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「歴史巡るフェイク・・・・」浮世(ウキヨ)博史(1962-)(『朝日新聞』2020/07/15):主義主張が先にあり、それに合わせて歴史『で』語る!歴史『を』語るのでない!

2020-07-31 16:08:12 | 日記
Cf. 浮世博史『もう一つ上の日本史『日本国紀』読書ノート』古代~近世篇2020、近代~現代篇2020。
Cf. 百田尚樹『日本国紀』2018。

(1)主義主張が先にあり、歴史『で』語る!(Cf. 歴史『を』語る!)
歴史にまつわる俗説や誤認はネットが普及した2000年以降、顕著だ。自分の主義主張が先にあり、それに合わせて歴史『で』語る。歴史『を』語るのでない。
《感想1》「百田尚樹氏は、自分の主義主張が先にあり、それに合わせて歴史『で』語る」と、浮世(ウキヨ)氏は言う。浮世氏は「歴史『を』語る」立場から、『日本国紀』の歴史の説明について、検討する。
《感想2》これは、確かに必要な作業だ。評者としては、ともかく「事実」が知りたい。「何が事実か」は漸近線的にしか明らかにならないだろうが、多くの者が多くの資料で検討すれば、相当程度、「事実」に接近できるはずだ。

(2)日露戦争は一面で「アジアを失望させた」!
日露戦争の日本の勝利は、一方で「アジアに勇気や自信を与えた」が、他方で「日本の帝国主義と植民地支配のきっかけになった」つまり「アジアを失望させた」(孫文、ネルー、ビルマの独立運動家バー・モウ)。
《感想1》日露戦争の日本の勝利は、一方で「アジアに勇気や自信を与えた」のは確かだろう。日本人にとってもそうだったはずだ。その後、「無敗の皇軍神話」が形成されていく。かくて日本が愚かな道を歩むきっかけになった。日本は「天狗」になった。
《感想2》こうして、欧米崇拝のもと、日本人は名誉白人だと思い、アジア蔑視した。日露戦争が「日本の帝国主義と植民地支配のきっかけになった」つまり「アジアを失望させた」のも、当然の成り行きだor事実だ。
《感想3》中国の列強による植民地支配は、日本の日清戦争(1994-95)勝利後、本格的に始まった。それから100年超が経ち、2010年GDP世界第2位となった中国が再び世界の「大国」としてふるまい始めた。(Cf. 中国はおそらく100年間の屈辱を晴らしている。)

(3)織田信長は「金持ちのボン」!
織田信長は一方で「時代を切り開いた寵児」だが、他方で父・信秀が海運業などで築いた経済力を引き継いだ「金持ちのボン」でもある。信長は現在、1960~70年代の時ほど評価されていない。
(3)-2 歴史は複数の力の合力だ!
どんなに偉大な人物でも、一人の力で歴史を動かすことはできない。信長の時代、武士は7%に過ぎない。あとは大部分、農民だ。歴史は複数の力の合力によって動く。
《感想》「一人の力で歴史を動かすことはできない」としても、多くの歴史諸力の「主要な」一つになる限りで、その「一人」(Ex. 信長)は偉大だ。

(4)近代の始まりは明治維新でなく、ペリー来航!幕府が近代化を開始した!
幕末の志士が「先見性ある英雄」で、幕府は「保守的で頑迷」と簡単に言えない。「幕府が近代化を進め、明治政府はその上に乗っかった」側面がある。ペリー来航の情報を幕府は事前に入手し、米国と粘り強く交渉した。近代の始まりは、明治維新でなく、ペリー来航だ。
《感想》日露戦争の日本海海戦でバルチック艦隊に勝利した連合艦隊司令長官東郷平八郎は1912年、自宅に小栗上野介の子孫・小栗又一を招待し感謝の意を述べた。「日本海海戦でロシア艦隊を破ることができたのは、小栗さんが横須賀造船所を造っておいてくれたおかげです。」小栗上野介は、幕府旗本で、勘定奉行や外国奉行などを歴任した。

