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『オッペンハイマー』

2024年04月10日 | 映画(あ行)
『オッペンハイマー』(原題:Oppenheimer)
監督:クリストファー・ノーラン
出演:キリアン・マーフィ,エミリー・ブラント,マット・デイモン,ロバート・ダウニー・Jr.,フローレンス・ピュー,
   ジョシュ・ハートネット,ケイシー・アフレック,ラミ・マレック,ケネス・ブラナー,デヴィッド・クラムホルツ,
   ベニー・サフディ,デヴィッド・ダストマルチャン,トム・コンティ,ゲイリー・オールドマン他
 
封切り日だった3月29日、に面会してから実家の片付けに寄った後、イオンシネマ茨木へ。
 
原爆の父」と呼ばれるロバート・オッペンハイマーの伝記作品。
製作国のアメリカはもちろんのこと、日本を除くほとんどの国では昨夏に公開されましたが
これだと日本に原爆が投下された時期と重なってしまうことから、
昨夏の日本では公開が見送られ、予告編すら目にすることはありませんでした。
はたして日本で公開される日は来るのだろうかと思っていたら、8カ月経ってその日が到来。
 
予告編を含めると190分を超える長尺、180分。
第96回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、撮影賞、編集賞、作曲賞を受賞したほか、
キリアン・マーフィが主演男優賞、ロバート・ダウニー・Jr.が助演男優賞を受賞しています。
 
第二次世界大戦下のアメリカでは、ドイツよりも先に原子爆弾を開発することが最大の目標。
米軍将校レズリー・グローヴスは、目標完遂のために極秘プロジェクト“マンハッタン計画”を始動させるに当たり、
ヨーロッパの名門大学にも留学経験のある天才物理学者ロバート・オッペンハイマーを任命する。
 
オッペンハイマーはこのプロジェクトのためには秘密を貫ける研究所が必要だと主張。
ニューメキシコ州のロスアラモスに研究所を設立すると、全米の優秀な科学者を集めて原爆開発に邁進する。
そしてついに世界初の核実験“トリニティ”を成功させるのだが……。
 
という話だと思っていたのですが、そればかりの話ではなくて、ちょっと衝撃的。
原爆を開発したことによって戦争終結に導いた英雄として崇められていたオッペンハイマーですが、
アメリカ原子力委員会の委員長を務めるルイス・ストローズが実はオッペンハイマーに私怨を持っていて、
仕返しの機会を狙い続けていたらしくて。器のちっちぇえ男です。
 
物語はカラーとモノクロの2通りで構成されており、
オッペンハイマー側の主観をカラーで映し、ストローズ側をモノクロで映し出しています。
ストローズはオッペンハイマーをソ連のスパイだとしてでっち上げ、
自分の手は汚さずに、オッペンハイマーをよく思わない人物に告発させ、FBIの目に留まるようにする。
どうにもよろしくないやり方です。
 
オッペンハイマーに華々しい舞台を与えるのも嫌だから、裁判にはしない。
あくまで非公表の聴聞会という形にして、ストローズが勝つように周りを固めます。
ストローズ役がロバート・ダウニー・Jr.で、“アイアンマン”の彼はどこへやら、
そりゃこんな役を演じた後にオスカー授与式であんな態度を取れば叩かれるでしょう。(^^;
すごくよかったマット・デイモン演じるグローヴスや、デヴィッド・クラムホルツ演じる旧友イジドール・ラビのように、
オッペンハイマーについて尋ねられたときに、どんな相手であろうが変わらない話をする人もいれば、
黒幕の存在を感じ取って簡単にオッペンハイマーを貶める話をする人もいる。がっかりです。
 
一流のキャストが多すぎて名前が出る機会の少ない役者の中にも目を引かれた人がいます。
グローヴスの部下でありながらオッペンハイマーに黒い感情を抱いていた中佐ニコルス役のデイン・デハーンは、
10年前は将来を有望視される若手俳優だったのに今はすっかり脇役俳優。
でも鋭い目つきは健在で、こんな嫌な役を演じるとなおさら印象に残ります。
また、ストローズの側近を演じたオールデン・エアエンライクは、忠実な部下だったはずが、
だんだんとストローズがいかに小物でこじらせた奴かに気づいた後の表情がよかった。
 
原爆を開発するために、荒野に町までつくっていたことを私は知りませんでした。
ナチスに先に開発されてはならない、それはそうだと思う。
けれど、殺戮のためのみに自分の研究が使われることになったら。
『映画 太陽の子』(2021)を観たときのように、科学者の苦悩についても考える。

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