マキペディア(発行人・牧野紀之)

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生命、生活、das Leben

2011年09月15日 | サ行
  参考

 01、生き物は原因をその結果に到達させない。即ち、それは原因としての原因を止揚する。(大論理学第2巻193頁)

 感想・「外からの作用がそれを受ける物の内部の構造等を介して結果を出す」という点では、生物も無生物も同じでしょう。ただ、生物の「媒介の仕方」は無生物のそれとは異なる、ということでしょう。だから、そこではもはや「原因(作用因)」という概念だけでは説明できない、ということでしょう。目的因が働くわけです。人間の場合には更に「目的意識性」が働きます。拙稿「労働と社会」参照。

 02、生命(生活)の生産は、労働における自己の生命の生産の場合でも、生殖における他者の生命の生産の場合でも、そのままただちに二重の関係である。一方では自然的な関係であり、他方では社会的な関係である。(マルエン全集第3巻29頁)

 03、有機体の行う物質代謝は生命の最も普遍的で最も特徴的な現象である。……しかし、生命を有機体の行う物質代謝と定義することは、生命を生命と定義することである。

 生命とは蛋白体の存在様式である。そして、この存在様式の本質はこの蛋白体の化学的成分の不断の自己更新である。ここでは蛋白体とは近代化学の意味で理解されているもので、それによると蛋白体という名前の下にいわゆる卵白に類似した全ての合成体、普通にはプロティン物質とも呼ばれているものを包括しているのである。(マルエン全集第20巻75-6頁)

 04、あらゆる生命体に等しく至る所で見られる生命現象の本質はどこにあるか。それは先ず第1に、蛋白体が自己の環境から他の適当な物質を自己内に取り込み、それを同化すると同時に、古くなった物体部分を分解・排出するという事である。

 第2に、生命のその他の単純な要因はすべて、蛋白体の本質的機能であるこの栄養〔同化〕と排出〔異化〕とによって媒介される物質代謝から、即ち蛋白体に固有のこの可塑性から出てくるのである。

 例えば、被刺激性、これは既に蛋白体とその栄養との相互作用の中に含まれている。収縮性、これは既に非常に低い段階でも食物の摂取の際に見られる。成長可能性、これは最も低い段階でも分裂による繁殖に含まれている。内部運動、これが無ければ食物の摂取も同化も不可能である。(マルエン全集第20巻76-7頁)

 05、先にみたように、生命とは何よりもまず、或る存在がどの瞬間にも同一のものであり、しかもなお他のものである、ということである。かくして生命も又、事物と過程そのものの中にあって常に自己を立てかつ解決して行く矛盾である。この矛盾が止む時生命も止み、死が登場するのである。(マルエン全集第20巻112-3頁)