(5)寺院焼き討ちは普通の事! 信長は「常識外」でない!
司馬遼太郎『国盗り物語』によって広まった、信長の比叡山焼き討ちが「常識外の人物」によるものだとのイメージは誤りである。武士たちは鎌倉時代以降、躊躇なく寺院焼き討ちをしていた。(Cf. なお『坂の上の雲』の秋山好古、真之兄弟は過大評価の面がある。)
《感想》寺院は聖界諸侯であり、大名である俗界諸侯と、政治的軍事的に基本的区別はない。俗界諸侯の信長が、聖界諸侯の比叡山を攻撃するのは、当然の事だ。もちろん比叡山は、仏をもちだし宗教的に信長を非難するだろう。だからと言って信長が「常識外の人物」になるわけでない。

(6)中高生:ネット慣れしており「ネットには嘘がある」と受け流す姿勢あり!
中高生は大人よりネット慣れしているので「ネットには嘘がある」と受け流す姿勢があり、歴史のフィクションやフェイクに対し免疫がある。また大学の研究者がつくる入試で、フィクションやフェイクの答えは書けない。(減点される。)
《感想》中高生の多くは、ネット慣れしているだろうが、そもそも歴史に興味もあまりないだろう。(例外はある!)また受験科目で日本史を取る者も一部だ。

(7)中高年:歴史のフェイクを信じやすい!
中高年の方が歴史のフェイクを信じやすい。その2つのタイプ。①教科書の事実をよく知っているが、最新の史実や解釈が修正されたことを知らない。かくて新説と思いフェイクを信じる。②教科書の事実を批判する人がいる。「実はそうじゃないんでしょ?最近読んだ本(Ex. 『日本国紀』)やネットに書いてあった。」
(7)-2 戦前戦中への反省から80年代頃まで、日本の植民地支配が強調して教えられていた!
今の中高年(Ex. 50-60歳、2020年)が中高生(Ex. 高1年16歳、1976-86年)だった80年代頃までは、戦前戦中への反省から、日本の植民地支配の話が強調して教えられていた。中高年世代にはその反動がある。
《感想1》1980年代の政府の立場は次の通りだ。1982年 宮澤喜一内閣官房長官の発言:「 日本政府及び日本国民は、過去において、我が国の行為が韓国・中国を含むアジアの国々の国民に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を歩んできた。我が国は、韓国については、昭和四十年の日韓共同コミュニケの中において『過去の関係は遺憾であって深く反省している』との認識を、中国については日中共同声明において『過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことの責任を痛感し、深く反省する』との認識を述べたが、これも前述の我が国の反省と決意を確認したものであり、現在においてもこの認識にはいささかの変化もない。」
《感想2》1984年昭和天皇は次のように発言している。「今世紀の一時期において、両国の間に不幸な過去が存したことは誠に遺憾であり、再び繰り返されてはならないと思います。」(韓国の全斗煥大統領が国賓として訪日した際の宮中晩餐会にて。)

(8)蒙古襲来:元・日本・高麗・南宋・ベトナム(陳朝)!
蒙古襲来(1274, 1283)の説明:①《戦前》神社が祈祷し「神風」で元を撃退。神国思想を強める意図。②《戦後》武士が頑張ったから勝てた。(以上、1980年代頃まで。)③《近年》(ア)高麗の三別抄の乱(1270-73)で元の日本遠征が遅れた。日本は戦闘準備できた。(Ex. 20kmの元寇防塁)(イ)元は文永の役のあと南宋を滅ぼす(1279年)が厭戦気分が広がっていた。(ウ)元はベトナム(陳朝)の反乱鎮圧で3回目の日本攻撃を中止した。(1288年、白藤江の戦い で元軍敗北。)
《感想》蒙古襲来の鎌倉幕府勝利の原因は多様だ。①暴風雨(偶然であって「神風」ではない)、②武士の奮戦。③高麗の三別抄の乱、③-2南宋戦の後の厭戦気分、③-3ベトナム(陳朝)の反乱。「武士の奮戦」を除けば、他に4つの偶然の原因が、日本を元の侵略から守った。さらに④地政学的に、そもそも日本が島国であり海という天然の防御線があること、また④-2モンゴルが陸戦中心であったことも、日本勝利の要因だ。

