もう10年以上も昔、近所の自転車屋さんで2台のマウンテンバイクを買ったことがある。そのうちの1台は、途中から前カゴやドロ除け、スタンドなどを付けて、通勤用の自転車として、10年くらいは使った。
ず~っと使ってきたので、当然なことだけど、そのマウンテンバイクも最近ブレーキやギアの働きが悪くなってきた。 とにかく修理しなければならない。 自分では手に負えないので、近所のその自転車屋さんに行った。
この自転車屋さんの主人は、僕とほぼ同年齢だが、若い頃、自転車好きが高じてドイツまで行って 「修業」 を積んだ人である。 しかし ちょっと偏屈というか、職人肌というか、まあ、あまり愛想は良くないおじさんである。
「こんにちわ~」と、僕は自転車を引いて、小さな店をのぞく。
店の入り口の横の壁に、
「当店は、10年後に閉店をいたします」 という貼り紙がしてある。
1ヶ月後とか、もっと先でも1年後…くらいまでならわかるが、10年後に店を閉めますという通知を、今からしているのだ。10年先のことなど、誰がわかるねん…、と僕は思うのだけれど、こんなところひとつをみても、ここの主人の 「人柄」 が想像できるというものだ
(…って、どんな人柄や?)。
「あ…、きょうは、何か…?」と主人。
「このマウンテンのブレーキとかギアとかが、効かなくなってきたので」
主人はひととおり僕の自転車を眺めまわし、
「う~む。修理は、無理ですな。今はこの種の部品もないし。それに…」
と、主人は、太いタイヤを指でなぞりながら、
「タイヤの中から糸がのぞいている。擦り切れてる。う~む」
主人は、やたらに「う~む」を連発する。
ブレーキもギアも、修理ではなく、新品と取り替えなければならない。
さらに、タイヤが擦り切れているので、これも替えなければならない。
「高くつきますよ」と主人が、きっぱり。
「そうですか。う~む」…と、こんどはこちらが唸る。
…そうか。ならば仕方あるまい。ここまで乗ったのだからなぁ。
「ん~、じゃぁ、この自転車、捨てるわ」 僕は、あきらめた。
写真で見ると新しく見えますが、ギアもタイヤもボロボロ。
長い間、世話になりましたが、このたび、「勇退」 してもらうことにしました。
マウンテンバイクはもう1台、わが家でホコリにまみれて眠っている。
ほぼ10年ほど乗っていないが、実はこちらのほうが「高級車」なんである。
「もう1台のほう、持ってきますから、それ、ちゃんとしてくれる?」
「あ、もう1台。そう…。あれはこの自転車より、ずっとモノがいいね」
と、さすがに主人は、ずいぶん昔のことなのに、僕がここで買った別のマウンテンバイクほうも、よく覚えてくれていた。
僕はその自転車を持ち帰り、別の1台を引いて店に戻った。
「あ、これなら大丈夫だねぇ」
と主人は、まずタイヤが擦り減っていないことを確認した。
しかし、急に運んできたので、自転車のタイヤの空気もぺちゃんこで、全体が汚い。
「う~む、これは、長い間、乗っていませんね…」
主人は、ちょっとのけぞるような感じで、つぶやいた。
これは、当たり前だけど、先の自転車より、はるかにひどい状態である。
「では、自転車、預かっておきます。すぐにまた電話します」
そう言って主人は僕の電話番号をメモした。
それは、午前10時ごろの話である。
午前中に仕上がるのかな…? と思っていたが、電話がかかって来ない。
午後からスポーツジムに行き、夕方帰ってきたが、妻に聞くと、まだ電話がかかってこないという。ブレーキとギアの修理だけで、ずいぶん時間がかかるものだと思った。そして、こちらから電話をしてみた。
主人が電話に出た。
(何せこの店では、主人以外の人影を見たことがない)
主人は、
「もうあちらこちらがさび付いているので、いま、自転車をバラバラに分解しているところです。今日中にやらないかんと思って、急いでやっているけど、時間がかかって…」
