アッパレじゃ!

大好物は舞台観劇♪ようござんすか?ようござんすね。”私見”バリバリ入りますっ!ネタばれアリアリ~。

平家蟹

2005年09月26日 | 歌舞伎

2005年9月 歌舞伎座 夜の部

西海に 沈みむれども 平家蟹 甲羅の色も やはり赤旗 (by狂歌百物語)

待って待って待ち続けておりました。
H9年3月。って筋書きの文字見てビビビックリ~!
そんな昔のことでございましたか…。
その時の配役は、玉蟲:福助。妹玉琴:亀治郎。那須与五郎:染五郎。宗清:宗十郎。
福ちゃん以外覚えてないけど~。

蟹に話しかける女官の姿が不気味で、また哀れでございました。
ひっさしぶりだからね、行く気満々っっ!
“蟹”の動きをアップで見るのが夢~!でも資金不足でそれは叶わず…。
それならせめて、3階の最前列で!意気揚々と…と言いたいところですが、
後日こんな発表が。

夜の部は、「源平の戦い」にちなんだ作品2本が登場。まず、『平家蟹』。白石加代子さんの語りとスライドの新演出で芝翫が玉蟲を演じます。

メッチャクチャまずいっしょ~。
なんで白石加代子なの?彼女のことは大好きですけど、
これじゃぁ大河ドラマ「義経」じゃん。スライドって??
もっともっともっと早く公表してよぉ。知ってたら行かなかったのにぃぃ。

緞帳UP。
白石加代子の語り&スライド(源平合戦の絵図)
ようは屋島、壇ノ浦のレクチャーでございます。

あの合戦の2ケ月後、生き残った平家の者も多々あり、
壇ノ浦に近い浜辺でその日暮らしを送っている。
若い女性は、旅のゆききの人になさけを売り、
盛りを過ぎし女達は藻屑を拾って飢えをしのいでいる。

官女玉蟲(芝翫)の妹(魁春)も春をひさいでいる。
若武者と恋に落ちたのだが、彼の素性を知って姉は妹を勘当。
若武者は、扇の的を射た那須与一の弟だったのだ。
さめざめと泣く妹の下へ、恋人の遣いがやってきた。
いそいそと出掛ける妹…。

家には玉蟲が残るだけ、寺の鐘が鳴る。
白小袖、緋の袴に小袿(こうちぎ)という女房の正装に、檜扇を手にした玉蟲。
縁の下から現れた大きな蟹に向かって親しげに話し掛ける
「おお、新中納言殿、ようぞまいられた」

またぞろ、ゾロゾロ蟹が出現っっっ。おお、平家蟹でござるよ!!

「おお、教盛(のりもり)卿、有盛、業盛(なりもり)の方々…。皆、打揃うて見えられましたの。(縁に腰を掛ける。蟹はその足もとにむらがり寄る)(略)今宵はなにを語って明かしましょうぞ。(蟹にむかって問い、又うなずく)毎夜毎夜の物語も、つまるところは平家の恨みじゃ。」

久しぶりに聞く芝翫の声は、細い響き。細やかな振動が、
まさに、あっちの世界に行ってしまった女になってる…。
今は蟹と戯れて上機嫌だから、よけいに怖ろしい~。

妹玉琴が、恋人那須与五郎を伴って来た。「我等と共に関東へ」
「そこまで言うなら祝言を」と、姉玉蟲がお神酒を用意し2人に飲ませる。
祝いの舞を舞う玉蟲。次第に舞いが早くなってゆく…
と突然、2人が苦しみだしたっっ!!玉蟲の顔が喜びに震えるっっ!!
悶え苦しむ2人を檜扇で散々に打ちすえ呪いの言葉を吐く玉蟲。

「西海に沈みたる平家の恨みを報いんために、神壇を築いてひそかに源氏を呪い、神酒を供えてもろもろの悪鬼羅刹を祭る。そち達ふたりが飲んだる酒は、即ちそれじゃ」
「して、その神酒が毒酒とは…」
「平家蟹の甲を裂いて、その肉を酒にひたし、神への贄(にえ)もささげしものぞ」
玉蟲は、一部始終を見ていた僧雨月を誘うが
「生きながら魔道におちたるお前さまは、修行の浅いわれわれの力で、お救いも申すことはかないませぬ。おいたわしゅうございりますれど、もうお別れ申しまする」
(又もや雨はげしく降りいず。玉蟲は起ちあがりて、二つの死骸を見おろす)

(舞台周って)蟹に誘われ海岸へ行く玉蟲
「おおそうじゃ。浪の底にも都はある。わらわも役目を果たしたれば、これからはお宮仕え。さあお供いたしまする」

浪高くなり、汐を被りながら沈んで行く玉蟲…。


どの場面が補綴の対象になったのか判らなかったので、
学研M文庫「岡本綺堂妖術伝奇集」読み直したわよ~。

そうしたら前半、旅僧雨月(景清の叔父)が玉蟲に、
景清が鎌倉へ忍んで行ったことを聞かせたり、
2人で壇ノ浦の合戦の模様を懐かしんだり、
「源氏調伏!」といきり立つ玉蟲に意見したり。この現状説明がカット!
へぇぇこれに代えてあの語り&映像なのねぇ。へぇぇ。

妹が彼氏のことや、どうやって稼いでいるかを姉に話して喚起をこうむる場面はカット。
代わりに、雨月と浜辺で偶然出会い、その話をする。
そうすると、どーも今ひとつ姉の異常さが出てこない。

ラストも、那須与五郎の家来がやってきたところを、
海岸に行こうとしていた玉蟲とぶつかり、後姿を哀れなりと見送る。
ってのが原作のラスト。

芝翫曰く、今回の脚色は
「”素襖落”を観た観客が<面白かったけど戦物語が判然としない>と話していたのがキッカケ」
なんでしょね。この”おんぶにだっこ方式”って。
なんでもかんでもお手軽な世の中に、歌舞伎まで乗っかってコンビニになること無い!
よくもよくも原作をあそこまでバッサリ切ってくれちゃって~!!
だからって、面白くないわけではありません!!
簡略化してる分、
重厚さは薄いけど!!
思い入れがない人には、きっと十分なのでしょー。
今年は大河で「源平尽くし」だから、それはそれでいいのでしょー。
ただ、こういう手法をスタンダードにさせないで欲しいっっっ。

蟹は大きくて赤くて、赤間神宮で購入した赤い土鈴の
オドロオドロシイ雰囲気満載だったわぁぁぁ。

最後に玉蟲が「これからはお宮仕え」背筋を張って嬉しそうに言うのよ。
平家の物語って、怨念ドロドロなんだけど、哀しい…。
一応、”怪奇ロマン”経験したってことで…納得出来るのか!

久しぶりに故郷へ帰ってきたら、ジャリ道がアスファルトになってたり、
商店がスーパーに変わってて、心に穴がポッカリ。って感じ!
8年も待ったのにねー!チクショー!

夜の部 「平家蟹」 「勧進帳」 「植木屋

 ☆あくまでも主観で書いたものです。特に他意はありませんので平に容赦下さい。