鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・私は言わないぞ、妙な物言い

2014-09-02 | 「ぷらっとウオーク」 2012年~2015年

私は言わないぞ、妙な物言い          

                                                              情報プラットフォーム、No.323、8月号、2014

  先に、{嫌いな言い方、「生き様」(イキザマ)}(本誌、No.321、6(2014))と題した文章を書いた。それ以前の{「特殊な交渉術」は極秘事 項}(本誌、No.299、8(2012))では、テレビのキャスターなどが「特殊な○○により・・・」と表現することは、自分の不勉強を棚に上 げ、視聴者も分かる筈がないと決めて付けているのと同じであると指摘した。次に予定に入れていたのが、{嫌いな物言い、「と思います」(仮題)} であった。その頃、今年の始め、高知新聞の「閑人調」(2/4)に「思うだけ?」(秦さん)が、それを受けて投書欄「声ひろば」(2/11)に 「近ごろ妙な物言い」(村田朗美さん)が掲載された。

   続いて「おじさん図鑑」(3/17)には、「嫌いな言葉」(飛鳥圭介さん)が掲載された。「我が意を得たりと思うのは私だけだろうか」、「こ れを早速、利用したのは言うまでもあるまい」。指摘している嫌いな定型文を早速活用したのだが。飛鳥さんは書いた人の<したり顔>が目に浮かび、 「言うまでもないなら黙っていろ」と述べている。同感である。

   まずは「と思います」に戻る。「思います」のすべてが駄目というわけではないが、指摘された例を並べると、「心からお喜び申し上げたいと思い ます」、「幾重にもお詫び申し上げたいと思います」、「ご祝辞を頂きたいと思います」、「乾杯したいと思います」などである。聞き手に「準備は宜 しいですか」の配慮や、また「僭越ながら」、「未熟者ですが」のような謙遜の意味が込められていると思われる。インタビューを受けたスポーツ選手 は「来年も頑張りたいと思います」である。なぜ「頑張ります」と言えないのだろうか。

   さらに嫌いな表現は、「・・と云う風に思っています(考えています)」、「・・ではないかなと思います」であり、「・・した所であります」で ある。断定しない表現、後で突っ込まれた時の予防線としての表現である。僭越ながらの意識が強くなり、さらに3歩も下がる意識で「乾杯の音頭を取らさせて頂きます」との念の入った表現になるのだろうと思われる。「取らせる」ので、すでに使役の意味があり、(取る+させる+させる=取らせる+させる=取らさせる)と2重の使役になっている。余分の「サ」が入るので「サタ ス言葉」と呼ばれている。

内舘牧子の「カネを積まれても使いたくない日本語」(朝日選書413、(2013/7/30))によれば、「過剰なへり下り」と「断定回避」がエスカレー トしていると指摘している。言葉は、多くの人が使い始め、そして使い古されると、下意の概念に格下げされる傾向がある。今では、庶民の家でも「奥 さま」である。皆で代弁者として選んだ議員を「先生」と呼ぶのも不思議である。先生と言っておけば無難と考えるからである。そして「先生さま」と なったり、「サタス言葉」となったっりするのではないかなと思う所である。

   折り込み広告の案内地図では、目印になる店舗や事業所に「○○さん」、「△△様」を付けていることがある。「さんづくし」にして例を挙げれ ば、サンクスさん、さんさんテレビさん、サンシャインさん、三翠園様などである。企業や団体、それに公的機関に「さん」を付けるのはどう見ても可 笑しい。でも、お医者さん、お菓子屋さん、床屋さん、のように主人の顔を思い浮かべながらの表現ならば、会話に暖かみが感じられる。

 インタビューを受けたときの決まり文句は「えーと」、「そうですね」、「○○はですね。・・・」である。これも嫌いな表現である。「そうです ね。私は使わないぞと断言したいと思います」と言っておけば、万が一間違って使っても、問題は残らないだろう。

 

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鈴木朝夫  s-tomoo@diary.ocn.ne.jp 〒718-0054 高知県香美市土佐山田町植718

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