と、やや高いテンションで言った。
僕は別に急がなかったので、そういうことであれば、気遣いはいらない。
「明日でもいいですよ。急ぎませんから」
そう言うと、
「あ、よかった。そう言ってもらえば、ありがたいね~」
とまあ、そういうことで、翌日、自転車を受け取りに行った。
ほこりまみれになっていたマウンテンバイクは、見違えるほど、隅々まで綺麗になっていた。きっと、ていねいに 「再生」 をしてくれたのに違いない。
「ありがとう」 僕は心から、主人に礼を言った。
これから、またこのマウンテンバイクで、あちらこちらを走り回りたい。
少なくとも、この店が 「10年後に閉じる」 頃までは、元気で走り回りたい。
「再生」された10数年前のマウンテンバイク。
スタンドだけは、前の自転車のものを取り外し、自分でつけました(これは簡単)。
* おまけ
本文とは関係ありませんが、僕は京都の西陣の自転車店で生まれました。
母方の祖父が営んでいた、小さな自転車屋さんです。
幼年時代は、その自転車店で育ちました。
生まれつき、自転車とは、縁があったのかも知れませんね。
自転車を持っていてもちょくちょくショップで見ていたら欲しくなります。
昨日もリサイクルショップで見ていたら、手に届きそうな価格で置いてあったりしました。
自転車は今年六月に始めた(本格的に乗るという気持ちでの-ばかりですが頑張っています。
マウンテンバイクのタイヤの厚みが頼もしいですよね。次はロードバイクが欲しいのですが--(先のことですが--)ノンさん、色々教えて下さい。
自転車のいい感じで再生してもらいましたね。おめでとうございます。
自転車用ヘルメットを被ることを、せつに望みます。サイクルロードなど走行中は平均スピードもどうしても上がりますし、追い風での走行は、自身の感覚よりスピードがかなり増すので、アクシデントに備えて装着してください。
予算は、ピンきりですが、一万円弱で安全規格に通ったヘルメットがあります。
それと、自転車用の手袋も怪我防止のため、ぜひ装着してください。
心配性のコバヤシでした。
名古屋から帰宅する時はいつも自転車です。
お休みになると、名古屋~~静岡へ・名古屋~~大阪へと、走りまわっているようです。
のんさんも自転車で、のこたん家へきませんか?(笑)
今年一年 いろいろありがとうございました。
来年も よろしく お願い致します。
年末年始にわたる長期間の風邪引きなんて、生まれて初めてです。
自転車といえば、アナザービートルさんのブログで写真入りで紹介されている自転車が素敵ですね。
ああいう、おしゃれな自転車で軽快に町の中を走りたいのですが、なにせ今までマウンテンが3台もあった(別にもうひとつありましたが、数年前に友達に上げました)ので、新しい自転車なんて買わせてもらえませんものね~。
マウンテンは、何となく時代遅れ…という感じ、しますけど。
ヘルメットを被っていたおかげで一命を取りとめたコバヤシ君の言葉ですから、説得力あります(笑)。
ごめん。古い話で。
実は自転車用ヘルメット、持っています。
一応、競輪選手のような着衣とヘルメットとサングラスは、以前、トライアスロンのサカグチ君に教えてもらって、専門店で買いました。
遠出するときは、ヘルメットも被らねば、と思っています。
ご心配ばかりかけて、すみません。
それはすごい。本格的ですね~。
休暇を利用して自転車で走り回るって、楽しいですよね。
僕は今は近所を走っているだけですけど、暖かくなれば、あちらこちらへと行ければなぁ、と、思っています。
のこたんさんのお家へも、走って行きたいですね~。
昔は、1日目岐阜市内まで、2日目坂本峠を越えて飛騨高山まで、行けたのですが…。
まあ、無理もできないお年頃になってきましたのでね~。
この年末年始に風邪を引いて寝込み、よけい弱気になってきました。とほほ。
今年もよろしくお願いいたします。