Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

胃に沁みる夕べの祈り

2008-11-20 | 料理
滞在中の友人が日本へと飛び立つ前に夕べの祈りの食を準備した。なんでもないコールドミールつまりフェスパーテラーと呼ばれる冷たい食事である。もちろん冷たい食事は、ドイツでは夕餉の一般的な形式なのだが、最近は日によっては火を使う食事をする家庭も少なくはない。

こうしたなんでもない典型的なドイツ料理は良い材量がないと楽しめない。事の初めの土産に貰ったアルゴイの山チーズ・アルゴイヤーベルクケーゼに何を加えるか?燻製や干しものはつき物で離独を前に是非楽しんで貰いたいものである。飲み物も欠かせないが、先日あまりに長持ちの強いワインしか飲んで貰っていないので、軽いワインを飲むのにも丁度良い。

いつものデリカテッセンの肉屋でお母さんに色々と僅かづつ揃えて貰った。先ずは血のソーゼージ・ブルートヴュルストの薄切り、豚の胃に詰めたニコゴリ・シュヴァールテンマーゲンの薄切り、更に豚の油の乗ったイタリア製サラミの超薄切り、手作りのミートローフも味が凝縮しているというので加えて貰う。支払いの時にお母さんが再確認しなければならないほど安いのだ。それに、スーパーで購入したウナギのテリーヌとサケのテリーヌを一つづつ加える。

パンは最近買い出した手作りの特製パンで所謂百姓パン・バウワーブロートに近い。本当はシュナップスを引っ掛けても良いのだがワインを吟味する。軽いワインつまり日常消費のワインは、この11月となると新酒の出始める来年一月から比べると大変選択の幅は小さい。

春から飲んでいた本格的辛口ミュラーカトワール醸造所のグーツリースリングは流石に味気なくなってしまっている。そして、一押しのフォンブール醸造所のヘアゴットザッカーも先月飲んだ時点で谷に入ってしまっているので得策ではない。そこで最近購入したゲオルク・モスバッハー醸造所の2007年産グーツリースリングキャビネットを先ず開ける。

友人の感想のようにこの街道のあり触れたワインが上品になっている美味さを確認。そのアルコールの11.5度の飲み易さを感じたようだ。酌が思いのほか進むので、同じキャビネットでも一年落ちの2006年産のフォン・ジムメルン醸造所バイケンキャビネットを続いて抜く。

これはすこし早めの熟成が特徴で年内に飲んで仕舞いたいワインである。風引き中なので今一つ多彩な香りはもう一つ分析できなかったが、その大変ワインらしい繊細さを楽しむ。友人に言わせるとプファルツのように押し付けがましさがない上品さという事になるが、それがモーゼルワインのようなスレート臭さも無く、雑食砂岩のあまりにも華やかな果実風味も邪魔しないラインガウの土壌の良さである。苦味やら燻製風味のあるフェスパーテラーにはやはり合う。

そうして飲んでいる内に簡単に一人一本づつ開けてしまったので三本目を地下蔵に取りにいく。先日から話題となっていたザールリースリングである。シュロースザールシュタイン醸造所のそれであるが、本当なら出して比べたかった少々谷のコンディションが予想される残り一本しかないキャビネットではなく、まだまだ成長中の古い木に実った葡萄から作った2007年産シュペートレーゼ辛口である。

前回開けた時点よりも更に糖分が落ちてきていて、その分酸の強さが目立つようになって来ている。味見だけのグラス一杯が胃に沁みた。プファルツとラインガウとモーゼルの三種を十二分に体験して貰えただろう。満足である。