(9)「日本はすごい」!
「日本はすごい」という歴史観、歴史修正主義は相当程度、支持され人々の心に入りこめている。
《感想1》①「日本はすごい」と日本に生まれた者なら、普通、思いたくなる。(Cf. お国自慢!)人情だ。
《感想2》②日本は「過去」について十分、謝罪している。(1980年代については先述。)近年では例えば次の通り。(ア)2007年安倍首相:「自分は、辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである、20世紀は人権侵害の多かった世紀であり、21世紀が人権侵害のない素晴らしい世紀になるよう、日本としても貢献したいと考えている。」(イ) 2005年 小泉純一郎首相:「我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。」
《感想3》③日中韓は「未来志向」で、つき合うべきだ。実際、今生きてる大部分の人は、過去の戦争の時代に指導者・兵士として参加していない。その意味で「過去」に対して直接の責任はない。自分がやったから「悪い」と直接、謝る理由はないし、「悪い」といつまでも言われても困る。
《感想3-2》中韓の人々についても同様のことが言える。今、生きている大部分の人は、過去の戦争の時代に指導者・兵士として参加していない。だから直接、ひどい目にあったわけでない。日中、日韓、互いに人間同士として「未来志向」で、つきあっていけるとよいと思う。
《感想3-3》日本は「過去」について上述のように十分、謝罪している。この気持ちを多くの日本の者たちも共有しているはずだ。

(9)-2 リベラルとされる人たちの「上から目線」!
リベラルとされる人たちは、「上から目線」で歴史を語ることがある。「歴史のこんなことも知らないのか?」という態度だ。
《感想1》例えば「学徒出陣」がなぜ「特別に」問題になるのか?あの時代、大学生以外は、すでに兵士として「出陣」して戦っていたのだ。当時の大学生は「特権階級」だ。彼らが平等に兵士になるのは、「特別に」問題になることでない。当時としては「当たり前」のことだ。(Cf. リベラルとされる人たちのリーダーは「特権階級」(大学卒)が多かったのだ!)
《感想2》だが問題なのは、そもそも「愚かな」戦争を開始したことだ。戦争指導の責任こそ「特別に」問題にすべきだ。多くの誠実な「兵士」が「愚かな」戦争指導で死んだ。(Ex. 兵士の多くが「餓死」している。)
《感想3》「敗戦で自決した阿南惟幾(アナミコレチカ)は立派だ。」「お公家さんの近衛さんが自決した」のに、「陸軍軍人のくせに東条は自決しなかった。」死んだ多くの兵士に対し無礼だ。軍人として恥ずかしい。
《感想3-2》ただし評者は、阿南惟幾(アナミコレチカ)の「徹底抗戦」論は誤った戦争指導方針だと思う。1945年、御前会議の時点で「無条件降伏」しかなかったはずだ。だが玉音放送を待たず,「一死以テ大罪ヲ謝シ奉ル」との遺書を残し陸相官邸で自決した阿南惟幾は、戦争指導の失敗の責任を取った点で、軍人として立派だった。
《感想4》戦後生き残った戦争指導者たちは、特に軍人なら敗戦の責任を取って自決するのが筋だ。あるいは出家すべきだった。それが軍需物資を横流しして焼け太りし、平気で生き残る図々しさが許せない。死んだ兵士たちに対し責任を取れ。また空襲や原爆で悲惨な最期を遂げた者たちに対しても、責任を取れ。(Cf. 勝者による裁判があろうとなかろうと、そんなことは関係ない)。

(10)多方面の言説!
多くの人は一方の言説に凝り固まっていない。多方面の言説に接する必要がある。
《感想》自由な言論が保障されねばならない。
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安部悦生『文化と営利』「第4章」(その2)企業の目的(続):⑤株主への高配当&高株価、⑥社会的責任、⑦経営理念!「三方よし」(売手、買手、世間=社会)の理念!

2020-07-30 19:10:55 | 日記
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019「第Ⅰ部 経営文化の理論的解明」「第4章 企業の存在理由と企業組織」(51-65頁)(その2)

(1)-2 企業の目的(理念・目標)(経営理念・経営目的・経営目標)(続)!(54-57頁)
(ⅴ)「株主への高配当&高株価」という企業目的!(54頁)
G 現在のアメリカ企業では、「株主への高配当と高株価」を企業目標とする企業が跋扈する。短期的な利益目標。Ex. ]四半期主義。
G-2 1980年代から技術変化・社会変化によって、スピードが重視され、このような企業目標になった。従業員の賃金、企業内福利はなおざり。株主資本主義の弊害だ。
G-3 1970年代までは、企業目標はもっと長期的だった。従業員福祉も重視されていた(かつてのIBM、GM)。

