鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

連載中の「ぷらっとウオーク」などをまとめました。

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」・・・土佐の高知にありがとう(Ⅻ)、三角屋根

2017-07-14 | 「ぷらっとウオーク」 2017年~

土佐の高知にありがとう(Ⅻ)、三角屋根      

                                                        No.182,高知ファンクラブ,7(2017)

 ここでは、先妻ちえ子が残した遺稿(応募作品)を利用して、高知で一軒家を購入した時のエピソードを紹介させて頂く。

大きな衝動買い      (記:2001/10/1)

 ちえ子が通信教育の随筆講座を申し込んだのは1998年の初夏、高知市内に住んでいるときです。この随筆を提出したのは、土佐山田に家を買った直後の8月のことです。これは第1回の「お気に入り」をテーマにした添削課題に提出したものです。「講評」が付いていました。

 「売り主も感じの良い人だった」とちえ子の文章にもあるように、その後もお付き合いを頂いています。先方の言い値で契約しようとしたとき、「値切らなくても宜しいのですか。少しお引きしましょう」と言われてしまいました。その位に、この家は理想的な、そして夢に描いていたそのものだったのです。沢山の分譲団地を見に行きました。でも、それらはミニ・ニュウータウンでした。首都圏には幾らでもある普通の住宅団地でした。それらは探している高知ではありませんでした。

 娘の葉子は小さい時から、三角お屋根の家に住みたいと言っていました。マンションでは犬が飼えません。その娘が家を出た今、その三角屋根の家に住むことが出来るとは皮肉なものです。それにしても、この時点で「緑の見える場所で病気になりたい」などと、何故、書いたのでしょうか。

家を買う、土佐山田に      (鈴木ちえ子の応募文章とそれの講評:1998/8/10)

   結婚以来30年、住宅公団、民間マンションなどの集合住宅で生活してきた。夫65歳、私61歳、そろそろ人生締めくくりの時期に入ってふと考え込んだ。ここで病気になって良いか、ここで死んでも良いか、つい先頃まで鍵一つで出られ、管理人任せの便利さ、仕事にも旅行にも気軽に出られ、歳を取ってからもこの簡素な生活スタイルが最適と考えていた。仕事中心の生活では、必ずしも住居が憩いの場所ではなくても、たまに旅に出たり、何か気分転換すれば充分だと思っていた。

 夫が60歳で転職した折、私も仕事を辞めて北海道に3年、また昨年高知へと移り住んだ。いずれも高層マンションの最上階を選んだ。引越し疲れもあると思うが、いつまでもたっても元気が出てこない。落ち着いて家の中で過ごせない。ふと疑問が出てきた。住み慣れた近隣との付き合いも希薄となり、仕事や友人から離れ、家の生活が中心になって、長年あこがれていた自分だけの時間が持てるようになったのに、狭い高層ビルは憩いの場とはならなかった。深呼吸のできる空間が欲しい。緑の見える場所で病気になりたい。

 まず新聞広告を見ることから始めた。どんな家を探すか方針が見えてくるのに2週間程かかった。ある日案内された中古の家は夫の職場にも近く、特急の止まる駅に車で5分、空港に20分、南側に田んぼと茶畑が広がっている。売り主も感じの良い人だった。これだ! 衝撃的に買う決心をした。

 今まだ引越し疲れで片付けも終わっていないが、目の前に広がる稲刈りの終わった田んぼときれいに刈り込まれた茶畑、鳥や虫たちの鳴き声に囲まれて、美味しい空気を一杯に吸い込み、やったという満足感を覚えている。集合住宅の合理性を主張してきた私達が、還暦を過ぎてやっと地に足の着いた喜びを味わっている。四国、高知にして初めて可能になったというのが本当のところであろう。

「講評:一軒家を買う、ということの意味と「やった」という率直な喜びが、とても淡々とした筆遣いの中で味わい深く描かれています。構成、文章ともにくせがなく、非常に好感の持てる随筆と評価します。(優)」

 

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」高知ファンクラブに掲載 2017年~

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2016年~現在に至る)

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2012年~2015年

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次のつづき(2008年~2011年)

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 目次(2002~2007年 )

 

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