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稲垣足穂『一千一秒物語』(その1)(1)「月から出た人」、(2)「星をひろった話」、(3)「投石事件」、(4)「流星と格闘した話」、(5)「ハーモニカを盗まれた話」

2023-05-31 19:21:41 | 日記
※稲垣足穂(イナガキタルホ)(1900-1977)『一千一秒物語』(1923、23歳)
(1)「月から出た人」
キネオラマの大きな「お月様」が昇ると、地から1メートル離れた所にとまり、その中からオペラハットをかむった人が出てきた。ぼくがついてゆくと、路上の木の影に気を取られたすきに、「お月様」は消えた。《感想》稲垣足穂氏は「お月様」が好きだ。
(2)「星をひろった話」
ある晩、きれいな光ったものが落ちていたので、ひろってポケットに入れ走って帰った。だがそれは「空からおちて死んだ星」だった。「なんだ、つまらない!」と窓から捨てた。《感想》稲垣足穂氏は「星」も好きだ。ただし「死んだ星」は嫌いだ。
(2)-2 金曜日の夕方、帽子店で、「青年」が「水曜日の夜を覚えているか」と云った。「そんなことはね・・・・」と答えると、青年はどなり、自分は街のアスファルトの上へかち飛ばされた。《感想》「青年」は「星」そのものであり、「捨てられた」ので怒ったのだ。
(3)「投石事件」
ぼくが石を投げつけるとカチンと当り、「あ痛」と「お月様」が追っかけてきた。ぼくはつかまえられて、お月様はぼくの頭を電信柱の根元でガンといわした。翌朝、街で「見覚えのある人」が歩いてきて「昨夜は失敬致しました」とぼくに云った。《感想》この「見覚えのある人」はおそらく「お月様」だ。
(4)「流星と格闘した話」
ぼくが自動車を運転していると「流星」と衝突した。流星は怒り、流星と自分はとっくんで転がった。流星は、自分の頭を歩道のかどへコツンと当てた。自分はポリスに助け起こされ家へ帰った。ぼくはすぐにピストルで流星を撃った。流星は遠くの屋根の上に落ちた。自分は電燈を消して寝てしまった。《感想1》稲垣足穂氏は「お月様」「星」「流星」を擬人化する。《感想2》ただし「お月様」「星」「流星」が擬人化できる《根拠》を稲垣足穂氏は述べていない。
(5)「ハーモニカを盗まれた話」
ある夕方、表への出合い頭に、おれは「流星」と衝突した。ハッと思うとそこにはたれもいなかった。おれは歩きながら考えた。おれは家の方へ走り、部屋にかけこみテーブルの引き出しをあけた。「ハーモニカ」がなかった。《感想》「流星」がなぜ「ハーモニカ」を盗んだのか、その理由or動機or目的は不明だ。
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吉田兼好『徒然草』《第85段》《善行》を《売名行為》だと非難する「愚かなる人」は、そもそも《善行》をする「賢なる人」がいると信じられない!

2023-05-30 18:00:16 | 日記
※吉田兼好(1283-1350)『徒然草』(1330-1331年?)(48-49歳?)
「いたりて愚かなる人は、たまたま賢なる人を見て、これをにくむ。『大きなる利を得むがために少しきの利をうけず、偽りかざりて名をたてむとす』とそしる。」
《感想》《善行》をする「賢なる人」を非難する「愚かなる人」を、兼好法師は攻撃する。①「賢なる人」は《善行》をする。②「愚かなる人」は《善行》をする気が全くない。③《善行》を《売名行為》だと非難する「愚かなる人」は、そもそも《善行》をする「賢なる人」がいると信じられない。かくて④《善行》をする気が全くない「愚かなる人」は、《善行》をする「賢なる人」を、「偽りかざりて名をたてむ」としているだけだ、つまり《売名行為》だと「そしる」。
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吉田兼好(1283-1350)『徒然草』(1330-1331年?)(48-49歳?)《第82段》兼好法師は「不具」(不揃い)こそがいいとする!兼好法師には《へそ曲がり》の傾向がある!

2023-05-29 19:46:54 | 日記
「弘融僧都が、『物を必ず一具(イチグ)にととへむとするは、つたなきもののすることなり。不具なるこそよけれ』といひしも、いみじく覚えしなり。」
《感想》兼好法師は、物を必ず「一揃え」(ヒトソロエ)にととのえようとするのは「つたなきもの」(つまらない人間)のすることだ、「不具」(不揃い)こそがいいとする考えに同意する。兼好法師には《へそ曲がり》の傾向がある。
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パトリシア・ハイスミス『11の物語』(1970)(その2 )「恋盗人」:これは1960年代つまり女性解放(ウーマンリブ)の時代、「翔ぶ」女の時代を背景にした小説だ!

