夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ビニールハウス』

2024年04月14日 | 映画(は行)
『ビニールハウス』(英題:Greenhouse)
監督:イ・ソルヒ
出演:キム・ソヒョン,ヤン・ジェソン,シン・ヨンスク,ウォン・ミウォン,アン・ソヨ他
 
前述の『MY SHINee WORLD』の後、同じくイオンシネマ茨木にて。
シネ・リーブル梅田まで行かなきゃ観られないと思っていた作品が、
何週か遅れて茨木でも公開してくれてラッキーです。
ただ、母がこんな状態のときにここまで暗い作品を観ても私のアタマが大丈夫かどうかは気になりました。
大丈夫でした(笑)。
 
これが長編デビューとなる30歳の女流監督イ・ソルヒ。
韓国の名門映画学校のご出身だそうで、見た目かわいいのにえげつない作品をお撮りになる。(^^;
 
貧困のためにビニールハウス内に家具をそろえて住む女性ムンジョン。
少年院に入っている息子が帰ってきたら一緒に暮らすのが夢。
ちゃんとした家を借りるために金を稼ごうと、訪問介護士として懸命に働いている。
 
訪問先は盲目の老人テガンと認知症の妻ファオクの2人暮らし。
テガンは穏やかな性格でいつもムンジョンを労ってくれるが、
ファオクはムンジョンを敵視し、唾を吐きかけたり、「殺される」と喚いたり。
 
あるとき、ファオクを風呂に入れていると、立ち上がって暴れ出す。
なんとかなだめようとするがどうにもならず、ますます暴れて揉み合いに。
気づいたときにはファオクは転倒して頭を打ち、息絶えていた。
 
息子との未来のためにも仕事を失いたくない。
ムンジョンはファオクの死体を持ち出し、ビニールハウスの箪笥に隠す。
そして、入院中の自分の母チュンファを連れてきて、ファオクのふりをさせるのだが……。
 
救いなし。完全ネタバレ、いいですか。
 
自分の頬をぶったり頭を叩いたりという自傷癖のあるムンジョンは、
同様の人たちのグループカウンセリングに参加して、スンナムという少女から信頼されるようになります。
スンナムは「先生」と呼ぶ作家のもとで暮らし、性的虐待を受けている様子。
放っておけずにいつでもビニールハウスに来ればいいと解錠方法を教えます。
 
しかしファオクの死体を運び入れているときにスンナムが来てさぁ大変。
ついついスンナムに冷たい言葉をかけてしまったうえに、
「先生」から嫌な目に遭わされているのなら殺せばいいとも言ってしまう。
軽度の知的障害のあるスンナムはムンジョンの言葉通りに先生をカッターナイフで刺すのです。
 
テガンは自らも認知症の初期段階にあることを知り、ファオクを殺して自殺するつもり。
ところが殺した相手は自分の妻ではなくムンジョンの母親で。
ムンジョンの母親も認知症だから、「ふり」をするには限界がある。
 
とどめはムンジョンがビニールハウスを焼くシーン。
少年院から出てきた息子とその仲間がどこかで飲もうとビニールハウスへ来ていたのに、
ムンジョンが来たのに気づいてハウス内に隠れます。
そうとは知らずにハウスにガソリンを撒き、火を放つムンジョン。
 
ビニールハウスが燃える様子は『バーニング 劇場版』(2018)を思い出させます。
小さな幸せを得たくて真面目に働いているのに、何もかもが悪いほうへ。
救いのまったくない状況に、呆然とするしかありません。
 
でも、この作品は嫌いじゃないなぁ。
イ・チャンドンとかキム・ギドクとかパク・チャヌクとかの後継者になりそう。

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