(ⅵ)「社会的責任の重視」という企業目的!(54-55頁)
H 「環境重視」:これまで環境問題はコスト増になるとして無視されることが多かった。最近では、環境重視が企業の声望(corporate reputation)を高める。Ex. グリーン・インベストメント、SDG(持続可能な開発目標)、ESG(環境、社会、統治)
H-2 「法令順守」(compliance):自然人と同じく法人(legal person)も企業市民(corporate citizen)だ。(ア)脱税つまり税法の問題、(イ)独占禁止法、環境保護法、労働保護法、労働法など。
H-3 企業市民として、(ウ)演劇公演や美術展、音楽会など文化芸術活動への支援(メセナ)(Cf. 古代ローマのMaecenasマエケナス)、(エ)スポーツイベントの支援。

(ⅶ)企業の社風としての「経営理念」!(55-56頁)
I 様々な企業目的・目標のどれを重視するかを示し、掲げられた「経営理念」が企業の社風を示す。
I-2 (a)住友:「浮利を追わず」(堅実経営)、(b)三菱:「産業報国」・「処事光明」(ディスクロージャーorトランスペアレンシー)・「立業貿易」(資源の少ない日本における貿易の重要性)、(c)三井:「現金、掛け値なし」(顧客との誠実な関係)、(d)大丸:「先義、後利」(公正誠実な取引)、(e)キッコーマン:「産業魂」(社会の福祉、国家の発展、労使協調主義)、(f)ソニー:「自由闊達で、愉快な理想工場」、(g)ホンダ:「三つの喜び(買う、売る、創る)」消費者、販売者、生産者の「三方よし」の精神、(h)パナソニック:「水道哲学」(水道の水のように低価格で良質なものを大量供給し物の面から貧をなくす)・「七精神」(産業報国、公明正大、和親一致、力量向上、礼節、順応、感謝)、(i)サントリー:「やってみなはれ」(積極精神)、(j)キャノン:「共生」「実力主義」(単なる年功序列と一味違う日本的経営)。

(1)-3 まとめ:「三方よし」(売手、買手、世間=社会)の理念!(56-57頁)
J 企業目的として最も重要なのは近江商人の唱えた「三方よし」(売手、買手、世間=社会)の理念だ。
J-2 類似したものにフォードの理念がある。買手には安くて質の良い車、従業員には同業他社より高い給料、株主には高配当という「三方よし」。
J-3 かくて他者を犠牲にし、会社の利益のみ追求する企業(Ex. ブラック企業、泥棒専門会社、「梁山泊」というパチンコ荒らし)は企業として存在すべきでない。「三方よし」あるいは「ウィンウィン関係」(カスタマー・サティスファクション(CS)を通じて売手と買手の双方がベネフィットを得ること)がないからだ。
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君はさしあたり過去の化け物を霧の中に封じ込める!他なる《心と身体》が無数にいる!君という《心と身体》はこの中にいる!君は悲観する!

2020-07-30 11:41:24 | 日記
(1)
「過去」は霧だ、つまり記憶は霧だ。嫌な化け物が霧の中で動く。姿を見せるな。見えなければいないも同然。「現在」とは《物体と心》(他なる心も含む)。「未来」は空虚。霧(過去)と《物体と心》(現在)と空虚(未来)をたしたものが君(広義の心=世界)だ。
(2)
君(狭義の心)の核心は《感情・欲望・意図》また価値だ。面倒くさい君。しかも君の世界(広義の心)の中心は、君の身体だ。しかし面倒くさい身体だ。君は身体(物体)のない心がよかった。(Cf. 身体とは、君の《感情・欲望・意図》また価値によって動く物体だ。)(Cf. 君とは《心と身体》だ!)
(3)
このように君のさえない感情、欲望、意図、価値!さしあたり過去の化け物を霧の中に封じ込める。
(4)
だが他なる《心と身体》が無数にいる。君という《心と身体》はこの中にいる。困ったものだ。《心と身体》は普通、「人間」と言われる。面倒くさい。君は「人間」嫌いだ。どうしてこういう君になったのか?理由はなかなか把握できないorわからない。
(5)
これまで「人間」はたくさんいた。何十万年も前、「人間」がこの世界に登場した。それ以来続く、生存の意志と殺し合いorもろもろの感情・欲望・意図・価値 、それらの間の衝突。誰もが幸福になれる世界は、決してできたことがなかった。(部分的には幸福な社会があったかもしれない、と言いたい。)今後も、君は悲観する。

