いや~、これには正直言って、ぶったまげた。
初めて経験したパソコンの「遠隔操作」という機能なんですけど。
パソコンの知識に乏しい僕は、天地がひっくり返るほど驚いたのだ。
数日前、楽天ブロードバンドの代理店というところから電話がかかってきた。
若い女性の声で、今の僕のパソコンのプロバイダー「TOPPA」から、
「楽天ブロードバンド」の方に変更されませんか?という勧誘の電話だった。
いつもなら、結構ですと電話を切るところだが、このTOPPAという
インターネット接続サービスは、2年前に「フレッツ・光」を入れた際、
自動的についていただけのプロバイダーで、
別にこれでなければいけない…ということは全然なかったし、
楽天ならプロ野球で好きな球団でもあるので、なじみ深い。
おまけに、今のTOPPAより毎月の料金が安くなる…
ということなので、電話を切らずに話を聞いてみることにした。
工事をしたり、パソコンの難しい操作をしたりすることはない、という。
「パソコンでの変更作業はすべてこちらでさせていただきます」
「あ、そうなんですか?」 意味があまりよくわからなかった。
まあ、こちらで難しいことは何もしなくてよい、ということだったので、
「では、楽天ブロードバンドに変えてみましょう」と、返事をした。
相手は「ありがとうございます」と礼を言い、僕の住所、生年月日、
電話番号などを確認し、折り返し電話します、と電話を切った。
その時その女性は、
「20分後にこちらからもう一度お電話をさせていただきますので、
その時は、恐れ入りますがパソコンをお開きになって、
ヤフーの画面を出しておいていただけますか」と言った。
そこで僕は、自分のノートパソコンを電話の近くへ運び、起動して待った。
すると、きっちり20分後にまた電話がかかってきた。
「パソコン画面は大丈夫でしょうか?」と相手の女性が念を押す。
「大丈夫です。いま、ヤフーのホームページを開けてます」
「では、検索のところに、『えんかくそうさ』と打ち込んでください」
「はい、えんかくそうさ、ですね」と、僕はパタパタとキーを打つ。
画面が変わる。
「いちばん上に、TeamViewer なんとかというのが出ていますよね」
「はい、出ていますけど」
「そこをクリックしてください」
「はい」と僕はクリックする。
そのあと、指示されるままにクリックし、インストールがどうのとか、
何がどうのとか、僕には理解できない画面が出ていたが、途中から、
カーソルが勝手に動き始めたのだ。これにはホントにぶったまげた。
僕は何もしていないのに、目の前のパソコンの画面は、
カーソルが動き、次々といろんな画面を出しては消し、出しては消す。
まるでここに透明人間がいて、マウスを操っているかのごとくである。
なんだか気持ちが悪い。
あっけにとられているうちに、
「はい。いま、作業が終わりました。遠隔操作を切ります」
という女性の声が受話器に響いた。
僕は言うべき言葉が思いつかず、ただただ「へえ~~」と感心し、
相手の女性に、
「そちらから、こちらのパソコンを操作できるんですか…? すご~い」
と、ため息混じりにつぶやくしかなかった。
相手の女性は
「はい。この遠隔操作でお客様のサポートなどをいたしておりますので」
つまり、パソコンにトラブルがあった場合、電話で尋ね、教えてもらっても、
こちらに何の知識もないものだから、言われた言葉の意味さえわからず、
なかなか解決につながらない、ということが往々にしてある。
それならいっそ、サポートする人が自分でマウスを操作するのが一番だ。
しかし、遠く離れているからそれもできないしなぁ、と思っていたのに…。
遠隔操作ができる…とはねぇ…
その数日後、楽天ブロードバンドから書類が届いた。
それが届けば代理店に電話するように言われていたので、また電話した。
電話の横には、前回と同様、パソコンを置いて起動させている。
電話口に出た人は今度は男性だったが、その人から、
「じゃぁ、アカウントのお知らせ というのを出していただけますか」
と言われ、書類の中からそれを見つけて、はい、出しましたと返事する。
「そこに書かれているパスワードを教えてください」、
アルファベットの大文字と小文字が混在するパスワードを告げる。
「じゃぁ、これから遠隔操作に入ります。
デスクトップにTeamViewer のアイコンがありますよね」
先日の遠隔操作で、見慣れぬアイコンがわがパソコンに入っていた。
それをクリックした。
「これから遠隔操作をしますので、パソコンには触らないでくださいね」
そう言われて、僕はまた何もせず、チラチラと動くカーソルと、
パッパッと切り替わっていく画面を不思議な思いで眺めるだけであった。
そして遠隔操作が終了し、プロバイダーの変更は完了した。
あとは、楽天ブロードバンド支払い方法申込書に記入して送ることと、
TOPPAに電話して解約書類を送ってもらうこと、だという。
そこでTOPPAに電話してみたが、何度掛けてもつながらない。
通話中か、あるいは呼び出し音のまま誰も出ない状態が続く。
仕方なく、また楽天の代理店に電話したら、
「そうですか。それでしたらこちらからお宅に送ります」
この代理店は、TOPPAの解約書類も持っているのだった。
いや~。それにしても…
パソコンに詳しい人なら遠隔操作なんてとっくの昔から知っていたのだろうけど、
そんなことを何も知らない僕にとっては、まるで魔法を見せられているようだった。
遠く見知らぬところから、自分のパソコンが操作されるのである。
便利といえば便利だけれど、怖いといえば、これほど怖いものはない。