鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・好きなもの イチゴコーヒー 花美人

2014-02-16 | 「ぷらっとウオーク」 2012年~2015年

好きなもの イチゴコーヒー 花美人

                   情報プラットフォーム、No.317、2月号、2014、掲載

 

   「ふところ手して 宇宙見物」と続くのは、寺田寅彦の短歌である。高知県立文学館には、皿に盛ったイチゴとローマ字書きのこの短歌が染め込まれた風呂敷が展示されている。寅 彦の旺盛な好奇心と遊び心にあやかって、この句に使われているキーワードを組合せた上で連想を膨らませながらこの文章を綴りたい。

  イチゴとコーヒーを並べたとき、まず思い浮かべるのは「ショートケーキ」と「コーヒー」である。「イチゴ大福」ならば「緑茶」になるだろう。 寅彦の時代にはイチゴ大福はなかった。「スポンジケーキとホイップクリームとイチゴ」のケーキを広めたのは不二家であり(1920年代)、一般化 したのは戦後である。当時は季節感のあるデザートであったが、今では年間を通して絶えることは殆どないようである。なお、1月15日は「1(い ち)5(ご)」の語呂合わせで「イチゴの日」である。また、毎月22日は「ショートケーキの日」である。月めくりカレンダーでは22日の上は必ず 15日であり、イチゴが上に乗っているからである。コーヒーの日は10月1日であるが語呂合わせではない。

  インスタント・コーヒーのある現在だったら、寅彦はコーヒーを好きなものとして選んだだろうか。「コーヒーにしますか、紅茶にしますか」と訊 かれたときは必ず「紅茶でお願いします」と答えている。インスタントでがっかりする確率が高いからである。 

  花と言えば桜である。花と美人の組合せでは浮世絵が多い。美人一人の歌川豊春の「桜下遊女図」、美人三人を描いた勝川春章の「桜下花魁道中 図」、美人六人の賑やかな様子を描いた鳥居長の「飛鳥山花見図」などを探し出すことができる。

  日本各地の宇宙桜は、宇宙見物をしてきた種からの実生(みしょう)の桜花である。サクラもイチゴも同じバラ科の植物である。木と草の違いがあ るが、花はいずれもバラの花、例えばハマナスのような一重の花によく似ている。全体の姿・形が大きく異なっていても、同じ科に属するものであれ ば、花の形状はそれほど変わらないのが植物の特徴である。現在ならば、寅彦は、土佐の2種類の宇宙桜、ひょうたん桜と稚木の桜を愛でていると思 う。

 寅彦の「宇宙見物」は具体的には何かは分からない。望遠鏡なしの「ふところ手」で出来るのは、星空の観察である。寅彦は何を見たのだろうか。季節はいつ頃だろうか。

  才媛の美人、清少納言は枕草子で「星はすばる」と記している。肉眼では5~6個の星が集まって見える牡牛座のプレアデス星団であり、冬の夜空に輝いている。富士重工SUBARUのマークには6個の星が付いている。イチゴの旬は晩冬から春そして初夏までである。この期間に夜空を飾るのは 冬の大三角である。続いて輝くのは美人の乙女座のスピカを含む春の大三角である。一方で、寅彦の随筆集「涼み台」の中に「新星」や「線香花火」の 文章がある。涼み台の季節の「宇宙見物」であれば、「天の川」で向かい合った淑女(ベガ)と牽牛(アルタイル)、それに白鳥座のデネブの夏の大三 角が主役となる。

  寅彦は「新星」の目撃の確率を論じており、動きの見える天体かも知れない。当然、月、惑星、流れ星なども興味の対象であろう。今、現在なら ば、寅彦の「宇宙見物」は、「美人」と共に「コーヒー」を飲み、「ショートケーキ」を食べながら、「ふところ手して」鮮やかな星座を背景に、「桜 の種」の乗った「宇宙ステーション」を眺めることであろう。

  参考:「星の降る夜」、本誌、No.220、1(2006);「国際宇宙ステーションを肉眼で見よう」、本誌、No.252、9(2008);「花伝説・宙へ!」、本誌、No.265、10(2009)。

 

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