参照:
肉屋の小母さんの躊躇 [ 料理 ] / 2006-02-18
素晴らしい前菜の愉悦 [ 料理 ] / 2008-07-08
充血腸詰めがつるっと [ 料理 ] / 2006-02-16
グラスに見るワインの特性 [ ワイン ] / 2005-04-28
2006年産の良い地所 [ 試飲百景 ] / 2007-09-27
ラインの穏やかな中庭 [ 試飲百景 ] / 2006-09-11
地所の名前で真剣勝負 [ 試飲百景 ] / 2006-02-06
バイケンでぬかるむ [ ワイン ] / 2008-09-18
いつの間にさくらに変身 [ 試飲百景 ] / 2008-09-21
中庸に滴る高貴な雫 [ ワイン ] / 2008-09-03
香りの文化・味の文化 [ ワイン ] / 2008-06-07
継続的に体で覚えるもの [ 生活 ] / 2008-08-28
昼から幾らでも飲める味 [ ワイン ] / 2008-08-11

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3 コメント

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肉屋さん (緑家)
2008-11-20 23:06:43
楽しい晩餐ですね。この春に御宅でご馳走になった楽しい夜が忘れられません。ザウマーゲン美味しかったなー。
行きつけのお肉屋さんで色々と細やかな食材を勧めてもらうのは幸せですね。今度お邪魔した際には是非私も一緒に連れて行って下さい。ニコゴリみたいなやつ、美味しいでしょうね。以前トリアーの肉屋さんが経営するガスとハウスに泊まった際、朝食に出されたニコゴリみたいなやつに感動した記憶があります。全然違うものかもしれませんが。
三地域を比べて飲むと、ラインガウの繊細さがハッキリ感じられるでしょうね。私はイマイチまだ良く解っていないのですが。
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ご相伴 (yokun)
2008-11-21 01:38:53

私も是非 pfaelzerweinさんの
ワインご相伴に与りたいです。

エキスパートの解説有りで、
ワインをいただけるなんて、
至福の時間なんでしょうね、、。

ご一緒されたかたが、
うらやましいです。
返信する
減点方的に上品で繊細、評価の基点にある味 (pfaelzerwein)
2008-11-21 04:23:35
緑家さん、小物を沢山食べたい友人にはこうした物の方が良いようです。まあ、仕事の関係で食事は10時前になりますからイタリア料理かこうしたものが一般的になります。

次回は訪問先も多く、また歩かないといけない距離も十分にあるのでこれまた三日間ではふらふらになりそうです。

ニコゴリは以前に書いたシュヴァールテンマーゲンの細いタイプです。ニコゴリ自体はそこら中で名物となっています。

ザールに関しては最初に上の友人とアイラークップに試飲に行って、その時の印象がそのままインプットされていました。ですから、このSPを飲んで「これは特別味が出ているんではないか」と鋭い指摘をしました。そのときに20年以上熟成した物を飲まして貰った経験も私の過去の意識とそのまま同じなので、今の自分が昔の自分に説明するような按配で面白かったです。

しかし、ラインガウはサントリーが介入した初期のRWなどの試飲などでもあまり良い印象はもっていなかったようで、ジムメルンのバイケンには驚いていました。私はご存知に様に15年以上長く飲んでいる訳ですが。

結局ですね、フルーティーなのも違った味方をすれば押し付けがましいとなり、同じ味の評価もそこで好悪逆転します。

因みに彼がワイン街道で最も繊細だと感じていたのはシュヴァルツ氏のリースリングだったようです。今とは比較出来ない程、力は弱かったですがね。

つまり、彼に言わせると、「モーゼルは寝かせ方」が「プファルツはでしゃばりの兼ね合い」が難しく、ラインガウは減点方的に上品で繊細となります。まあ、このバイケンはその両面で特別良い訳で比較になりませんが。



yokunさん、機会があると良いですね。食事は時間さえ余裕があれば探せば何処でもそれなりのものは食べれるのですが、良いワインを外で飲むのはとても難しいです。

反対に極一般的なある程度のスタンダードワインが飲めるのもワイン所の良さです。本記事でも長い滞在中に培ったその味覚が評価の基点にある事を留意しておきたいです。

上にも書いたように、友人の知識や経験は前世紀中の侭止まっているようなもので、その後の時代の変化に即した活きた情報の積み重ねとの差異がハッキリと分かって面白く、今回でフレッシュアップ出来たと思います。
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