2023-05-25 16:13:45 | 日記
※パトリシア・ハイスミス Patricia Highsmith(1921-1995)『11の物語』Eleven(1970、49歳)ハヤカワ・ミステリ文庫(2005年)「恋盗人」(The Birds Poised to Fly)
A  ドンはニューヨークに住む工業デザイナーだ。彼は「愛している!結婚してくれ!」という手紙をパリに住むロザリンド(工業デザイナー)に書いた。だがロザリンドからの返事が来ない。ドンは毎日毎日、郵便箱を見る。
A-2  ドンは、隣りのデューゼンベリーという男の郵便箱に、自分宛てのロザリンドの手紙が入っているのではないかと思う。デューゼンベリーは6日も郵便箱を見ていない。
A-2-2  ドンは隣りの男デューゼンベリーの郵便箱の扉を引っ張り曲げて、ヨーロッパから来た航空便の封筒を取った。しかし自分(ドン)宛のものでなかった。
A-3  ところがなぜかつい、その航空便をドンはポケットに入れ持ってきてた。それはデューゼンベリーという男のガールフレンドからのものだった。彼女の名前はイーディスだった。
A-3-2  急にドンはイーディスの手紙の中身が知りたくなって、秘かに開封して手紙を読んだ。イーディスは「もう一度、ぜひ会いたい。返事を下さい」とデューゼンベリー宛に書いていた。だがデューゼンベリーは郵便箱を見ていないし、したがって返事も書いていない。
A-3-2-2 イーディスはデューゼンベリーからの返事を熱望している。ドンがロザリンドからの返事を熱望しているのと同じだ。
A-3-3  ドンはイーディスの手紙を読み終わると、再び、隣りのデューゼンベリーの郵便箱に戻した。

B ドンがロザリンドに「愛している!結婚してくれ!」という手紙を書いてすでに22日がすぎた。
B-2  ドンは、自分と同じように返事を熱望するイーディスに、 デューゼンベリーのふりをして返事の手紙を書いた。イーディスがそれに対して再び手紙を書いたら、宛先をドンの勤める「会社気付で返事をくれたまえ」とドンは追伸した。
B-2-2  翌朝(金曜日)、イーディスからの手紙がドンの会社に届いた。
B-3 だがドンの郵便箱にロザリンドからの手紙は来ていない。ドンは絶望する。ドンの心が、自分と同じように恋人(デューゼンベリー)からの返事を熱望するイーディスにしがみついた。
B-3-2  ひたむきに思い詰め「逢う時と場所を言ってくれ」と恋人(デューゼンベリー)に訴えている女(イーディス)!まるで「今にもとび立とうとする小鳥」(A Bird Poised to Fly)だ。  
B-3-3  ドンはイーディスに電報をうった。「金曜(あさって)午後六時、グランド・セントラル駅レキシントン口ニテ待ツ。愛ヲコメテ。」
B-3-4  金曜日の朝、パリのロザリンドからNYのドンのもとに手紙が届いた。「わたし、結婚のために自分の生活をいきなり全面的に変えるって気にはなれないんです」とロザリンドが書く。
B-3-4-2 ドンは「きみと結婚したいんだ」なんてロザリンドにいきなり言って、自分は「間抜けだった」と思った。
B-3-4-3 ドンは思い直し、今夜にでもロザリンドに念入りに手紙をいて、二人の関係をちゃんともとどおりにするんだと思った。

C その午後、会社を早めに出て帰宅したドンは、イーディス(デューゼンベリーの女)が午後六時、グランド・セントラル駅レキシントン口に来ることを思い出した。
C-2  ドンは一張羅の背広に濃紺のネクタイを締めて、グランド・セントラル駅レキシントン口に向かった。午後6時、そこに22歳位の希望に満ちた女性(イーディス)が待っているのを、ドンは見た。6時35分になっても彼女は待っていた。やがて7時、彼女の目が涙で光っているのに、ドンは気づく。
C-3  だが最後にドンが見たのは、「あくまでもと覚悟をきめ、分別をかなぐり棄てた、一縷の望みをうかべてキラキラ光る目だった。」

D ドンはレキシントン・アヴェニューを歩きながら泣いた。「おれの目も、かなえられもしない希望をいっぱいにみなぎらせてキラキラ光っているのだ」とドンは思った。ドンは昂然と顔をおこした。今夜は何が何でもロザリンドに手紙を書こう!