Cf. 君の核心は《感情・欲望・意図》また価値だ。また君は(a)育ち・(b)経験・(c)周囲の人間たち・(d)生まれながらの性格や資質を通じて君となってしまった。面倒くさい「君」だ!
Cf. 「モナドとしての広義の心」は《感覚・感情・欲望・意図・夢・意味世界・意味世界の展開としての虚構》からなる。「狭義の心」は《各モナドに固有の感覚の揺らぎ・感情・欲望・意図・夢・意味世界・意味世界の展開としての虚構》からなる。
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『伊勢物語』(Cf. 在原業平825-880)「第17段 年にまれなる人」:訪れのまれなお方をも待っておりました!私が来たことであなたは美しい桜花となる!

2020-07-29 19:32:26 | 日記
しばらく訪れてこなかった人が、桜の花の盛りに見に訪れた。その家の女が歌を詠んだ。
「あだなりと名にこそ立てれ桜花年にまれなる人も待ちけり」
A cherry blossam is famous for its unreliability. It has waited for a man, who came to me few times within a year.(移り気ですぐ散ってしまうと評判の桜花ですが、一年のうちに訪れのまれなお方をもこうして待っておりました。)

男が歌を返した。
「今日(ケフ)来ずは明日は雪とぞふりなまし消えずはありとも花と見ましや」
If I did not come to you today, a cherry blossam would fall like snow tomorrow. It would not disappear, but no one would think it as a cherry blossam.(今日来なければ、明日は雪のように降り散ってしまったろう。散った花びらが消えないでいても、誰も桜と見ないでしょう。)

《感想1》妻問(ツマドイ)婚の時代、まれに訪れた男(在原業平)に、女が詠う。「あだなり」は不誠実、浮気で、はかないこと。「『あだなり』と評判の私(桜花)ですが、殊勝にもあなたを待っておりました。」男を少し責めているが、女は嬉しいのだ。
《感想2》男の返しの歌。強気のプレイボーイの歌だ。「桜花は、私が今日来なければきっと明日は雪のように散ってしまったでしょう。本物の雪でないから消えないと思いますが、そんなの花と誰も見ないでしょう。」私が来たことであなたは美しい桜花となる!男は強気だ。強気が彼の魅力だ。
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加谷珪一「コロナで変わる日本的経営」(その2):「内需主導型経済」への転換!④「中抜き」をやめよ、⑤国内で経済を回せば日本は豊かになる、⑥製造業の国内回帰、⑦良質な中古住宅の流通!

2020-07-29 14:15:27 | 日記
※加谷(カヤ)珪一(1969-)「コロナで変わる日本的経営、克服すべき7つの課題」『ニューズウィーク日本版』(2020/7/28号)

(4)下請けと中抜き:中抜きされる下請け中小企業は、低付加価値、低労働生産性、低賃金となる!
日本はドイツと同様、中小企業が多い。だが問題は日本の中小企業の収益性が著しく低いことだ。その最も大きな要因は下請け構造による「中抜き」(※《ピンハネ》!)だ。日本の産業界には「丸投げ」と「中抜き」という商習慣が蔓延している。「中抜き」される下請け中小企業は、低付加価値、低労働生産性、低賃金となる。
《感想1》付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費。つまり付加価値は《労働によって付け足された価値》だ。「中抜き」されて中小企業の売上額が減れば付加価値は減り、賃金は下がる。
《感想2》労働生産性は、産出額(=売上額)を労働投入量1単位(=労働者数)で割ったもの。「中抜き」されて中小企業の売上額(産出額)が減れば労働生産性(労働者1人当たり売上額)は減り、賃金は下がる。

(5)不十分な設備投資:国内で経済を回せば日本は豊かになれる!
日本のGDPに占める輸出の割合は小さく、日本は輸出立国でない。ところが産業構造は輸出主導型のままで、国内需要(内需)を拡大させるための設備投資が十分に行われていない!
《感想》2018年の輸出依存度は14.8%で、OECD中、米国の8.1%に次いで低い。日本は国内で経済が回る。《もっと自由貿易に積極的に参加しなければならない》とか、《国際競争力を高めてグローバル市場を勝ち抜かないと日本は衰退する》とかは嘘だ。国内でさらに経済を回せば日本は豊かになれるのだ。

(6)サプライチェーンの縮小:製造業の国内回帰には消費者の賃金上昇が必要だ!
コロナ危機のでは各企業のサプライチェーンが寸断された。一部製品の製造を国内に回帰させる可能性がある。高いコストで売れるためには、購入する消費者の賃金上昇が必要だ。
《感想》製造業の国内回帰には、政府の補助金が重要だ。輸出のための補助金でなければ、外国から問題にされることもない。国内で経済を回せ!

