僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

義姉のこと

2013年01月29日 | 日常のいろいろなこと

25日の夜、妻の姉が亡くなった。長年お世話になってきた人だ。

7年前の2月、心臓に近い部分の血管が破裂し、生死の境をさまよう危機に見舞われたけれど、十数時間に及ぶ手術が功を奏して奇跡的に助かり、ほぼ元通りに近い生活が送れるようになった。これまでのように、わが家にも旦那さんと遊びに来てくれたし、僕も大阪市内の義姉宅へ妻とモミィと3人でよく食事を呼ばれに行った。

ところが1年か…もう少し前ぐらいからか、複数の臓器に異常がみられ、入退院を繰り返し始めた。そして去年の秋頃から症状が深刻になり、「今度の入院は少し日にちがかかりそうだ」と旦那さんから報告を受けていた。

入院先は、奇しくも僕が耳鳴りで治療を受けてきた大〇前病院である。7年前の大手術も、そこで行われた。

以前は僕がギャグなどを飛ばすとお腹を抱えて笑い転げていた義姉だったが、12月下旬に見舞いに行った時は、目の焦点が定まっておらず、会話の反応も鈍かった。でも、今月の15日に行った時は、顔色も少しよくなったように見えた。僕が冗談を言うと天井を向いたまま、ケラケラっと笑った。「とりあえず、よかったね」と、病院からの帰り道、妻とそう言い合った。

それなのに…

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25日の午後8時半ごろ、モミィにエレクトーンの練習をさせていた僕が、それを終えて部屋を出たとき、廊下で妻が「今、姉が亡くなったと電話があったわ」と、ポツリと言ったのである。

もちろん、驚いた。「状態が悪くなった」という報ならまだわかるが、いきなり亡くなった…とは。あまりにも急なことである。

それも、旦那さんがついて病床で食事をしている時、義姉は突然物を言わなくなり、すうーっと息を引き取ったのだそうだ。旦那さんはあわてて看護師さんを呼び、看護師さんは急いで医師を呼び、何人もの医師が交代で心臓マッサージを施したが、義姉は息を吹き返すことなく、そのまま旅立った…

訃報を受け、これからモミィを風呂に入れて寝かさなければならない妻は明日行くことにし、とりあえず僕だけ身支度を整えて大阪市城東区にある葬儀会館へ急行した。遺体は、誰もいない自宅ではなく、病院からその会館へ直接搬送されたのである。

会館に着くと、霊安室で旦那さん一人、義姉の遺体の横に座っていた。

ひととおり話を聞いた後、旦那さんは病院からここへ直接来たので、家に帰って、やらなければならないことが沢山がある…というので、「どうぞ帰ってください。僕はここにずっといますから」と言った。

義姉は夫婦2人暮らしであったが、別居している一人息子がいる。しかし息子はその時、仕事で海外出張中であった。急きょ帰国の途につくそうだが、到着は明日の午後になるという。

旦那さんが霊安室を出て行ったあと、深夜近い時刻に、妻のもう一人の姉が旦那さんと共にやって来て僕に食べ物などを差し入れてくれた。「じゃ、また明日来ますから。よろしく頼みます」と言って帰って行った。

霊安室で義姉の遺体の隣に一人座って、僕は線香とロウソクの火が絶えないよう気を配りながら、座ったまま、時々ウトウトして、一夜を過ごした。

義姉に関するいろいろな思い出が、頭の中をよぎった。

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僕が義姉と初めて会ったのは21歳の大学3年生の時だった。40年以上前のことである。

 付き合っていた女性(今の妻です。むろん)のご両親に会って正式に結婚を申し込むため、行ったことのないその家を訪ねようとした。その時、妻から「近所に姉夫婦の家があるから、先にそこへ行って、姉に取りついでもらえばいい」と言われ、僕はまずその姉さんのお宅を訪ねた。

 姉さんは無言で玄関から出てきて、数十メートル先のご両親の家に向かって歩いた。僕も黙って後ろをついて歩いた。

 その間、姉さんはほとんど物を言わなかった。あとから聞くと、その時僕がまだ学生だったことで、妻の親やきょうだいは僕らの結婚には賛成しかねていた、とのことである。姉さんも、その時は僕に気軽に話しかけることをためらった…と、結婚後に笑いながら語っていた。

しかし結婚してからは、義姉は僕たちをしょっちゅう家に呼んでくれ、ご馳走を用意してビールを飲ませてくれ、僕の話にケタケタと笑い転げた。よく笑う人で、笑い始めると止まらなかったり、突如思い出し笑いをして、周りがきょとんとしている中で一人ヒイヒイと涙を流して笑う人でもあった

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 亡くなった義姉の顔は、むくれ気味だった入院中の顔とは全然違っていて、とても奇麗だった。亡くなったというより、何十歳も若返った…という感じだった。「あ、来てくれたん?」と、その端正な顔が今にもしゃべり出しそうだった。よく「実感が湧かない」と言うが、まさにそんな感じであった。でも、頬をさわると、氷のように冷たかった。

義姉の美しく、安らかな顔を見て、死ぬことって悲しいことじゃないかもしれない、と思ったりもした。…不思議な感覚だった。

一昨日にお通夜があり、昨日、告別式が執り行われた。

あははは~と、よく笑っていた義姉がこの世からいなくなり、やはり妻も僕も、これから少しずつ寂しさが増してくるのだろうと思う。 

 

 

 

 

 

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