無理だ。「成果主義」以外、選択の余地がない。
K-3 独仏がやや日本に近いと言っても、程度の問題だ。「年功制」を維持してきたのは日本だけだ。欧米に加え、印、中など、今後の経済大国では、「成果主義」の発想が強くなる。
K-4 世界の潮流が「成果主義」となることは必至である。グローバル企業において、日本の「年功制」は消滅せざるをえないかもしれない。
(5)経営文化の国際比較:①プロテスタント・家族主義・国有企業・組織主義、②経営者企業・経営者資本主義の強さ、③)縦ラインの指揮命令系統の強さ!(342-344頁)
L 経営文化の国際比較①プロテスタント・家族主義・国有企業・組織主義:(ア)イギリスとアメリカは元々プロテスタントの国として共通性を持つ。(イ)中国とイタリは家族主義という点で、また国有企業が有力という点でも類似。(ウ)ドイツと日本は組織主義という点で共通点。
L-2 経営文化の国際比較②:(エ)経営者企業・経営者資本主義の強さに関しては、「日本・アメリカ・イギリス」が強い、(エ)-2「ドイツ」は中間、(エ)-3「イタリア、中国」は経営者企業・経営者資本主義が弱い、(エ)-4 日本は国際的にみて突出して非血縁的な経営者企業が多い。
L-3 経営文化の国際比較③:(オ)縦ラインの指揮命令系統の強さは、強い順にドイツ、アメリカ、イギリス、日本だ。(中国、イタリアについては不明。)
L-3-2 (オ)-2 かくて日本は単純な「タテ社会」でない。日本は先輩後輩関係が重要な点では「タテ社会」だが、企業の縦ラインの指揮命令系統が弱い点では「タテ社会」でない。
L-3-3 (オ)-3 企業に関して「タテ社会」のドイツやアメリカでは「上役に盾突く」などありえない。しかし日本では上役へのある程度の「反抗」は許容範囲だ。