(7)「異常な」住宅政策:新築物件8割は異常だ!内需で経済を回すため良質な中古住宅の流通を増やす!
(ア)コロナ後、サプライチェーンが縮小し世界的に「地産地消化」が進むだろう。日本国内で製品やサービスを開発し、国内の需要で消費する「内需型経済」への転換が必須だ。
(イ)「内需経済」の鍵は住宅整備だ。日本は流通する住宅の8割以上が新築物件であり異常だ。内需で経済を回すには良質な中古住宅の流通を増やす必要がある。「内需経済」が活発な国は例外なく住宅政策が充実している。一生涯賃貸でも大丈夫なように、都市部を中心に優良賃貸物件の整備を進める。
《感想》個人が住宅にかけるカネを、他の商品の購買のために使う。

(8)まとめ=「内需型経済」(a) 組織の合理化・IT化、(b)ジョブ型の組織、(c) 消費部門を大切にする、(d)一定のスキルさえ身につければ、自身のライフスタイルに合わせ勤務先を変えられる制度にする!
「内需型経済」とはどいうものか?
(a) 組織の合理化・IT化!
(a)-1組織の合理化・IT化で企業の生産性が向上する。より少ない社員数で同じ付加価値を得られる。かくて賃金が上昇する。
(a)-2余剰となった社員は新しい製品・サービスの生産に従事する。付加価値の絶対額が増え、最終的には賃金が上昇する。
(a)-3 これらは実質GDPの増大を伴う賃金上昇なので、労働者の購買力が拡大し、「生活が豊かになる」。
《感想》「余剰となった社員」は人員整理の対象、つまりクビだから「新しい製品・サービスの生産」がなければ失業する。組織の合理化・IT化は大きなリスクを伴う。

(b)ジョブ型の組織へのシフト!日本型雇用との決別!
(b)-1ジョブ型の組織は、社員が提供した職務(ジョブ、成果)に対し対価を払う。
(b)-2採用された時期・採用形態によって賃金が異なるアンフェアな状態がなくなる。
《感想》以上は正規社員の話だ。非正規雇用の問題は、また別の事柄だ。
(b)-3ジョブ型の組織では、日本型雇用のように組織に忠誠を示す必要がないので、強制転勤・単身赴任がなくなる。
《感想》「単身赴任」は非人間的だ。なくなるのが望ましい。

(c) 消費が新しい時代の成長の原動力となる!
生活にゆとりが生じ、家にいる時間が相対的に長くなれば、自分の時間や家族との時間が増える。かくて住設機器、家具、家庭用品、趣味、デジタルコンテンツ等の消費が拡大し、これらが新しい時代の成長の原動力となる。
《感想》(ア)かつての《企業戦士》はある意味でむなしい。人生の意味を何に見出すか、自分で考える。(イ)しかしカネが生活の基礎だ。働くことが基本だ。だが働くことが全てでない。(ウ)消費部門を大切にする。もちろん生産部門の諸産業が経済の基礎であることに変わりはない。(Cf. 防衛産業も重要だ。)

(d) 一つの会社にしがみつくしか人生の選択肢がない制度をやめる!一定のスキルさえ身につければ、自身のライフスタイルに合わせ勤務先を変えられる制度にする!
従来は一つの会社にしがみつくしか人生の選択肢がなく、こうした硬直的な制度が、プライベートな生活と豊かな消費社会の形成を阻害してきた。一定のスキルさえ身につければ、自身のライフスタイルに合わせていくらでも勤務先を変えられる方が総合的満足度は高い。グローバルスタンダードとは「長時間労働しなくても一定の賃金を稼ぐことができ、相応の豊かな生活を送れる」ことだ。
《感想》「内需主導型経済」への転換の問題と、「組織の合理化・IT化」の問題は別に考えてよい。「内需主導型経済」への転換こそ第1の目標だ。
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