《感想1》ドンは、まったく無関係の22歳の女性イーディスにとんでもない仕打ちをした。①彼女が待つデューゼンベリーは初めからそこに来ることが全くない。②そもそもイーディス宛にデューゼンベリーが手紙を書いていない。イーディスは虚偽の手紙でからかわれただけだ。
《感想2》にもかかわらず、イーディスは絶望しない。「一縷の望みをうかべてキラキラ光る目」をしていた。
《感想2-2》イーディスは、十分若いのだ。彼女はあきらめず「もう一度、ぜひ会いたい。返事を下さい」とこれからもデューゼンベリー宛に手紙を書き続けるだろう。
《感想2-3》だが今後の展開は様々だ。①永遠にデューゼンベリーは「返事を書かない」かもしれない。②イーディスはデューゼンベリーの住居に「直接、逢いに来る」かもしれない。②-2 その時、「デューゼンベリーにハッキリ拒絶される」かもしれない。そして③イーディスは「ついに諦める」かもしれない。④あるいはデューゼンベリーがイーディスと「ハッピー・エンド」になることもありうる。
《感想3》NYのドンとパリのロザリンドの関係の展開として、もっともありうるのはロザリンド自身が言うように、しばらくロザリンドは「結婚しない」ということだろう。「わたし、結婚のために自分の生活をいきなり全面的に変えるって気にはなれないんです」!
《感想3-2》実際、これは1960年代を背景にした小説だから、女性解放(ウーマンリブ)の時代だ!そして「翔ぶ」女の時代だった。Cf.  エリカ・ジョング(1942-)『飛ぶのが怖い』(1973)。
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パトリシア・ハイスミス『11の物語』(1970)(その1)「カタツムリ観察者」(The Snail-Watcher):ノッパートは、今や、かたつむりの群れによって殺されかかっている!

2023-05-23 13:48:12 | 日記
※パトリシア・ハイスミス Patricia Highsmith(1921-1995)『11の物語』Eleven(1970、49歳)ハヤカワ・ミステリ文庫(2005年)
A  証券会社につとめるピーター・ノッパートは食用かたつむりの観察を始めた。彼は熱中し、最初の何匹かのかたつむりが、彼が調達を続けた結果、2カ月後には、書斎がかたつむりでいっぱいになった。かたつむりをいれた30個ほどのガラスの水槽や鉢で書斎は満たされた。
A-2  というのもノッパートは、世にも不思議なかたつむりの交合の行為を目撃して歓喜し、かたつむりの調達を加速させたからだ。さらに、1匹のかたつむりは卵を穴の中に70個あまり産んだ。それらは18日後に孵化し、一挙に70倍に数が増えた。
A-3  交合は次々と行われ、15-20の卵の穴ができたが、これらのの卵が孵れば、かたつむりは1050-1400匹になる。妻エドナが、「この調子で増えていったら、いまにこの家を占領してしまいますよ」と警告した。
A-4  にもかかわらずノッパートは、かたつむりを買い足し、さらにかたつむりが次々と交合し、気づけば彼の書斎は、今や一種の水族館に変わり果てた。やがてかたつむりは、水槽や鉢から出て、自由に椅子、本棚、デスクの裏側、床、天井をはいまわった。
A-5  ところがそのうち、証券会社の仕事が忙しくなり、ノッパートは20日間、書斎に入らなかった。

B そしてある晩、ノッパートはベッドに入る前に書斎へ行き、①床がかたつむりでいっぱいになっているのを見てびっくりした。①-2 それも床に三重四重に重なっている。②かたつむりは部屋の四隅にも、ぎっしりうずたかく固まっている。部屋はまるくなり巨大な丸石の内部にいるようだった。さらに③何千というかたつむりが異様なかたまりになって天井のシャンデリアからぶら下がっている。④壁もかたつむりが何重にも貼りついて、やがてその重みで壁紙がはがれ垂れ下がった。⑤ノッパートは腹が立って、散水器で天井のかたつむりを落とそうとした。⑤-2 すると天井の壁紙がはがれ、かたつむりの塊が孤をえがいて落ち、ノッパートの頭の横を気が遠くなるほど叩いた。⑥彼は窓をあけようとしたが、かたつむりが窓敷居に大量にくっついていて窓があかない。⑦靴やずぼんの裾一面にかたつむりが這い上ってくる。⑧ノッパートはドアをあけて書斎の外に出ようとしたが、ドアの隙間という隙間にかたつむりがへばりついて、ドアは開かない。⑨腕に何百匹もかたつむりがへばりついてきても払い落とせない。両腕が鉛のように重くなる。⑨-2 鼻腔や眼もかたつむりに塞がれてしまう。⑨口にもかたつむりが次々と這いこんでくる。声がだせない。⑩かたつむりが、ねばつく河になって両足に這い上がる。⑪今やノッパートは動けない。手を動かすこともできない。息もできない。眼も開けられない。

《感想1》「カタツムリ観察者」ノッパートは、かたつむりの群れによって殺されかかっている。(この小説では)おそらくノッパートは死ぬだろう。
《感想2》ただしこれは虚構であって、実際(現実)にはかたつむりが這うのは遅いから、かたつむりがずぼん(脚)、腕に這い上がり、鼻腔、眼、口を塞ぐのに、小説にあるほど急速であることはない。だから実際(現実)にはノッパートは、かたつむりを手で払い、書斎の外にでることができるだろう。
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